Z 魔女




警察が到着してから、少し送れてセイラン家の前に行く。

そして適当に事情を聴く振りをして・・アスランは、また車を走らせる。

その間・・カガリが一度も、アスランを見ようとしない事にアスランは気が付いていた。

その・・理由も、手に取るように分かる。


「・・・次は・・アルスター家ですね。・・夜が明けてヘリで移動しなければ-------」

「・・アルスター家も殺すのか。」


はき捨てるような言葉、その、言葉に一抹の嬉しさを感じてしまう。







いやだった、アスランが・・目の前で人を殺すのが。

犯罪者なんだと、突きつけられている気がして・・本当に嫌だ。

なんで・・。どうして?

お前は・・・・・・・

もう、心の中は悶々と歪み、閉ざされて、腐って行くような気分になってしまう。

何故、私の愛した人は・・意図も簡単に手を染めるのだろう。

・・・・・優しい、はずなのに。--そう信じたいのに。

踏みにじられる。







「・・・・人殺しは嫌い、か?」

「聞くまでもないこと・・聞くなよ。」


カガリが不機嫌な理由は分かる、だが・・アスラン自身物凄く不機嫌だという事にカガリは気が付かない。

苛立つ。

俺自身を嫌いと言った事ではない。

・・・嫌いでもいい、疎ましく思っても・・・・・構わない。

だが、


「-----カガリは女の子なんだから、・・・さっきみたいな事は控えろよ。」

怒った口調を隠して言う。

本当は、腸が煮えくり返る何処ろではないのだ。

いっそ・・殺して、犯したいぐらい。


「・・お前いに言われたくない。私は私の意思で動く。」



意思。



あれが?



運転中だという事も忘れて、カガリを睨みそうになるが持ちこたえる。

あれが、君の意思?


あんな男に抱かれるのが?


「・・へぇ・・じゃあ、もう---------慣れてるのか。」

以外だと馬鹿にしたように笑う、なんで・・笑っているのだろう自分は。

でも・・けちを付ける権利なんてない。

カガリが・・誰と寝ようが・・・・・・・・関係のないことでしかない。


「・・試すか?」


嫌に、挑戦的な瞳-------・・君は、俺が知っている・・カガリなのだろうか。

・・・いや、カガリだ。

すぐにそう・・確信をもてたのは、カガリの瞳は何処までも・・昔と変わらぬ真っ直ぐさを持ち合わせていたからで、

身体は・・もう、誰かのものでも・・君が根本から変わっていなければ・・。


「・・うそだ、お前になんて・・抱かれてたまるか。」


絶対にと付け加え・・凄く眉を潜めて笑われる。

「・・でも・・しゃくだな、他の男が君の身体を知って・・俺が知らないと言うのは。」

本当にしゃくだ。・・・・いっそ、あの幼い日、無理にでも襲っておくべきだった。



カガリの・・初めて、---------欲しかった。

もらえるはずない、権利もない・・・君の許しも貰えない。

でも、


「カガリが欲しい。」


全部、

嫌いでも・・・もう、構わないから。

恨んで、でも心の底では愛してくれる・・君を手に入れたいと、


-------こんな・・汚れた手で。


・・腐らせてしまうかもしれない。


「・・嘘だ。」


腐った・・・・カガリなんて、それこそ・・・・・終わりだ。

「当たり前だ。」

ふざけるなと罵られ・・ホテルに戻る。







「・・・いいか、お前----もう女の人連れ込むなよ、相手が可哀相だ。」

「・・わかりました。」

主従関係に戻り頭を下げると・・カガリはアスランに目もくれず寝室に向かう。

「今日は・・疲れた、私は本気で寝る。殺せる覚悟が出来たら入って来い。」

自身有りげに・・そういわれて、アスランは考え込む。

殺さなければ、ならない。

仕事だから。

キレイなまま・・カガリが・・アスランの中でまるで宝石のようにキラキラと輝いているまま。


-----永遠に、動かなくしてやりたい。


もし・・十年後、君に夫が出来たら?

君が・・腐ったら?



そんなの・・・


カガリじゃない。

俺の・・心の中にいた・・カガリじゃない。

なら、



今。


「・・やっぱり-------殺そう。」

俺の手で、

永遠に、


俺の記憶に・・・


残って。


アスランを、ただ・・一人。

人間と・・扱ってくれた人だから。

その・・ままでいて。





犯罪者じゃない、

マフィアのボスの息子じゃない。


アスランを




・・・・・・カガリは、今はまだ、心のどこかでそう・・思ってくれているから。

ただの人間のアスランが・・カガリの中から消えないように。

今なら間に合う。

そう・・思って、カチャリと針金で鍵を開け・・ナイフを手に近づく。



最後まで味わうよ、カガリ。

肉を裂く感触も、血も・・骨の髄だって。

しゃぶたって・・足りないぐらい。



味わうから



ふっくらと膨らむ・・・左の胸と中心の境に、その鋭利な刃物を立てた。

薄着のドレスのような寝巻き。

すーすーと息を立てる、血の通った唇。


これも・・


「見納めか。」

金色の・・睫毛に、そっと唇を寄せ・・頬・・そして唇にも。


最期だ。


これが・・カガリを生で・・感じる、最期だ。

泣きたくなる衝動にかられるのは・・・やはりそれだけ・・



「・・・愛してる。」

誰よりも、誰よりも。




「ありがとう・・」




俺を・・




人と、見てくれて。





ポタッときれいな頬に、アスランの雫が流れ・・アスランはナイフを立て直す。







だが・・その手を阻害された。


いや・・押し込もうと思えば・・押し込めたんだ。

・・・期待していたのか?

カガリが起きている事を?







ありがとう・・?

アスランが入ってきて・・目が覚めた。

そして・・聞いたセリフ。


「ありがとう・・とは、どういう事だ?」


ナイフを・・二人で握りカガリは腰を上げアスランに質問をする。

涙で視界が霞んでいそうなので・・涙を指でふき取ってやった。


「・・そのまま・・」




弱々しい相手、カガリはまた・・錯覚してしまう。



本当に、アスランは優しくて


酷く・・・・・もろいのではないかと。


本心に・・躊躇いなく触れば壊れてしまうぐらい。




「じゃあ・・アスラン。」





そして・・一つ、提案をする。


もう・・まどろっこしいのはゴメンだ。









「今から・・お前はタダのアスラン、私はタダのカガリ・・・・・親、経歴一切関係ない。」

















その言葉は、アスランにはまるで魔法のように聞こえた。







































































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あとがき
魔法使いカガリです。(嘘)
2006.05.20