風邪を引いた。
--------------好都合だったのかもしれない。
この三日間、カガリは感じられるだけ全ての自己嫌悪を負っていた。
守るという言葉を盾に、アスランを傷つけ・・そして・・・。
エゴイスト?
違う。
私は・・純粋に、アスランに傷ついて欲しくなかった。
--------出口の見えないトンネルでさまよっているような気分になる。
もう・・終わりだ、こんなの。
明日には熱も・・喉の腫れも全て完璧に治まってしまう。
この・・答えのない問題も、現実を見れば自ずとなにか解るだろう。
「・・キラ、カガリは?」
「うーん・・まだ、でも・・明日には出てこられるよ。」
「・・ありがとう。」
昨日もそう言った。そして今日もカガリは来ない。
-------俺に会いたくない?
「そうそう、昨日・・イザークとミリィとディアッカがお見舞いに来たよ。アスランも来ればいいのに・・。」
「・・・・・・・・・・・俺は・・」
いい。
「・・何それ、カガリの顔が見たくないって言うの?」
「・・そんなハズないだろう・・。」
見ていたいさ、でも・・どんな顔で逢えばいいのか解らない。
俺が・・
「・・実は僕、イザーク達から話聞いたんだよね。」
「?」
「--------来なよ、今日。」
大丈夫だから。
そうキラに肩を叩かれ、アスランは頭に?を飛ばした。
ともかく・・逢ったら謝ろう、話はそれからだ。
キラは大丈夫だと言っていたが・・もしかしたら、カガリは俺の顔を見たくないほど嫌っているかもしれない。
暗い方向に物事を考えて・・埒があかないことにようやく気が付いたときには、もうキラとカガリの家の中だった。
俺が怖じ気づく暇も与えず、キラは俺の手を引きカガリの部屋をノックする。
「カガリっ・・お見舞い!アスランだよ!」
「キラ・・っ・・」
止めてくれと心から思った。
心の準備というものがあるし・・それよりなにより、カガリが・・
キィッと開いたドアの中にパジャマで居る人物と目が合い・・・・・お互い固まってしまう。
「じゃ、僕はコレで。」
「ま・・」
待ってくれと・・言いかけたが、口を閉じる。
そして改めて琥珀色の目と向き合っていた。
動揺した翡翠の瞳に・・カガリは心を痛ませる。
そんな顔・・してほしくない、---------------・・ごめんな。
私は守るとばかり心にして、行動でお前を傷つけて・・・・・こんなんじゃ、何の意味もない。
ギィッと音を立ててベットから降りてアスランの前に立ち・・服の裾を掴んでいた。
なんて・・言葉をかければ良いんだろう。
---ごめんなさい?
違う・・・。
「・・・・ゴメン。」
「・・え?」
見上げると・・泣きそうになったアスランの顔があって・・そのまま抱きしめられた。
ごめん、ごめんと耳元で言われて・・・そして最後に一言呟かれる。
「離れていかないで・・。」
行くはずないのに・・・。
そしてカガリもアスランに優しく抱きついて・・・・事を説明しようと思う。
「・・ごめん・・・・私は馬鹿だ。」
そう一言行ってから・・カガリは、封筒と取り出しアスランに見せる。
「?」
「開けて見ろ。」
ぱさっと・・落ちた紙を拾い上げて、アスランは信じられないものを見る思いになっていた。
女の子の字で・・「二股女」と書かれた紙、そして写真。
そう唖然としている間にカガリは押入から色々なものが出す。
破られた教科書、裂かれた上履き。
「・・これ・・は?」
「・・・・・・・・・女の子からの嫌がらせ。」
「・・何で俺に・・っ!!」
相談しなかった?
「・・それに・・下着も盗まれた。--------女の子が下着なんて盗むか?」
哀しそうに微笑んだカガリに・・つい最近学校を追い出された教師の顔が浮かぶ。
共犯・・ならば・・・・・・・その女子達は何故?カガリは性格もいい・・誰からも・・疎まれたり・・。
「・・その女達は何だって・・・・・・君に・・こんな・・。」
「それは・・・」
アスランが、もてるからだ。
「は?」
「私は・・アスランが好きな子から疎まれて・・虐められた。」
「そんな・・-------・・あるはずないだろ?大体・・俺のことを好きな女の子なんてそう・・」
「沢山居るんだよ!!お前が気付いてないだけで・・・」
だから・・
---------私は。
「・・じゃ・・あ、俺の------------せいで・・君が虐められたのか?」
未だ信じられないと言った口調のアスランに、カガリは頷いた。
「・・だから・・お前には言わなかった、ミリィに相談して・・そしたらディアッカとイザークに・・」
俺のせいじゃないか。
---------苦しんでる・・カガリに、
"・・カガリは・・そういう女だったのか。"
・・・--------最悪だ、
最低だ。
「私は・・・お前を、傷つけたくなかったんだ。けど・・結果として・・傷つけた。----ごめんな、アスランは何も悪くないのに・・」
悪くないわけないじゃないか。
気が付かなかった。
あんなに守ると誓ったのに・・・俺は・・・・
"--------アスランは、思ってくれると・・解ってくれると思ってた!!!!!!!!"
俺を・・想っている君を泣かせて・・・・・・・・・・
君に・・今、謝らせて。
「・・俺が悪い・・-------・・ごめんカガリ・・・・・何も・・気が付かなくて・・」
そんなことしか言えない。
「違う・・私が気付いて欲しくなくて・・隠していたんだ、気が付かなくて・・当然だ。」
---------------違うだろ?
俺が・・・あまりにも頼りないから、だから・・言えなかったんだろ?
-------頼れなかったんだ。
俺が不甲斐ないから、こんなにも・・崩れやすいから。
「ごめん・・カガリ。」
後ろ向きでゴメン。
だけど・・これからは・・・。
「・・・言って、・・・守るから。」
前向きに頑張るから、もう・・・・馬鹿みたいに背負ったりしないから・・・。
俺で・・よければ、本当に・・一生守り抜く。
全力で・・・・・
ギュッとカガリを抱きしめて、カガリの背中を優しくさするのに・・震えているのはアスランで、
自分がどれだけカガリに心配されていたんだと想うと・・本当に、なさけない。
「・・愛してる。だから-----守るから・・傍に・・」
誰よりも、イザークよりも・・兄のキラよりももっとずっと・・
「ずっと・・・一緒にいよう・・。」
そう言い終わって・・自然と涙は止まる。---------君が好きだ。だから・・。
前向きになる。
もう・・後ろ向きにばかり考えていた頃とは違うんだから。
「・・うん・・。」
はにかんだ・・カガリに、アスランは微笑んで・・・ちゅっと触れるだけのキスをした。
そしてそのまま優しくベットに寝かされて・・アスランは髪を撫でてくれる。
--------なんだか・・少し、格好良くなった気がした。
そう思いアスランを見上げると、何も解らないようにアスランは頭の上に?を飛ばす。
でもそれから悠然と微笑んだアスランに・・カガリの心臓が激しく鳴った。
「?----どうかしたのか?・・熱あるんじゃないか・・顔が赤い。」
「ちが・・違うっ!!」
「・・風邪ってお多福か?」
「そうじゃなくて・・っ」
「じゃあ何だ?」
うぅ・・となったが・・むしろ素直に言ってやろうと、カガリは声に出して言ってしまう。
「・・アスランの・・笑顔が良かったんだよ!!!!」
「それと・・カガリが赤くなることに・・なに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
途中まで言って・・アスランは口をパクパク動かし、カガリも真っ赤になって布団に潜った。
そしてその状態が暫く続いてから・・アスランはカガリが思っても見ないことを口にする。
「・・・ありがとう・・でも、俺はカガリと居るとき・・ほとんどそうだよ?」
「っ・・な、何言って・・」
「・・本当に・・カガリが笑ってくれるときいつもドキドキする。」
「嘘だっ・・」
「・・嘘の訳ないだろう・・」
呆れたように言ったアスランの顔を伺うカガリに・・アスランは苦笑し、カガリの赤い頬へと唇を添えた。