第三話:生存の証








ここ・・・一ヶ月ほど、アスランとカガリ・・キラも、三人で遊ぶことが非常に多かった。

---いや、毎日・・・そう、毎日遊んでいたのだ。

夏休みに入って・・・・・・・もう、十日も経つ。


「今日は・・・かき氷でもつくるか!」

そうカガリが提案して、三人でガシャガシャとかき氷を回す。電動でないのが・・また、いいと思った。
カガリはメロン、キラはイチゴ・・アスランはレモンを食べる。
「冷たッ・・!!美味しいなっ」
「うんっ」
「・・頭が少しガンガンするが・・」

かき氷なんて・・何年ぶりだろうと思い、アスランはぱくぱくと食べていた。
甘いのは・・さほど好きではないのだが、けど・・なんだか、懐かしくてついつい食べてしまう。
「そういえば・・・キラ、今日学校の罰掃除じゃ・・・」
思い出したように・・カガリがいい・・・キラはアターと顔に手を当てる。
思い出したくなかったよ・・と溜息をついて学校に行く仕度を始めていた。

「いってきまーす・・・多分、三時間ぐらいだから・・・・アスランいるよね?」
「ああ・・」

そう言って・・出ていくキラをカガリと二人で見送り・・----残った氷にも手を付けてしまう。
暑い日だった・・・だが、冷房はつけていない。カガリが・・かき氷を冷えた部屋で食べるのは風流がないとか言いだしたせいで・・
でも、たしかに・・こう暑いところで食べるかき氷は記憶よりも美味しく感じられていた。

「・・暑い・・。」
「そうだな・・。」

でも、嫌な暑さではない。
そう・・ぼんやりと思っていると・・・・カガリは不意にアスランに手を伸ばして・・・ふっと腕を捕まれる。
「・・・・・?」
「・・どうかしたか?」

きっと・・・うっすらと残る左手首の痕に気が付いたんだろうと思った。
でも・・随分と前、高校に上がるより前だから・・・・・もう白い線が見える程度しかない。

「・・これ・・・・」

明らかに・・驚いていた、その・・琥珀色の目。
大きく開いて・・・次に、労るように優しいものに変わる。


----時々見せる・・こいうカガリの瞳使いが好きだった。

それに・・・あの、化学室の出会いの時・・・・・遅かれ早かれ気が付いてしまうと思って・・・・
いや、気が付いてほしかったのかもしれないが・・・。


「・・・切った・・のか?----アスランが?」

「・・ああ・・・・。」


中学時代は・・・半袖なんて絶対着なかった。---ばれてしまうから。
けど・・・そう、今は・・・夏、半袖で過ごせている。
「・・どんな感じだった?」
「・・・-------そう・・だな。」


怒らなかった。


「・・血が・・溢れてて、少し深く気ったら・・脈と同じ動きで出てきて・・少しどす黒いけど・・・・・・」

そう・・語るアスランを、カガリは淡々とした目で見る。
怒らなかった。



-------怒って・・やろうと、、、おもったけど・・。



「・・そっか・・・」

馬鹿な奴だ。
理由なんて・・・聞いてやらない。

残ったかき氷を・・・・詰めこんで・・カガリはアスランに突き放すような目線を送る。


---見たのは今が初めてだった。


だが・・アスランは今まで・・・・・・その気があったから。

驚いた・・が、それ以上に呆れてしまう。



-------ちょっと前の・・自分だったら怒ってやっていたのに。



「---------・・生きているのか・・死んでいるのか、知りたかっただけなのかもしれないが・・・」

かき氷の器を置きに・・台所に入ったカガリを・・・見ずにアスランは話を続けていて・・・カガリもそれを聞いていた。



生きてるか、死んでるか。



「・・・・・・馬鹿・・だな、お前。」

「知ってる」


小さくカガリが呟いた言葉にアスランも呟くように返し・・・そこで、やっと・・・・・・カガリは、アスランの頭を殴っていた。


「・・・・・っい・・」


後ろからで・・今まで淡々と聞き淡々と・・会話していたカガリからは・・・きっとこの行動は、いくらアスランと言えど・・想像できなかったらしい。
そして・・アスランはゆっくりと・・・・振り返った。


「・・・ごめん」


それが・・聞こえるか聞こえないか・・・・・カガリは自分の部屋へと戻ってしまう。

琥珀色の瞳に・・沢山の涙をためて。

「----------・・俺・・本当に・・馬鹿かも。」
暑い部屋に・・一人で寝転がり、そう呟いていた。

カガリが・・泣いてくれると・・期待していた、怒ってくれるのも・・・・・期待していたのだ。

馬鹿だと思う、そうやって・・君を傷つけて、得られるモノなど無いのに。

---でも・・知って、欲しかった。・・・・・・それは否定しない。

他人には・・とても言える話じゃない、けど・・でも。


カガリなら・・・・・


引かないで、何か・・・・



-------------自分では分からない、答えを教えてくれる気がしたから。







暫くして、アスランはカガリの部屋をノックする。

「・・開けるなよ」
「-----・・分かったよ。」

そうして・・ドア越しに、カガリはアスランに話しかけていた。

「・・・お前・・周りに感謝が足りないんだよ。」

「・・・・?」

「なんで・・周りのこと、考えないんだ?」

「・・俺のこと・・考えてくれる人なんて・・いなかったからな。」

「・・母親も?」

「・・・・母は・・違うが・・・」


そう・・いったん瞬間・・・ドアが開き、カガリの拳が飛んできて・・アスランはそれを掌で止めてしまう。


「・・なんで・・っ・・じゃあ、なんで自分の母親が・・悲しむとか・・考えなかったんだよ・・っ!!!」
「・・・。」


「一歩間違えたら・・死ぬかもしれないんだぞ!!!!」


「・・・。」

身体全体を・・カタカタと振るわせる姿は・・まるで寒い冬のようだと思う。

けど・・今は暑くて、カガリの震えている理由は・・寒さなんかじゃない。


「その時・・なんで、周りが悲しむこと・・・・考えられなかったんだよッ!!!」


そう、考えられなかったのだ。


-------------自分の・・事でいっぱいで・・。



いや、


「馬鹿・・だった、から。」

自分のことしか・・・考えていなかった。
母さんが悲しむとか、そんなこと・・・どうだって良かった。だから・・・

「・・・それで済むと思うなよ!!!」

カガリに、感謝が足りないと・・言われるんだろう。


「うん」


でも・・今は・・



「・・もう・・・・・切りたいと、思わない」

「あたりまえだ。」

ずずずっと・・鼻水をすすり・・カガリは睨むように・・でもその睨みさえ、




「・・カガリが・・泣くからな。」



俺のためだと、思えるのは・・・半分本当で・・半分は自己満足なんだと思う。

それでも・・こうやって、怒って・・泣いてくれる・・・君がいるということは・・・


「・・・・・・。」


ギュッと・・殴ろうとしたカガリの拳を・・包んでいた。

そしてそれを額に運び・・・瞼を下ろす。




「・・ありがとう、カガリ。」




----------なんて、幸せなことなんだろう。


泣きたいような・・気分になって、でも・・・・情けなくて・・・・カガリを見れば、カガリは・・そのアスランの様子に、やっと笑顔になっていた。

「・・なら、私に免じて二度と切るなよ。」
「ああ・・約束するよ」

なんだか・・日本語の使い方が、少し違う気もするが・・・、この際どうだっていい。



心の傷は・・身体の傷のようにすぐなくなってはくれないけど・・でも、



---カガリが・・キラが、いれば・・・。






いつか完治する気がした。




































































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あとがき
リスカねた。社会問題ですよこれはっ!!(汗汗)
2006/06/26