「これはこれは・・カガリ・ユラ・アスハ様ではありませんか!」
「・・ああ、失礼させてもらっている。」
そう愛想笑いを振りまいていると、何処からともなく若い男達が集まってくる。
「アスハ嬢・・これはこれは・・。」
「見ぬ間にまた美しくなられましたね。」
「・・よければ今夜・・」
そう誘いを受ける中、依然とした態度でにこやかに振舞う。
「私は有意義な誘いにしか、のりませんから。」
そう笑った顔でスパンと言い切り、その驚いた男達を跳ね除けるように歩いた。
カガリの言う有意義とはお互いの会社が巧く連携を交わせることを意味している。
だが実のところアスハカンパニーに並ぶ会社など無い。
つまり、カガリに有意義な誘いは来るはずがない。
「下らない・・そう思わないか?」
急にそうふられてアレックスは少し驚きながら「そうですね」と答える。
「どいつも・・アスハの金や権力狙いだ・・全く、馬鹿らしい。---お父様の会社を易々他のものに渡せるはずがないだろうに。」
「お父上を・・随分と尊敬していらしたのですね。」
「・・・・・当たり前だ。---誰よりも愛していたし、尊敬していた。」
そしてキッと琥珀色の目に睨まれて、直ぐに力を抜く。
「そうだな、お父様の話でもしようか。」
そしてパーティーの食事を食べながら、カガリはアレックスに父の話をした。
優しい事、暖かい事、仕事熱心で・・でも本当は情に厚いこと。
人格者であられて、人間的にも尊敬していた。当然その商業のスキルもすべて・・尊敬するに値する人だった。
「お前の父はどうだ?---尊敬できる人間か?」
そう・・その、言葉に・・カチンと頭の中で音が鳴った。
「・・・・はい、それはそれは・・立派な方です。」
「-----そうか、それは良かったな。」
ビチャッ!そう音がしてアレックスは顔をしかめる。
「・・・真っ赤だ。お前。」
カガリは思いっきり自分の持っていた赤ワインをアレックスの顔にかけていた。
そして直ぐにアレックスが持っていた赤ワインを自分のドレスにかける。
少しするとその光景に驚いた周りの者達がコソコソと噂を始めた。
「・・・出るぞ、目立つからな。」
真っ白のドレスは赤ワインで綺麗に赤く染まっていた。
丁度・・胸のあたり。
そうしてアレックスは直ぐに、血のようだと感じてしまう。
グッとカガリはアレックスの手を取って足早に会場を後にする。
そして廊下に出た瞬間、掴む側と掴まれる側が変わった。
「-------・・どういうつもりだ?アレックス」
「・・。」
濡れたサングラスをアレックスはゆっくりと外して見せた。
・・・・・、
「綺麗だな、お前の目は」
「っ!!!!」
そう、出会ったときのセリフ。
「行くぞ、まだまだ・・ここでも人の通りは激しいからな。」
そしてまたカガリはアレックスの手を掴んで、自分の控え室へと向かった。
「・・・・・どういう・・つもりだ?」
控え室に戻り先に声をあげたのはアレックスだった。
「・・・・・、あす・・らん。」
「・・・・----」
そう、愛しそうに名前を呼ばれて、ぎゅうっと抱きしめられた。
「遭いたかった。遭いたくて・・堪らなかったんだぞ・・?お前・・。」
そう、官能的にカガリの手は動き優しくアレックスの背中をさする。
アスランが大きくなったのかカガリが小さくなったのかすっぽりと嵌ったカガリの細い体。
女らしさ、艶やかさ。-------・・・酔わされる。
「・・か・・がり・。」
-------どういう・・つもりだ?
はだけている肩に手を回そうと思えばいくらでも・・出来る・・が・・。
ゆっくりと・・確実に、優しく・・カガリの背に手を回す。
それを・・慎重にと呼ぶことを彼らは知っていた。
そしてカガリはゆっくりとアスランの腰に手を掛けて筋肉の付いた腹を触る。
直ぐに見つけた冷たく重いものを、カガリはグイッと押した。
「・・・・殺してみろよ、私を。」
そう・・その銃に手を当ててカガリは呟いて顔をあげた。
「・・・、ばれていたか。」
「当然だ・馬鹿かお前は」
カガリは吐き捨てるように声を出して苦々しく笑う。
「お前の為に・・二人っきりになってやったんだぞ?感謝しろ。」
「ベットのお誘いなら喜んで。」
カッとカガリはアレックスから離れて、ドレスに隠れた銃を手にする。
「お父様を殺した・・・お前を、私が迎えると思ったか?」
そう引きがねを引きそうになるカガリにアスランは両手を挙げた。
「いや、思うわけ無い。」
そしてニィッと微笑んでカガリに近づく。
「忘れられていると・・思ってたよ。---カガリ」
「・・・忘れるわけ無いだろう、お父様を殺した現場に私も居合わせたんだから。」
コツンとカガリは引き金を引かないままアスランの頭に銃を当てた。
「そうか-----・・なら、話は早いな。」
その銃口をアスランはゆっくりと下ろして変わりにカガリの額にキスをした。
「・・・・・・・---、恥辱罪で訴えるぞ?」
「はは・・この程度でか?流石に困るな。」
そしてその至近距離のままアスランはカガリの胸を掌で押して背中に腕を回した。
「・・ッ・・お前・・---どういう・・ぁ・・ん-----」
声をあげようとしたカガリの口をアスランの唇が塞ぐ。
そして溶あった唾液をカガリに溜め込むと拒否するように口から溢れた。
そしてドレスの上からゆっくりと脚から尻のラインを触る。
カガリは眼を見開いて、抵抗するようにアスランを押すが退く気配の無いアスランにカガリは苛立ちを感じた。
「っ・・恩知らずがっ!!!対外にしろッ!!!」
そうやっと離れた唇を遠くに突き放すように言いつけてキッと睨んだ。
「本当に・・綺麗になったな・・・・・カガリは。・・・他の男に見られるのが惜しいよ。」
優しい翡翠の色に、正直カガリは泣きたくなってしまう。
・・・・・・お前が。
そう、情を憎しみに変えて、そういってくるアスランをなお睨んだ。
「--------・・赤も、似合う。」
そうさっきワザと濡らした場所、赤いワインの付いた胸をアスランは笑いながら眺めてきた。
「・・・・お前の大好きな血の色だ。」
そう睨んで言うとアスランは低く笑い声をこぼした。
「・・・・真っ赤なドレスで・・俺の花嫁にならないか?」
「例え死んだとしてもお断りだ。」
そう言い放つとアスランは顔を少ししかめる。
-------・・寂しいなんて、思ってはいないくせに。
そしてアスランの頬をパシンッと叩いた。
「--------大嫌いだ。アスラン、お前が。」
控え室からアスランを蹴り出し、ガチャンと鍵をかけた。
「-----・・大嫌いだ。」
そっと、呟いて決意を固める。
・・・許さない。絶対に