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「カガリ、キラっ・・帰るぞ」
「あ・・ちょっと待って、カガリが掃除から帰ってこないんだ。」
隣のクラスのカガリとキラを呼び、教室を見渡した。
「・・・今日は・・西の階段掃除だったな・・。」
「じゃ、僕待ってるから」
キラは丁度漫画が良いところらしく、まだそれを読んでいたいようだった。
「分かった・・カガリが来たら、直ぐ帰るぞ。」
「はいはい。」
適当に言われムスッとしたが、それよりカガリだと方向を変えた。
少し早く歩き、屋上へと続く西階段へと足を進める、そこがカガリのクラスの掃除担当場。
「・・・・はぁ。」
テストが近く、二人にはおばさんから教えてやってくれと必死に頼まれていた。
・・当然いつもの事だし・・・慣れたわけなのだが。
-------キラもカガリも・・テスト直前まで勉強しようという気が無い。・・全く・・・・困ったものだ。
キラなんて嫌いな授業殆ど寝てるくせに、少し教えれば直ぐに理解するし・・・
カガリは寝ないで聞いてるのに、部活をやりすぎて家で寝て・・結局一週間前部活が休止になってから死に物狂い・・。
------で、二人の面倒を見ると。・・・俺が。
屋上の扉の前まで来て、誰もいない事を確認する。
「・・・・・。」
そういえば、カガリは時々屋上にいる・・それを考えドアノブに手を掛けるが、開かない。
---いつもは俺かキラが頼まれ、ピッキングで扉を開いているから・・・当然か。
何となくため息が漏れた。
「あッやっぱりアスランだ!!」
後ろから声をかけられ、振り返る・・・カガリだ。
「迎えに来てくれたのか?・・ごみ捨てでさ!悪いな」
ニカッと笑い、スカートを揺らして俺の隣に立つ。
「屋上・・行きたくないか?」
「あのな・・・。」
テスト一週間前だぞ?
「・・なんだよ・・、綺麗だぞ。きっと・・秋の空は・・。」
プクッと頬を膨らませ、カガリは見あげてきた。目がだだをこねている。
「------・・テスト終わったら、あけてやるから。」
そう言うとカガリは待てないと顔をしかめた。
「約束だぞ・・。」
そして小指を出す。
「・・・何歳だ、君は」
「15歳だ。お前なんてまだ14のくせに。」
確かに、俺の誕生日はまだ来ていないが・・。
「ほら、約束だ。指きりするんだよ!」
しぶしぶ自分の小指を出した、そして気が付く。
「・・・・小さいな、手。」
-----小指も、手そのものも。
「・・・お前がでかくなったんだよ。」
その小さな小指に自分の小指を絡めた。
「指切りげんまん、嘘ついたら・・・」
カガリは小さい頃と何ら変わらず、少しだけ成長した顔で昔と同じ事をやってみせる。
「指切った!」
そして指を絡めたまま
「約束だぞっ!ぜったい開けてくれよな」
ニッコリと微笑まれ、その笑顔に違和感を持ったまま微笑み返した。
「分かってる、俺が今まで嘘ついたことあったか?」
そう、会話しているとフッと指を離された。
「ん~・・?無いな・・あッ!でも前勉強の時・・!!」
「それはカガリがサボろうとするから・・っ」
触れた指から失った熱を探そうとしていたが、不自然だと手を止める。
「・・どうかしたのか?」
「いや・・、キラが待ってる。行こう」
違和感の正体が何なのか、俺は良く分からなかった。
帰り道、俺の家の隣にある二人の家にお邪魔する。
「いらっしゃい、アスラン君・・ごめんなさいね~毎度の事だけど・・。」
「いえ・・おばさんは悪くないですから。」
そう笑って答えると双子からブーイング起こる。
「まるで僕らが悪いみたいじゃないかっ」
「まったくだ!」
そんな二人をなだめ、勉強部屋に行くようにうながすと不満そうな顔をするが分かったと足を進めた。
「あれ・・コタツが出てる。」
キラが嬉しそうに声を出す。おばさんは
「だってねぇ、寒くて勉強できないとか・・だだこねるでしょう?キラは」
「僕そんな事言わないよッ」
三人でコタツに入り、勉強を始める。俺が真ん中で左右に二人。
「アスラン此処・・」
「それは・・・」
いつも決まってキラが先に声をあげる。だいたい授業全く聞いてないから・・と少しぼやくが快く教えた。
三十分ほどしてカガリが声をあげた。
「あぁ"!!!何だこの問題ッ?!答え間違ってるんじゃないのか!!」
カガリのノートを除き、計算間違いを探す。
「・・・四段目、良く見てみろ。」
そしてカガリはその段を見る。
「あッ!・・・足し算間違った・・・・。」
急いでその問題をやり直していた。
「キラは・・進んでるか?」
キラのノートは間違いがあっても気にしないといっているようだった。
「・・お前・・計算間違ってるじゃないか・・?」
「あ、いいの別に。やり方あってれば問題ないでしょ?」
-------キラは・・そう言う奴だよな。
それに、テストになると信じられないほど正確になるし・・・。つまり今は手抜きみたいなものだ。キラは・・。
そしてカガリに目をやると、次の問題が発展のせいか全く手をつけられていない。
「・・・教えようか?」
「-----頼む。」
ちょっと躊躇って、カガリは問題とノートを向けてきた。小さな机のせいか顔が近い。
「だってこの問題・・図にすると・・・・こう、ならないか?」
パッパッとノートに図を書き、それを見せられる。
「ちょっと意味が違うんじゃないか・・?」
そして同じノートの上にシャーペンを走らせた。
途中、カツンとシャーペン同士がぶつかり線が歪む。
「あ、悪い。」
カガリはパッと手を引きおろして、その手がたまたま置いてあった自分の手と重なる。
肩が必要以上にビクンと動いた。
「・・ごめん・・。」
ちょっと申し訳なさそうに手を離されてしまった。
「・・別に・・・。」
そしてその問題を説明する。
「あぁ・・そうか・・その図なら解けるかも・・。」
数分もしないうちに、声をあげた。
「この部屋・・少し熱くないか?」
「え・・?そうかな、アスラン暑がり?」
---そんな事・・ないと思うのだが・・。
そして自分の勉強に没頭した。
前からなのだが、時々ちゃんと進んでいるか心配で二人のノートを覗く癖があった。
何度かキラとカガリのノートを確認する。
夕飯まで勉強をし、夕飯の支度を手伝う。どうせうちの親は遅い・・だからほぼ毎日この家にお世話になる。
そして夕食中
「そーいえば、アスラン・・カガリの事・・よく見てたよね。」
「え・・?」
そうだったか・・・?--言われて見れば・・そうかもしれないが・・。
「ま、僕の方がなんだかんだ、テスト結果いいからねっ」
「なっ!!まるで私が馬鹿で心配されてるから見られているみたいじゃないか!!」
二人の言い合いをおばさんと笑いながら眺めていた。