次の日・・・・・・・カガリは、話しかけてくれなかった。
「・・アスラン。」
「キラ。」
当然のように・・クラスの中心で話を展開しているカガリ。いつもなら・・声くらい、かけてくれる。
そう思ってみていると・・視線があって、アスランが微笑むと・・・カガリは目を背けてしまった。
「怒ってるんだよ。」
「?」
「僕も・・カガリの方が、ずっと怒ってる。----------訳、聞きに行きなよ。」
そうキラに優しく諭され、アスランはコクンと頷き・・・・カガリが一人の時を伺っていた。
だが・・・・人気のカガリが、一人になるはずがない。
-------知っていたはずだった。
それを・・改めて、思い知らされたような気分。
ずっとずっと・・カガリは、俺の傍に・・"いてくれた"のだ。
「カガリ・・」
勇気を・・やっと振り絞って出したのは、もう放課後、カガリが掃除で・・あまり、人がいなかったから・・。
それでも、何人か人はいて・・・でも臆病だと感じる。
恐い、カガリといたときは・・当然のように、話に入って行けたのに、君がいないと・・恐い。
「・・・どうした。」
少し間をおいてから、ピリッと辛い空気を出す・・カガリに、アスランは正直に聞いた。
「・・怒っているのか?・・なんで・・」
「分からないなら聞くな。」
フンと冷たく切り替えされて・・凹んで・・・・それでもその場から離れようとしない、アスランに・・まさかの一声が飛ぶ。
「カガリ〜今のはないだろ?お前だってアスランのこと・・気に掛けてたのに。」
「なっ・・」
「そうそう。時々チラッと見てたわよね。」
ディアッカと・・・ミリアリア・・・だ、この頃は・・よく、会話していたような気もする。
そして・・ディアッカにボンと背中を叩かれて、アスランは・・少しくぐもってだが声を出した。
「言いにくい・・なら、別の場所に行こう?---掃除ももう終わるだろ。」
「・・。」
コクンと頷いたカガリに・・安心すると、ディアッカに親指を立てられて・・アスランも少し頬がゆるんでいた。
掃除を終わらせに戻ったカガリを見送ると、二人からもう一度話しかけられる。
「ったく、お前・・もうちょっと自分から話しに入れよ。」
「そうそう・・女子も"アスランがしゃべらなーい"とか残念がってたわよ。」
「・・え?」
意外・・だった、話の内容だけではなく、カガリとキラ無しで・・自分に話しかけてきた二人に。
「そーそ、お前頭だって良いし、スポーツ万能だし・・・もっと、女を釣ろうとか・・」
「馬鹿言わないで、アスランはそんなあんたとは違うの!!」
夫婦漫才のようにミリアリアに突き飛ばされたディアッカは「いてて」と全くいたそうじゃなく声を上げる。
「あ・・もう無理、俺動けない。ミリィのせいだ!!慰謝料!!!」
「なに?死にたいの?」
「高くない、ミリィが俺の傍に一生・・て、あっ!冗談だって、待てよ!ミリアリア!!!!」
シカトして行ってしまったミリアリアを追いかけるように走り出したディアッカをアスランは見送っていた。
そして・・仲が良さそうに夕日に消えていった二人に少し感謝をする。
不意に・・夏休み、カガリが言っていた事を思い出す。
"周りに感謝が足りない"
そう・・か、こういうことなのかと身をもって実感していた。
もしも・・彼らが、アスランが・・リストカットをしていると知ったら?
------生きている・・理由が、分からないと嘆いていたら・・・・
きっと・・・・・・心配して、解決策を探してくれるだろう。
そう言う風にしてくれる・・人なんて、持ち合わせていないと思っていた。
-----------持ち合わせていないハズがないのに。
そしてその・・心配が、良い心配ではない。
酷く・・哀しい、心配なんだ、きっと。
だって・・・・
もし、カガリが・・死ぬほど悩んで苦しんでいたら・・・・・・・・・・・俺は、凄く哀しいから。
「・・・終わったぞ、アスラン」
そう・・少しふくれっ面で言ってきたカガリの手を取って、学校近くへの公園へと足を運ぶ。
「何を・・怒ってるんだ、言ってくれないか?-------俺は馬鹿だから、言われないと気が付かない。」
「・・・。」
じゅぅっとブリックパックの飲み物を入れて、カガリは考えていた。
言って・・・しまおう。
「・・私は、そんなに頼りないか。」
「?」
「アスランが・・悩んでいることを、聞かせて貰えないくらい・・・・頼りないのか?」
少し・・涼しくなった風に吹かれた金髪も、夕焼けが強調する琥珀色の瞳も・・・
必死で、
-------心が、満たされるような気分になる。
「ごめん・・言うよ。」
だから、俺のためなんかに・・・君が不機嫌になる必要はない。
俺は・・・笑っている君が好きだ。
-----・・いや・・。
君には、笑っていて欲しい。
けど・・そうやって・・必死になってまで、心配して貰えたのは・・・・・本当に嬉しいんだ。
---------そう思って・・アスランは父との関係と・・今まで思っていたことを少し、カガリに話した。
「・・・-----カガリとキラに・・言わなかったのは・・---こんな話・・されても迷惑だと思ったからで・・頼りないとかじゃない。」
言い終わると、カガリは「今は大丈夫なのか」と聞いてきたので、笑って頷いた。
「なら・・いい、けど。何かあったら直ぐに私かキラには相談しろよ?---いつだって・・心配している。」
「ありがとう。」
怒った熱を冷ますように・・言ったカガリに、アスランは微笑んで・・・そして、額に優しくキスをしていた。
そして・・すぐに頬と、最後に唇にも・・・・キスを落とす。
「・・・・・帰ろうか。カガリ。」
「ああ・・。」
キスをしても・・・カガリは嫌がらない。
--------・・両思い・・・・・なんだろうか。
そう思ったら・・心拍数が上がって・・・立ち上がったカガリを、抱きしめていた。
「・・・・・・あす・・らん?」
---------どうしよう。
それが・・カガリの心の声の第一声だった。
「・・ごめん、心配かけてる・・よな。」
言い訳だ、自分はこうやって・・カガリを抱きしめたい。
まるで・・・自信がないから、カガリの・・その友達想いの心につけ込むように抱きしめる。
-------好き・・なんて言える勇気はまだない。
だけど・・好きなんだ、俺は・・・・君のこと。
そう思って・・カガリの金髪に鼻を付けて甘い匂いを吸い込み、腰に手を回す。
嫌がらない・・カガリは、耳を赤くしていて・・・安心する。
良かったと溜息をついてから、腕を解いてカガリと向かい合う。
「・・・・・ありがとう」
「・・いや・・。」
恥ずかしいのか・・伏し目になった相手にアスランは微笑んで・・・そして家まで送ってやる。
・・・まぁ・・ただ、もっと一緒にいたいだけなんだ。
「キラにも伝えておいてくれ、」
「ああ・・気を付けろよ、アスラン。お前可愛いから女の子に間違われる。」
「流石に・・それはないだろ?」
そうやって・・微笑んだアスランに、正直複雑に感じながら・・・・手を振っていた。
--------------・・やっぱり、自分の気持ちが分からない。
同情なのか、心配なのか・・・。
好き・・なのか?