夏が終わった。
夏の間、ほぼ泊まりきりだったアスランを家に戻すのに一苦労してしまう。
"君は俺が離れても良いの?"
"帰りたくない。"
"カガリの傍にいたい。"
"・・・・・どうして、分かってくれないんだ?勉強ならちゃんとしてるだろ?"
私だって、お前の傍にいたいさ。でも。
「駄目だ、お前は私が帰ってくると勉強しなくなるだろ!秋からはもっと勉強しなきゃ駄目だ!お前がどんなに頭が良くても!」
「何でだよ、ちゃんと一日十時間以上勉強はしてたし・・!カガリが帰ってきてからするのは、一日のご褒美みたいなものじゃないか!」
「秋になったら学校が始まるだろ!私とお前の学校と仕事終わる時間は一緒だ!私に会ったら勉強できなくなる!」
「別に・・・・、学校でちゃんとやってくるさ。」
「学校だけでどうにかなるほど・・受験は甘くないって知ってるだろ!」
そう・・一緒にいたくても、邪魔にはなりたくない。
アスランが国一番の学校に受かるほど優秀なのは模試やテスト結果で知っている。
けれど・・もしも。
もしも自分のせいで堕ちたりなどしたら・・・・・・・。
「ともかく・・帰るんだ!!」
そう言って閉め出して早二日。
アスランからはメールも電話も来ない。無論カガリもしない。
「はぁ・・。」
「なあに、アスラン君と喧嘩したの?」
会社の外で昼ご飯を取っていると、ミリィに困ったように笑われてしまう。
「でも本当に上手くいくとはねぇ〜。ビックリ。」
「・・私が一番ビックリだ。」
三ヶ月前・・一体誰があの少年に恋をするなんて思う?思わないだろ。だって車で水引っかけただけだ。
「・・で、どうしたの?」
ミリィのその言葉が合図のようにカガリはアスランのことを話す。
勉強のこと・・それに・・もっと、もっと悩んでいること。
「・・・・・私より・・全然相応しい人が居る・・・・・・・・そう思っちゃうんだ。」
だってそうだろう?とカガリは声に出す。
相手は高校三年生・・、これから大学にも行きサークルにも入る。
絶対・・絶対、見限られる時が来るのだと・・思ってしまう。
一緒に買い物に行ったときから突っかかっていたんだ。
周りの恋人は同年代・・・自分達は・・四つ、五つ差。
「・・そんな事・・心配しちゃうくらい好きなのね。」
「・・・・。」
「・・先の事なんて分からないから・・今を頑張るしかないんじゃないかな?」
「・・・・・うん。」
「そうよ、私達だって恋だけしてればいいような年頃じゃないんだから。・・アスラン君もね・・大事な時期だし。」
そうミリィに言われカガリは「そうだな・・」と小さく漏らす。
「そういえば、エルスマンさんとはどうなったんだ?」
「----------------------・・・・・・・・・・・・・・・・・、、、、、、、、、。」
「・・聞いちゃ・・まずかったか・・・?」
「別に・・。」
ミリィは少し怪訝そうにしてから・・でもどこか嬉しそうに話し出す。
「実は結構前に・・付き合い・・出したんだけど・・・・・・・・・、その、あっちの方が激しくて。それが原因で喧嘩中。」
「・・大変だな・・。」
「まったくよ・・ディアッカったら"好きな女の子にそうするのは当然だろ!!"って言って聞かないし・・。」
「ラブラブじゃないか。」
にやっと笑ってみると、ミリィは「まあね。」と頬を緩める。
「でも・・体力が違うじゃない?・・次の日仕事とかだと・・どうしても、ね。支障が出たら嫌だし。」
「それはそうだな・・。」
「・・朝起きてからもしようとするのよ?信じられない。」
そうして携帯を開きミリィは顔をしかめる。
どうやら相手からメールが来ていないらしい。
「もう、このまま連絡こなかったら別れてやるんだから。」
そう・・どこか淋しそうに呟いたミリアリアは、今の自分に似ているような気がした。
「どうかしたのですか?アスラン。」
「・・・・・・・ラクス、ですか。」
ここのところずっと不機嫌なアスランに周りは疑問よりも畏れを感じたらしく近寄ってこない。
もとより一匹狼肌のアスランには何ら問題のないことだが・・。
「そんなお顔していますと、早いうちから皺皺になってしまいますわ。」
ふふっと笑いながら行ってくる彼女は、元カノだったりするのだが・・今は良好な友人になっていた。
こんなアスランに物怖じしない物言いを出来るのはラクスくらいだろう。
「彼女と・・喧嘩しまして。」
「・・あら、悩みをうち明けるなんて珍しいですわ。」
そんなに悩んでらっしゃるのですね・・とラクスはアスランを見る。どうやら相談に乗ってくれるらしい。
「・・夏の間、半同棲みたいな感じだったんですか・・。」
「お一人暮らしの方ですのね。」
「ええ、で・・夏が終わったら帰れと言われてしまって・・。」
「年上ですの?」
「はい。社会人です。」
そうですか・・と短くラクスは言い、「良いことを教えて差し上げますわ。」と笑う。
「女の方は、女々しくありませんのよ。少しの間だ凹んでも吹っ切れれば既に瘡蓋。過去の遺物ですわ。」
私が良い例でしょう?とクスクス笑いアスランを見る。
「早く連絡なさらないと、大切な彼女の瘡蓋になってしまいますわ。」
「でも・・俺は・・彼女と一緒に居たかっただけで・・」
「そう、男の方が悩んでいる間に見限るのが女ですわ。まず連絡・・そして話し合えば良いこと。・・ではないですか?」
"今連絡した方が・・貴方のためですわ。"
そう進められ・・アスランは自分の赤い携帯を見る。
そして・・一文だけ、
***
電話しても良い?
***
そう送信した。
「・・・・・・・、良いに決まってるだろ・・。」
仕事から帰り・・カガリは言ったままにメールを打つ。
ちょっと嬉しくて涙腺が弛んでいたことは絶対内緒にしなければ・・とカガリは思った。