「社長が自慢したくなるのも分かる可愛らしさですね。」
自分より5つほど上の男の人にそう褒められる。
カガリは成人式以来の振り袖を着て、その黒髪で長髪の男の人と遠慮がちな笑みを浮かべながらご飯を食べていた。
俗に言う"お見合い"というヤツだ。
「アスラーンッ!!!!」
「っ、どうしたの?珍しい。」
カガリからガバチョと抱き付くとアスランは少し驚いたようだが、嬉しそうに頬を緩めた。
大好きな人に抱き付かれたら嬉しくない訳がない。
背中に柔らかい胸の感覚と、微かに香るリンスの匂いが心地よくソファーの後ろにいるカガリを呼び自分の足の中に座らせる。
「どうした?」
耳元で問いかけると、カガリはくすぐったいのかクスリと笑いアスランに背を預け小さな掌をアスランのと重ねた。
親指の付け根を丁寧に撫でられ、触られれば何処でも性感帯になるのか?とアスランはぼんやり思う。
「襲って良い?」
「聞くなんて・・珍しいな?」
ふふっと笑ってこっちを見たカガリにアスランは重ねるだけのキスをする。
「だって、何か話したいこと・・あるのかと思って。」
そんなに珍しいかな?と言いつつ、アスランはカガリをじっと見る。
カガリは少し目を伏せてからアスランに抱き付いた。
「--------・・アスランと・・同じ学年だったら・・・良かったのに。」
哀しそうに言ったカガリに、アスランもピクリと反応する。
歳の差を・・カガリが言ったのは、付き合った当初だけで・・それからはお互い気にしていないとアスランは思っていた。
「・・どうして?俺は・・年上のカガリも好きだよ?」
同い年でも好きになったと思うけど。・・そう付け加えると、カガリは「そうなんだけどな・・」と曖昧に笑う。
けれど・・また、切なそうになるのを見て、アスランは思いっきりカガリを抱きしめた。
「・・歳の差は・・どうしようもない、だろ?・・俺だって悔しい。・・でも、好なんだ。・・・それじゃ・・駄目・・なのか・・?」
「・・・駄目じゃない・・。」
でもな・・と、言いたげな声で・・アスランのYシャツをカガリはギュッと握る。
これは-----俺のせいで、悲しんでるのだろうか?
そう考えるとアスランまで気分が落ち込む。
アスランはそれをかき消すように、カガリの体に手を伸ばした。
「ん・・アスラ・・、」
気持ちよさそうに顔を歪ませるカガリにアスランは安心する。
この時は・・お互い何も、難しいことを考える暇もない。
歳とか、いろんな事・・全部無くなる気がするから。
「・・カガリ・・・。」
カガリが・・悲しまないようになればいいと思った。
まして、俺の事で悲しんで欲しくない。
"お見合いをした"なんて言う気にはなれないし、言いたくもない。
黙っていればばれない・・それに、私が好きなのはアスランだから・・・・言う必要もない。
アスランに抱かれているときは、何も考えなくて良い。
ただ、好きだという気持ちで満たされるから。
朝になり・・カガリはアスランの顔にキスをしてからシャワーを浴び、朝食を作る。
作りながら・・先日のお見合いのことを思い出していた。
相手は、父の会社の新しい部門を開拓するのに協力してくれた会社の若社長。
しゃべり方や仕草から利発さは十分伝わってくる人だった。
当たり前だが付き合う気は毛頭ない・・だが、軽くあしらうことは許されない人間なのだ。
それがカガリの頭を悩ませる。
・・・・・まぁ・・・賢そうな人だから、こちらにその気がないと分かれば手を引いてくれるだろうけど・・。
「わぁッ!!」
ガバッと抱き付かれ、カガリは慌てて自分の腰に巻き付いた腕を掴む。
アスランは少し笑ってから「おはよう」と耳元で囁いた。
「あ、朝から驚かすな!」
「だって、カガリにおはよって言っても・・気が付かなかったから・・。」
何か難しいことでも考えてたのか?と聞かれ、カガリは首を振る。
アスランは「ならいいけど」とちょっと釈然としない様子だが、優しく笑ってくれた。
「・・相談事があったら・・いつでも言ってほしい。」
「----・・ありがとう。」
カガリからもぎゅぅっと抱き付く。アスランも同じくらいの力で抱き返してくれて、なんだか凄く幸せに思えた。
「カガリも苦労が絶えないわねー。どうにかして断っちゃえば良かったのに。」
お昼、いつものように食べているとミリィは苦笑しながらカガリに言う。
だって・・仕方ないじゃないか、とカガリは唇を尖らせた。
ミリィは大抵のうちの事情は知っている。
「まぁ・・大企業の社長の娘じゃねぇ・・言われもない輩に狙われるのも仕方ないわ。」
結婚すれば・・一生不自由なく過ごせるし・・出世をするにも、会社と協定を組むにも好都合の相手なのだから。
「・・まぁ・・会社はキラが継いでくれるから、私はその分自由が利くんだけどな・・。」
「そうね、これでカガリが継ぐことになってたら一大事よ!みんな根こそぎ狙ってくるわ。」
全く、現金な世の中よね・・・とミリィは怒る。
カガリもまったくだな・・と溜息を付いた。
「お父さんに・・アスラン君のこと、伝えてないでしょ?」
「うん。」
紅茶を啜りながら・・カガリは答える。アスランのことを言おう・・なんて考え自体、カガリの中からは消されていたのだ。
恥ずかしいとか・・そんなんじゃなくて、ただ・・言えないな、と感じていた。
「まぁ・・伝えにくいわよね。まだ高校生だし・・。」
他人から見れば、犯罪に見えるのかもしれない。
そんな事をぼんやりと思うけど・・でも、好きなんだ。アスランも、好きって言ってくれる。・・・・別に悪い事なんてしてないのに。
・・・・・・なんだか、この頃沈んでばっかりだ。
「ひさしぶり!カガリ!」
実家は家から車で二十分ほどの所にある。
でも毎日この大豪邸から通うのが気が引けるので、セキュルティーの高いマンションに住んでいた。
「おう、キラ!」
キラはアスランと同じ受験生で・・私と違って理系だが、やれば出来るらしく成績は鰻登りだ。
キラも・・やっと将来のことを真剣に考えだしたようで、いずれはお父様を継ぐことになるだろうがそれまではOSなどのソフトウェアを作りたいらしい。
「--------・・?ねぇ、男の人とよく会ってるの?」
キョトンと・・玄関先で・・幸い使用人が居ないが、そう訪ねられる。
カガリはビクッとして・・しかも顔に出てしまった。
「・・へぇ〜この間のお見合いの人?」
「違う。」
「違うの?」
なんだ、とキラは笑う。カガリはそれを首を傾げて見る。
「お父さんね心配してたんだよ?・・カガリがもしも会社のために結婚させられたらどうしよう!って・・、ホントは今回のも断りたかったみたいなんだけど・・無理だったんだって。」
「・・何となくそんな気はしてたさ、お父様はそういうことを強制する人じゃないから・・。」
適当にあしらって駄目にするさ・・とカガリは笑う、キラもそれが良いよと笑い二人へリビングへと続く廊下を歩きだした。
「・・ホントいい人いるなら結婚しちゃった方が良いよ?・・カガリもほぼ適年齢だし・・お父さんも、会社のために結婚よりかは自分の旧友の子供でいい人が何人か居るからそっちでお見合いさせたい・・って真剣な顔で言ってたもん。」
「・・・・いい人は・・いる、けど・・結婚は・・ちょっと・・。」
「・・まだ恋人じゃないの?」
「・・いや・・そういうことじゃなくて・・。」
考えてみれば・・私はキラと同じ学年の男の子と付き合っているのだ。
それを・・父と、弟は・・・・どう受け止めてしまうのだろう・・。
「・・・近々・・お父さんとちゃんと話した方が良いよ。」
「・・うん。」
ちゃんと・・話す・・か・・・・・・・。
カガリはその言葉を何処か遠くのように聞いていた。
「カガリの弟って、俺と同じ歳なんだ。」
「ああ、キラって言ってな・・同じ理系でキラも頭良いから・・もしかしたら大学一緒になるかもな!」
ご飯の後・・軽くお茶を飲みながら話していると、アスランはふぅん・・と興味なさげに相づちを打つ。
"弟と同じ歳"なんていやだったからだ。
「歳の割に可愛くてな、ちょっと甘えん坊なんだけど・・。やっぱり年と共に大きくなってる。」
昔は私の方がおっきかったのになぁ・・と懐かしそうにカガリは笑う。
アスランは「そう、」と短く答えることで、興味のなさを示そうとしていた。
「アスランよりちょっと小さいかな?」
「・・・。」
アスランが黙って・・カガリの顔を覗き込むとカガリは素直に目を瞑った。
ちゅっと軽いキスをしてからアスランはカガリの髪を梳く。
「アスラン?」
嬉しそうに微笑んだカガリに・・アスランは少し赤くなってから「好きだ。」と短く言ってからもう一度。
今度はもっともっと深いキスをカガリに送った。