「アスラン・・っ、ねぇねぇ・・」
彼女が・・・現れたのは、いつだっただろうか。
ぼんやりと思いながらも、自分に近寄ってくる相手に悪い気はしない・・むしろ・・。
こうやっていることで・・カガリが少しでも・・安心してくれればと、単純に思っていた。
-----俺はもう大丈夫、だから。
君は心配しなくていい。-------笑って欲しい。
あれから、アスランは・・大分人と話せるようになっていて、バレンタインがあと一ヶ月に程になった頃に・・・ミーアという他のクラスの子がよく周りにいるようになった。
それだけじゃない。
メイリンという・・中学の女の子も、文化祭で知り合ったのかこの学校に良く来ている。
-----良い傾向だとカガリは思っていた。
アスランも・・やっと、人と気兼ねなく話せるようになったのだ。
「このごろ・・アスラン、うちにくる回数減ったよねー」
「仕方ないだろ、もてるんだから。」
減ったと言っても・・必ず週二回は来るのだから別にいいだろうと・・・カガリは半分本気で思っていた。
やっぱり・・恋ではないのだ。
-------アスランが、ただ・・みんなに馴染んでくれれば・・それだけで良かったらしい。
そう思ったのとは裏腹に、アスランが女の子と話していると・・少し不愉快になるのはきっと・・独占欲だと思う。
恋敵としてではない、友達として・・・-----アスランの相談相手は自分でありたいと願っていたから。
でも・・
-------そんなのも下らないよな。
・・・せっかく、アスランが・・自由に飛び回れるようになってきたのに、親鳥がそれを縛り付けて・・どうするんだ。
苦笑して・・・・キラと顔を見合わせていると、アスランがこちらに歩いてくる。
「今・・ミーアと話してたんだが・・・・」
楽しそうに・・ミーアとの会話を報告するアスランに、カガリは笑みを落としていた。
立派になって・・と半ば親の心境で・・・。
それを・・アスランは何の違和感もなく、嬉しく受け止めていた。
「あと・・今日、家に遊びに行ってもいいか?」
「あたりまえだろ?」
「そーそ、いっそ僕らの家の鍵あげても良いくらい。」
そうして三人で微笑んで・・・・一緒に家に帰る。
「それでさ・・カガリ・・」
今日・・女子やディアッカや・・色々の人たちと話したことを、アスランは二人に言うと・・キラは「ディアッカらしい」とかコメントを付けて・・
カガリはただ、ニコニコとしていた。
その・・・笑顔が見たくて、・・・そしてその笑顔が見れて、アスランも嬉しくなる。
カガリに楽しいと、思わせていることが出来ているんだ。
昔とは違う、与えられているだけじゃない。
カガリが・・俺に希望をくれるように、俺も・・カガリやキラに・・今日あった楽しかったことを分けてやりたい。
そう言い終わって・・キラとカガリの話も始まる。
恋人のラクスがどうこう・・とか、--------先生が・・とか、
そしてカガリは思い出したように・・声を上げた。
「そうそう・・っ!私、今日告白されたんだ!!」
「えっ!!カガリが・・?」
「・・。」
その・・言葉に、思わず黙り込んだのは言うまでもない。
-------・・そりゃ・・カガリは可愛いから・・。
もう・・今なら・・告白できる勇気もあると、アスランは自分を自信づけていた。
それに・・・・カガリとは何度もキスを交わしている。
それは、両想いであることの・・何よりの証だ。
「へ〜明日は雪と虹だね、ね!アスラン!!」
「なっ・・失礼だなキラ!!!!」
そう話して・・・・・アスランは「カガリは一部の男子から好かれるタイプだからな」と笑って言う。
それ以上・・・カガリはその話題に触れなかった。
いつ・・・告白しようかと、この頃真剣に考える・・自分がいて、ちらちらとカガリを見る回数が増える。
そして・・少し、気が付いた。
いつも・・カガリの一番傍に、いる男。
アフメド・・だっただろうか、運動神経が良くて・・・・まぁ自分やキラには劣るのだが。、、、、とても性格はいい。
アスランにも・・初めのうちから気兼ねなく話しかけてきてくれた人で・・時々話す程度の仲だった。
そんな日からしばらくたたないうち・・キラと共に昇降口で待っていると、カガリがなかなか来ない。
ふっと・・思い出されたのはアフメドで、焦る。
「・・・?アスラン」
「・・カガリのこと・・迎えに行ってくる。」
「うん、じゃあ僕は此処で待ってるね。」
急いで階段を上がって・・・クラスの前に来ると、夕焼けに照らされた人影が見える。
・・・やっぱり、カガリで・・・アフメドで、
出ていってその雰囲気を壊してやろうかと思ったくらいで・・・。
出ていこうと、決めた瞬間アフメドの声が、それを遮った。
「-----・・やっぱ・・・アスランが好き・・・なのか。」
え・・・。
嬉しくなって・・頬を真っ赤に染める。
つまり・・カガリは断ったのだ、そして・・アスランが好きだと、聞かれている。
---------聞きたい。
その答えを俺も聞きたい。
好き・・・きっと、それはお互いにある感情だ。
「アスランが好き・・・・」
-----------か?
本当に?
分からない。
アスランは・・・・・・・・・・・もう・・恋人・・というより・・。
それに・・こうやって二度も告白してきてくれたアフメドに・・あやふやな真実を告げるのは申し訳ない。
なら・・正直に思ってることを言おう。
「分からないんだ。」
「分からないって・・・」
「すき・・だが。」
同情、親心。
----------それが、一番近い。
「同情・・・・・なのかも、しれない。それにあいつ・・危なっかしいし・・傍にいてやりたいとは思うけど・・」
それは
「恋・・か・・・?---実際アスランがミーアと話しても・・メイリンと帰っていても、私は・・ハッキリと嫌だと思わないんだ。」
好きなら・・狂おしいほどの嫉妬とかするはずだとカガリ自身思う。
けれど・・
「むしろ、アスランが色々な人と話せて・・・いいとおもう。嫉妬なんて・・・・」
「それって・・・恋じゃないんじゃないか?-----俺が言うのも、凄く失礼だけど・・」
そうかもな。
そういおうと思った瞬間だった。
「カガリ、帰るぞ。」
「!!っ・・アスラン!」
げっと・・アフメドは口を閉じて・・カガリもばつの悪そうな顔をする。
夕日の日差しは・・まるでアスランの顔だけを遮るように照らして、服が見えても・・表情が分からない。
「じゃあな、アフメド。-----ごめんな」
「いや・・・ありがとう、」
そう言って・・アスランの方に駆けていくカガリをアフメドは哀しい気持ちで見送る。
カガリは・・そんなアフメドを察して、一度も振り返らずアスランの方へ向かう。
「同情」
そう・・・・なんだ、-----------------・・。
最初の頃・・良く思ったことだった。
カガリを好きだと思いだして・・間もない頃、真剣に考えた時がある。
傍にいるのは・・・心配なだけで、本当は・・傍にいたくないんじゃないか。
けど頑張っていた、同情で一緒にいて貰えなくてもいいように、沢山・・・友達と呼べる人間も作ってきたつもりだった。
--------もう、同情なんて・・言葉、君の口から聞く可能性は・・ないと、思っていた。
「・・・キラは?」
「・・昇降口で待ってる」
じゃあ・・
あの、数回だけかわした・・キスも、同情だったのだろうか。
--------可哀想だから。
だから・・・カガリは、俺にキスをしてくれた?
嫌がらなかった。
--------独りぼっちの、俺が・・・・可哀想だから?
「カガリ・・。」
「ん?」
不安だった・・アスランが、さっきの会話を聞いてるんじゃないかと。
嫌な・・気分にさせてしまっただろうか。
「・・目・・とじて。」
その言葉に・・カガリはユルリと瞼を閉ざす。
けど・・いつまでしても、アスランの唇は降りてこなかった。
目を開けて・・・・・・・周りを確認しても、アスランの姿はなかった。
「キラ!」
「カガリ・・っ!!あれ、アスランは?」
「・・・・・来て・・ないのか?」
「・・うん・・あっ・・ちょとまって」
そう言ってキラは・・一つ裏の下駄箱を見る。
「あれ・・いつの間に帰ったんだろ・・」
「・・・・・そ・・っか。」
-----聞かれていたんだ。
やってしまったと・・・カガリは自分に少し悔いを残す。
アスランは・・傷つけたくなかった・・・・・・・・見守ってやらなきゃいけないから・・。
私は、アスランを傷つけちゃいけない。
--------早く謝ろう。
きっと・・早くしないと、何処かへ行ってしまう。
戻ってしまう。
---------暗いところに。