第十話:生存剤








「帰ろうか。」

そう言って・・歩き出す姿は何処からどう見ても・・・恋人同士で、

キラも・・・ラクスと一緒に帰るようになっていた。


----------でも・・まだ、カガリは返事を返してはいない。


返すのは・・きっと、もっともっと後になるとカガリは自覚していた。









「もうすぐ桜だなっ」
「・・そうだな。」

まだ寒い・・春の中、お互いはにかみながら手を握る。

今の・・自分たちにはこれでいい。

そう考えていると、そっとアスランからのキスが唇に触れて・・・・いつものように目を閉じていた。

そしてまたはにかむ。











「何処か寄ろうか?・・・軽く何か食べよう。」

「そうだな・・・クレープが良いな。」

「じゃあクレープだ」


そう言ってまた・・手に手を取り、アスランとカガリは歩き出す。


-----------哀しいな。


そう・・一抹に感じてしまうアスランは、そんな自分を許せないでいた。

カガリは・・俺のために傍にいてくれて、俺のためにキスを迎えてくれる。


同情、


でも




-----------こんなに嬉しいんだ。



どっちか分からないと言ってくれた、

まだ・・未来はある。

それに・・・・・・・・・・


君に・・触れていられるのは、俺だけ。







大きなデパートの地下にあるクレープ屋で二人は人目を気にせず互いのものを交換しあう。

最後には・・アスランが甘いものを食べかねて、カガリにあげてしまうのだ。

「せっかく・・こんなに美味しいのに・・甘いものが苦手なんて、可哀想だ。」

「けど・・その分、得もしているんだ。」


「?」


カガリが・・美味しそうにクリームを付けてる様が見ていられるとか。

指を舐めてる姿とか・・・


本当にドキドキしてしまう。


表情にこそ出さないが、カガリの一つ一つの行動が・・本当に可愛く見えてならない。

可愛い、可愛すぎる。

鼻の欠陥が弱ければ、間違えなく毎日切れて血が出ているところだ。


「・・な、なんだよっ」

「いや・・」


可愛いなんて・・言ったら、君は少しは俺を意識してくれるだろうか?

そして・・またペロッと音を立てて指を舐めたカガリに、笑って・・・一言残す。


「可愛いよ。」


「っ・・お前なぁっ!!!!」


恥ずかしそうに頬を染めて抗議するカガリに、アスランもほんのりと頬を染めると・・お互い見合って黙ってしまう。

嫌な沈黙ではない、むしろ・・・・心地よい沈黙。






食べ終わったカガリにお手拭きを渡して・・・また歩き出す。

カガリは少し恥ずかしいのか・・・あまりこちらを見ようとしない。だが、手を握ればしっかり握り返してくれる。

カガリのこういうところが凄く好きで、アスランはカガリの髪に軽く唇を押しつけて反応を待っていた。

・・・・でも、いつまで経っても・・・こっちを見ない。

怒っただろうかと顔をのぞき込めば、逸らされてしまう。


けど・・・


「カガリ」

耳まで真っ赤になった、君を・・斜め後ろから見ているのも悪くない。

「なんだよっ・・」

ふてくされたような返事に、苦笑し・・アスランはもう一度・・さっきの言葉を耳元で囁く。



「-------可愛すぎだから。」













今はこれでいい。



俺は・・・・








君がいてくれることが、最低で最高の条件なのだから。




































































+++++
あとがき
ある意味安定?
出会い編終了で・・ほのぼのダークシリアスなネタ読んでくださりありがとうございました。
2006/07/07