気が付いたのは・・・・結構、早かったような気がする。
--------------好きだと思った。
・・アスランも・・きっと、そうなのだろうと・・何となく思ったけど、でも
----------------違う。
私とアスランの想いは・・
恋・・ではない。
愛・・・
いや、
慈しみだ。
---------それに気が付いてしまった事を・・酷く、後悔する。
だから、怒れなかった。
「?」
「いいから・・。」
そう、予鈴がなって直ぐアスランに手を引かれて、二人で秋の後者の裏側に出たところで・・本鈴チャイムが鳴る。
げっと・・思いアスランを睨むとアスランは笑って話し出す。
「たまには・・羽目を外すのもいいかもしれないと思ったんだ。」
何かを吹っ切ったように笑うアスランは、何だか格好良く見えて・・・・でもなんにも表情に出さずその提案に乗る。
午後の・・・初めの授業、いっそこのまま帰りのHRまでサボってしまおうと二人で計画を立てていた。
「キラ、連れてくれば良かったな。」
「・・二回目からな、下見はカガリと二人がいい。」
そう言って手を握って、ほぼ誰もいない学校裏から行ける山に二人ではいる。
少しだけ・・紅葉し掛かったモミジが綺麗で、カガリは声を上げ・・アスランもそのようすを嬉しそうに見つめる。
「・・・・もう少したったら、きっともっと綺麗だろうな」
「ああ!次はキラと三人で見ような!」
キラも・・大切だが・・。
そう、心で呟いてアスランはカガリを見る。
---------君と二りっきりも・・・凄く幸せ。
そう感じているのは・・俺だけ?
確かに・・キラとカガリ・・二人がいた方が会話は弾む、けど・・俺は、こうやってカガリとのんびりと過ごす時間も好きだ。
・・・・・カガリは、そんなの・・・つまらないのかもしれない。
いつもいつも・・はしゃぎ回っている君だから。
「?アスラン」
「・・・・----いや・・あ、・・あそこ、あの場所なら腰おろせるな」
そう言って・・木陰の芝生の上に二人で座り手を繋いだまま風と草の音を聞いていた。
つまらない・・・か?そう感じて・・カガリをのぞき込むと、はにかみながら微笑んでくれて・・少し安心する。
そしてまるで恋人のように・・お互いの肩に寄り添い、時が流れるのを見ている気分だった。
静かに過ごしていると・・カガリは急に話し出して・・面白い話なのだが、やっぱり自分といるのには間が持たないのかと哀しくなる。
傍にいるだけで・・安らげるのは、きっと俺だけで---カガリはそんなことはないのだろう。
そんなことを考えていると・・まだ、秋の初頭でワイシャツの半袖の中に、カガリは何かを見つけたようで・・・引っ張られてしまう。
また・・怒らせてしまうと、心配させてしまうと思って・・・アスランは弁解を直ぐにした。
「・・・君と会った日・・の、だから、もうやってない。」
そう言ったのは良いのだが・・やはり、キッと睨まれて・・・・・「悪い」と直ぐに謝った。
「馬鹿だなっ!!お前・・っ-----こんなことして、何が治るんだ!!心の傷だって・・こんなんじゃ、何の解決にもならない!!」
青く・・少し晴れている痕・・・・・・根性焼きというのが普通の呼び名だろうか?
腕にすると・・見つかるから、あえて内側の二の腕にしていた。ここなら半袖でも見られない。
---------けど、君は見つけてしまった。
いや、君だから。
「本当だな・・・」
「-------お前・・馬鹿だろ?」
呆れたように・・でも怒って言われて、少し嬉しく感じる。やっぱり・・君は俺に何かあったら心配してくれるんだ。
-------そんなこと、なのかもしれない。けど・・・母親ではなく、第三者に・・そう見て貰えるのは嬉しい。
特に・・カガリはまるで自分のことのように心配してくれるから・・・・。
「もうするなよ、リスカも・・それも。」
「分かってる。」
「よしっ!」
約束だと言われて・・微笑むと、カガリも笑ってくれて、少し鼓動が高鳴る。
それに・・・・・・・お互いすぐ近くで・・顔を見合わせていた。
無意識に・・瞳を閉じて、カガリもほぼ無意識で・・・・その閉じられた瞳にあわせたように視界を暗くする。
フワッと・・・触れただけの短いキス。
お互い直ぐに離れて・・・目をパチパチとする。
-------------やってしまった。
カガリのことが・・好きだという自覚は、もう随分と前からあった。
けど・・感情に流されて、唇に触れてしまうなんて・・・。
---------嫌われたり・・しないだろうか。
不安になって、目を合わせると・・・カガリはやんわりと微笑んでくれて、それだけで救われたような気分になる。
聞くに聞けなくてアスランは立ち上がり、カガリの腕を引いていた。
-----------想いも伝わっていればいいな。
ちょっと、赤くなった頬を見せたくなくて、カガリの数歩先を歩くと・・カガリは少し笑う。
笑った声がして・・振り返ると、カガリもほんのりと頬を染めていた。
・・・嫌がられていない。
・・むしろ、受け入れられているように感じられる。
そう想った瞬間、なんだか気持ちが溢れそうになって・・でもそれを押さえつけていた。
まだ・・今はこの距離で良い、嫌われてしまわないように・・徐々に詰めていけばいい。
そう思って・・また二人並んで歩き出していた。
「あ、アスラン!何だか先生が血相変えて探してたけど・・・」
HRが始まろうとするとき・・帰ってきたアスランにキラは急いで話しかける。
「ばれたか?」
「どうだろう・・。」
そして直ぐに・・・先生に見つかり、怒るのかな・・とカガリと顔を見合わせた。
「ザラ・・っ何かお前の父さんが見えて・・・あの人メッチャ偉いだろ?なんかリムジンだし・・」
「・・・・。」
一瞬・・アスランが険しい顔をしたのを、カガリは見逃さない。-------見逃すはずがない。
アスランの服の裾を・・ぎゅぅっと掴んで見上げると、我に返ったように・・アスランはカガリに微笑んだ。
引きつった笑顔・・・キラもカガリも・・・何となく、良い関係ではないのだろうと察する。
「わかりました、フラガ先生・・・・キラ、カガリ・・悪いが、今日は一緒に帰れそうにない。」
本心を隠すように言われたセリフに・・・カガリが心配になって、翡翠をのぞき込むとアスランは苦笑してカガリの頭を撫でた。
君が心配する事じゃない。
けど・・その、心遣いが嬉しい。
辛い・・けど。
「じゃあな」
君が・・心配してるれるから、大丈夫。
俺のことを・・・・思ってくれてるから。
たとえ今は恋人でなくても・・・・・そう、キラだって、心配してくれている。そういう・・人がいてくれて、本当に良かった。
キラにも微笑んで・・アスランは、正門のリムジンへと・・・足を運ばせていく。
「アスラン・・大丈夫かな・・」
「・・・・・さぁ・・。」
その・・カガリからは考えられないような冷たい言葉に・・・キラは驚いて、カガリを見る。
僕より・・カガリが心配すべき事で、実際心配しているのは・・間違えない。
「・・・怒って・・る?」
それは・・カガリの目を見れば、一目瞭然で・・・・その理由も何となく察しが付いていた。
鞄を投げるような勢いで・・・振り回しだして、キラはどうどうと慰める。
鞄を振り回し終われば・・どんどんとその場で地響きを立てだして、流石に困りカガリを持ち上げる。
「そんなに・・怒らなくても。」
「ッ・・・!!」
涙目で・・・下ろされて、カガリはキラに泣きついていた。
そんな姉を見て・・キラは微笑んでみせる。
「・・・きっと・・言ってくれるよ、リストカットの事も、根性焼きのことも・・・理由も。」
「・・ぅ・・っ・・!!」
やっぱり、自分は・・アスランにとってはその程度の人間なんだと・・・・思い知らされたような気がした。
好きなのか・・同情なのか、カガリ自身よく分からない。
---けど、悔しい。
頼って欲しかった、恋という感情でなくても、友達として・・なんだか、失格と言われているような気がして・・・・
傍にいる、私と・・キラにも、何もアスランは言ってくれない。
何でアスランは・・リスカするほどの、根性焼きを・・作ってしまうほどの、悩みを、言ってくれないのだろう。
これ以上近寄るなと・・言うことなのだろうか?
「・・心配・・・・してる、のに。アスランは・・なにも、言ってくれない・・っ・・私は・・そんなに、頼りないのかッ!!」
ついには道ばたで泣き出して・・バシンと鞄をコンクリートに叩き付ける。
今日・・キスまでしておいて、何なんだあいつは。
-------・・訳が分からない・・。
頭がぐしゃぐしゃになって・・・・そんなカガリを見てキラは頭を撫でてやり二人で家に帰っていた。