不機嫌になったのではない。
--------恐くなったのだ。
「コイツはイザーク、中学から・・っていっても合気道も一緒だったから小学校低学年からの友達だっ」
そう・・・楽しそうに話され、相手もアスランを・・アスランも相手を見ていた。
イザーク・・そういえば、成績表で大体アスランの真下に存在する奴・・。
まず、思ったのは・・なんでコイツがカガリと共に保健室に入ってくるんだ?という事だった。
でも-------そんなこと、カガリに言えるはずがない。
そして今はもう大親友となったキラに・・相談していた。
-------放課後、珍しく・・カガリとは帰らず。
「イザーク?あははっ、ないない。あの二人はまず有り得ないよ。」
「そうなのか・・・?」
でも・・とても親しそうに見えたと、アスランが言うと、キラは「だって親しいもの」と笑う。
「けどね、イザークはカガリを恋愛で好きにはならないよ。」
「・・言い切れるのか?」
「うーん・・98%くらいは。」
「・・そうか・・。」
なら・・良かったと、そういおうと思うと・・キラは理由まで説明し出す。
「だってね、あの二人・・・元カレカノだから。」
「!?」
え・・・・と、心の中で・・何かが言う。始めて・・の、相手だと思っていた。
カガリは・・どう見たって色粉沙汰は苦手そうだったし・・俺も苦手で・・・てっきり・・・。
一気に暗くなったアスランを見て、キラは苦笑しさらに詳細を教えてくれる。
「でも三日だけ。なんか二人とも友達の方が付き合いやすい〜って、それが別れた原因だって。」
あの二人らしいよと、笑い飛ばした辺りを見ると・・本当に心配なんていらないんだと思わせて・・・アスランは少し安心した。
だが・・それなら、逆に軽く・・なんで一緒にいたんだと、聞ける。
ただ少し興味を持った程度に聞けるではないか。
そう考えたところで、アスランは自己嫌悪に襲われていた。
キラは・・何もないだろうって言ってくれているのに、なんで俺はカガリとあのイザークを心配しているのだろう。
いいではないか、二人が何も起こさないので在れば・・・別に、突っかかるところでもない。
---なのに、俺は今・・・聞く気でいた。
それが酷く情けない、また・・器の小さい奴だと思われて・・カガリの恋愛の対象から外されてしまう。
そう・・自分を奮い立たせ・・この件は保留だと決め込んだ。
「ありがとうな、イザーク。」
「---人道だこんなもの。」
放課後・・珍しくアスランが、一緒に帰らないでくれてある意味助かったとカガリは思った。
あれから・・・その政経の教師、ユウナ・ロマ・セイランのパソコンをイザークは分解してくれていたのだ。
----そして・・数ある写真を見つけ、それを証拠に理事長にみせてくれて・・・
ユウナは早々に学校を追い出されることになっている。
「いや・・でも、イザークの御陰だ。ありがとう。」
「まだ・・解決したわけではないぞ?・・女子だっているかもしれない・・それに、更衣室は女子しか入れないのだからな。」
「あ・・」
忘れていたと、顔をしかめたカガリに・・馬鹿者とイザークは溜息をついて・・そして当然のようにカガリをうちまで送っていた。
夕焼けに・・二人の姿が映るのはものすごく久しい。
そうお互いに思って・・どうってことない話をして笑いあった。
朝、一人で学校に行くのは・・・寄り道をするからで、その寄り道は日毎に変わる。
紫陽花の綺麗な道、桜の綺麗な道、犬が居る道・・電柱が沢山ある道。
学校に行くのに・・回り道をしたり近道をしたりして・・・・結構楽しかったりする。
だから・・私は一人で学校に行っていた。
前・・・アスランが、一緒に行こうと言ってくれたのだが・・それもやんわりと断って・・だって毎日適当な時間に起きて
・・その時間に合った道を進むから・・付き合わせるのは無理だと、正直に言っていた。
アスランもそれは仕方ないと言っていたし・・問題ないだろうと、カガリは道を進む。
今日は・・時間があるから、少し離れた道に行こうか。
モミジの綺麗な道がたしかあったよな・・・。
そう一年前の記憶を頼りに、カガリは進んでいた。
「・・---。」
校門の前で・・忙しなく動く生徒を目の前にして・・ただ一人止まって塀に寄りかかっている人物をアスランは見つける。
イザーク・ジュール・・・・カガリの元彼氏で・・・スポーツも勉強も出来る男。
そう・・目線があって、会釈した方が良いだろうかとか考えていると・・後ろから急に押され、ビックリしてみる。
「よ!アスラン・・・あ、イザークじゃんっ!!」
何つっ立ってんだ?とディアッカは・・ミリィの手を引いてイザーク質問をし・・何となくアスランもその場に居た。
「話す義理はない。」
無愛想な奴・・・・そう、思ってみていると、さらに後ろからカガリがやってくる。
その光景を見て・・何かやっているのかと楽しそうに訪ねてきた。
「いや、イザークが止まってるから・・どうしたんだって、」
「----もういい、行く。」
「おい、まじで何やってたんだよ?」
そうして・・去っていく三人を見つめ、アスランはカガリの手を取っていた。
「行こうか。」
まだ・・男のこととか心配だし・・・守るから。
そう思って見つめていると・・その視線に気が付いたのか、カガリは「大丈夫だ」と満面の笑みで言ってくれる。
けど・・アスランは無理はするなと言ってやりたくて・・カガリの手をギュッと握る。
小さい手だと思う、守ってやりたい。壊れてしまわないよう・・・・。
-----強い君だからこそ、
世界史の授業は・・選択の授業で、アスランは一緒ではない。-------他のクラスの女子も・・沢山いる。
漠然と・・恐いと思って、教室を見渡すと・・イザークの姿を見つけた。
イザークは勉強して無くて・・視線を少し右往左往している。
どうしたんだろう・・そう思って、カガリはイザークの元へ歩いていた。
「何やってるんだよキョロキョロして・・」
「気のせいだ。」
「気のせいじゃないっ・・あ!分かった、好きな子でも探してたんだろ?」
笑い飛ばしたカガリに・・イザークはむすっとして小声で言う。
「・・・・・・・・ここには・・アスラン・ザラがいないからな。」
あ・・。
そうかと、カガリはイザークを見て微笑んでしまう。まったく不器用なところは変わらないなと思い・・笑いかけるとイザークは忠告するように言葉を繋いだ。
「いいか、必要以上に俺と居るな・・・女子が誤解して何が起こるか分からない。・・恋人まで巻き込まれたらそれこそ修羅場だからな」
「?」
よく分からないが・・分かったとカガリは自分の席に戻り・・・知り合いの女子達と他愛のない話をする。
そしてその女子達が離れて・・チャイムが鳴り、今さっき机にしまった世界史の教科書を出したときだった。
「・・っ・・うわ・・・。」
大きな文字で・・表紙に、"二股女"と書かれ・・さっきのイザークの言葉を、やっと理解する。
---アスランと・・イザークにと言うことなんだろう?勝手に言ってろよ!!!!
そう思って・・・涙目を堪えていると、異変に気が付いたイザークは心配そうにこちらを見ていて・・カガリはその教科書を諸に出してイザークに見えるようにする。
イザークは・・チッと舌打ちして、怒ったように前を向いていた。
・・・目を離したのは・・ほんの一瞬、カガリが俺の所に来たときだけだったというのに・・・。
なのに、駄目だった。
こうなったら・・と、イザークは半ば決め・・・それ以来、アスランのいない選択科目の時、イザークは常にカガリの机へと脚を運ぶ。
これ以上のことをさせはしない。
当然・・その机にはカガリが居るわけで・・会話も、増えていた。
休み時間・・カガリに逢いたくて・・・カガリのクラスに出向くと、そこにはイザークと楽しげに話すカガリの姿があった。
「あ、アスランっ!!」
笑って・・手を振ったカガリの隣の人物は、アスランを見るなり自分の席に戻ってしまう。
「・・・?どうした?」
「いや・・・今週から・・サッカー部の助っ人に呼ばれて・・昼練と放課後練が一週間だけあるから・・一緒にいられないって言うの忘れてたんだ。」
そう・・用件を言って・・あいつは、と訪ねたくなる心を必死で押さえつける。
カガリは・・そのアスランの言葉に哀しそうにしていて・・・頬に手をあてて・・ごめんと謝った。
「ううん・・でも、アスラン試合でるって・・なんか女の子達が言ってたから・・そうなのか・・とは思ってたんだ。」
「・・そうか・・。」
「でも・・っ!!頑張れよ!!試合一週間後だろ?絶対応援に行くからな!!」
「ああ・・練習試合だけど・・カガリが見てくれるなら、・・本気で頑張るよ。」
そう言うと、カガリは満面の笑みで「手加減何てしたらお説教だからな!!」と背中をバンバン叩いてきて・・いつものカガリだと嬉しくなる。
誰にも・・言ってはいないが・・・・・・本当は不安で堪らない。
イザークと・・カガリは、何もないと言うけど・・でも。
--------恐いんだ。
君が・・俺以外の人と、楽しそうに話しているのを見るのは・・本当に恐い。
そう思って・・カガリの腕を引き・・廊下に出た。
「?アスラン」
「・・・。」
まだ・・好きとも言われていない俺が・・こんな気持ちでカガリに迫るのはきっと・・間違っている・・・・。
でも・・気持ちは繋がっていると、心の何処かで確信していて・・口を開けて訪ねてしまった。
「・・イザークとは・・・」
「友達だぞ?」
そこで・・やっとカガリはアスランの顔色を見て、納得する。
そして何だか嬉しくて恥ずかしくて・・・恥ずかしがらず逆に笑い飛ばすような勢いで・・・アスランに抱きついていた。
「・・っ・・カガ・・」
「大丈夫だぞっ・・・・!アスランが心配することは何もないっ」
嬉しそうに言う声に・・アスランも頬を染めて、カガリの髪を撫でる。
嘘じゃない、前みたいに・・今は同情されている節もない。
じゃあ・・・。
「・・・うん。」
カガリのおでこにキスをして、真っ赤になったまま・・お互いのぞき込んで笑う。
そしてそのまま・・カガリに手を振った。
カガリも・・振り替えしてくれた。
けど・・
振り返ったカガリの席に・・いたのは、イザークだった。