「ひさしぶりだね、カガリ。」
そう・・にんまりと笑顔を向けてきた相手に、カガリも微笑む。
「久しぶりだな・・ユウナ。」
クイッと腰に手を回され、そしてカガリとユウナはそれが当然のように歩き出す。
護衛の存在などないように。
「・・で?そっちの彼は?護衛?若いね。」
「ああ、若すぎてな。でも腕はぴか一だ。」
そう・・アスランの目の前で会話され、その男はまるでアスランを品定めするように見てきた。
「・・どうした?ユウナ?」
その・・振り向き際にユウナはカガリの耳から軽く血を流している事に気が付き笑う。
「怪我してるじゃない?・・僕が消毒してあげるよ。」
くちゅっと音を立て、耳を愛撫されカガリはわざと声をあげた。
アスランに、聴こえるように。
「・・じゃ、護衛さん、君の部屋はここ。僕らはもっと奥。-----・・いいよね?カガリ。」
「ああ、構わん。・・・・行儀よくしろよ。」
「・・・はい。」
そう・・して、サングラス越しに・・アスランはカガリとその相手を強く睨んだ。
怒っていると、カガリは笑う。
まさか・・"好き"だと・・欠片でも想っていたなんてな。
嬉しい反面・・酷く憎悪に見舞われる。
お父様を殺した相手・・それが、私を好き?
有り得ない。
大切なものを・・奪っても、好きだと言うのか?お前は。
そうして・・たどり着いたのはベットルームで、カガリはユウナを見あげる。
「・・会議は、このなかでやろうか?カガリ。」
もちろん返答は・・
イエスだ。
仕返しだとカガリは思う。
私が好きなことを知って・・それでも部屋の女を連れ込んだ仕返し。
お前が私を・・もしも、誰にも譲りたくないと考えているのなら・・。
喜んで、他の奴の所に行ってやるさ。
--------そして、悲しめ。
大切なものが奪われる感覚を・・
お前も味わえ。
そして・・後悔しろ。
そう思って・・ベットルームに入りカガリはユウナの首に手を回す。
苛立つ気持ちで・・アスランは任務を着々と成功させていた。
一階・・二階。その大豪邸の今、八割を殺し終わったところだ。
早くしなければ。
残った部屋に入り込み、眠っている使用人・・それらをすべてナイフで刺した。
手に残る、その肉の感触。
開く瞳孔に映される、自分の瞳。
酷く冷たい。
そう・・感じて、最後の一部屋に耳を傾ける。
あとは・・二人だけ。
ナイフを拭いて・・一度しまい拳銃を出した。
中から・・時たま聴こえる、カガリの少し鼻に掛かった声。
・・・・堪らなく、嫌だった。
もう互いに下着だけになった状態で、ユウナは少し緊張交じりだがごつごつとした掌で愛撫される。
声は我慢せず上げ、だが・・実際あまり何も感じていないと言うのが現状で。
-----でも、不思議と楽しい。
アイツの・・困った顔、また、怒った顔・・楽しみで仕方ない。
いつも・・馬鹿見たく、へらへらと笑っているから。
嫉妬、それが奴の顔に露骨に出るかどうかは非常に謎だが、まあ傷つけられるならそれでいい。
そう思って、その手に委ねていると・・ギィッと戸が開く音がする、開くと同時に・・顔に、やけに暖かい液体と、変な感触のものがなだれてきた。
--------臭い。
鉄だ。
あの時、お父様の時と・・同じ匂い、鉄、火薬。
グタリと・・身体に大きなものが被さって、カガリはそれが何かだと気が付くのにそう時間は掛からなかった。
「・・・・・・・殺したのか。」
そう・・ぼそりと呟いて、その死んだ身体を退かし・・罪悪感にかられる。
私のせいだろうか、コイツがアスランに殺されたのは。
考え出すと、やっぱり・・申し訳なくて、カガリはアスランのほうになど目もくれず、その男に銃が貫通した場所にキスをした。
一応・・私のこと好きみたいだったし・・・許せなんていわないから成仏しろよ。
そんな気持ちで。
そうしていると、真っ赤になった額に・・カチャンと銃が向けられる。
「・・なんで・・こいつまで殺したんだ?」
尋ねたのは当然の事だとカガリは思う。
私だけ・・殺せば良いのに。
殺されたりはしないけど・・他人を巻き込むなんて-----
「・・・・此処の始末・・それも仕事だ。」
そう静かに言われ、そうかと溜息を付いた。
カガリはベットにおいてあったリモコンを取り電気をつける、ただ・・その翡翠の瞳を見たいが為に。
下着姿で・・真っ赤な血に染まったカガリを眺めていて気が付いた事がある。
首元に二、三の所有痕。
それが・・嫌で、今殺した奴をナイフで三枚に下ろしたい気分になる。
「・・・君は、この家が嫌いなんじゃなかったのか。」
「・・そうだったか?」
ふざけてそういえば、翡翠の瞳は鋭さを増し、カガリの琥珀色の瞳も負けずと睨む。
「----君は・・俺のものだと、言ったと思ったんだが。」
「・・誰がいつ了承した。」
そう・・会話をして、アスランは時間がないと少し思い・・銃を下ろしてカガリの服を拾い集めそこにあるティッシュでキレイに身体を拭き始める。
「・・触るなッ!!」
そう・・抵抗したのもお構い無しに、拭いて・・そして所有痕をかるく指でなぞった。
カガリは一瞬その手つきにビクンと震える。
「・・・今は、ともかく出るぞ。」
下着姿のカガリを担ぎ・・窓から飛び出して時計に眼をやる。
よし・・丁度いい。
だが・・カガリについた血の匂いは消えそうになく・・少し気になり庭にあったホースを使い頭から水をかけた。
「ッ・・冷たい!!」
急に子供のように身体を押さえたカガリが可愛くて、アスランは少し笑みを零し・・車にあったタオルで全身を拭く。
カガリは抵抗せず・・・アスランの成すがままになって・・アスラン自身楽しくて仕方がないと感じた。
服を着せ・・車においてあるスイッチを押す。
ドンッ!!!!!!!!!!!!!!
そう・・激しい音が何度かすると此方にまで火の粉が飛んできた。
爆破したのだ、セイラン邸を。
「・・・君と俺は今・・此処にきたことになる。」
本当は・・カガリもここで殺して、跡形もなく吹き飛ばし・・アスランは自分のいるべき場所に帰る予定だったのだが・・・・。
・・・今は、
そう・・初めて仕事で自分に甘さを見せた。