知らない女子が・・・自分の方を睨んでいること、本当は・・ずっと前から気が付いていた。
アスランとのこと・・疎まれているんだと漠然と思う。
けど・・・
離れる気なんて、ないんだからな。
-----駄目に・・なって、欲しくないから。
それに・・
傍にいたいから。
「・・・目・・腫れていないか・・?-------泣いたのか?」
そう・・・・教室に帰ってくると、アスランは急いでこちらに来て・・・不思議そうにカガリの顔をのぞき込む。
ミリィは・・苦笑いしてから、カガリを見て、カガリはニッコリと微笑んだ。
「大したことじゃないんだっ・・アスラン!」
「・・・・。」
その・・カガリの笑顔に引っかかっていると、ディアッカにカガリはパシンと叩かれる。
「な・・何するんだディアッカ!!!!!」
怒ったカガリに・・ディアッカは、アスランを引っ張り・・・・・・・・・・・ミリィにウインクをして廊下に出た。
「・・カガリが泣いてた理由・・知りたいだろ?」
「ああ・・。」
助け船だと、アスランは思い・・・・・ディアッカの方に行き、それをカガリは心配そうに見守る。
言って・・しまわないかと。
けどミリィは笑っていた。
---------きっと・・これが最善だから。
「これ、俺の心の友イザークが・・販売してるの見つけて、全部買い占めてくれたんだ。---あ、そいつはカガリの中友」
パッと・・・・出されたものに、アスランは驚いてしまう。
-----水着・・下着、姿。
カガリの・・・・。
ミリアリアと笑い合っているものもあれば・・スクール水着で、膝を抱えているものもある。
-----盗撮?・・・なんで・・っ。
真っ青になり・・それを眺めているアスランに、ディアッカは軽く声を漏らす。
「カガリ・・人気あるだろ?だから・・一部の奴からこういうコトされたみたいで・・本人凄く悩んでて・・・」
近頃・・元気がないのは・・・
パニックに陥りすぎて、脳も回っていなかったのか、正常に働きだしたとき・・・アスランはカガリの元に駆けていた。
それをみて・・ディアッカはニッコリ笑い、教室に戻る。
ガラン!!!!!!!!!!!!
----そう、信じられないほど素早く開いたドアに・・・・思わずクラスにいた誰もがアスランに注目していた。
そして・・後ろから来たディアッカはミリィに軽く親指を立て、ミリィはカガリからそっと離れる。
頭に血の上ったアスランが・・・・・・・・・カガリの元に来て、カガリは内心ビクビクしていた。
-----言って・・しまったのだろうか?ディアッカは・・・
----アスランの、せいで女子から、イジメにあい・・果ては男子にまで盗撮をされて・・誰かに、下着を盗まれて・・・。
急に・・恐くなって、アスランの目を見られないでいると・・・アスランはカガリを抱きしめていた。
「・・なんで・・言ってくれかった?」
泣きそうな声に・・カガリはビクビクして・・でももう逃れられないと、覚悟を決める。
だがまさか・・自分の口から、「アスランのせいで虐められた」なんて言えるはずがない。
守りたかった。
アスランが・・苦しくないように、してやりたかった。
-------------ただ・・・それだけだった。
それを分かって欲しくて、顔を上げると・・・・顔を押さえられ、強引にキスをされる。
人前なのにと・・・・凄く恥ずかしくなって、どうしようもなくて・・・・キスが終わってからパクパクと口を動かす。
「・・君は俺が守る。」
熱のこもった視線に・・・どうしようもなくて、カガリはただ頬を真っ赤に染め上げていた。
でも・・どうやら、アスランのせいまでは聞かされていないようだとカガリは気が付く。
-------知ったら・・凹んで、それどころではないはず。
きっと・・写真のことくらいしか聞いていないんだと感じた。
けど、それでも・・・
「ありがとう・・。」
嬉しい。
私が・・アスランを守りたいように、アスランも守ってくれると言ってくれるのはとても嬉しい。
泣きそうになって・・お礼を言うと、アスランは耳元で「お返し・・だから、カガリは気にしないで良い。」と優しく囁く。
その声に、耳をゆだねて・・・泣き疲れたせいもあり、カガリはユルリと瞼を閉じた。
「カガリ?」
急に重たくなった体を・・アスランは覗き込み、寝てしまったのかと抱き上げる。
気付いてやれなかった。
そう・・悔しく思って・・・絶対にカガリは俺が守ると思う。
こう思ったのは・・すでに数度目で、もう・・カガリに一方的に守られるのはゴメンだった。
助けて貰った分、-------いや、それ以上に・・俺は君に返したい。
そう考えて・・眠ったカガリを抱き上げて、保健室へと運ぶ。
途中・・クラスの暖かい冷やかしと、廊下での黄色い悲鳴を聞いたが・・・もともと他人に感心のないアスランからしてみれば、何て事はなかった。
アスラン・・は、そうだったのだ。
だが、そんなアスランを見て、ただ一人深い溜息をついた男がいる。
「-------・・ゆっくり・・寝ろよ。」
保健室の先生は留守で・・アスランも、授業に参加しなければならないので、そちらに出向く。
それは・・当然カガリが寝ている間に、ちゃんとノートを取ってやりたかったからで・・・力になりたかったからだった。
英数国はもちろん、選択科目では・・政経と化学はダブっている。
カガリは文系、アスランは理系のため・・・どうしても幾つかの科目は違くなってしまうが・・今日この後に授業に、カガリと別の授業はない。
少し・・腫れた目に、ふわりと触って・・・そんなに辛かったのかと、アスランは泣きそうになる。
---俺が・・しっかりしていないから。
だから・・カガリは俺に相談をしてくれなかった。
そう考えたら悔しくて・・でも、もう・・・と言い聞かせる。
そして・・アスランは保健室から出た。
まったく・・・・・そう、溜息をついて、アスランと入れ替わるように・・・・イザークは保健室に入る。
ディアッカが言うに・・・女からのイジメのことは言っていないらしい。それに・・・
かりに、男だけだとしても・・今カガリを一人にするのは、お粗末が過ぎるのではないか?
女子のイジメは陰険で・・・だが、カガリが一人で寝ているとなれば話は別だし・・それに、
男ならば・・・さらに心配すべき事ではないのか?
---アスラン・ザラは知らない。
下着を盗む・・それを・・人連たえでも出来る人間は・・・写真のように、遠くから見ているだけでは飽き足らない。
必ず・・遅かれ早かれ、カガリ自身を狙うだろう。
それを思い・・イザークは黙って寝ているカガリの横のイスに腰を掛ける。おそらく・・休み時間には毎度アスラン・ザラが来るだろう、
だから・・自分は、授業中・・見守ってやっていればよい。ノートはクラスは違うが進度が同じなので・・ディアッカに取らせているし。
そう考えて・・・イザークは参考書を開き、その保健室に居留まる。
一時間弱が過ぎ・・チャイムが鳴ったところで、イザークは保健室から出て・・・入口の見える場所に立っていた。
すぐに・・駆け込んだアスラン・ザラに、笑みをこぼし・・十分後また戻ってこようと思い、その場を離れる。
寝ている・・カガリに、アスランは微笑んで・・・瞼にキスをすると、ピクンと身体が動いた。
起こしてしまったかと・・・・・瞳を開くと、琥珀色が飛び込んできて・・唇を重ねる。
未だに・・・割らない歯、触れない・・・・・・舌。けど・・--------カガリが認めてくれるまでは、と・・踏みとどまった。
「大丈夫・・か?----起こしてしまって済まない。・・政経の授業・・ノート取って置いた、後で写せよ。」
「・・ん・・---・・ありが・・とう・・」
そう言いながら・・目元をこすってボーっとしているカガリに、アスランは悪いことをしたと思い起きあがろうとした身体を押さえた。
寝て良いよ、そう・・笑い・・髪を撫でると、カガリは頬を紅色に染めて・・・アスランもその顔に嬉しくなる。
髪を撫でて・・頬に下り、猫や犬をあやすように首元と撫でるとカガリは目を細めたりギュッとつぶって・・でも嬉しそうにしていて・・
その可愛さに、どうにかなってしまうんじゃないかと感じて・・でも離れたくなかった。
でも・・授業の時間は来てしまう、残念そうに・・・立ち上がるアスランに、カガリは「いかないで」と言いたかった。
-----言えなかった。
襲われるかもしれない、・・・知らない男に、知らない女に・・何をされるか分からないから・・いかないでなんて・・。
言えなくて、でも・・言いたくて、離れて欲しくなくて・・・カガリは瞳を潤ませてしまう。
アスランを・・心配させたくない、巻き込みたくない・・・・アスランのせいでなった・・なんて、気付かれてはならない。
「カガリ・・」
その・・濡れた瞳に、アスランは生唾を飲んでいた。
傍にいて・・と切望するような瞳に、どうしていいのか分からなくなる。
チャイムが・・・・なりそうなのにと、優等生の自分が忠告する中・・・アスランはカガリの頬にキスをして、舌を出し・・耳を舐める。
「っ・・ん」
耳元を銜えて・・カガリの高い声に、心臓をドキドキさせて・・でも、安心して欲しくて・・アスランはひたすら優しくカガリの耳に愛撫を重ねる。
そして・・チャイムの語尾を聞きながら・・濡れた瞳に優しくのぞき込んだ。
「大丈夫・・次の休み時間・・また・・・来る。」
「・・うん・・・・。」
だから安心して・・。
もう一度、軽く唇を重ねてから・・・アスランは教室を出た。
パタン・・と、ドアを閉めて・・・・アスランは自分が真っ赤になるのを感じる。
あんな・・・触れ方・・・・初めてした。
いつもはカガリに受け入れられるか半ば不安なのに・・・今日は違う。
---自分が、カガリの力になっている。カガリも・・傍に、あんなにも居たがっている。
それがこの上なく嬉しくて・・それに・・・・カガリの身体に少しでも長く触れられて・・・・・・心臓が自分のものじゃないみたいだ。
赤くなった顔を冷やしながら・・アスランは教室に戻った。
アスラン・ザラが出ていくのをみて、イザークは少し笑ってしまう。
あの・・完全無欠のアスラン・ザラはどうもカガリにだけは弱いらしい。
それが、意外で・・・でもそれほど大事なのだろうと思うと、やはりカガリを守る任は頑張らなければと思う。
昔・・自分もカガリに淡い恋を抱いていたことはあった。---それは・・カガリもで、一時期付き合っていたのだ。
だが--なんだか、付き合い出したらぎこちなくて・・直ぐに友達に戻る。
----------そう、自分たちは友情だったのだろう。
それを・・中学生だったためか、恋と勘違いした。
そんな昔の記憶を、愚かでも可愛く思いながら・・イザークはカガリの居る保健室に入る。
「っ・・」
誰か・・来た・・・。
カガリの頭に過ぎったのは・・水の入ったバケツと、薄力粉を持った女か、カメラを持った・・・男の姿で、布団に潜り込んでいた。
シャッと・・・カーテンが開き、カガリはビクビクする。
「馬鹿者。」
「?!」
イザークっ!!!!
そう藁をも縋る思いで、ベットから飛び上がると・・・半ば呆れた、でも少し微笑んでいるイザークが立っていた。
「・・誰かと・・思った。」
「だろうな、俺も誰か来ると思って・・此処にいる。」
そうぶっきらぼうに言った、イザークはすぐに参考書を開き・・・倫理の勉強を始めていた。
「あれ・・お前、政経選択だろ?」
「俺は倫理も好きだ、それに・・取っていない科目も・・社会なら全般的に好きだからな。」
ああ・・そういえば、こいつの夢は学校教師だったと・・・カガリは思い、きっと良い先生になるだろうと微笑み・・パタンとベットに倒れる。
「フン。」
すぐさま・・スースーと寝息を立てた、カガリにイザークは笑い・・・剥いだままの布団を掛けてやり、また・・勉強に集中した。
ち・・ち・・と時計の音だけが・・・・保健室を包む中、カツカツと・・・誰かが歩く音がする。
しかも・・それは、丁度保健室の前で止まり・・イザークは立ち上がっていた。
そして・・空いていた隣のベットに頭まで潜り込む。
ガラガラ・・・・----------。
まるで・・音すら立てないように入ってきた相手に、イザークは警戒の色を強め、カーテンが開く音も聞いた。
「可愛いなぁ・・こんな所で寝息立ててるなんて。」
---聞き覚えの・・ある、声、
「・・マイ・・スイートハニーだね、正に。」
どうやら・・・・隣のベットに人が居ることまで頭が回っていないらしい。
-----------------・・・ユウナ・ロマ・セイラン。A組の担任で・・受け持ちの中には・・たしか、カガリのC組も入っていたはず。
政経の教師で・・・なにかと女子には気持ち悪がられている。
そして・・イザークはバッと・・・ベットから起きあがった。
「・・・な・・っ・・」
その教師の手には・・・カメラがあって、貴様が犯人かと・・・・イザークは問いつめようとした瞬間・・・そいつはデジタルカメラをいじりだした。
-----メモリーを消される・・!
焦って・・取り上げたのは後の祭り、どうやらもう削除されたようだった。
「で・・貴様は一体此処で何をしている?」
「それは・・僕も聞きたいところだよ?ジュール君。女の子とふたりっきり保健室なんて・・ちょっと刺激が強いんじゃないの?」
ふざけるなと・・笑い捨てて、イザークはその教師の胸ぐらを掴み上げた。
こう見えて・・イザークは合気道を、カガリと共に十年近くやっていたこともあり言ってしまえば結構強い。
そこら辺のヤンキーなら、一瞬だ。
「死活問題・・だぞ?これは。---------貴様をこの学校から追い出して、無職にしてやる。」
生憎此処は私立、教育委員会なんて甘いものは存在しない。
「カメラは知らないが・・・パソコンはどうだ?--入っているのだろう?」
「な・・だとして、君が僕のパソコンを見れる権限なんて・・・」
「ラミアス先生と・・フラガ先生はこの事を知っている。それに・・もしもパスワードがあっても・・簡単なものなら俺でも解ける。」
それに・・・
「---俺が、貴様にデータを消す暇を与えると思うなよ?」
そう言って・・その教師の腕をネジり上げて、一発・・鳩尾を殴り、完璧に気絶させた。
そうしていると・・騒がしさに目を覚ましたのか、カガリがゆっくりと起きあがる。
「・・イザーク・・・・?あれ、先生・・・?」
「--------どうやら・・コイツが犯人のようだな。」
それを聞いて・・カガリは目を開き・・・その倒れている相手を見つめる。
だが・・・それは直ぐに安堵の表情に代わっていた。
「よかった・・じゃあ・・もう盗撮はないんだ・・。」
「だが・・まだ女の方が残っている。」
「でも・・敵が減って良かった。」
泣きそうに微笑んだカガリに・・イザークは「だが・・女の子となら尚更、アスラン・ザラには言えないのだろう」と言ってやりたかった。
しかし・・こう微笑んでいる相手に言うのは何故か悪い気がして・・黙って、その男を引きずる。
「貴様も来い。-------------職員室に、ラミアス先生とフラガ先生に事情を話して・・コイツのパソコンを探る。」
「ああっ!!!」
まるで中学時代のようだと・・何となくお互い微笑み、保健室を後にした。
「カガリ?」
休み時間・・・・アスランが来たとき、カガリは居なくなっていた。
トイレだろうかと・・考えていると、ドアが開く音がして・・来た・・と嬉しさがこみ上げて振り返る。
「アスラン・・!」
そう・・嬉しそうに・・・・琥珀色の目を瞬かせ金色の髪を揺らし・・・近付く相手の隣り。
銀髪で・・ライオンズブルーの鋭い目、だが・・眉目秀麗な顔が・・・存在していた。