夏、アスハ邸の庭の一角にひまわりが咲き乱れていた。
「・・・・暑いな、近頃は」
プライベートで何十日・・いや何ヶ月ぶりかにあったカガリと庭を散歩していた。
-----庭・・といっても、結構広い土地なので一周するのには大分時間がかかる。
「---それは・・お前が長袖だからじゃないか?」
カガリは年中無休で長袖のアスランを見て笑いを漏らした。
「焼けるだろう?」
「女々しい事いうな、お前」
カガリは肩を出した服装で、七分のズボンのサンダルを履いている。
「にしても・・暑い、部屋に戻ったらドリンクのもうな。」
カガリは昔より大分白くなった腕を額に当てて汗を拭った。
そして咲き乱れるひまわりの前につく。
「・・・凄いな、この数は・・。」
「だろ?数年前に植えたんだが・・・大分勝手に繁殖して用務の人も少し困ってる。」
苦笑してから、カガリは自分とそう丈の変わらないひまわりに手をやった。
「-------・・・ひまわり見てると・・昔の自分を思い出すんだ。」
吐き捨てるようにだが、小さな声でカガリはいった。
「・・・?」
アスランは意味が分からず、「そうなのか?」と聞いてみる。
「・・・此処は暑い、ちょっとあそこ入ろう、あそこからならこのひまわりも見える。」
そうして手を引かれて涼しいアスハ邸の一つの建物に入った。
メイドが直ぐにアイスティーとアイスコーヒーを持ってくる。
ソファー二人で並んで座って、窓から見えるひまわりを眺めていた。
「あのひまわりな、種・・もらったから、植えたんだ。"ひまわりは君に似てるから"って」
---たしかに昔のカガリの笑った顔は例えるとしたらひまわりだろう。
「・・・・誰だと思う?」
カガリは懐かしそうに微笑んで少し曖昧な顔をした。
「-----誰?」
「・・・ユウナ」
その答えにしばしば驚く。あいつから貰った花なんて・・植えなくても良いのに。
「死んだから・・・誰か一人ぐらい、覚えておいてやんないと可哀相だと思って。」
カガリはそうしてひまわりを眺めた。----見るたびにアイツを思い出してると思うと少し納得いかない。
「・・・・でも、考えてみれば・・・・・送りつけてきたひまわりの種だって、結局私に対する嫌味半分だったんだけどな。」
苦笑して、怒るなよと頭を撫でられた。
「---死んだ人を、丁重に扱う事・・だから、まぁいいさ。」
ちょっと苦々しく言うとカガリは困ったように微笑んで手を握ってくれる。
「お前知ってるか、ひまわりの花言葉。」
「知るわけ無いだろう」
キュッと指を絡めてカガリを覗き込むとカガリは「まだ会話中」としようとした事を断られた。
「----"偽りの富"・・・らしいぞ」
・・・偽り・・・・・・・。
「・・・・・何が伝えたかったんだろうな、ユウナは。」
苦笑してからカガリは俯いて、その時を回想して見せた。
「---なのに・・植えたのか、ひまわり。」
「あぁ。」
パッと見られ、カガリは綺麗に笑った。
「もう二度と、過ちを犯さない為に・・な」
そしてカガリから背中に手を回される。
「---この館にベットは?」
「・・・・在るぞ?この部屋の隣。」
「シャワーは?」
「無論」
「カガリ・・・。」
ひまわりに見せ付けるようなキスをして、隣の部屋へと歩いていった。