第十一章:元からずれていた?



真実なんて・・結局、人間からは見えないもっともっと深くて、暗くて、明るい場所にあるのだろう。
あれから・・・もう、四ヶ月も経っていて夏がまた真っ最中を迎える。
暑い、ともかく暑い。
けれど・・いつもより憂鬱にならないのはきっと君が傍にいるから何だろう。

「あっつ・・・-------本当に暑いな・・」
「・・ああ。」

冷房付けるかといって・・二りっきりの部屋に涼しい風が流れ出す。
アスランの・・家、マンションで一人暮らし。

----------なのに、君は警戒もせず・・もう十回もあがっている。

未だに・・好きとも愛しているとも言われない俺は一体どうすればいい?
そう考えることもしばしある・・。
が、

----------絶対・・振り向かせるよ。

今は・・同情だって、なんだって・・使わせて貰うさ。
君が・・・・・・

俺を、本当に好きになって・・言ってくれるまで。


そう・・・カガリに見えない野心を燃やして、カガリを見つめるとカガリはやんわりと微笑んでくれた。
その笑顔に面食らい真っ赤になったアスランをカガリも少し頬を染めて頭を撫でてくれる。
このごろ・・カガリからも少しずつであるがスキンシップを図ってくれるのは本当に嬉しくて・・・
さらに頬を赤らめたアスランにカガリは気が付いているだろうか?









四ヶ月、まるで恋人・・いや、もう恋人なのかもしれないが・・そうやって過ごしていて、とても楽しかったと思う。
その代わり・・色々、大変な問題は山積みなのだが・・けど
アスランのことは・・・大切にしたいし、その問題を話す気はない。
アスランには、好きとか・・言葉に出しては言えない、それに言葉にするだけが全てじゃない。
髪を撫でて・・梳くとアスランはその手を握って頬へと下らせる。
綺麗な翡翠の瞳と・・・見つめ合って、アスランはキスをしてきてくれた。
触れるだけ、甘えるようなキスだと思う、それに答えてやれるように・・カガリはアスランの頬から耳をすすっと撫でてやる。

「--------・・カガリ。」

「ん?」


もっと・・深いのがしたい、そう思うものの・・・・これ以上、恋人になっていないカガリに何かをするのは気が引けていた。
まだ・・いい、今は・・・。

そう思っているとカガリの小さな手が頬から外れ少し切ない気分になる。

「よしっ・・部屋も涼しくなってきたし・・・ランチ作ろう!」
「そうめん・・だよな」
「ああっやっぱ夏はそうめんだ!!」

こういう所はまるで新婚なのにと・・・嬉しい反面、なんだか悔しい。

だがそんな気持ちはカガリのエプロン姿を見たら吹き飛んでいた。









「カガリっ」

「ミリィ・・。」

夏休みが終わり・・・学校が始まるのが、こんなに憂鬱になったのは生まれて初めてだと、カガリは思う。
ただ・・夏休みのように、アスランと過ごし・・ラクスとミリィと遊び、キラとお互いの恋話を永遠としていられたらどんなに幸せだろう。
クラスは・・・大好きなんだが。
そう思い、ミリィの顔を見て・・・安堵の溜息が出た。
「・・・休みが終わったから・・少しは、良くなってるといいわね・・。」
「・・・まったくだな。」
そう次は影を含む溜息を落として、少し悶々とした気分に陥る。



いつだっただろうか、アスランと・・・あれから、共に教室に戻って・・・・・・・・もう間もなくしてだった。

「・・ない。」

「え?」

ロッカーに置いていったはずのルーズリーフがない。
そう思って・・ひっくり返す勢いで、全て探すが・・・見つからなかった。

「移動教室に置いてきたかな・・・?」

「そうかもね、見に行きましょう?」

そうしてミリィと共に音楽室や化学室を見て回る。
「ないな・・。」
「誰かが持っていっちゃったのかしら・・。」
この時はまだ、知らなかった。こんな・・・些細なことしかない。
けど、些細なことが・・一ヶ月も続いたある時だ。



「-------あれ?」

ロッカー内に・・半分に破られていたのは、カガリの大好きな英語の教科書。
流石に驚いて・・なんて質の悪いイタズラなんだと・・腹を立てていた。
そして・・愚痴を言うようにミリィに言うと、ミリィはそれは絶対に怪しいと・・・この時始めて自分が疎まれていると気が付いて。。。

「女子・・ね、こんな陰険なコトするの。」

「私・・こんな事されるぐらい、誰かのこと傷つけたかな・・・?」

思い当たる節はそうない、だって・・カガリはいつだってクラスの中心で、自分に限ってそんなコトしない。そう決め込んでいたから。
だが直ぐに勘のいいミリィは言ってしまう。

「アスランじゃない?彼・・他のクラスからもスッゴク人気があるし・・カガリ仲良いから」

「はぁ?そんな理由でか!!」

「恋の逆恨みは恐いらしいわよ〜フレイが言ってたけど、・・・でも、相手がカガリならこれ以上目立ったことはしてこないでしょ!」

だから気になんてしちゃ駄目、そうミリィに笑い飛ばされ、、、ポジティブなカガリも笑い飛ばす。


---------------直ぐ終わると思っていた。


なのに・・それは慢性的に続き、カガリの頭を悩ませ出す。

一人だけ教科書がない、先生には叱られるし・・・・アスランには「少したるんでるんじゃないか」と忠告を受けていた。

アスランは・・本当に真面目な人で、勉強が好きで・・カガリはアスランほどは行かないものの、やらなければならないものだと分かっている。

それを横目で見て・・・ミリィは哀しそうに溜息をつく。


その時・・始めて、嫌だなと思った。
少しずつ・・学校に行くのが嫌になって・・・・でもそんなこと出来るはずがない。
ミリィが心配してくれている、アスランも、キラも・・未だ無遅刻無欠席のカガリが休みを取ったら驚くだろう。

--------そう考えていても、

胸は苦しくなるし・・・・時々、アスランに冷たい態度をとってしまう。
でも・・悪いと思って、すぐに駆け寄る。


--------アスランは何も悪くない、だから・・気負いして欲しくない。






そんなことが続いて・・夏休みに入った。



「まぁ・・だが、相手も流石に飽きて止めてくれるだろ?」

「そうね・・陰険すぎて尻尾も掴めない。-------掴もうと思えば・・・掴めるけど・・。」

「いいよ、・・だって捕まえられたらその子も何かと困るだろうし・・私はまだ大丈夫だし。」

こんな時まで相手の心配しなくても良いのに、そうミリィは思うのだが・・・・喧嘩っ早い彼女が此処で堪えるのには理由があると理解していたのであえて何も突っ込まないでおいた。







「お二人とも、お早うございますわ。」

そう・・声を掛けてきたのは、ラクスで・・・・ラクスは確か、学校で行われるホームステイをしに・・九月半ばから行ってしまう予定だったと二人は思い出す。
「キラに会いに来たのか?あいつ今腹壊して・・・トイレだっ」
「キラにも・・ですが、カガリにも会いに来ましたの。」
微笑んだラクスに・・二人は?を飛ばす。
ラクスは・・A組の子でキラの恋人・・・キラとカガリとミリィ、アスランは皆C組だった。

「たった・・・一ヶ月、ですけども・・・頑張りましょうね。」

「?・・ああ、頑張れよ、ラクス!」

友達の真意が読みとれず・・・・そう言われ、カガリは曖昧に返していた。
だが・・その意味ありげな言葉を、新聞部部長のミリィは聞き逃さない。
そうか・・と、何となく納得して、ミリィはラクスに声を掛ける。

「まぁ・・大丈夫よっ・・だから、ラクスも・・・ホームステイ、頑張ってね」

「はい、ありがとうございますわっ」


可憐に微笑んだ少女を二人で見送り・・・そして、教室にアスランとディアッカが入ってきたのでお互いその人の元へ行った。



「はよっ、アスラン!今日はディアッカと一緒に来たのか?」
「ああ・・」
実はどうやってカガリを落とすかと相談していたなんて口が裂けても言えないとアスランは思う。
だが・・友人の言葉は何かと当たることが多いし、それに相手も相手で自分の恋人の自慢をしているから・・プラスマイナス零だった。
キラにも本当は相談したいのだが・・・・姉を落とすにはどうしたらいいなんて言えるはずが無く、結局ディアッカになる。
五分ぐらい・・他愛のない話をして、互いに笑いあって・・・HRを迎えた。












HRの間だ、ちょっかいを出してくるディアッカを無視して・・・ミリィはカガリとアスランを見る。
アスランは・・一番後ろの端の席、カガリは真ん中の列の中間。
当然・・・アスランの目先にあるのは担任ではなくカガリだった。
凄く・・熱い、視線を送っているのは・・誰からでも分かるだろう。
それを見て・・これじゃ、好きな子が嫉妬するのは無理はないと思う。
アスランの脳の半分以上はカガリで出来ているのに・・他の女の子なんて見向きもされない。
それでは尚更好きな子からしてみれば、カガリは本当に羨ましく見えるのだろう。

----だが、二人は恋人だと公言していない。

それが・・・逆に、相手をどうしたらいいのか分からなくさせてしまっているような気がする。
ミリィも多分カガリもだが・・本当に根から悪い子なんてそうそういないと考えていた。
だから・・相手が止めてくれるのを待つというのが、一番賢い手段だと・・・そう、思っていた。



-----------甘く・・見積もりすぎていたと言うことに気が付いたときは少し手遅れなのかもしれない。































































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あとがき
ミリィ始動・ラクス様は助言だけしてホームステイです。
2006/07/09