私は何て愚かなことをしたんだろう。
ダメだってあんなに思っていたのに。

結局

私は負けて
アレックスも

"そういうヤツなんだ"って、思うほか無くなってしまった。



フェイク・ラブ  中章



「嬉しそうな顔しちゃってまぁ・・・。本命とあつーーーい夜でも過ごせたのか?」
「・・・さぁな。」


そう言いながら嬉しそうににやつくアスランにディアッカは「お前もホスト班は潮時かねぇ?」と訪ねる。

「・・・本命とくっついたらそうさせて貰うよ。」
「やっぱり出来たんじゃん。」

ディアッカも・・昔をたどればこの通称ホスト班出身だ。今は結婚間近と言える恋人・・その彼女とくっついたときにこの班を止め他の潜入捜査の方に移ったらしい。


「頑張れよ。」

「言われなくとも。」


そう言いながらアスランはコートを着て出ようとする。
「今日はアスハ嬢?」
「・・・あぁ。」
今・・この班から移動しては折角のカガリと会う機会を減らすことになる。

だから---カガリが俺を思うまで、この班にいてカガリに通い続けると決めていた。











「もうお前、来なくて良いぞ。」

「は?」


気分上々でインターホンを押した途端ピシャリと言われる。
画面に映っているカガリはいつもと変わらない表情だが、声が冷たい。

----昨日のことを怒っているんだろう。

怒っていることは想像していたが、まさか来るなと言われるとは。


「だが・・君とは三ヶ月契約だろう?まだ一ヶ月しか経って・・」

「良いよお金は。それに私はお前から時間を買って、私が必要ないって言ってるんだから・・お前の好きに使ってくれ。」


微笑みを讃えつつ目は非常に怒っている。
彼女は嘘を付くという行動が苦手らしいと、焦りつつもアスランは冷静にカガリの分析をしていた。

「・・ドアを開けて欲しい。・・・ちゃんと話をしてくれないか?」
「ドアを開けなくても、話は出きるだろう?」

「・・この間のこと・・・・怒っているなら二度としない。・・だから開けてくれないか?」


「---------・・嫌だ。」


「カガリ。」

「帰ってくれ。」


ガチャンと切られ、流石のアスランも少し腹を立てる。
だがその立腹以上に焦りがあった。

経験上怒った女性に迂闊に電話をするのはよろしくない・・でもこの状況を打開しなければ・・・。

賢いはずの脳で必死に考えるが良い回答は見つからず、その日は仕方なくその場所を後にした。











「・・・もしもし、フレイ?」


啜り泣くような声で電話すると、相手は呆れたように第一声を発する。

「・・どうしたのよ?」

話を聞く前から「困った子ね。」と言いたげなフレイにカガリは「あのな・・」と話し出す。
その内容を聞いて・・フレイが激怒するまで5分も掛からなかった。







「・・・・・・・。」

「・・・・・・・・聞いてたか?」

自分の質問に答えないディアッカにアスランは不機嫌そうに眉を顰める。
ディアッカは数回目を瞬かせ「いや。ちょっと意外で。」と答えた。


「意外?」

「だってさ、お前が女のことで聞いてくるなんて・・・。意外を通り越して明日は真夏日になるんじゃないかと・・。」


今は真冬雪こそ降れ30℃を越える真夏日には絶対ならないだろう。


「・・真面目に聞いてるんだが・・。」

「そうは言ってもよ、本気になった時どうすればいいか〜なんて俺にも分からないぜ?」

「何だよ、居るんだろ。結婚間近の相手。」


「そうだけどさ・・。」


必死に追いかけたこと以外覚えてねーや、とディアッカは照れたように笑う。

このままだと休み時間の間だずっと惚気を聞かされそうだとアスランは思った。


「そういや、アスハ嬢違うヤツに請け賜わせる案が出てたんだ。」

「え?」


惚気話が終盤に差し掛かったとき、ディアッカは思い出したように言う。
どう言うことか・・・、とアスランは目を開いた。

「アスハ嬢、アルスター家のフレイと仲良いらしいんだ。・・それにアスハ嬢からは極度に秘密が漏れないだろ?」
「・・そうだが・・、」
「推測の話だが・・アルスターのお嬢様がアスハのお嬢様に頼んでお前に仕打ちするんじゃないかって、おもっちまったんだよな。」


「・・・・・・・。」


「ま、賢いアスラン・ザラだ!仕打ち受けそうになったら上手くかわせるだろうから俺はそこまで心配してないんだけど・・・。」



仕打ち。

それがもし、俺を傷つけることだとしたら・・

俺はとっくに喰らっている。







だが実際、俺はそこまで傷ついていないのだ。

だって・・俺は"好き"って気持ちをはじめて知ったから。










「・・また来たのか?昨日来るなって・・・・」

「契約破棄の書類持ってきたんだ。サインしてほしい。」

事務的な用事と分かってホッとしたのか、カガリは「分かった。」と言って玄関から出てきた。
それを良いことに部屋に上がろうとする。


「・・サインは此処で出来るだろ?」

「---結構枚数があるんだ。・・カガリも、そんな警戒しないでくれないか?」


仕事でなければしないさ、というオーラを出して言うとカガリは「・・・。」と不機嫌そうに黙りながら部屋に通してくれる。
そんな顔が見たいわけじゃないのに。


「で、何にサインすれば良いんだ?」

「・・・。」


一応と出されたお茶。アスランはそれを飲みながら書類も出さずにカガリを見据える。
カガリはその目線に気が付き眉を潜ませた。


「・・契約書はこれだ。・・・それと・・・」


ぱさりと持ってきたのは、今回の契約とは全く関係のない紙。
カガリから分かることは銀行やATMで使うお金関係の紙であることしか分からないが。


「・・こっちは分かる。・・これは?」

「・・こっちは・・」


書類に目を獲られているカガリに手を伸ばし顎から耳を手で触れクイッと顔を上げさせる。
"まずい"そうカガリが思った時には遅く、翡翠の眼に捕らわれていた。


「君と俺のとの・・新しい契約。」


そう言って・・唇を近づける。
強ばったように固まったカガリに熱い口づけをし、ソファーに押し倒した。


「・・嘘吐きだ・・ッ!お前・・嫌い・・っ、だいっきらいだ・・っ!!!」


"大嫌い"ってこんな重たい言葉だったんだな・・。
そう感じながらも、アスランの感覚はどこか麻痺しているようでその言葉が辛いとは思っても嫌だとは思わない。
初めての気持ちのせいか、罵りでの心の痛みですら痛がゆいものに思えてくる。


「・・今日からは・・君の時間を俺が買う。その契約・・・、1時間2万・・悪い話じゃないだろう?」

「・・・・私は・・っそんな・・!」

「・・契約は今日からだ・・・、別に今すぐサインしろとは言わない・・。けど今から俺は君の時間を買う。」


金で愛が買えるなんて思っていない・・けれど、金で買える物だって確かにある。



「やッ・・やぁ・・あっ」

「・・本当に感度が良い体だな・・嫌がってるのに、な?」



カガリのショーツは既に湿り、指で撫でれば直ぐにびちょびちょとなる。
その頃には既に喘ぎ声しか聞こえなくて、アスランは優しく微笑んだ。


「可愛いな・・、でももっともっと気持ちよくさせてあげるよ。」


囁くだけで・・・・・カガリの体は小さく震えた。
アスランはそれを見てニッコリ笑う。









駄目だ、駄目だって、思ってるのに・・・・・・・体はそれに反して気持ちのままに動く。
アレックスの指が胸の先端に当たるだけで、もっと触って欲しいなんて・・・・・、そんな目見せるわけには行かなくて。

必死に目を瞑って「いやだ」と「嫌い」を繰り返す。
何で、あの日居酒屋に連れて行って・・あんなに酔ってしまったんだ?


あれほど言わないつもりでいたのに、何で。


「君が誘ったのに」

好きだって、言ってしまった?
やっぱり本心を知られたからこんなにつけ込まれてるんだろうか。

相手はただ、私の・・・アスハの情報が欲しいだけじゃないか・・!



「・・あぁ・・凄い、カガリ。・・"嫌い"な人なのに。」

「ひっ・・・、やぁ・・っ!」


フレイの話を聞いて・・怒ったのは私だった。
フレイは昔から・・男遊びがすきだったけれど、まさかそのせいで親の会社が破綻するなんて夢にも思っていなかったと、泣いた。
フレイも馬鹿じゃない・・アレックスという出張ホストを突き止めた。・・・でも、怒りが冷めたのか「もういいわ。」と言ったのだ。


「・・今までのバチが返ってきたのよ。」


そう苦笑していた。

でも私は許せなかったのだ。

もしも自分がフレイと同じ立場で父の会社が倒産するような目に遭わされたらと考えるだけで寒気が走る。

だから、どんなヤツか。本当に酷いヤツだったら・・どうにかしてやろうと思っていたんだ。





でも



何日居ても自分から手を出してくるようなヤツじゃないし。
律儀だし、真面目だし。


一緒にいて安心するようになって・・・・・・・。

それに、時々淋しそうだったり・・・・・・、いつの間にか。



凄く気になっていたんだ。



"恋"かもしれないって・・思ってた。











「良い奴だって・・信じてた・・・・・、こんな事・・・・しないって・・・・。」


本気で啜り泣いたカガリに・・アスランは「ごめんね、」と良いながら指で涙を拭く。


「・・でもカガリ、俺はこいうやつだよ。」


計り間違ったな・・。

そう言って体を再びまさぐり始めた手を止めることなく、この間同様最後まで突き詰められた。











「ねぇ?カガリ。俺達相性最高だと思わない・・・?」

「・・・・・・・・思わない。」


髪を撫でるアスランを無視し、いつの間にか来ていたベットのシーツを硬く握った。
流されちゃ駄目だ。相手は・・私が自分の事を想ってるって知って話しかけてきてるんだ。
おそらく再び私からお金を払わせるように・・情報を稼ぎながら効率よく獲るために、その気にさせようとしてるんだ。





体は開いても、心は開かれない。無機質な声にアスランは小さく溜息を付いた。



「嘘吐き。・・・直ぐ濡らす癖に・・。」


少々怒りの口調を交えて、背を向けたままのカガリのお尻を撫でる。
アナルを刺激すれば、カガリが既にまた濡れてきているのが何となく分かる。


「言いきってやるよ・・、また濡れてきただろ?」


認めろよ、とアスランはカガリに言う。




「・・・お前、嫌い。大嫌い。顔も見たくない、話したくない・・触るな。・・・・・・・気持ち悪い・・・。」



拒絶するように並べられる文句。

アスランはそれにハッキリと怒りを覚えていた。

先ほどとは違う、甘い痛みにも変えることが出来ずアスランの胸に深く刺さる。


「・・そんなに嫌いで気持ち悪いヤツに・・触られて濡らしてるのは誰だよ・・っ!」


カガリの腕を痣が出来るほど強く握りこちらを向かせた。

カガリの瞳には多くの涙が溜まり頬をつたっている。


「----・・こんな・・酷い・・、--お前・・・嫌い、嫌いだ・・・。」


本当に嫌な物を見るような、目で・・。

「カガリ・・」

---------見ないで。



笑ってくれた、淋しいのかと・・抱きしめてくれた・・・


そんな君が、好きなんだ。









ディアッカが言った言葉を・・真剣に考えた。


カガリは、フレイから俺への復讐をするよう頼まれているかもしれないと。


それが・・もし、


君に本気になった俺を・・弄んだり、金を貢がせるのが目的だとしたら?











だったら・・・?











一体、何だって言うんだ。







俺は弄ばれても良い、金を貢いで欲しいならいくらでも貢いでやる。


そうしたら・・










君は、少しでも長い間・・俺の傍にいてくれるんだろう?



そうなら。






俺はその復讐を苦だとは思わない。































































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あとがき
やっとお互いフェイク・ラブ状態になりましたー;;これが書きたくてこのタイトル;
軽い内容なのは許してあげてくださいorz
2007/09/16