「カガリ・・・て、あ・・そっか、今日化学の追試だっけ?」
「ああ・・キラ、先帰ってても良いぞ?」
「・・うーん、ゴメンっ!どうしても・・今日中に終わらせたいプログラミングがあるんだよね、カガリも追試頑張って」
「駄目だったら・・追追試になるだけだけどな。」
そう・・弟のキラと別れを告げて、カガリは化学室の前に立ちはだかる。
くっそぉ・・化学担当のクルーゼ先生とは・・性格はともかく、授業が合わないっ。
そう苛々としながらも、金属質の通常より少し堅い化学質の扉を叩くが、返事はない・・まさか。
「忘れてる・・とかか?」
ちょっとムカツキながら手を掛けると、以外にも扉は開いていた。
ガッチャンと鳴らし・・部屋の中を覗く。
--------・・・?
変な匂いがした。
「いないじゃんかっ!!クルーゼ先生の馬鹿野郎ッ!!!」
今日は・・ミリィとの遊びも断って来たのにッ!そう・・啖呵を切りそうになり、その部屋にはいると・・先着が居た。
えっと・・。
「アスランじゃないかッ!お前も追試か?」
そう言ってから・・少し、考え直す。コイツが未到達の訳がない。・・・学年トップだったし・・。
ん?コイツ・・化学部だったかなぁ・・?
「分かったっ!お前、化学部だろ?」
「・・・・・・・。」
そう・・遠くから大声で話しかけているのを無視するように立ち上がり・・・もう一個の出口から出ていきそうになる奴を止める。
「お前に言ってるんだっ!アスラン・ザラ!!!!!」
「・・・・俺?」
反対側の出口まで行く相手を、カガリは少し追いかけて腕を握る。
相手は・・ビクッとしたようにカガリを見て、カガリは頭に?を飛ばした。
「そうだっ、お前以外誰が居る?」
「・・・・?なんの・・用だ、ヒビキ。」
「・・用って・・・用がなきゃ、話しかけちゃ駄目なのか?」
「・・・・・・・。」
アスラン・ザラがクールと言われる無愛想で在ることぐらい・・・もう、六月に入った高校生活でもよく分かることだった。
同じクラスのハズなのに・・今の今まで話した事なんて無い。
それに・・今も、こうやって・・用がないのに話しかけてきたことを、良く思ってはいないようだった。
「用なら考えるから・・・ちょっと、待ってろ。」
そう言うと・・相手はブッと吐き出すように笑いだして・・カガリには少ししゃくに障っていた。
笑うって・・、私今何も面白いこと言って無いじゃないか。
憤慨して・・ちょっと、睨むと相手は無愛想な顔に戻っている。
あーあ・・勿体ない、さっきの笑顔なら・・・きっと、クラスでだって人気になれるのに。
アスラン・ザラは・・いつも、端の席に座って・・・空を見上げて、つまんなそうにしているから。
実は・・・・何度も話しかけようとしていたのだが・・その度にファンクラブの女の子達に止められて・・・・、話せなかった。
「あっ!思いついた!!私と話そうっ!!」
「は?」
「いやか・・なら・・」
「いや・・そう言う訳じゃ・・。」
「そうだ!お前、頭良いよなっ!!勉強教えてくれよ!!」
「・・あぁ・・。」
唐突に話を進めるカガリに・・アスランは少し目を回しながらも頷く。
人の迷惑とか・・・・考えないのだろうか、この子は。
「よかったぁ・・!私、化学とか・・物理とか、苦手でさっ・・今日も未到達で・・ま、先生留守だし、いいんだけどな!」
化学室の席について、カガリは早速教材を広げていた。
アスランも・・さっとペンを取り、「何処が分からないんだ」と聞いてくれる。
「えっと・・モル計算だろ・?・・それに、化学式を覚えるのも・・・。」
そう言うと・・丁寧な文字で、モル計算の問題を・・レベル別にさっさと書いて、渡される。
カガリが・・頭に?を浮かべていると・・アスランはすでに、別の紙に化学式を書き出していた。
「それ・・解いて、分からなくなったら・・聞いてくれ。それまで、、今回のテスト範囲の化学式書き出してる。」
「あ、分かった。」
随分と・・ぱっぱと、作業的な奴だと思って・・カガリは、少し・・凄いと思った。
----家だと・・キラと話したり、図書館だと・・本を読みあさって・・・学校では・・・ラクスや、ミリィと話してしまう。
だから・・結局、勉強は・・本当にテスト前にしか・・いや、それだって、結構頑張っているが・・・。
---こんな、効率よく、やる方法があったのか。
何だかそう思うと・・手がぱっぱと動き始める。しかし・・それも、六問あるうちの・・三問目で止まってしまった。
「・・此処か。」
「ああ・・なんか、一問目とかと勝手が違う・・。」
うーっと唸ると・・アスランは少し笑って、赤ペンを出して説明してくれる。
「今までは・・・。」
そう話し出して・・カガリが驚いたように納得すると、アスランは微笑んで・・・そうやって、六問目まで解くことが出来た。
「・・この学校だと・・これ以上のことは聞かれないだろ、追試だし・・。あ、化学式。覚えるのは得意だろ?」
「・・ああっ!!」
その化学式を受け取って・・眺めていると、アスランは立ち上がってしまう。
そして・・何も言わず、部屋から出ていこうとした。
「え?おいちょっと・・」
「・・・?まだ・・何か、用か?」
不思議そうに訪ねてくる相手に・・カガリは駆け寄って、腕を掴んでいた。
一瞬・・相手が眉をひそめるのに・・カガリは気が付かない。
「用がなかったら帰るのか?・・さっきも言ったが・・話したいって、---用事が無くても・・話すだろ?普通っ!!」
「しかし・・君は、勉強しているだろ?・・邪魔するのも・・・」
「傍にいるのは邪魔なのか?酷いだろ!逆に・・何も言わずに帰るなんてっ」
「・・そうだな・・、それじゃ、じゃあな。」
「馬鹿かっ」
バシンと・・・気づいたら、学校一の秀才の頭を叩いていて・・少し、ばつが悪いのだが・・カガリはそのまま続けてしまう。
「一緒にいたかったんだよ、邪魔じゃなくて・・・、話したかったんだっ!!」
「・・・・・・」
「クラスメイトだろっ!!大体、お前無愛想だ!!せっかく笑ったとき、優しそうに見えたりするのに・・勿体ないっ!!」
「勿体ないって・・・」
訳が分からないと言おうとするアスランに、カガリはまた声を荒げていた。
「お前、いっつも角の方で空見て・・・クラスが嫌いなのか?みんないい奴だぞ?」
そう・・カガリが言うのを聞いて、アスランは少し驚く。
いつも・・・楽しそうに・・声を出していたこの子を、アスランも知らないわけではない。
クラスの中心で・・いつも、楽しそうに笑っている。
だから・・そんな彼女が、俺の存在なんて知るはずがないと思っていた。
ましてや、いつも・・誰とも話さず空を見ていること何て・・知るはず無い。
・・けど、知っていた。
「俺は・・人付き合いが、苦手・・だから。」
「苦手って・・克服しろよ。」
それが出来たら苦労しないと思う。・・だいたい、君のように・・明るく生まれたわけでも、育ったわけでもない。
少なくとも・・"育つ"の面に関しては・・大分、暗い。
「それに・・お前、勉強教えるの巧いし・・・笑うと優しそうに見えるし・・・・問題ないぞ?」
「気休めか?」
「馬鹿か?」
別に・・君と俺とは・・・ただのクラスメイトだし、・・・・そう、説得される義理も何もない。
干渉する必要もないだろう?
そう思って・・冷たい目線を送ると・・相手は更に怒った顔になる。
「お前・・そんなに一人が好きなのか?」
「は?」
「そりゃ一人でいたいときもあるさ、でも・・お前、一人過ぎだぞ?話し方だってわすれちゃうぞ、そんなんじゃ・・」
だからよけに話せなくなるんだ。と・・・その子は言って、もう一度アスランの瞳をのぞき込んだ。
一人が・・好きなわけではない、ただ・・楽だし・・・・・・
--------・・でも・・。
「君を見て、良いなと思ったことはある。」
友達に囲まれる生活、皆に好かれる生活。
----一度で良いから体験してみたい。
見ていたさ、俺と違って・・楽しそうで、笑っている君を・・・見て、羨ましいと思ったことだってある。
だが・・そう、君のようになろうとか・・なれるとか、そんなことを考えたことはない。
「だったらさ、話せばいいだろ?私もお前と話したいし・・キラだって、他の奴だって、お前と話したいと思ってる!」
「・・・。」
「いいか、明日は絶対話すんだぞ?!迷惑がっても私は話しかけるからな!!」
「・・・。はぁ・・。」
「溜息着くなッ!!」
バシンと肩を叩かれて・・・ちょっと、傷口に響いたと目を細めたが、嬉しそうに笑う・・その子を見ていたらどうでも良くなっていた。
そのまま・・何となく、下駄箱まで一緒に行く。
「じゃあな、アスラン明日な!」
「・・ああ・・・。」
明日・・・、か。
久しぶりだった。
---------明日が、楽しみに思えたのは。