季節は春になり、制服も学ランからブレザーへと変化する。
-------・・それだけの、変化なら良かったのに。
「-------・・え?」
キラに物凄く驚いたような目をされた。
「・・・・。」
何となく気まずくて黙り込んでしまう。
まぁ驚くのも当然かもしれない。キラからしてみれば、「お前の姉を好きになったみたいなんだ」と言われたようなものだし・・。
そう思っていたのだが、キラからの回答は別のものだった。
「・・・・てっきり・・もう付き合ってるんだと思ってた。」
「-------は?」
キラの部屋でシュークリームを食べながら、紅茶を飲む。
「だって・・君の誕生日過ぎてから・・アスラン異様にカガリの心配ばっかりするし・・他の男の子と話してると不機嫌になるし・・。」
-------そう・・だったか?
「あーついに僕、はぶられたかな〜って思ってたんだけどね。」
そしてキラは大きくため息を付く。
「で・・?何で未だに付きあってないの?」
-----そう・・来るのか?
「・・俺と・・カガリは幼馴染だし・・・・駄目だった時とかを考えると・・気が引けて」
「ふ〜ん、じゃ他の人が攫ってくのを指咥えてみてるの?」
意地悪そうに笑われ、ややカチンと来る。
「そう言う訳じゃ・・・!!」
-----それに、もし今は成功しても・・後々別れるようなことがあったら?
・・・幼馴染にも・・・・戻れなくなったら・・?
「まぁ・・僕はアスランならカガリ任せられるし・・。カガリだって絶対断らないと思うよ?」
だが・・・。
「・・男として好きなのか・・・幼馴染として好きなのか・・・・分からないじゃないか--------。」
そうして凹んでいると、キラは「ばっかじゃないの?」と怒り出した。
「男としてのアプローチなしに・・何最初から凹んでるのさ。やることやってから凹んでよね。」
グサッと胸に刺さる。そうなのだ、実際アプローチなどした事は無い。
-----腕は・・毎日組むのだが・・・。正直、それだって"普通の事だから"ですむ関係なのだ。
「・・・・・・・・・・・。」
「カガリ曰く・・ハツカネズミ発動だね。」
グルグルと悩む俺を見てキラは苦笑する。
「思い切って抱きしめてみれば?ホッペにキスとか・・。」
---・・・キス?!!!
「で・・出来るか、そんな事!!!」
「----別に唇にするわけじゃないんだから・・・。」
呆れられるのも無理はない・・・今まで誰とも俺は付き合ったことないし・・・。
-----なぜかキラは数人とだが付き合ったことがあるらしいが・・。
「・・・・・・・・まぁ、カガリが他の人にとられる前までには頑張っておきなよね。」
「・・・あぁ。」
キラの部屋を出ると、丁度部活から帰ってきて風呂から上がったカガリがいた。
「アスラン・・来てたのか!」
Tシャツ短パン・・風呂上りだから上の下着もつけていない。
---------はぁ。
心の中でため息を付く。表情に出てそうで少し目を下にそらしてしまった。
・・・・なんで目の前に・・好きな子がいるのに、俺は何も出来ないのだろう。
その態度にカガリは気まずそうに目を逸らしてしまう。
「・・・・ちゃんと羽織れよ・・まだそのかっこうじゃ、寒いだろ?」
湯冷めするからと自分の着ていた長袖をかけると、カガリは綺麗に微笑んで、
「・・・・ありがと、帰るときまで借りてていいかな?」
そう言われ「もちろんだ」と言うと、嬉しそうな顔をされてその顔に見入る。
・・・いつの間に、こんなに可愛く、綺麗になったんだ?
カガリは俺の長袖に腕を通し、長い裾をブラブラと振って歩いていた。
後ろから見ると、長袖のせいで履いているはずの短パンが見えず何とも厭らしい格好にも見えてくる。
顔に手を当て、真っ赤になるのを感じながら俯いてしまった。
--------・・・こんなんだから・・いつまでたっても幼馴染なんだ・・。
・・・男として、見てもらえるようにしないと・・--。
そう・・考えるのだが、中々行動には移せそうになかった。
キラの部屋に戻ると、キラは「は?」と言う顔をする。
「・・・・・どうかしたのか?」
そう言うとキラは「信じられない」と声をあげた。
「・・・だって・・今そこでカガリと話してたよね?」
「あぁ・・そうだが?」
「なんで一緒に部屋行かないの?」
「へ・・部屋なんて入れるか?!」
---好きな女の子の部屋なんて・・・早々入れるものではない。
しかも・・相手は風呂上りだし・・上の下着はつけてないし・・。
「・・大丈夫だよ。どーせアスラン手出せそうに無いんだから。-----ま、そこら辺僕も安心して見守れるよ。」
どうやら俺はキラに完璧へたれと思われていることに気が付き少々躍起になる。
「・・・い・・行ってくるが・・手出しても怒るなよ。」
そうちょっと喧嘩腰に言うとキラは
「あははッ・・アスラン・・・・もし今日、カガリの唇にキスできたら・・千円あげるよ」
本気で笑われ、---くそ、見てろよ。という気分にさせられてカガリの部屋に入った。
「--------カガリ?」
扉を開いて声を出すと、カガリはベットからガバッと起き上がる。
俺がかした長袖を身につけて、ベットで寝ていたらしい。
「アスラン・・どうかしたのか?」
ベットの上に座りカガリは少し赤い顔で此方を見あげている。-----風呂上りはなんとなく、色っぽく見えてならない。
「-----いや・・別に・・。」
カガリの隣に座り、濡れた金髪を眺めていると落ち着いた気分なのにドキドキと脈拍は早くなる。
-----・・そういえば・・少し前から、カガリの隣にいると脈拍が早くなったり赤くなったりする事は結構あったような気がする。
カガリは視線がくすぐったいと目を細め「どうかしたのか?」と微笑んできた。
小さい頃よりずっと大人っぽく、綺麗になった笑顔に面喰いして体温が上昇するのが分かる。
髪に触れると湿ったそれが指先に絡み付いてきて、カガリは少し目を見開いたが直ぐに細めて笑った。
「-------・・」
コテンと頭を肩に付けられ、リンスの匂いとカガリの匂いに頭がクラッとしする。
---------抱きしめて・・良いだろうか?
・・・それだって・・俺たちじゃ"当然の事"ですんでしまうだろうけど。
ゆっくりと手を伸ばし抱きしめると、カガリは驚いたようにちょっとジタバタする。
「・・なんだ?また凹んでるのか・・?」
-----凹んでいるのではないんだけど・・・。
「・・・・カガリ・・。」
耳元で名前を呼ぶとカガリは今までに無いほど耳を真っ赤にしてしまう。
-------・・両思い・・なのだろうか?自分達は。
確信を持てず、でもこうする事に違和感が無い自分達。
暫くたつとカガリも大人しく腕に収まり、真っ赤のまま覗き込んできた。
「----アスラン?」
顔が近すぎて、とっさに唇にキスをしようと動くとカガリは息を呑んでしまう。
すぐに方向を変えおでこにキスをした。
「・・・っ・・。」
カガリは真っ赤になり目も潤みだしてキスされた場所を押さえて、俯いてしまう。
これ以上一緒にいてこんなカガリを見ていたら何をするか分からないと思い黙って部屋を出た。
部屋に出た後・・・俺の顔は真っ赤だったと思う。