第二十話:安定剤



あれから・・アスランは毎時間かがりの元へ出向いていた。

「カガリっ」

「アスラン!」

毎時間逢っているというのに・・顔を見合わせれば直ぐに二人の間にはハートが飛ぶ。
ディアッカも・・ミリィもイザークですらそのラブラブッぷりには呆れたようだ。
だが-----お互いそんな気は毛頭なく、でも逢えて嬉しいとお互いに抱擁しあう。
ここまでカガリ馬鹿ならば、きっと女子は誰も寄ってこないとイザークは思うのだが・・それでも時々カガリは被害に遭っていた。

「カガリ・・本当に犯人突き止めなくて・・」

「いいんだ、-----・・私は・・」

アスランが、いてくれれば・・・・。
そう頬を染め小さい声で呟いたカガリに・・アスランは胸がキュンとなる。
白黒ハッキリ付けたがる性格なのに・・でも相手の立場もあるだろうと言えるカガリは本当にすごいとアスランは思っていた。

「・・カガリ。」
「ん?」

俺のこと・・・
そう口を開きかけて噤むのはやはり自信がないからだろうか?
いや・・自信はある、自分で言うのも呆れた話なのだが・・結構・・・・・・ある。

悩んだ風なアスランにカガリは笑って手を差し伸べて「どうした?」と頭をクシャッと触り、アスランは笑い返しその手を取っていた。
クラスの・・・端の場所とは言え、アスランはその手に唇を落とす。
途端にカガリは真っ赤になり、アスランも少し頬を染めていた。








「よかったね、カガリ・・・やっと付き合いだしたの?」

家で・・そうキラに言われ、カガリは頭に?を浮かべていた。
やっと・・・・?
「結構前から付き合ってたぞ?」
「・・え?」
曖昧な時間をカウントしなくても・・もう三ヶ月四ヶ月経ってるわけだし・・・---。
カガリは頭をひねって考えているとキラはクスクスと笑って部屋を出ていった。







つい先日・・・。

「あ?アスラン・・どうしたのさ?」
珍しく・・もないアスランからの電話にキラが出る。どうせ毎度カガリの話だから・・・・。
不器用な親友の悩みを聞くのは楽しく、また二人を心底応援してあげようと思える。

『・・この頃・・その、カガリとは・・・いい・・雰囲気なんだが・・・もう、告白して平気だとおもうか?』

しどろもどろしながら言われたセリフに・・キラは驚きを隠せなかった。
だって、てっきりずっとずっと前から付き合っているんだと・・、、、だから気を使って・・まぁラクスと帰りたかったのもあったけどさ・・。
ともかく気を遣っていたのにっ!

「大丈夫・・じゃない?っていうか・・・・・てっきりもう付き合っちゃってるのかと思ってた。」

『そんなはず無いだろ・・・、第一カガリから好きとか聞いたことないし・・』

「そっか・・・じゃあ、僕の勘違いか。」

『だが・・近いうちに、また告白するよ。---------頑張って・・みる。』

「うん、ファイトっ」

『ん・・ありがとう、キラ。』

結局僕には何を聞きたかったんだろうと少し思ったが・・つまりは決意表明をしに来た訳か、とキラは苦笑していた。
ちゃんと兄の確認も取る・・・アスランらしい。
律儀な親友にエールを送り、奥手の姉を見守る。このポジションが何となく型にはまっているとキラは感じていた。









今日はアスランとの放課後デートだ・・。
そう考えるとカガリの心はまさにウキウキで、ちょっとアホらしく思えたがあえて伏せておく。
良いじゃないかっ!嬉しいんだから・・・・。
下駄箱に目にも止まらぬ早さで駆けているとと階段で人とぶつかってしまった。

「貴様っ・・・前を・・」

「イザーク!悪い今急いで・・」

「馬鹿者っ!!!人の話は最後まで・・っ」

「分かった分かった!!」

「何が分かったんだっ・・・おい待て・・貴様っ・・!!」

「これからアスランとのデートなんだよっ・・見逃せ!!!!」

そう言ってイザークの手を軽やかに走り抜けたカガリにイザークは苦笑する。
あのお転婆娘にも遂に男が出来たのか。そう思うと自分もおちおちしていられないな。
楽しそうに走り去った幼なじみに、イザークは応援の意味で笑いかけ・・でも結構痛かったと思い少し怒っていた。
でもまぁ・・あいつが笑顔ならそれでいい。
そう思い直し、イザークは階段を上り出す。









「で?アスラン・・折り入った話ってなんだ?」

人気のないファーストフード店・・・アスランは遂に意を決していおうと思う。
"カガリと付き合いたい。"、"本当に恋人になってくれ。"
どう言葉を選んでもクサくなる・・何か良い言葉はないか・・・。そう考え続けた今日一日。
結局・・答えはない。
目の前のカガリはフルーツケーキを頼み、アスランは適当に指したのが・・まるで夕食で、カガリはビックリしていた。

「お前・・今日これが夕飯か?」

「・・・・・・・。」

馬鹿だ・・・、そう自覚しながらアスランはカガリの琥珀色の目をのぞき込む。
「あの・・さ。」
「うん?」
「・・・。」

言葉を詰まらせたアスランに、カガリはただ笑って不思議そうにのぞき込んで・・その上目使いの瞳にクラリとくるのがわかる。
途端に、心拍数が上がって・・・真っ赤になってしまい、言葉を紡ぐのが本当に難しく感じていた。


「・・えっと・・カガリ?」

「何だよ?」

「その・・・・・あの、えっと・・」

「聞いたぞ?それ?」


「・・・・-----っ」

俺と・・



「付き合わないか?」



やっと・・出た声は予想より大きくて、少なからずいたその客達の目を引き---------------アスランはもうダメだと顔を手に当てる。
こんな大声で・・・。
そう思っているとカガリはキョトンとして

「・・何処に?」

「・・-----っ・・カガリ・・・」

ご愁傷様・・と同情するように視線で語る客をよそ目に、アスランは思いっきり凹みカガリを見る。
カガリは訳が分からないという顔をしていて・・アスランはもう一度カガリに言う。


「・・そうじゃ・・なくて、俺の-----------恋人に・・」


なってくれないか?



「・・はぁ?なんだそれ?」

「・・・・やっぱり・・」



駄目・・か。


そう思って・・・何だか泣きそうになって・・・カガリを見るとカガリは以前にこにこ顔でアスランに言う。


「だって・・私とアスラン、もう随分と付き合ってるじゃないか?恋人だろ・・・・?あれ・・私がそう勘違いしてたのか・・・?」

え・・・・



複雑そうな顔になったカガリに、アスランは信じられないと目を開く。


随分と・・前、から?

「いや・・その--------ハッキリと・・そうした事・・言ってなかっただろ・・だから・・。」

何とか・・声を絞り出して、アスランはカガリを見る。
本当は心臓が張り裂けそうに早い、汗も・・顔こそかかないが背中はもう酷い有様だろう。
「・・そう・・だったか?」
じゃあ・・・・そう言ってカガリは息を吸い込み・・・


「私は、アスラン・ザラが大好きだっ!ずっと傍にいたい!」


言って・・・はにかんで、そして真っ赤になる。


その・・言葉と態度に、アスランは胸が熱くなるのを感じていた。

ずっと・・ずっと、欲しかった言葉。


----------君に・・言ってほしかった、思って欲しかった言葉。



涙目になって・・・どうしようもなくて、アスランはカガリの隣りに座り直し・・細い肩におでこを付ける。
甘えるように腰に手を回して、頭を動かしスリスリとカガリに引っ付いていた。
カガリは爽やかに微笑んでから・・その甘えてきた濃紺の髪を優しく梳く。
泣いていると・・気が付いていた。

「アスラン。」

「ん・・」

まだこうしていたいとどことなく伝える身体を優しく撫でてカガリはアスランの耳元で囁きかける。
「好き。----だから泣くなよ。」
此処だと存分には泣けないだろ?と笑い・・・注文して出てきた料理をよそ目に二人はその場から去る。
そして・・公園でアスランは思いっきりカガリを抱きしめていた。


「・・・嬉しい・・・・カガリ・・。本当?」

「嘘言うか?」


「・・・・カガリ・・っ」


肩に顔を埋める姿は何とも言えずみっともない。頑張って涙を拭いて・・アスランはカガリに顔を合わせる。
カガリも・・・笑いアスランの翡翠をのぞき込んだ。

「---------愛してる。」

「私も・・。」

ずっと・・


「傍にいて・・くれるか?」

「アスランこそ・・・いいのか?」


まるで・・結婚式の誓いの言葉、そうカガリが感じて・・少し頬が染まる。
アスランはそんなところまで考える余裕はなく・・・・・・・・・カガリの唇を塞ぐ。

そして----始めて歯を割って入った。

「ん・・ぅ・・ふ・・」

まるで新しい音楽のように漏れる声、始めて感じる口内、そして絡め合う感触。
ずっとこうしていたくて・・アスランは溢れる唾液にも気にせずカガリのものを飲み、カガリにも自分のものを与える。
カガリの喉がコクンとそれを呑み込む音を聞いて・・満足して、角度を変えてまたそのキスをより深いものにして・・。
キスが終わる頃には、カガリはすっかり疲れて・・でも目はとろんととろけて、口元からは溢れた唾液がついている。
その目・・口が・・またアスランを誘って、もう一度深く長いキスが始まった。
離せば銀色の糸が二人を繋ぎプチンと切れて・・・カガリの顎にまた新しい唾液の線が出きる。
それを舌でふき取り・・・アスランはカガリをのぞき込んだ。


「・・いい?--------俺、カガリと別れるなんて事・・本当に出来ない・・・。」

「・・いいに決まってるだろ?--------聞くなよな・・恥ずかしい・・。」



少し伏せた頭にキスをして、こうして過ごせるんだと思うと・・やっぱり嬉しくて、アスランはカガリの耳元でもう一度囁く。








「愛してるよ。」








ずっと-----一緒にいよう。































































+++++
あとがき
幸せほのぼのラブラブで!!!!
2006/07/15