アスランが誕生日を迎えた日。
「え〜僕とカガリ・・一度で良いからアスランの家の子供やってみたいっ!」
その言葉にアスランは
「・・俺だって・・。」
そう、言って言葉をやめた。
・・・・昔・・アスランから一度だけ、キラとカガリの家に生まれたかったといわれたのを未だに覚えている。
「アスラン・・?」
それに・・・小さい頃はよく、お母さんが帰ってこないと泣いていた。
そしてアスランは微妙な顔をする。
自分の誕生日に母が仕事に行ってしまって・・哀しいのだろうか?
「・・・そういえば・・週末課題、終わったのか?」
「「げぇッ!!」」
話を逸らしたのがもろバレだった。・・ハツカネズミだな・・まったく。
「わ・・私は半分終わらせたぞ?」
「うわ〜僕まだ・・。」
アスランの眉毛がピクッと動いた。
「・・・まさか・・お前達・・・半分ずつといて、もう半分写してるのか?」
エヘヘと笑って見せると、深くため息をつかれた。
「・・・・・・・はぁ・・まったく。」
アスランは話を逸らしたまま、自分の部屋へと足早に足を進めているので、不思議に思う。
「え〜アスランうち来ないの?!」
キラは不自然だと声をあげアスランは平気だという顔をした。
「ちゃんと勉強終わったくらいに行くから、俺がいたら遊ぶだろ?」
・・・・・確かに・・。でも---------。
「なーんか、アスラン・・元気無いね。」
「私・・見てくる、先帰ってろ。」
「うん、分かった。」
アスランの後姿を追い、閉めようとするのを防いだ。
「・・・・・・・カガリ?」
覗き込むとアスランは普通に扉を開けてくれたので、そのまま入ってしまう。
「どうかしたのか?」
ベットに腰を下ろし、元気の無いアスランを励まそうと考えた。
「ん〜何か・・アスラン、寂しいんじゃないかと思って・・。」
アスランは眉を寄せ考えているように見える。・・・的外れだったか?
「ほら、昔・・よくお母さんが帰ってこないって・・半べそ掻きながらうちに来ただろう?」
そう言うと頭を掻き、そんなこともあったか・・と溜息をついていた。
「・・今はもう、大丈夫だ。」
-----じゃあ・・なんでだ?
「・・・・そうなのか?--------なんだか、微妙そうな顔してたから・・そうなのかと思った。」
そう質問すればまた微妙な顔をされる。やっぱり・・何か一人で悩んでるんだな。
「あぁ・・それは・・・・。」
何かを考えているようで、何かを隠しているようにも見える。
----・・思ったら、すぐ相談してくれれば良いのに。
「俺と・・キラと・・カガリってどんな関係なんだろうって思って。」
そう言われ・・内心どう答えようか迷っていた。
だが、---アスランも・・微妙だって事は自覚したのか?ちょっと試してみる。
「・・・・・幼馴染だろう?私たちは。」
アスランが自分の事をどう思っているか・・それは前から気になっていたし・・。
だからといって、恋人になりたいとか・・そういう早まった気持ちは無い。
・・・・でも、いつかはこの想いに決着をつける日が来るんだ。
--------だったら。
スッと立ち上がりアスランの目の前に行く。
「安心しろ、私は・・・アスランもキラも同じくらい大切だと思ってるから。」
立てひざで立ち、子供の時と同じく、頭を優しく撫でて髪に指を絡める。
小さい頃、当然のようにしていた行為・・それをして、違和感がなければ私たちはまだとうぶん幼馴染だろう。
「・・・・・な!」
そう言うと一瞬とても驚いた顔をしたが、目を細めて笑い返してくれた。
時々、瞬きをして口元が少し上がっている。
---------・・あ。
・・・かっこよく・・なった・・?
目を合うと、何となく見つめてしまう。
「アスラン?」
しばらくその状態が続くとアスランは自分の頭に優しく手を伸ばしてくれた。
少し太い指が髪に絡んで
横髪を触られ、自分の頬に指が触れてその手を捕らえて自分の頬にくっつける。
「・・・カガリ・・?」
その行動にアスランは少し戸惑って見せる。
「何驚いてるんだよ、・・・昔・・よくやっただろう?」
---------・・だから・・普通の事だろう?
だから良いじゃないか。私と・・アスランは幼馴染で・・。
----これから・・どうなるかは分からないけど・
「・・なんだか・・変な気分だ。」
それは私を女として見ているから言うのか?それとも・・ただ、単純にそう思っただけ?
「そうか・・」
--------まぁ、何だって良いさ。
そしてニッコリと微笑むとアスランも微笑んでくれる。
そしてアスランの手を掴んでいて、哀しくなる。
「・・・でも・・やっぱり」
----小さい頃には戻れないよな。
「・・お前・・大きくなっちゃうんだよな・・キラもだけど・・。」
キラのように男なら・・、良かったのに。
「・・・当然の事、なんだけどな。私は女で・・お前達は男なんだから。」
----私は・・当然、いつかは誰であれ男を好きになるわけで・・
そしてその範疇には幼馴染のアスランだって否応ナシに入るわけで・・・なんか釈然としない。
それに、男の子だったら・・運動とか・・色々---競って・・遊んで・・・いられたのに。
女の身体じゃ、体力の限界だって・・力でも----何だって
「・・今じゃ・・腕相撲だって・・互角に戦えないし、----身長だって・・手の大きさだって・・。」
-----競えない。完敗だ。
「・・・私だけ、少し仲間はずれを喰らった気分だ。」
-----・・こればっかりは仕方ないと分かっているけど。
「・・男に・・生まれれば良かったのか?・・私は」
アスランは酷く驚いた顔をして、説得するように話しかけてくれた。
「・・・それじゃ・・カガリじゃないだろう?」
-----そうなのだが、男と女で微妙な関係になんてなりたくない。
瞳を覗かれ目を合わせると困ったような顔をされてしまう。
「・・・・カガリ・・。」
至近距離で名前を呼ばれるとなんとなく、甘えたくなる。
ちょっと泣きそうで、目を細めた。
---ずっと・・昔のまま・・・・・仲良くしていたい。
「---いいじゃないか、カガリは女の子で・・・。良いと思うし・・好きだ、女の子のカガリが。」
-------普通の子だったら勘違いするぞ?
アスランらしい・・。
「ありがとう」
ちゃんと笑ったつもりなのに、あまり笑えていない・・そう自覚していた。
真剣な顔をされて、その顔を見ていた。
グイッ
「---------アス・・ラン・・?」
腕を引かれアスランの胸板にくっ付くカタチとなる。
--------・・分かってないな。これは。
・・私たちはやっぱり幼馴染だ。
アスランはすこし確かめるように腰や肩に触れる。
----・・認識しろよ・・私は女でお前が男だって事・・。
それも分からないのに、そうやってくるアスランを少し恨めしく思えた。
-------・・いいけどな。
「・・・カガリ・・。」
甘く呼ばれた気がして少し気恥ずかしくなる。
頭を何度も撫でられ、腕をずらしながら確認するように抱きしめられる。
-----・・まぁ・・こんな事だって、小さい頃の延長線のようなもの。
でも・・・、やはり顔は赤くなってしまう。ちょっと顔を見ると、その真っ赤なのに笑われた。
「・・っな・・何が面白いんだ!」
そう唇を尖らせていうと、今まで抱いてくれていた腕が離される。
「・・・・。」
アスランは自分の手を一瞬見て、そしてこちらに向き直る。
「・・・ありがとう、アスラン」
ちゃんと笑ってアスランに御礼を言った。
「・・・あぁ・・。」
アスランは一瞬とまり、何となくその視線が居心地悪く感じ目を逸らした。
-----・・・・結局・・どうなんだろうな。私たちは。
そしてキラが待つ家へと戻っていく。