最期の時間。




それが、刻・・一刻と近づく。











・・・・恐れか。





好奇心か。







X 賭け




セイラン家・・・。

そこが、君の死に場所。

夜中車を飛ばしながら、カガリといる時は基本的に上機嫌なのだが、珍しく暗い気分に陥ってしまう。











・・やはり一度くらい抱いておくべきだった・・・・そう、少し後悔する。


「お前・・ぼーっとして事故起こすなよ。」

「分かっている。」


そんな勿体無い殺し方するもんか。




大好きな君。


ちゃんと、最後の最期まで・・傍にいたいし・・見ていたい。

でも、楽にいかせてあげたい。


-------せめてもの・・慈悲。




・・・ただの、我が儘だと、君は笑うだろうけど。




「予定より・・早くつきますが?」

そう言ってカガリを見れば、少し不機嫌そうに顔を歪めて溜息を付いた。

「セイラン家は嫌いだ。」

そう顔に手を当てて目を瞑ってしまうカガリを黙ってみていた。


「そんなに嫌なら此処で殺した方がいいか?」


そう尋ねると、カガリは「馬鹿言うな」とうわ言のように返す。

でも・・・嫌いなセイラン家で・・。どっちにしろ殺すなら、今此処で殺してやった方が良いような気がする。

そう思って、車を逸らせ脇の細い道へと車を飛ばし誰もいない森の中へと入る。



「・・なんだ?殺す気か?」


そう隣でやっと眼を開けたカガリが呟いたが顔は見ない。

・・・・・、見れない。

ある程度入り込んで、車を止めた。



「そうか・・殺す・・のか。」


カガリは何か確信したように声を漏らし此方を見ているように思える。

そしてお互いに、持っていた銃を相手に向けた。




「・・・お前と死ぬなんて、私はゴメンだ。」



そうキッとし睨みつけた琥珀色に全くたじろがず、見つめる。

「-----・・俺は死なない。・・君だけだ。安心してくれ。」

ちゃんと心臓に当てるから。

安心してくれ。

「-------・・。」









お互い、銃口を構えて眼を見た。

何を躊躇うのだろう、この男は。

そう、思いながら・・でも絶対に撃たれてやらないと・・こんな状況ながら思ってしまった。

どう考えても・・活路がなくても。



-------お父様が・・いたら、きっと諦めるなといってくださるから。



それに・・お父様は、私に"アスラン"が殺人者である事を知らせるように・・死んでいった。

つまりそれを知る事で、何か得る事が出来るという事だ。

お父様は・・無駄な事はしない。

ましてや死してまで教えてくださった事だ。










そう、思えた瞬間恐怖は消えた。



アスランの瞳を・・今までにないくらい穏やかで、しっかりとした目で見られる。




私は・・お前が憎い。

けど・・・・・どうやら、殺したくはないらしい。






生きて・・、-----・・奪ってきた人たちへの、謝罪を・・懺悔を・・して、ほしい。



・・・・・・・許されないと、分かった上で。












「言い・・残す事は?」


そう聞かれ、カガリは鼻で笑った。

「・・・お前こそ、最期の会話くらい・・気の聞いたこと残せよ。」



そうして、笑っているカガリに奇妙な感じで見入っていた。



本当に君って人は・・。

恐れも無い。

・・・憎しみの色は見えるけど。

殺気も・・狂気も、ない。




ただ、普通に見ていられる・・・・、死ぬのに。



「素敵だな。君は。」





・・・・殺さなければならない。



「それは・・気の聞いた会話か?」




--------・・どんなに君が素敵でも



通じることの無い、愛を持っていても。



ゆっくりと心臓に銃をつけた。




カガリは一向に恐さを感じていない。


クッと唇を咬んで、決意を・・固める。




「・・・震えた手じゃ、撃てないんだろ?」



・・・・・。





笑って、そう言うと、アスランは眉間にしわを寄せた。

「なに震えてるんだよ・・・、殺し屋だろ?お前・・。お父様を殺して、なんで私を躊躇う。」

ただのターゲットにしか過ぎないくせに。








「・・--------やっぱ、愛しいからかな。」



そう真剣に言うとカガリは噴出した。

「愛しい?お父様を殺しておいて・・よく馬鹿みたいなこといえるな。」

本当に、そのとおりだ。

だから・・君に恨まれても、当然だと。

悲しくなんてならないと、



そう・・誓った。


「・・キライだ、お前が・・・・私は。」

「知ってる、でも・・俺はずっと好きだった。」



幼いときから。


あれからも・・ずっと、ずっと・・・人を殺してきた。

多分・・もう四桁なんて当然で・・・・・、そんな中。




君に逢いたいと・・願っていた。







-------責めてくれると。







殺して、ほくそ笑む・・・父上と違い。


君なら・・・・




-----ちゃんと、人として見てくれると。


俺が殺し屋だと・・知っても。






ちゃんと




「愛してるよ、カガリ」

そんな君を。







そして引き金を引こうとすると、カガリは急に乗り出してきた。

「・・・。愛してると・・そう、簡単に口にするなよ。」




悪いが・・お前のおふざけの恋愛ごっこなんかより、私のほうがずっとずっと大きいんだから。


愛が





「!」


無理やり、唇を押し付けた。





カガリから・・アスランに。











----・・嫌いだ。

腐ったお前は。



・・・・・・どっかの神話のように、愛する人のキスで目覚めてくれれば良いのに。







コイツの・・、私が愛した良心が。






あるか、ないか、分からないけど。















アスランの銃は、未だカガリの心臓の上に置いてある。



だが・・





撃ちたくない。



欲望に従うように銃を落として、カガリの首に腕を回して引き寄せもう一つの腕で腰を捕らえた。

そして悪戯に舌を出して触れていた唇に当てると驚いたのかパッと口が開く。

もちろんそんな隙を見逃すはずもなく割り込んで貪った。

苦しそうに抵抗するカガリを他所に、頭をグッと手を押さえつける。




もう少し・・もう少し。






一緒に。





そうして、離れると銀色の液体の線は繋がって切れた。

だが・・まだ腰の手は離さない。


「・・・殺すんじゃ・・なかったのかよ。」


そう細い指が、今まで溶け合っていたアスランの唇に触れる。




「・・・カガリ。」




カガリの顎にキスをして、首筋へと下がっていく。

「・・・?----おい・・お前・・何を・・っ」



ジーッと音を立ててチャックを下ろし、キャミソールとブラの紐を肩から外した。


「・・----・・。」




カガリ






腹に落としたキャミと脱がせた皮の上着。

下着に隠れた胸の出ているところに唇を下ろした。







「・・・・--アスラン・・お前・・」














泣いているのか?







・・・何故?






素肌の胸元に当たる、顔と・・液体。



・・涙。

なんで泣く?





何が悲しいんだ?



-------------からかって・・いる、の、だろうか。







「どう・・した?」






お前らしくもない。




へらへらと・・笑っていたではないか。







いつもの様に・・馬鹿にして、からかった眼をした・・私の大嫌いな・・




アスランは?




「・・・・・どうも、して、ない。」


そう切れ切れになる声、少しずつ、手から震えが移ったように・・肩も震えだす。






「-----------------・・アスラン?」




アスラン



あの、アスラン。





私の・・・



大好きな?

愛しいと・・感じた?








ズンッと、胸に錘が掛かったような気持ちに駆られた。





・・・憎まなきゃ。




いけない。



のに





「撃たないのか?早くしろよ・・何やってるんだよ・・・・・・」






嫌だ。




こんな・・気持ち。





落とされた銃を拾い上げ突き出して、手に置くと振り払われてしまった。


「・・いらない。」




なんで・・・、





今頃・・



卑怯だ。




「-------・・はな・・れて、くれないか。・・・アスラン。」




馬鹿だ。




・・・・・お前は。



・・・私も。





泣きたくなるなんて。










「・・・・嫌だ。もう・・少しで、いいから。」


まるで、確かめるように。


「カガリ・・ッ」

そう声を殺して名前を呼んでくる、コイツを・・私が拒否できるわけもなく



「・・・・っ-------・・。」





涙を、流した。








でも直ぐに拭きとって、何もなかったように振舞う。

「-------・・いい加減にしろ・・撃つぞ?」

そう言ってカガリはカガリの拳銃を胸元で泣いているアスランの頭に押し付けた。

「・・撃てば、いいだろ?」

投げやりな言葉にゴツンと殴りたくなってきたが、それはよしておいた。



「・・・・卑怯・・だな、お前。沢山の人の命を・・奪っておいて、そう簡単に死ねると思うなよ。」



持っていた拳銃を置いて、胸に頭を寄りかけているアスランに突き放つように言葉をかける。

「アスランは・・もし、本当に・・私の事を・・・愛しているなら、私が殺される事で意義が生まれるな。」


死ぬ気なんてないけど。

そう苦笑して笑い出すと、アスランは顔を上げて涙を拭いて運転し出した。

そして服を調えながら言葉の続きを言う。

「・・・大切な人を殺す瞬間、どう、感じるんだろうな。お前は」

殺されるなら、相手を恨めば良いだけ。



私のように。


けれど、奪う側なら?




「悲しいと、感じるのかな、・・やっぱり。」

私は・・出来ないと思った。お前に・・引きがねなんて、引けないと。


「・・・・嫌だ、と思った。俺は-----でも・・」

仕事だと



「そうか・・・」


嫌だと、思ってくれるのか。



思えるだけの、心があるのか。アスランに・・、




なら・・----なんで・・・


「その、奪われたら嫌なものを・・・・奪い続けるのか、---・・残されたものが哀しいと知っても。」






「----------そういう・・仕事だ。」




「仕事のせいにして、自分を棚に上げるなよ。お前のせいで・・不幸になった人だって沢山いるんだ。」




「・・・知っている。」


「・・・・・・・じゃあ」





拳銃を自分の額に向け引きがねを引いた。











キィッと音がして、車が急カーブをする。








「・・・・・っ・・・、っとに・・お前・・凄いな・・・・。」





弾は逸れ金髪の髪と耳を掠り、窓ガラスを貫通した。




キッと翡翠色の瞳に睨まれて、アスランは直ぐに車を安全なところに止めてしまう。


「お前が他人にしてきた事・・だろ?」


そう勝ったと、自信有りげに話しかけるとアスランはしかめっ面で睨んできた。





「・・・・今まで人にしてきたくせに、自分がされたら怒るのか。アスラン」



「----------・・・・・・。」






黙ったまま、ガッと肩を掴まれて、掠った耳を見られ咥えられる。




「・・・・・どけ。-------お前と戯れる気は・・・っ-------。」


煩いと、言うように押し付けられた唇からは少なからず血の味がした。




「・・・・・、君の・・命を・・・・奪うのは俺だ。」


そう囁かれて、車はまた道へと戻っていく。






「・・私はお前の所有物にいつなったんだ?」


「・・・・前世。」



適当に流して、車を走らせた。


・・・・、----なんて・・事をしてくれるんだ。君は・・





大好きな君。


命を・・もしも、落とすのなら・・その命は俺が貰いたい。

---------・・当然の事じゃないか。




他人・・ましてやカガリ本人なんかに・・渡さない。






・・カガリは・・



俺が、貰う。









---魂も、身体も・・。-----------全部。








































































+++++
あとがき
やっぱアス→←カガが一番ですよね・・・(苦笑)
題名の「賭け」をしたのはウズミ様だったりします(笑) それと、カガリ。キスと発砲、二回も賭けに出るカガリです。
2006.04.12