] さいごには。





夕日が沈み、月が空に昇る頃。

「あーあ・・ついにこの日が来たわけだね----しかも、誕生日の日だ。」
「あらあら・・おめでたいじゃありませんか。」

そう同居中、キラ・ヤマト(24)とラクス・クライン(24)はマンションの401号室で一枚のはがきを見て会話をしていた。

「大体・・大学卒業してすぐって・・・就職したばっかりじゃ・・ねぇ、お金とか。」
「いえいえキラ、アスランは大学院に行ってるはずですから、まだ就職していませんわよ?」
そうしてお腹の膨らんだ場所をラクスは撫でる。
「でも・・僕らも早くしないとだね。出産終わったら、直ぐあげる?」
「今まだ予算的に辛いのであれば、いつでもいいですわキラ。籍だけ入れればいいのですから。」

そして幸せそうに微笑む、401号室の二人。当然隣の402号室はいつも通り慌しかった。

「カガリッ・・・今・・なんて・・・?」
「-----会社・・休みとるって伝えておいた。」
「何でッ!?せっかく無事就職も決まったのに・・・」
そう、今ザラ家の稼ぎ手になるはずのカガリがいきなり仕事で膨大な休暇を取ると言い出した。

「お前のせいだ馬鹿ッ」

そう少しイライラしたカガリに怒鳴られる。
「だって・・結婚式挙げて・・ハネムーンも入れたって・・・そんな・・九ヶ月?そんな休みとって・・・・」
「ち・が・う。誰がハネムーンで休暇取ったなんて言ったんだよッ」
「じゃあ何で!?」
暫しにらみ合う。一週間後から正式に夫婦になると言うのに。

「赤ちゃんが出来たんだよッ!!!!!」

そう大きな声を出して、おそらく隣のキラとラクスにも聞こえたであろう。
「は・・・・?」
「だ・・だから、産休も兼ねて休みとろうと・・・。式あげて何ヶ月か働いたらすぐ産休。それに育児休暇もとらないと・・・。」
アスランは目が点になり、カガリは顔が真っ赤だった。
「そういう事は・・・もっと早くに言うべき事じゃないのか?」
「・・・仕方ないだろう、気が付いたの今日の朝、しかも仕事場なんだから。」
ちょっと二人とも赤くなりながら会話をする。

「だ・・だとしても・・メールくらい・・・・」
「あって・・ちゃんと・・・報告したくて・・・・。」

伏目になりはにかんで笑って、ちょっと涙目になる。
そしてアスランを見つめる。
-----そんなカガリに、アスランは胸がキュンとしてならない、今すぐにでも抱きしめたい・・訳で---。
「---明日、土曜で仕事休みだから・・・一緒に病院行かないか?」
「勿論っ」
ガバッと音を立ててカガリに抱きつく。カガリは真っ赤なまま抱きしめ返して、ニッコリと微笑んだ。
「アスラン・・・。」
「---愛してるよカガリ。」

そして恐らく、炊飯ジャーがなるまでの間・・・長い長いキスが始まる。






*******






次の日、朝九時からカガリとアスランは産婦人科へと向かった。

「----、12週目ですね。」

「「じゅうに・・・」」
そして二人は目を見開く。
「---何で・・今まで気がつかないんだよカガリ。」
「いや・・働き出したばっかりだから・・・それに寝不足とかでホルモンバランスが崩れたのかと・・・」
半分くらいはお前のせいだとカガリは笑った。
「あ・・でも確かに---この頃少し太くなったかもとは感じてたんだけど・・・。」
「なんだお前・・私が太ったとでも言いたいのかっ」
「怒るなよ、太ったとしてもカガリは可愛いよ」
「可愛くないッ」
可愛いといわれ直ぐに真っ赤になる妻。その妻を愛しそうに見る夫。

医者は思った。-------このバカップルめ。

「ウェディングドレスが入らなかったらどうしようっ」
「-----大丈夫ですよ式は一週間後なんでしょう?なら安心です。」
そう医者に微笑まれカガリは安堵の溜息を漏らす。

二人で産婦人科を出て、どんな子供だろうと話しをした。
「アスランに似た・・女の子がほしいっきっとレノアさん見たく美人になるっ」
「俺はカガリに似た子が沢山生まれて欲しいな。」
「た・・沢山?」
「そ、沢山。」

喫茶店に入りアスランはブラックコーヒー、カガリは子供を思ってミルクを飲むことにする。
「週五日以上、七時には皆帰ってきて家族団欒で食事がしたいな・・俺は。」

-------自分が出来なかった事。

「あたりまえだっ、アスランがちゃんと帰ってこられるかに懸かってるぞ、多分」

・・・・ちゃんと子供には、辛い思いをさせないように。

「そうだな」
ちゃんと帰ってこられるように頑張って仕事をしないとな。
「あーでもお前、頼まれると断れないから・・沢山残業させられそうだよな。」
「頑張って片付けるよ。」
アスランは元からそうとうキャリアになることが予想されてるから、逆に心配になる。
「---ちゃんと、産む時は手・・繋いでてくれよ。」
ちょっと儚げな瞳にアスランは無意識に唇を近づける。

ちゅ

「アスランここ・・喫茶店ッ」
「あ・・そうだった。」
カガリもそれをOKのサインだと受け取り緩やかな微笑を見せた。
前より艶やかに女らしい笑顔。

「カガリはきっと・・いつまでも輝いていそうだな。」

「輝くって・・?まぁアスランはいつまでも優しいだろうな。」

そうして二人でまだ見ぬ子供に思いを馳せながら家へと帰っていった。






























































+++++
あとがき
さいごには。春爛漫というか幸せいっぱいのアスランとカガリ。
ちょっとさばさばとした関係になっています。
愛が冷めたわけではなく、「一緒にいて当然だ」という安心感からです。
・・・・大学卒業って24だっけ?(知らないのです。)
キラとラクスもラブラブっぽい。
2006.03.25