A-9 背中を押して





もうじきチャイムが鳴って、次の授業が始まろうと言うとき。



「ちょっとアスランッあんたねぇ!!!」

そう赤毛の子が入ってきて急に机にバシンと手を乗せられた。
クラス中の注目を引いてしまい少し嫌な気分になる。
「あんた・・・、まさか女?」
その急な発言に、クラスは騒然として・・アスラン自身驚く。
「女以外考えられないわッ、通りで綺麗な顔!!」
何の事だか分からず、ただ自分も騒然としていた。
「あんたねぇ、男なら告白の一つや二つしてみなさいッ!!
全く馬鹿、幾ら設定作ったって・・あんた達一向に進展しないじゃない」
「な・・何の事だよ?」
そう急な来客者に焦って、しかもちょうどチャイムもなり先生が来ないかとヒヤヒヤした。

「カガリよ、カ・ガ・リッ!!あのこったらネズミーランドの話楽しそうにしちゃって---なのに、あんたまだキスもして無いっ」

-----ブッ

何かを呑んでいたわけではないが噴出した。
「いい加減、男としての性に目覚めなさいッ!」
--------な・・なんでそんな事・・・フレイに言われなきゃ・・・。
「早くしないと・・良い奴と、合コンさせちゃうわよ。」
とどめ。そうフレイは悪魔的に囁いて、教室を後にした。
そして次の休み時間。

「って事をフレイからお聞きしましたから・・・私たち今日はお昼ご一緒しませんわ。」
「カガリには委員会とでもテキトーに言っておいて、僕らは僕らで仲良くしてるから。」



-------みんな・・なんでそんな俺たちの仲を気にするんだ?
いや、俺は早く恋人になりたい。でも・・カガリはそう見えない。
-----しかし・・・他の男に奪われるのは・・嫌だ。





「-------?あれ?---ラクスと・・キラは?」
「なんだか---委員会の用事らしいぞ?・・・来れたら来るって。」
屋上に行く途中、無邪気にそう聞いてくるカガリに少し罪悪感を重ね、また不機嫌にそう答えた。
-----「男としての性に目覚めなさい」・・・そんなの、とっくに目覚めてるのに。

「・・・・・。」

ただ・・カガリは、俺が変わった事を知らない。
男と言う性を・・持って生まれた本当の意味を理解してはいない。

屋上について折角二人きりで食べているのに、ろくに会話も進める気分になれなかった。
「・・・アスラン・・具合・・悪いのか?」
「---そんな訳じゃ・・。」

覗き込まれ、目を逸らす。
綺麗な琥珀色の目、金髪・・・血流の良い肌。
--------それら全てが・・魅了させてられている事に、カガリはまだ気が付いていない。

「--------?」

気が付かないから・・・手が出せない。告白も出来ない。
俺だってどんなに鈍でも・・たぶん、いや絶対カガリほどでは無い。

「やっぱ・・具合悪いのか。」
「大丈夫だから」

心配そうに眉をひそめて、覗き込んできて・・フレイの言葉もあってか早々に手を出したいと願ってしまう。
自分よりずっと細い指先がおでこに触ろうとしてそれを払いのけてしまった。

「・・・・ゴメン・・本当に大丈夫だから。」

--------触られたら、また手だしたくなるだろう?
今だって・・・我慢しているのに。
カガリは不機嫌そうな顔をしたがすぐに何かを思いついたようにニッと笑った。

「え・・・?」

グイッッと急に腕に細いものが巻かれ首が前に倒される。コンと音を立てておでこが何かにぶつかった。


「・・・熱は・・ない---みたいだな。」

近い。

「・・・っカガリ・・。」

・・・視線を合わせ綺麗な琥珀を覗き込んだ後下へと目線をずらせばふっくらとして実際柔らかい唇が見える。

「具合悪いなら・・言えよ?」
おでこが離れた代わりにカガリの端正で綺麗で・・可愛らしい顔が、目に飛び込んできて・・
しかも美しいまでに笑顔になっている。

腕が・・そっととかれそうになるのを止めてしまった。

--------もう引き返さない。・・・引き帰させない。

「----え?」


ちゅ


二度目のキス。カガリはたぶん一度目だと思っているだろうが・・・。

「--------・・・・?」

少しして顔を上げると、目が点になっているカガリの顔が飛び込んできた。
おどおどとカガリは声をあげる。

「・・・今・・なに・・・・・」
本当に・・・分かっていないらしい。

--------キスしてるんだ。俺たちは。

もう一度、次は中にまで事を進める。
「っ」
驚きで半開きになった歯に舌を入れて優しく唾液を混ぜる。

「っん---ぁん・・・」

時々開いた口から出る声は、女の子そのものだと思った。
少しすると落ち着いたようで甘く舌を絡めてくる。
---------よかった。

「・・ん・・ぁす・・らん?」

可愛らしく名前を呼ばれて、身体が熱くなっていくのを感じた。
やっぱり、幼馴染の感情は・・もう自分の中からは抜け落ちている。



----------カガリと・・"恋人"になりたい。


だが急に、カガリは身体を離そうと腕に力を込めた。



「・・・か・かがり?」

---今更・・・嫌だとか・・言うつもりか?カガリは。




「・・・私たち・・・・・、、幼馴染・・・じゃ・・なかったのか?」







----------幼馴染?



違う。










自分の中にはもうカガリを幼馴染として受け入れるスペースなど存在してはいなかった。































































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あとがき
「アスラン漢になる編(笑)」って訳で、山場が遅いな〜と。(まだ言ってる)
題名の背中を押したのは仲間たちつうことで。
でも次回で終わりです。(多分(エ))
2006.03.26