今日は日曜で、自主練だがバスケをしていると一人の女の子がフラフラッとグラウンドを歩いているのが見えた。
「・・・あらあら・・部活ですの?」
「あぁ」と答えるとそのピンクの髪の女の子は申し訳なさそうに
「---終わってから・・よろしければ校内を案内していただけませんか?----高校から入学したばかりで・・良く分からなくて・・。」
「あぁ、いいぞっ!私は中学から此処にいるし・・・」
「本当ですの?嬉しいですわっ」
可愛らしく微笑まれ、微笑み返す。---なんだか女の子の象徴のような子だ。
そう・・感じた。
少し早く引き上げ、その女の子に校内を案内する。
「私は1組のカガリだっ・・お前は?」
「私は3組のラクスですの、よろしくおねがいしますわカガリさん。」
「よろしくなっラクス!あと・・さんはいらないぞ?同級生だしな!」
食堂、図書室・・それに屋上。
「・・あらあら・・鍵がかかってますのね・・残念ですわ・・・。」
「あ!私に言ってくれればあけるぞ?・・-----私が開ける訳じゃないんだが、知り合いにピッキングできる奴がいてさっ!」
「あら!では今度一緒に来ましょうっ、一度でいいから屋上に登ってみたいと思っていましたの!」
手をパンッと合わせ微笑むラクスを少し羨ましいと思って見つめていた。
・・・・だって、自分と違って凄く女の子らしいから。
途中まで一緒に帰り、別れてからボーっとその事を考えていた。
----------中途半端だよな、私は。
性格は殆ど男なのに、身体は女で・・・・。
----まぁだからと言って女らしくしようとは欠片も思わないのだが・・・。
・・・大体、似合わないし。女の子らしいものが。
家に着くとアスランの靴が見え、階段を上がりキラの部屋の前を通る。
「・・・・てっきり・・もう付き合ってるんだと思ってた。」
そうキラの声が聞こえ、思わず扉に回れ右をした。
----な・・誰の話だよ・・。
凄く微妙な気分になり、ダッシュで自分の部屋に行きTシャツと短パンと下着を取って風呂場に向かう。
汗で濡れた下着を外すと、少し女らしくなった自分の身体が見えた。
「-------・・。」
女らしいと言い切るにはあまりに子供で、でも昔とはまるで違う身体。
「・・・フレイぐらいあればいいんだけどな。」
ちょっと比較すれば見るまでもなく自分の負けである。
----かといって・・ミリィ見たく気が利くタイプでもない。
・・・ラクスのように女の子らしくもない。
「・・・・、はぁ。」
ため息が出る。--------・・・これじゃ、アスランについ最近まで女の子と扱われないのも納得いく。
一通り身体と髪を洗い、浴槽に浸かってさっきのキラの言葉を考えていた。
"・・・・てっきり・・もう付き合ってるんだと思ってた。"
-------・・考えなくたって、なんとなく決まっているじゃないか。
自分と・・アスランの事・・・・なんだろう?どうせ。
・・・・好き・・だが、それは何の好き・・なんだ?
恋愛なのか・・本当に?
風呂から上がり、Tシャツと短パンを着て自分の部屋に行こうとするとアスランにバッタリ出くわす。
「アスラン・・来てたのか!」
わざと大げさに声をあげてそう言った。当然知っていたが・・何となくさっきの会話を聞いたと悟られないようにしたかった。
「・・・・ちゃんと羽織れよ・・まだそのかっこうじゃ、寒いだろ?」
アスランはため息を付いて自分の羽織っていた服を脱ぎ、自分にかけてくれる。
何となく、嬉しくて・・・それに気のせいかこの服、アスランの匂いがする。
「・・・・ありがと、帰るときまで借りてていいかな?」
部屋に帰れば自分の羽織るものなんて沢山あるのに、と思いながら言うとアスランは快く承諾してくれた。
ちょっと嬉しくて微笑むとアスランも笑い返してくれる。
そして自分の部屋にはいってゴロンとベットに横になりその服の匂いをかぐ。
「-------アスランの匂いだ・・。」
袖に手を通し、ブカッとした服を抱きしめるように腹の上で手を組んだ。
-------好き・・なのか?
自問自答しても答えは出てこない。
ボーっとそのままの体制でいると急に扉が開きビクッとして起き上がる。
「--------カガリ?」
そこにはアスランが立っていて、半ば驚きながら体制を起こした。
「アスラン・・どうかしたのか?」
今考えていた事を悟られまいとすこし挙動不審に声をあげる。
「-----いや・・別に・・。」
そう言って彼は隣にボスッと腰を下ろした。
--------・・近い・・。
距離が凄く近く感じられ、少し胸が高鳴るのが分かる。
・・・もう・・幼馴染として彼を見れないのか?
そう思うと急激に哀しく感じられる。
恋愛対象として彼を見てしまえば幼馴染の関係には終止符が討たれるような気がしてならない。
アスランはそんな自分の気をお構いなしに濡れた髪の毛に触れてくる。
驚いたが、その手つきが優しくて笑みがこぼれた。
「-------・・」
頭をアスランの方に寄せると、アスランは微笑んで見せ背と腹に腕を回され横から抱きつかれる。
さすがに、え?と焦って少し身動きをとって声を出す。
「・・なんだ?また凹んでるのか・・?」
そういうとき、彼は少し甘えるのを知っていた。
だが、そうじゃないという顔をされ耳元に吐息がかけられて身体が火照るのを実感する。
「・・・・カガリ・・。」
------っ・・。
耳元で囁かれると、もう何だか自分の心臓が自分のものじゃないようにドクンと音を立てた。
絶対赤くなっていると思い恥ずかしくなる。
でも・・・・・当然の事のようにアスランは抱きしめてくる。
-----・・どう、思っているのだろうか?
「----アスラン?」
それが聞きたい。そう思って名前を呼ぶとアスランは今までに見せた事のないような艶っぽい笑い方をした。
その顔に不覚ながら見ほれて時が止まったようになっているとゆっくりと顔が近づいてくる。
---------え?
思わず息を呑むと、アスランはキスの場所を変えて額に柔らかい感触がぶつかった。
「・・・っ・・。」
直ぐにおでこを抑え、何された?と頭をめぐらせても答えは一つ。
-------おでこにキスされた・・。
恥ずかしさで涙目になりながらアスランを見るとアスランも少し赤くなってだまって部屋を出て行ってしまう。
・・・・・・・、彼は・・私をどう・・見ているんだろう?
幼馴染・・?女の子・・・・・・・・?
でも自分には明らかなまでに後者の素質は無いように感じられる。
「--------っ・・やり逃げするなよな・・。」
そう悪態を付いてパタンとベットに倒れこんだ。