もしも、出会いが必然だとすれば----


神様は何て酷い事をしてくれたのだろう。





降りしきる雨の中。


出会いは唐突に訪れた。











深い藍色の髪。



冷たい雨に打たれ冷えきっていた身体。




真っ赤に染まる水溜り。









V フラッシュバック












「綺麗だな、お前の目は!!!」

そう、暖かい感じがして意識を取り戻した。






「ここ・・は?」

そう尋ねるとその子はニッコリと笑って頭を撫でてくれる。

「お前・・びちょびちょで庭に倒れてたんだぞっ!しかも傷だらけで・・・・」

そして手足を見れば拙いながら包帯が巻いてある。


「君が・・此処まで?」

「そうだ!あのままいたら・・死にかねないだろ、お前。」


見渡せば広い部屋。シンプルだが一応女の子の部屋に見える。

「・・・----女の子?」

そう聞くとバコッと頭を殴られた。










「お前・・名前は?」

「--------・・分からない。」

「歳は?」

「・・・たぶん君よりは年上。」

「まーそうだろうな」



ベットの上でそうボーっとした頭で考える。

なんで人の庭に倒れていたんだろうとか、この子はなんで運んでくれたんだろうとか。


「私はカガリっ、歳は10だ。お父様とかキサカの許可なしに人を屋敷に入れちゃいけないんだけど・・まぁ仕方ないよな。」

そうにこやかに笑って、ポンと頭を撫でてくれた。


「お前、なんか色々忘れたみたいだから・・思い出すまでゆっくりしていけよ。」




そして君と俺との生活は幕を開けた。




彼女は勝手に俺の所持品を探って、少しビックリしてみせる。

「お前・・なんでピストルなんて・・・・・・----。」

弾があるのを確認してそれを抜き、ポケットにしまう。


「危ないもん持ってるんだな、お前・・。」

「・・・・なんで持っていたのか・・思い出せない。」

「ふーん。」


そして次々と取り出して、バーコードと名前写真の入ったカードを見つけた。

「アスラン・ザラ・・・・・だって!お前じゃあアスランだなっ!---歳は・・13か?」

キャッキャと喜んでいるその子を不思議な気分で見つめていた。


----・・なんで、この子は赤の他人の俺に・・そんな興味がもてるんだろう?


少し固めの金髪を振り、金褐色の目を細めて向けてきた。

「・・・・、お前・・どうした?」

そう、呆然と見ているアスランにカガリは近寄り微妙な顔をする。


「・・お前、笑ってみろ」


そう、急に言われて「え?」と返した。

「アスラン・・笑えるか?---お前全く顔動いて無いぞ?」

そう言われて表情を動かそうとしても中々巧くいかない。引きつった感じになってしまう。

「貸せ。」

両手で頬に触って、ギュッと横に引かれた。


「いたっ・・いたたた----痛いってっ!!!」

そう声をあげているとべチンと頬から手を離される。

「な、な、急に何するんだ、君は!!!!!」

そう声をあげて怒鳴ると、プッと笑い声が聞こえた。


「なんだ、笑えないのに・・・怒れるのか、お前!」


おかしそうに笑われて何だかムスッとすると「ごめんごめん」と言われて背中をバシバシ叩かれる。


「傷が痛いんだが・・・」

「あ、忘れてた。すまない」


すると次は優しく背中をさすってくれる。

「大丈夫か、ほんとボロボロだなお前。」


そして不器用に巻いてある包帯を眺めた。

「・・・君が巻いてくれたのか?」

「君じゃない、カガリだ。」

そうムスッとしてカガリは同じベットに腰を下ろす。



「実はな、同年代の友達って・・・・初めてなんだ。私」



俺も記憶の限り・・良く覚えていないが、周りは大人ばかりだったような気がする。

カガリは少し嬉しそうに唇を上げて微笑んでくれた。

「・・・良く覚えていないが・・たぶん、俺もだ。」

そう言うとカガリは嬉しそうに顔を輝かせてから手を出した。



「宜しくなっ!!」



負傷した手を勝手に取りブンブンと振られる。痛いが・・不思議と嫌な気分はしなかった。









そんな・・出会い。

















「アスラーンっ!!」



そう声がして見あげると、木に登ったカガリが笑いながら幹の上に立ち大きく手を振っていた。

風が吹きワンピースが舞って木の葉が散る。

「みえてるぞーカガリ、下着」

本当は見えそうで見えなかったがふざけてそう声をかけた。

あれから一ヶ月、アスランの怪我はほぼ完治し庭でのんびりと読書をしたり二人で戯れたりしていた。

「ッどこみてんだ・・・あっ!!!」

そうズリッと音がしてアスランは急いで木の下に走る。

「・・ッ・・・。-----・・?」

「馬鹿かお前は・・・」


カガリの顔の目の前にはどアップにされたアスランの顔が映った。

「お・・お前がっ・・お前が・・変な事言うから・・っ!!!!」

そう真っ赤になって顔を逸らして、お姫様抱っこを下ろせと大声を上げる。


「---・・誰も喜ばないぞ、お前の下着見ても。」

「煩いっ!!!失礼な奴だなっ!!アスランの馬鹿!!」


そしてまた早く下ろせと命令してきた。

「・・・、普通・・ありがとう、だろ?」

「はいはい、ありがとう。早く下ろせ。」


完全に不機嫌になったカガリにそう言われればアスランも少しイラッとする。


「下ろさない。」

「はぁ?」


木陰にドンと腰をかけ、アスランはカガリが逃げないようにグッと腕に力を入れてしまう。

「ば・・馬鹿野朗っ!!!早く下ろせって・・・・」

「い・や。」

「あーもう、感謝してるからっ早く下ろしてくれっ!!!!」

そしてカガリのぺったんこの胸元に眼を下ろし、紐を手繰り寄せる。


「何処触って・・っ」


そうカガリが抗議してくるのを他所に先に着いた赤い石を眺めた。


「-------・・綺麗な石だ。」


そう言うとカガリはああと頷いて、"お父様が・・下さったんだ"と微笑んだ。

「カガリは父上が好きなんだな。」

「アスランは・・自分のお父様がすきじゃないのか?」



・・・好き・・?



「----・・誰かに・・そんな感情は持って接した記憶は無い。」

そう答えるとカガリはシュンとして下を向いてしまう。


「ご・・ごめん、---変なこと・・。」

「カガリが慰めてくれれば大丈夫だ。」

「ほ・・本当か?」


「ううん、ただ膝枕とかしてほしいだけ。」



ふざければまたカガリからボンという音と共に真っ赤になるのが見えた。

アスランはこうやって真っ赤になるカガリを見て真剣に面白いなと笑う。


「面白よな、カガリは」

「人で遊ぶなぁ!!!!!」


そんな感じの日々を、結構長い間続けていたような気がする。






そして、カガリの誕生日の日が来た。



使用人それに何だか良く分からない偉い人間達・・。

全てに祝福されて、-----だが、その間アスランは一人っきりですごしていなければならない。

この館に住む事は許されていた。しかし食事やこの家の行事全てに出席は許されない。


「-----・・・・ふぅ。」


たった一人の部屋で、月を見上げて溜息を付いた。



・・・なんてつまらないんだろう。

そういえば、前も自分はこんな思いを度々していたような気がする。

ベットに横になりボーっとしていた。

いつまで此処に居られるんだろう。いつまでこうやってカガリと二人で過ごしていけるんだろう。

・・・・・カガリと一緒に生活するのは・・なんて面白いんだろう。

ごろんと寝返りを打って、考え事にふけった。

俺もカガリの誕生日には・・何かあげたい、使用人や父親からじゃもらえないものをあげたい。

あんなふざけた態度を取っていても・・カガリには感謝してるし・・それに。


・・・・好き、なんだと思う。


カガリがいなくなると急に寂しくなるのも・・そのせいだろう。

-----・・だが、どうせ今日は会えない。カガリはパーティーで忙しいと言っていた。

つまらない。





いつの間にか寝てしまい、キィッというドアの音でピンと眼が覚める。

癖・・だろうか、ガバッと起き上がってその方向を見た。


「・・っ!ビックリしたぁ・・どうしたんだよ。いきなり飛び起きて。」


いつもは着ない可愛らしいレースの着いたドレスに身をまとってカガリは人差し指を口に立ててから音がしないように戸を閉めた。

「・・ちょっと、眼盗んで来たからさ・・・。」

ベットに駆け寄り、ニッコリと笑って何かを出された。

「これ、ケーキ・・・お前と食べたくて、持ってきたんだ。」

そう二つのケーキを出してカガリはにこりと笑って見せた。


「・・・、俺・・と?」

「ああ、・・アスランと」


電気をつけて、アスランは苦手な甘いものに頑張って手を付けた。

「美味いだろ?私このショートケーキ大好きなんだ!」

そう微笑むカガリが可愛くて、嫌いなはずの甘いものが何だか美味しく感じられる。


「そうだ、俺から・・何かプレゼントしたいと思っていたんだ・・。」

「え・・、本当か?」


カガリは何だ、何だと嬉しそうに眼を輝かせた。



「俺をあげる。」



そう真剣な顔で言うとカガリは意味が分からないようで、?を顔に浮かべた。

だから傍によってお互いに甘いクリームの味のする唇をやや強引に重ねる。

「?!!」

カガリは声にならない声をあげて、いつもの様に抵抗して見せた。

唇が離れるとカガリは真っ赤のままキッと睨んでくる。


「っお前・・!また私で遊んで・・・」

「愛・・いらないか?」

「なっ・・な・・・----」



そうまるで林檎ような顔を見て噴出して笑ってしまう。

「馬鹿にするなぁ!!」
「してない、愛してるだけだ。」


「嘘だっ!!いつもそうやってお前は私をからかうんだっ!」


急いでケーキを口に詰め込んで早々に立ち去ろうと背を向けたカガリを後ろから抱きしめる。

「嫌いって・・言われても、俺はカガリが好きだよ。・・きっと、ずっと。」

そう囁いてカガリの顔を後ろから覗き込むと真っ赤になったまま涙目になっているように見えた。


「っ・・馬鹿。アスランの馬鹿。」



小さく呟いてからカガリは振り返らず部屋を出て行ってしまった。
















-------・・アイツは馬鹿だ。





私の気も知らないで・・・---愛してるなんて・・そう簡単に口にしないで欲しい。








木から落ちた時。


必死になって助けてくれた事を、カガリは知っている。


いつもからかう癖に、・・・時々・・本当に優しい眼をしている事を・・。

知っている。



---------・・・その・・顔が、好きでたまらない。





だから・・そうふざけた態度で言われるのは・・嫌だ。

本当・・だと・・いうのなら、もっと真面目に言って・・ほしい。






そんな、淡い恋を抱いていた。













「そういえば・・カガリ、俺の銃は?」




「え・・・?」



夏に入ろうとするとき、そう言われ驚いた。


「必要ないだろ?あんな危険なもの。」


そう答えるとアスランは寂しそうに笑う。

「カガリには・・一生手にして欲しくないよ。あんなもの。」

そしてまた、何処?と聞かれた。


「ど・・どうするつもりだ?-----・・記憶、もどったのか?」


だがアスランは答えない。黙って銃は?と手を出すだけだった。

「嫌だ・・渡せない・・。お前-----・・どっか行っちゃう気だろ・・・、銃が戻ったら・・・。」




危ないところへ。


良く分からないが・・アスランを発見した時、あの傷・・・。銃、・・バーコード入りのカード。

どれ一つとっても、アスランがいい場所に居たとは思えない。だから、ずっとこのままでいて欲しいとカガリは考えていた。



「・・・カガリは・・・・・俺に、どこかにいってほしくないって事か?」


そう悪戯に意地悪な質問を投げかけられカガリはムッとせざるおえなかった。



酷い。


気が付いてるんだろう?



私が・・アスランを好きな事に・・




「・・・・もし・・私が、行ってほしくないと・・行ったら?」

逆に挑戦するように見あげるとアスランはクスッと笑う。

そして手をカガリの頬に当ててクイッと顔を上にあげて眼と眼が合った。



「----・・・・・・、行く、よ。それでも・・俺は。」



そう冷ややかな笑いにゾッと背筋に悪寒が走る、そしてアスランはそのままキスをしようと顔を近づけてきた。


「や・や・・・っ-------アスラン・・」


そう迫ってくる顔に必死に抗議する。



行かないで。----危険な場所に・・・いかないで・・・

血だらけで、アスランを見たとき・・・正直死んでいると思った。

あんな・・痛い思いを・・・・・する、所になんて・・・いっちゃ駄目だ。



「アス・・・っ・・」









-------いかないで。









優しく重ねられた唇。そして直ぐに強引に割り込んできた舌。




・・・・・・・---別れの口付け。




そう、判断せざるおえない。



唇が重なっている間、ずっと、ずっとカガリは涙を流していた。













結局、カガリは銃を渡さない。

しかし、心配になって・・その銃の入った箱の鍵を解きあける。

「・・ちゃんと・・・・あるよな。」

箱はちゃんと机に固定されてるし・・コレごと持っていかれる心配は無い。

そう思って、溜息を付いて鍵を赤い石の付いたネックレスに通し首から下げベットで寝てしまう。











---------・・カガリ。






そう声をかけられたと思いガッと顔を上げる。

「・・・・・----誰も・・いない・・。」

気のせいか?そう思っていると、生暖かい風が流れ込んできた。



「--------アスラン?」




そっとベランダを見ればガラス窓は開き、外はスコールで湿った匂いと風が流れ込んできていた。

直ぐにパッと箱を見ればちゃんと鍵の掛かった状態で置いてある。

・・・・良かった。






-----------そう、錯覚した。



ザーッと音を立てる雨の中、屋根の付いたベランダに出るとバンッと大きな音がしガラスの割れる音が聞こえた。

「・・・?」



まさか・・




ガッと胸元を探る。


「--------・・な・・い。」





ない。







赤い石のネックレスも、一緒に付いていた鍵も・・・




ない。







そしてすぐにキサカがドアから入ってくる。

「カガリっ・・ウズミ様が何者かに狙われた!!命は無事だが・・カガリも危ない、非難するぞっ!!」

「・・・キサカ・・・・・・っ・・。」




-----・・お父様・・を?何で・・?






そう、矛盾した心で・・ずっと、ずっと過ごしていた。











あの時まで。




















「カガリ・・カガリは此処に隠れていなさい。」
「はい・・?」


18の時、お父様の事務室に呼ばれる。

しかも、待ち合わせの五時間も前から来るようにといわれていた。

そして急に言われた事に驚いていると、小声で早くとせかされた。

丁度身体がすっぽりとはまる物置の扉の中に身体を折って座って僅かにあいた隙間から誰かが入ってきた音を聞いた。





「-------やはり、君なのかね。」


そうお父様の声がして、相手の返事は無い。




「・・-------君には・・後悔という、言葉が似合いそうだな。」



そうお父様が冷徹に言い放つ様に相手は誰だろうと考えていた。







「アスラン」






そう聞こえた。




気が-----した。

















バンッ!!!!!!!





そう、強い音で一瞬鼓膜を押さえこんみ、すぐ眼を開けて隙間から確認する。




・・何が・・おきた?






お父様の姿は視界から確認できなかった。




だが、火薬の匂いと鉄の匂い。








「・・・・おと・・う・・様・・。」





思いついた事柄を否定するようにゆっくりと戸をあけて外に出た。









「---------・・・・ッ・・お父様・・お父様ぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!!」








銃を握った事の無いカガリでも良く分かる。




左胸にある、心臓の位置が。



脈打つようにドボッと噴出す血が。









そして入り口に落ちていた赤い石が意味するものが。







































































+++++
あとがき
アスランのこーいうキャラも有りかなって・・・。
管理人は常にアス→カガ好きです。たまには逆もと・・思いました。
2006.04.10