A-4:「壊したくない」






-------・・全く・・カガリは・・。

たまたま四限の授業がラミアス先生で、その先生はキラとカガリの担任で・・・。
「アスラン君、お昼一緒よね?悪いんだけど、お母さんがお弁当学校に届けに来たわよって伝えてくれる?」
でもどうせこの教室から職員室は近いので、自分がとりに行く。

職員室に入ると、女子バスケ部が地区優勝した町内新聞が貼りだされていた。
とうぜん、部長であるカガリは大々的に取り上げられている。
-----そういえば・・この前制服で、しかも男子に混ざってやっていたことを不意に思い出した。
男子に体力でもスキルでもほとんど劣らないカガリだが、動きにあわせてスカートは揺れるし・・しばしば男子がそれに注目して手が動いていなかったりしているのを見たことがある。
それに、特に夏だがスカート丈が短くなったり・・。
-------風邪引いたらどうするつもりだ。
・・・何より・・カガリは女の子だし・・・。
そういうのは・・気を使うべきだろう?

職員室から出て、教室に戻るとキラとカガリはまだ来ていない。
こういう時はだいたい二人はどこかで油を売っていると相場は決まっていた。
きょろきょろとしながら廊下を歩いていると、カガリが他の女子と話しているのを見つける。

「カガリっ・・こんな所にいた・・。」
声をかけるとカガリはこちらを向きニッコリとした。
「昼食・・おばさんが学校まで届けてくれたから、俺が職員室に取りに行ったんだからな。」
「悪い・・ありがとな」
その微笑を見ていると、この頃少し変な気分になることに少なからず気が付いていた。
そして少し会話をしてカガリは俺の隣に立つ。
-------小さいよな・・やっぱり。
昔も・・そうなのだが、カガリはほっておけない性格をしていた。
今は・・・・それほどでもなくなったハズなのに、この頃異様に心配で堪らない。
「ックシュン!!」
「・・・薄着なんじゃないのか?カガリ・・・。」
自分の学ランをかけてやると、カガリは少しビックリして
「いいよ、アスランが寒くなるだろ?」
「----カガリは女の子なんだから・・身体に気使えよ。」

-----女の子・・なんだから・・か。
小学生の時、授業で男と女の違いは一通り習ったが、カガリに対しては結構どうでもいいことだと思っていた。
でも、・・・どんなにサバサバとしていても、カガリは女の子なのだ。
----自分より小さい手、背・・それにこの前抱きしめて分かったのだが、自分より一回りも二回りも小さい体。
誰かがちゃんと傍にいないと、壊れてしまいそうにも思えてくる。

「あれ?」
いつの間にか隣にいたはずのカガリがいなくなっている事に気が付く。
「ニーコールーッ!!!」
ガバッと音を立て、カガリは後輩のニコルに抱きついた。
二人がじゃれているのを見て、何となく不機嫌になる。
眉間を押さえ、なんでイライラしているんだろうと考えた。

「・・・キラが待ってるぞ。」
そうカガリを呼ぶと振り返り不思議そうな顔をされた。
「-------ニコルも・・久しぶり。」
一応声をかけて、カガリの腕を引き教室へと足を速める。
「あ・・じゃあな、ニコル!!」
「はい・・じゃあ部活で」

カガリは疑問そうに此方を見あげてきた。
「----アスラン?」
・・・・・イライラする。
「・・・どうしたんだよ・・?」
どうしたんだよって・・・だって・・カガリは・・。
「・・少し、不用意に人に抱きつきすぎじゃないのか?」
「・・そうか?」
「そうだ。」
そうなんだ、異性に抱きつく事がいい事だとは余りいえない・・。
・・・・でも・・なんで俺は苛立っているんだろう・・別に・・それだってカガリの勝手のはずだ。
「それよりアスラン・・なんか私たち周囲から誤解されてるらしいぞ?」
「-------誤解?」
俺とカガリで・・周囲に誤解されるような事があっただろうか?

「なんか、付き合ってるように見えるんだって。」

「は・・・?」
付き合う・・?俺と・・・カガリが?
付き合うって・・キスしたり・・抱き合ったり・・・・・・・そういう事をする間柄を刺す言葉じゃないのだろうか?
・・・そう・・見られているのか?--------俺と・・カガリが。
「だからさぁ・・今みたいに腕とか組むの止めた方がいいと思うんだよな。」
そして今自分達が腕を組んでいる事に気が付く。
---でも・・・・・こう言うのも変だが、こうしている事が酷く当然の事に思えてならない。
・・・それを・・離すのか?
「-----そう・・だな。」
・・・何だか・・釈然としない。
----当然だと思っていたことを止められるのは・・・良いものではない。
少し離すと、カガリに暖められていた腕が物寂しく急に寒くも感じられる
カガリは少し考えたような顔をして
「・・いや、別に嫌なわけじゃないんだが・・・・。」
-------嫌じゃない?
「--------・・なら・・・腕組んでてもよくないか。」
「・・・え?」
カガリは少し目を開いてこっちを見てきた。
そしてやや赤くなった頬でギュッと腕に捕まられる。
「・・・・・うん・・。」
そう小さく頷かれ、今更・・なのだが気が付く事があった。

-------・・こうしているのが当然・・。
だが、こうしている事は他の人からは付き合っているように見える・・つまり・・。
恋人であるようにする事が・・俺たちの当然・・なのか?
ぎこちなくカガリは俺の隣を歩いている。
----・・そう・・なのか?

隣の前より小さくなったカガリを見て考えていた。
・・・・・さっきイライラしたのだって・・-------?
でも・・まさか俺が・・カガリを好きになるなんて事は・・。
するとチョコンとした顔に覗き込まれ、
「・・・熱でもあるのか?」
そう心配される、何となくだが顔が火照っているのは自分でも分かっていた。
「-----いや、大丈夫だ・・。」
----・・俺が・・カガリを好きになる・・なんて・・。

・・・・・・・まさか・・だよな?






















+++++
あとがき
-------天然アスラン爆発中。
つうか天然キャラってどっちも可愛いよっ!!
題名の「壊したくない」はカガリをです。
守ってあげなきゃ、俺がカガリをって思ってるんですよ。
2006.03.19