「アースーラーンッ!!!」
まだ私は幼くて、ランドセルを背負っていたから・・おそらく小学校低学年だろう。
「カガリッ!!何でそんな高いところにっ・・・!!!」
「あ!僕も登るッ」
「キラッ!?馬鹿!!もう、降りてこられるのか?!!」
昔から私たちの世話焼き係りとして存在し続けるアスランは今と同じように眉間を押さえた。
「降りられるっ!!馬鹿にするな!!」
そうは言うものの、子供からしてみれば結構高い木に登っていたような気がする。
ちょっと・・恐くて、でも・・そういった矢先降りないわけにも行かない。
「・・・・・じゃあ降りて来いよ。」
アスランは呆れた目でこっちを見て深くため息を付いた。
--------っコイツ。
降りられないと思ってるっ!!!
当時・・今もなのだが、負けず嫌いに火をつけて、絶対一人で降りてやると心に決めた。
「カガリ〜大丈夫?抱きとめようか?」
キラは少し心配そうにこっちを見て手を伸ばしてくれたがそれを断った。
「平気だッ!!飛び降りるッ!!」
「「はぁ?!」」
二人はその高さからでは無理だと大反対するが私の意地はそんなものでは収まらなかった。
「てい!!!」
ストン・・・そうとても綺麗に着地できたと今でも思う。・・・・・だが、
「うわ〜カガリ巧い!!」
キラは手まで叩いて喜んでいるのだが・・。
-------グキッと・・そう体内で音がしたのは分かっていたし、実際痛かった。
ちょっと苦しげに目を細めるとアスランは「いわんこっちゃない」とまた眉間にしわを寄せる。
「ほら見ろっ!大丈夫だっただろう?---アスラン?!」
アスランはグイッと腕を引っ張り
「手、すりむいてるし。」
着地の時に地面についてしまって少し擦りむいていた。
「---な、舐めときゃ治る!!」
「貸してみろ。」
ペロッと舐められていい奴だな〜と感じた。そしてぎこちなく立つ足元を見て
「・・・・背負ってやるから、無理するな。」
そう言われ面を食らう。ち・・ばれてたか。
「・・・もしかして・・くじいた?」
そしてアスランはおんぶしてくれようとする・・・が。
「・・・・・・・・・・っ・・カガリ・・重たい・・・・。」
「し・・失礼だなッお前!!」
スパンと頭を叩き足を引きずりながらスタスタと二人の先を歩いた。
今思えばあの頃は体格も一緒だったし・・無理も無い。同じ体重の人を背負うのも難しいだろうし。
ムカつきながらも歩いていると、さっきのアスランの態度は少しかっこよく思えた。
-------多分初恋と言うやつだったのだろう。
・・小さい時、一度・・・私はアスランに恋をしていた。
でも、一緒にいられればいいというとても安直な恋心。
「アスランは・・好きな人いるのか?」
ませた私はアスランにそんな事を簡単に聞いてしまった。
「・・・・・・・いるわけないだろ?」
そう呆れたように返されて結構ショックを受けた記憶がある。
「なーんだ、カガリのこと好きなのかと思ってた。」
キラはあっけらかんと隣で言い放ち少々焦って回答を待った。
「----だって、カガリは幼馴染だろ?」
----------・・・。
脱力して声が出なかった。
「アスランとカガリが結婚すれば、僕ら義理兄弟になれたのにねっ・・残念。」
「あ〜そうだな、じゃあカガリと結婚してもいいかもな。」
じゃ・あ?
「・・・・・・・私はアスランは嫌だ。」
そう言い切って駆け出した。
「・・・・・・・・・?」
その時、私はずっとアスランと幼馴染でいる覚悟を決めたような気がする。
----でも、やっぱり時がたつにつれ・・彼は男になり私は女になる。
そんな簡単な事で、私のその時の決意は崩れそうになっていた。
「・・・・・・・夢・・?」
幼い日、まだ彼と自分が完璧な幼馴染だった時。
--------、じゃあ・・だもんな。笑っちゃうよ。
昼、ラクスとキラとアスランで屋上に向かう。
どうやら、キラとラクスは接点が合ったようで仲良く話している。
「ちょっとまってね。」
キラはカチャカチャっと器用にヘアピンを動かし鍵穴を回す。
ギィッと少し重い扉を開ければ、綺麗な青空が広がっていた。
「わぁ・・綺麗ですわッ!!お誕生日日和ですわね!」
そう言われて、どうやら祝ってくれる気らしいことに気が付く。
「16歳か・・早いね、僕ら。」
「そうだなー・・あ!私結婚できるぞ!今日から!!」
そう言うとアスランは「あ・・そうか」と声をあげた。
バースデーソングをラクスが美しく歌い上げ皆で拍手する。
「早いな・・もうそんなに経ったのか・・。」
アスランは遠目に昔を振り返るような目をする。
「・・・・・あぁ。私たちが出会って、15年目だな。」
キラとラクスはどうも二人の世界に入っているように見え、付き合ってるのかな〜と思った。
「・・あ、ちょっと僕とラクス----先戻ってるから。」
そう言われ、やっぱりつきあってるんだろうなと思いそれを承諾する。
「-----あの二人・・付き合ってるみたいだな。」
「え?---そうなのか?」
疎いな・・アスランは。----------昔からだが。
でも・・この状況はチャンスかもしれない。
・・・・、覚えてるか?アスランが私を恋愛対象外だと宣言したあの時の事。
「お前・・覚えてるか?昔・・・私と結婚するとキラと兄弟になれるからしたいって言ったの。」
「・・・そんな事・・言ったっけ?俺。」
アスランは気まずそうに俯く。
「それに・・怪我した私のことおんぶしてくれようとして、「重たい・・」って言って結局背負えなかった・・とか。」
苦笑するとアスランは半ばムキな顔で
「・・今は軽々出来るからな。」
-------負けず嫌いも相変わらずだな・・。
「はいはい」と笑うとアスランに腕を捕まれ引っ張られる。
「うわぁッ」
グイッと抱き上げられ、お姫様抱っこをされた。
-----ヤバッスカートが・・。
そんな私の思いと裏腹にアスランは少し笑って
「な?」
-----反則だろ・・その笑顔は・・。
思いっきり見入ってから目を逸らし口を尖らせアスランを見る。
「わ・・分かったから・・・下ろせよ恥ずかしい。」
「誰も見てない。」
「そういう問題じゃないッ」
スカートが下に落ちて、絶対下着が見えていると確信するしさらに風で太ももがスースーする。
膝が上がっているせいで上に乗っかっているスカートも徐々に下がってきていた。
「アスランっ!」
アスランは気が付かないようで・・でも言うのも恥ずかしいから目で訴える。
「・・お気に召しませんか?姫。」
ふざけてそう言われて、頬にキスをされた。
「・・っな・・。」
ホッペに手を当て見あげると悪戯そうに笑うアスランがいて、ちょっと不機嫌になる。
「・・・・・・・あ・・。」
笑っていたアスランの顔が一瞬とまったように見えてその目線の先を目で辿る。
「「・・・・・・・・・・・。」」
自分の下着が見え隠れしている場所に注がれている事に気が付き真っ赤になった。
グラッとアスランの身体が揺らぎコンクリートに倒れこんでしまう。
「-----っつぅ・・。あ・・・・アスラン?!」
どう考えても打ち付けられた感じはしない・・、アスランが庇ってくれた。
自分はアスランの足の付け根に乗っかっている、直ぐにアスランを起こしてやった。
「だ・・大丈夫か?」
至近距離で話しかけるとアスランは目を逸らして曖昧に返した。
「----わ・・悪い。」
そう恥ずかしそうに言われさっきのことを思い出す。
「・・あ・・・別に・・さっきの事なら・・。」
アスランの上に乗ったまま話しているとアスランは急に真剣な顔になる。
「・・手・・見せてみろ。」
出すと軽く擦り切れているのが分かった。
「あぁ、この程度なら舐めときゃ治るよ。気にするな。」
手のひらからじわりと赤く血が出ている。
ちゅっと音がしたと思うとアスランはその傷にキスをして舐めている。
-------そういえば、小さい頃よくこんなことしたな・・。
赤くなりながらぼんやりそんな事を思い出していた。
----でも・・あの頃とは体格も心も・・違う。
アスランは舐め終わっても中々手を離そうとしなくて少し不思議に思った。
「-------近いな・・俺たち。」
当然の事、私はアスランに乗っかっている、でも恥ずかしくなり離れた。
昼休みも終わると思い二人で腕を組んで階段を下ろうと扉の目の前まで行った瞬間、
半開きになったそこから思いがけない光景が目に飛び込んできた。
「-----ん・・っぁ・・。」
----------・・・・・・・。
「「!!!」」
声になら無い声をアスランとあげてしまう。
だってキラとラクスが熱烈なキスをしているんだから・・・。
暫くすると唇を離し、見つめあい抱き合っている。
思わずその扉から遠退き、アスランと目を合わせパチパチとさせる。
「・・な・・・何だか気まずいよな?」
「あぁ・・。」
アスランは少し赤くなり、当然自分も赤いのだろうが・・・。
「・・・・・なんか・・凄いな。」
「そうだな・・。」
ほとぼりが冷めた頃二人で階段を下った。