あれから・・カガリへの嫌がらせは目に見えて減ってきていた。
これは・・イザーク達の御陰だろうか?
どうやらカガリの知らない間に・・役割分担をしていたようで、イザークはカガリを、ディアッカとミリィは・・カガリのロッカーを見張っていたらしい。
その御陰か・・もうイタズラ書きは無くなったし・・時々靴を隠される程度になっていた。
「帰ろう、カガリ。」
「ああっ!キラ!!」
そう・・帰る双子にアスランは少し淋しく思いながら・・・サッカー部へと足を急がせる。
ついてない・・だが、この間の試合で・・・重要メンバーが三人も負傷し、キャプテンであるハイネに頼み込まれては・・。
仕方ない・・カガリなら絶対にやれといわれそうだし、俺自身困っている人の助けにはなりたいわけで・・。
つまりこれでいいのだが・・・・。
--------カガリと・・会話する回数が異様に減っている。
一緒に帰らない・・つまりは、一緒に遊んだりもしない。
つい最近まで・・・当たり前のように話していたのが嘘のようだと思う。
でも・・クラスにいるときは決まってアスランとカガリは一緒だ。
なのに・・こんなにも淋しい気分になる。
カガリも一緒だと良い・・そう・・考えて、アスランはサッカーの練習に打ち込んでいた。
「そう言えば・・ラクスが帰ってくるのもうじきだよな?」
「そうなんだよ!もう・・僕楽しみでっ・・!次の日曜だよっ」
「そうか・・っ!!って・・えー・・アスランの試合と・・被ってるじゃないか!!」
ショックだと・・声を上げたカガリにキラは微笑んで
「カガリは・・アスランの応援行ってあげなよ。---きっと凄く喜ぶ。」
「うーん・・そうだな・・。」
アスランの試合、つまり・・アスランファンの女の子も、大量に集まるわけで・・・
-------恐いな。
キラと一緒に行こうと思ってたのに・・。
そう思って・・・電話を掛けたのはイザークとミリィと・・ディアッカだった。
試合前日カガリはアスランに何か頑張れ的なことを言ってやりたくて・・・始めて電話を掛ける。
「・・カガリ?・・どうしたんだ?」
電話に・・・カガリの文字を見たとき、アスランを襲ったのは喜びではなかった。
------恐怖・・だった。
カガリが・・・・居なくなってしまうのではないだろうか。
そう漠然と思ったのはイザークのことや・・このごろ練習でカガリと一緒にいられなかったからで・・・。
でも・・カガリの電話を切れるはずがなく・・出てしまった。
「明日・・試合頑張れよって!---応援しに行くからな!!!」
その・・内容に胸をなで下ろし・・次は逆に笑顔になる。
「ありがとう、頑張るよ。」
心が・・温かくなる、カガリと話していると・・・。
電話に出て良かったと心から思い、アスランとカガリは電話を切った。
ぱんっと頬を叩いて、明日は絶対に頑張ってやる・・そう心に強く思い、その為に寝ることにした。
あるいみ馬鹿だと言うことに・・最近自覚する。
こんなにも・・俺の頭はカガリだらけだ。
それはとても嬉しいことだった。
「おっす」
「おはよ〜」
「遅刻だ。」
「一分だろ!!大目に見ろ!!」
学校の前で・・そう言い、四人は今日行われるアスランの試合を見に行く。
ディアッカは友達の雄志を見届けるため、といってもどうやらミリィを誘うためで・・ミリィもカガリが居るならと着いてきたらしい。
イザークは・・当然カガリの守り役だった。
ディアッカではミリィに目が行ってカガリのことを忘れそうだし・・ミリィは女だからいざというとき困るだろうと言うのが彼の会見で。。
でも御陰でこうやってアスランの試合を見に来られるのは嬉しいし・・それに四人で騒ぐのも楽しい。
最前列の応援席に座ると・・女子からは黄色い声援が上がり、イザークは五月蝿いと言わんばかりに耳を閉じる。
カガリも・・「アスラーンっ!!」とウォーミングアップ中のアスランに声を掛けた。
その瞬間、アスランがこちらをふり返りカガリにかく手を振り・・カガリも笑顔になる。
だが・・練習に戻った瞬間の、アスランの顔は険しかった。
-------イザーク。
キラが・・来られないのは知っていた。ラクスの迎えに行くと言っていたから・・だが・・。
ミリィと二人で来ればいいじゃないか。
なんでイザークと来るんだ?・・あいつは・・
---------俺に何の関わりもないじゃないか。
他のサッカー部員に知り合いが居るのだろう、きっとあいつはサッカーが好きなんだろう。
そう考えてみたものの・・気は重くなる一方で、次の瞬間・・・・・・応援席を睨んでいた。
・・いなかった。
「・・カガリ?」
ディアッカとミリィはいるのに・・・・カガリと、イザークは居なかった。
「なぁ・・イザーク、わざわざトイレまで・・・」
「貴様・・バケツに水と薄力粉ぐらいは考えておいた方が身のためだぞ?」
「・・考えたが・・・・お前等の御陰で大丈夫だと思うんだが・・」
「・・油断は禁物だ。」
「だがお前にトイレまで付き合われるのは・・申し訳ないし恥ずかしい。」
「・・恥ずかしいなどと言えるほどお前は女だったか?」
「私は生物学上れっきとした女だっ!!」
心配性のイザークらしい、だが・・トイレは流石に良いとカガリはその心配を突き返し、トイレより少し遠い自販機の前でイザークを待たせる。
イザークも・・仕方がないと、その場で立ち止まって・・飲み物を買ってカガリを待ってくれて居ていた。
「全く・・トイレは大げさだろ?」
そう小さく溜息をついて・・カガリはトイレの中に入りバケツの水が本当に掛かってきたらどうしようと思う。
心配そうに・・・見上げて溜息をついて、洋式トイレの水を流しているとクスクスと笑う声がトイレに響いた。
「・・・・・?」
恐くなって・・でも此処で扉を開けなければ負けだと思い、一気にドアを引く。
一歩踏み出すと・・何か盛り上がりに足を乗せていて・・その茶封筒を拾う。
「・・・・・・・なんだ・・これ。」
すぐに開けて・・・中身を見ていた。
入っていたのは・・・アスランと抱き合っている写真、それに・・・・イザークとカガリが少し喧嘩腰で・・とっくみあいをしている写真。
あと・・"死ね二股女"の紙、あとはわら人形だった。
随分と・・古風なことをと思いながら・・トイレを出てそれをイザークに見せる。
「・・少し・・一緒に居すぎたようだな。」
「ああ、--まぁ実際私は二股なんて有り得ないんだけどな。」
そう言って・・当然だと笑い、二人は観客席に戻る。
アスランはその様子も見届け・・深い溜息をついていた。
・・・アスランが可憐なシュートを決め時間的にも、もう勝ちがほぼ確実になったところで・・カガリは立ち上がった。
「見たかっ!!今、アスランだった!!」
「見た見た。」
感動の余り呆然としたカガリに・・イザークは良かったなと鼻を鳴らし、ミリィは良かったわね!と声を上げる。
これはもう一刻も早くアスランの所へ行かなければと・・カガリは走り出していた。
イザークは俺が行っては奴は顔をしかめるだけだろうと・・そう言って、カガリはうきうき気分で一人で出向く。
アスランが使っている・・準備室、思いっきり脅かしてやろう。
ビックリして、その後少し頬を染めて笑うアスランを想像するだけで嬉しくて・・カガリは足を急がせていた。
だが・・次の瞬間、誰かに腕を取られて・・・カガリは驚いてそちらを見上げる。
「・・っ・・・おま・・」
「やぁ・・ひさしぶり」
顔が・・蒼白になるのが分かった。
「・・・イザーク。」
「まったく・・」
カガリが居なくなって・・すぐ、イザークは貧乏揺すりを始め後の二人は困ったように笑う。
そう、イザークは誰よりも・・カガリが泣くことを嫌うのだ。
小さい頃から・・傍で見ていたからだろうか?
「・・心配だ、見てくる。」
これはもう父親の域だと二人で笑うと・・イザークは「五月蝿いっ」と切り返してきた。
「このごろずぅっとアスランか・・キラか、イザークが居るから・・君に話しかけられなかったんだよ?僕」
「・・な・・お前、学校止めたんじゃ・・」
「今日は試合、この学校はオープンだ。僕が居ても何も問題はないよ?」
腕を掴んだまま・・・・寄ってくる相手、紛れもなく・・ユウナ・ロマ・セイラン。
この間のことを・・一気に思い出して、カガリは泣きそうになってユウナを睨む。だが・・カガリの涙目を相手は単純に楽しんでいた。
「アスランの・・こと、迎えに行くつもりなんでしょ?--・・いいなぁ・・彼、僕のカガリにこんなに思われてて・・・」
「お前のものじゃないっ・・!!」
そう言うと口を塞がれて、強引に空いている部屋へと投げ出されてしまった。
ガチャン。
そう・・音を立てたドア、そして暗いこの部屋。
「・・誰かっ・・!!!」
試合終了まで・・あと、五分だった。