「・・・・ばっかじゃないの?」
そうグラウンドの端で、顔面にボールを喰らったアスランにキラは呟いた。
「--------・・。」
「アスランっ?!危ないっ」
「え・・。」
ドコッ
そんな事があって、アスランはまさかで顔面にバスケットボールがぶつかった。
「----見惚れすぎだから、カガリの水着に。」
面目ないとアスランは肩を下ろす。
そう、今日は男女別の体育で女子は水泳、男子はバスケだった。
「・・・・・しかたないだろう。」
カガリは着痩せの逆・・服を着ていると案外がっちり見えるのだが、実際は凄くスタイルが良くて細い。
それが、バスケの試合中に目に飛び込んできて・・・時が止まった。
--------否、俺だけ止まった。
「まったく・・馬鹿としか言いようがないね。」
ムゥ先生にも「らしくないな〜」と笑われる。
「色ボケも大概にしておけよ」
とまで言われてしまった。
「・・・・・あぁ-----もう。」
ホント、駄目だ。この頃・・・・・・・、カガリの事になるとその他の事が手に付かないような気さえしてくる。
だが、そんなんでは駄目だとバシッと自分に言い聞かせていた。
「アスラン、カガリを好きになってから・・結構ダメダメだよね。」
キラからのその言葉にギクッとする。-----だめだめって。
「さっさと付き合っいなって、そしたらそれも収まるから。---水着姿で硬直なんて・・恥ずかしいにも程があるでしょ。」
・・・・?
「なんで付き合うと収まるんだよ。」
-----カガリの水着姿だったらいつだって硬直してしまいそうだ。
「は〜、、、鈍だなぁ〜アスランは。」
前にカガリにも同じ事を言われた気がして、眉間にしわが寄る。
「だって、考えても見て?つきあえばいろいろな事出来るでしょ?そしたら、水着姿じゃうろたえなくなるよ。きっと、」
---------色々な・・事。
「・・・・。。。アスラン顔赤すぎ。」
「煩い・・・。」
恋人で言ういろいろな事、腕を組んだり・・それだけじゃない。
唇でキスをして・・・、身体を重ねて・・・・・・・・・。
----------そんな事、考えたら考えただけ・・顔から火が出る。
「・・・・・・・なんでアスラン・・そんなに初いの?」
「俺が聞きたい・・。」
勉強だって・・運動だって、ほぼ頂点に君臨し続け、女子の憧れの的アスランが、こっちの方向にめっぽう弱い・・・。
そう思うだけで隣のキラは噴出してしまう。
「笑うなよ・・。」
「いや・・・余りにも面白くて。」
必死で笑いを堪える親友に、アスランは少し敗北感を感じざる終えない。
「いいな、お前はラクスと上手くいってるみたいで。」
「まぁ、そこら辺僕の方が器用だからね。それに、ラクスはちょっと今までと違って特別。」
そうして愛しそうに微笑む親友が、酷く羨ましい。
いつも通りキラの部屋に着き、宿題をしてから適当な話をしだす。
「ホントはね、今日もラクスと遊ぶ予定だったんだけど・・・」
あぁ、だからこの頃余り一緒に帰らないのかと納得がいく。
「なんか、カガリの下着買いに行くからーって、」
--------は?
「僕は当然知ってたけど、カガリまだちゃんとしたの持ってなくてさ。買いに行く事になったんだって。」
「ちゃんとしたのって・・・。」
「今まではスポブラだったからねーカガリ、ちゃんとワイヤー入ったの買ってくるんだって。」
そーいう事ではない。
「---ちょっとは、女の子としての自覚・・出てきたと良いねアスラン。」
ポンと肩を叩かれ、さり気なく同情されている事に気が付いて腹が立った。
「あ〜でも、なんかフレイも一緒みたいだから・・・・・そーとー派手なのは買わされるだろうな〜。」
派手・・・・・カガリが?
「ラクスはお姫様っぽいので・・フレイは女王様系だし-----ミリィは似合うの選んでくれそう。」
---------な・・何でそんな事知ってるんだ??
「え?やだなぁアスラン、そんな軽蔑した目で見ないでよ。ははっ」
笑っているが紛れもなくどす黒いオーラが見え隠れする。いったい何なんだ、この幼馴染は。
「誰にしても、期待できるセンスの持ち主だから・・・アスラン楽しみにしてれば?」
「なっ・・何をだっ・・!!」
「え・口に出されたい?」
意地悪く言われ、うっと息を呑む。言われなくたって分かるさっ言われなくたって・・・・。
そして長い間グルグルと考え込んでいるとキラは呆れて話題を逸らしてくれた。
「そうそう、今度ラクスとネズミーランド行かないかって話になってさ。」
-------ノロケか?
「アスランとカガリも一緒でダブルデートにしないかって。」
「で・・デート?」
「うん、ダブルだけど。」
ダブルなら・・・まぁ緊張せずにいけると胸を撫で下ろす。
「で、途中でワザとはぐれて・・デートに持ち込むと。」
「は?」
-------カガリと・・デート・・・。
「その方が、都合良いでしょ?アスランも・・僕も」
「え・・あぁうん。」
「ちゃんとアピールするんだよ、"幼馴染じゃない、恋人なんだ"って」
「あ・・・あぁ・・・。」
-------・・・、
「そんな思い悩まなくても・・・シチュエーションが揃えば、あとは勝手に身体が動くよ。」
キラは男ってそーいうものと笑いながら言って見せた。
帰ろうと玄関に行くと丁度帰ってきたカガリと出くわす。
「あ、お帰り・・カガリ。」
「あぁ・・ただいま、アスラン。」
カガリはやや伏目がちなのだが、気にしないように心がけさっきキラと話したことを告げた。
「こんど・・・一緒に、ネズミーランドいかないか・・。」
「え・・・。」
カガリは少し頬を赤らめて、確認するように覗き込んでくる。
その仕草に面喰い、緩みそうな頬を正した。
「-----キラとラクスも一緒に。」
そう言うとカガリはちょっと悲しそうな顔をする。
-----・・デート、したかったのだろうか。俺と
思いあがりだと思ったが、それでも嬉しくて、目を細めた。
「あ、あぁ・・いいぞ!楽しみだなっネズミーランド!!」
元気を無理やり戻していったカガリが可愛くて、背を向けて部屋に向かうカガリを何となく目で追う。
-------カガリと・・恋人になる。
そう心に言い聞かせて、その家を後にした。