C-1:もどかしい距離






今日からはテスト一週間前で部活が休みになり、そしていつも通り勉強会をする事になっていた。
「げぇ!私が負けた!?」
滅多に負けないのに・・とぼやくとフレイとミリィは笑って「ガンバ」と言ってくる。
「さっさと終わらせるか・・。」
「早く戻ってこないと、アスラン君が探しに来ちゃうわよ」
ミリィにそう言われ、「そうか・・?、あ・・来るな。」と答えてゴミ捨て場まで少し走る。
捨て終わり戻ってくると、ほぼ誰も行かない屋上の階段を誰かが登る音がした。
-------アスランだ
そう直感して、一度教室に確認してから・・と考えていた思考を変え屋上に向かった。
「はぁ・・」そうため息が聞こえ、半ば確信する。

「あッやっぱりアスランだ!!」
そう声を書けると、フイッと振り向かれた。
「迎えに来てくれたのか?・・ごみ捨てでさ!悪いな」
少し笑い、そうだとひらめいて、アスランに話しかける。
「屋上・・行きたくないか?」
「あのな・・・。」
呆れた瞳で見られ、これは駄目かなと顔をしかめた。
「・・なんだよ・・、綺麗だぞ。きっと・・秋の空は・・。」
そりゃ、テスト前なのは知ってるけど・・。
「------・・テスト終わったら、あけてやるから。」
まるで駄々をこねた子供をあやすかのように言われ、ちょっとムカついた。
「約束だぞ・・。」
そして小指を出してみる。
「・・・何歳だ、君は」
「15歳だ。お前なんてまだ14のくせに。」
アスランは小指を出すのを多少躊躇っているように見えた。
「ほら、約束だ。指きりするんだよ!」
アスランはしぶしぶと小指を出し、見比べるように行動が止まった。
「・・・・小さいな、手。」
こいつ・・・今更だよな。
「・・・お前がでかくなったんだよ。」

そうなのだ、前までそんなに・・・身長だって・・同じくらいだったのに・・。
いまでは六センチも・・・。
・・・・・それは・・やはり、私が女だからだ。

それでも昔と変わらないようにアスランは小指を絡めてくれた。
「指切りげんまん、嘘ついたら・・・」
だから自分も小さい時と同じように歌う。
「指切った!」

------でも、・・・それでも・・どんなに昔と同じようにしても・・違和感がある。
フレイとミリィには「好きなんでしょ?」と聞かれ、正直に分からないと答えた。
恋愛で好きなのか、幼馴染で好きなのか・・・自分には分からない。
約束を交わし終わり、アスランを見あげた。

「約束だぞっ!ぜったい開けてくれよな」
そう笑うと、彼はすこし曖昧な顔をしている。
「分かってる、俺が今まで嘘ついたことあったか?」
いつまでも小指を繋いでいるのはおかしいと思って絡めていた指を離した。
「ん〜・・?無いな・・あッ!でも前勉強の時・・!!」
「それはカガリがサボろうとするから・・っ」
アスランは言いかけて、言葉を止め自分の手を見たように見えた。
「・・どうかしたのか?」
「いや・・、キラが待ってる。行こう」
----昔なら、ここで手・・つないだんだけどな・・。そう心で呟き少し広くなった背中を追いかけた。


勉強会の途中、不意にもアスランと手が重なりアスランの肩がビクンと動いた。
「・・ごめん・・。」
何となく気まずくて、手をパッと離す。
「・・別に・・・。」
そして普通に問題を教えられた。その間、顔と問題を交互に見る。
顔が・・近い。
この距離でお互い何とも思わないのだから、やはり自分達はずっと幼馴染なのだろうか?
「あぁ・・そうか・・その図なら解けるかも・・。」
そして問題を解いていると----
「この部屋・・少し熱くないか?」
「え・・?そうかな、アスラン暑がり?」
アスランは首を捻り、問題へと目を落す。
流石に真剣にならないと・・と自分も数学と格闘した。

夕食を食べていると、キラは思い出したように口を開いた。
「そーいえば、アスラン・・カガリの事・・よく見てたよね。」
「え・・?」
---------やっぱり・・そうだったよな?
嫌ではないが微妙に視線を感じていた。
「ま、僕の方がなんだかんだ、テスト結果いいからねっ」
そのキラの言い方に憤慨する。
「なっ!!まるで私が馬鹿で心配されてるから見られているみたいじゃないか!!」
実際そうだから、あの視線はただの心配性らしい彼の心遣いだと思った。

結局十時まで一緒に勉強して、アスランを見送る。
キラは勉強しながら寝てしまい、母さんはお風呂に行ってしまったので一人で見送った。
「・・ありがとな、隣だけど気をつけろよ。」
「・・・あぁ、おやすみ。」
ガチャンと扉を開くと、秋だと言うのに冷たい風が流れた。
「・・今日は冷えたな・・。」
そうアスランは声に出したので、少し待てといって部屋に戻りマフラーを取ってくる。

「使え、寒いだろ?」
「・・だが、隣だし・・・。悪いし」
「明日の朝返してくれれば良いさ。・・じゃあな、お休み。」
そう言うとアスランは黙ってマフラーを首に巻いた。
「・・?カガリ・・何かこれ、匂いするんだけど。」
そう言われその巻いてあるマフラーを引っ張る。
「え・・?そうか、リンスの匂いかなぁ・・?」
気のせいかアスラの頬が赤くなっている気がした。
「・・ありがとう、じゃぁ・・・。」
そして彼は足早に去っていく。



















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あとがき
カガリside第一弾!カガリは元から幼馴染以上の事も少し考えています。
この時代は女のこの方が精神的に早く成長すると聞きましたのでそうしてみました。
アスランが顔を赤くしたのは単純に顔が近いから・・だったりします。
2006.03.18