泣きそうな恋人を、黙って慰める。
大切な人、大切な人たち。
蠱惑的悪夢
-傍観-
話しに割り込む気は更々ない。
大体・・個人間に親しくない者が割り込むと言うこと自体、
あってはならない。
だから、見守る。
「どうしたら・・いいのか、分からないよ・・ラクス。」
綺麗な紫色の瞳からは、光がのぞけた。
それが涙であると言うことに気が付かないはずがない。
「・・・お疲れになりましたわね。」
優しい恋人。
それをラクスは優しく抱きとめる。
「・・・泣いてるよ・・・二人とも・・」
「・・・三人・・ですわ。」
もっと沢山の人が泣いている。
ラクスはミーアの姉だから。
彼には彼女が居た。
だから黙っていた。
-無慈悲-
「・・恋人が・・分からないんだ。」
どうかしたんですか?と、訪ねた相手に・・彼はそう呟いた。
「・・・カガリ先輩・・ですよね?」
黙って頷く。
「・・・・私が・・お手伝いすることが出来るなら・・」
何でも言って下さい。
それだけ伝えた。
ついでに、メールアドレスと、携帯番号を渡した。
彼は・・それを見て、登録してくれていた。
たまたま見えた、登録画面。
四件目。
一件目は・・家だろう。
二件目は・・小学校時代から友達の、キラ先輩だろう。
三件目は・・・・・
カガリ、先輩。
私は、四件目。
「・・女の子の悩みは女の子しか案外分からないんですよ。」
私は、
恋人に向ける、あの・・
甘い笑みが、好きだった。
彼女は最初から嫌だと言っていた。
押し切ったのは俺。
-エンドレス-
「カガリ・・いますか?」
インターホンを押し・・そう、言う。
カガリの家は共働き、だが・・もしもと言うこともある。
返事は、無い。
がちゃりと・・勝手に作った合い鍵でドアを開ける。
カガリの部屋には鍵が掛かっていない。
「・・・カガリ?」
キィッと扉を開ける。
彼女は居ない。
「・・・・・・-------・・。」
この家で、鍵がある場所。
「・・お腹の調子・・悪いのか?」
トイレだけだ。
「・・休んだだろ・・・?学校・・大丈夫か?」
ソコにいると思われるカガリに必死で話しかける。
鍵が掛かっているから、
それが・・何よりの証拠。
「・・・昨日・・疲れたって・・言っていたな・・・ちゃんと、寝れたか?」
自分でも、分かる。
声が・・
「カガリ・・お願いだ、返事してくれ・・」
上擦る。
知ってるよ、なんで・・そんなこと言ったのか、
俺の・・せいだって、事も。
「俺の前から・・いなく・・なるな・・・っ・・・お願いだ」
開けて。
謝るから、
お願いだから、
開けて。
彼女が疲れているのは
誰の目から見ても明らかだった。
-涙-
アスランの、目から見ても。
それを僕は、きっと誰よりも、彼よりも、知ってたよ。
だから、カガリに伝えた。
「アスランが・・哀しそうだよ」って。
カガリは・・・瞳に涙をためて、僕に言った。
「知ってるさ。」
そんな答えを期待してたんじゃない。
僕は、ただ。
君たちの恋を応援したかった。
カガリが苦しそうになるのが耐えられなかったと、
間接的に、伝えただけだった。
アスランの・・一体何が不服なの?
その質問に、カガリは答えなかった。
そして黙って雫をこぼした。
-----僕も、君を傷つけた。
アスランも
そんな、カガリに・・・
気が付かないはずがないんだ。
後悔をしていた。
やっぱり、あの時頷くんじゃなかった。
-ミステイク-
目の前の扉、たった3pもない、その壁の向こうにいる人。
アスランの・・一体何が不服なの?
愛の重さ。
いや、
もっと、実際・・色々あった。
簡単な話じゃない。
「・・・っ・・」
アスランの・・涙ににじんだ声を聞きたくない。
泣くなよ馬鹿野郎。
抱きしめたくなる。
「カガリ・・俺のこと・・・・・・・・・・・嫌い?」
顔も見たくないほど、
学校を休むほど
「・・嫌い・・なのか?」
違うと、
言ってやらないと、いけないと思った。
でも、
それは・・・
エンドレス
終わらない。
また、後悔する。
彼には彼女が居た。
だから黙っていた。
-無慈悲-
その日、彼からの連絡は来なかった。
上手くいったのだろうか?
なら、私はまた貴方の笑顔を見ていられる。
それはそれで良いと思った。
+++++
あとがき
相変わらず淡々と続いております。
2006/08/27