可愛く綺麗なラクス、そして眉目秀麗なアスラン。

その二人の結婚式があと三日に迫ったある日。







+王子と姫+




もうじき、私は泡になるだろう。

そう簡単に予測できた。





声が出るようになりカガリはお転婆姫になっていて、城の誰もがカガリを見ると暖かい気分になっていた。

そして、それは兄である自分も同じ。

だからこそ、驚いた。





「あっ!!」

たまたま、カガリが肌を切った事があった。

そして、そこから出てきたのは当然血。

だが・・・。







「あ・・わ・・・?」


赤い泡がシュワシュワと音を立てて溢れてきていた。












キラは凄く驚いた顔をしていた・・当然だ、だって人から液体じゃなくて泡が出てきたんだから。

そしてその傷を隠すように押さえた。

「はは・・なんでもない、特異体質って奴だっ」

キラは何馬鹿なこと言ってるのと言うように此方を見ていた。

私の動揺はキラに何処となく伝わってしまう事ぐらい知っていた。



でも・・・



心配されたくなかった。











近頃・・時々意識が飛びそうになる事を自分自身痛感していた。

でも、結婚式まで少しと言うとき倒れるわけにも行かず元気に振舞っていた。


「キラ・・・。」


そう愛しい彼の名を呼んでも返事は来なかった。











キラはどうにかして、私に真実を吐かせようと毎日躍起になっていた。


「・・明日は・・ラクスとアスランの結婚式だな。」

わざと話題を逸らす。


「えっ・・あ・・そうだね。」


キラはとても悲しそうな顔をしたので少し申し訳ない気分になる

「・・私たちも呼ばれてるよな・・・?」

当然の事だ。





そして何となくこの前のキスを思い出す




あれは何だったのだろう?


ただ・・・その感覚に酔っただけ?だろうな・・・きっと。

そう完結させる。アイツは二股かけたり器用な事出来なさそうだ。








ベットでねっころがると不意に血の巡りが悪くなったように全身が気持ち悪くなる。


「もうじきかな・・私は」


哀しい・・・が、一生の内でこうやってアスランに出逢え、キラと姉弟になり、ラクスとおしゃべりできた事。



それだけで十分だった。



そう・・思わなきゃ・・・・・・・。














アスランの国に最初に入ったキラとカガリはすぐに二人に顔を出しに行く。

「何だか・・・騒がしくないか?」

確かに、使用人や貴族まで城の中で慌しく動いていた。

そしてキラはアスラン、カガリはラクスの部屋に行った。










「ラクス・・・・?」




そこに横たわる美しさにうっとりする間もなく、直ぐに気が付いた事がある。












「え・・・ラクスが・・・?」


「・・今日になって直ぐ・・目を覚まさないんだ・・。」


悲痛な声がそれを真実だと裏付ける。

「・・なっ・・何やってるのさ君はっ!!それでも婚約者なの!!!?」


初めてアスランの胸倉を掴み揺すった、

「そんな事・・お前に・・・っ!!」

言われる筋合いは無いって?

馬鹿言わないでよ


「・・っ!もういいっ・・アスラン・・僕は・・君だから・・」


信頼している君だから・・・

「ラクスを渡しても良いって・・そう思ったのにっ!!!!!」




その言葉にアスランは硬直した。


「ラクスにだって、アスランなら絶対大丈夫だからって・・言ったのに・・。」


違う・・。


「な・・何の話だ・・」


アスランに殴りかかるなんてただのおかと違いだ。




僕が・・




僕のせいかもしれない・・。


「僕と・・ラクスは恋人なんだッ!!」




それだけ言ってその部屋を後にした。














この症状は・・・。

ラクスの肌をなぞり、アレだと分かる。


「・・・天地の神の怒りに触れた・・・・・?」


・・・それは、自分かキラに来るものだと思っていた。

でも実際キラも自分もすでに16だったから、安心していた。



ラクスを助けなきゃ・・。



コレでも一応海の王の子。きっと私なら何か出来る。

何が出来る・・・?






バンッっと扉が開き泣きそうなキラがラクスの元に来る。


「ラク・・ス・・っ」


そしてその綺麗な顔を触り、反応が返ってこないことを確認し、その場で崩れ落ちた。

「っ・・う・・っ・・・」



そしてアスランも入ってくる。


「キラ・・カガリ・・」


バツの悪そうな顔をされ、部屋に入り三人でラクスを見つめる。





そしてフッと自分の思考回路に過ぎった事があった。



-------このまま・・ラクスが戻らなければ・・アスランは・・・?



そして直ぐにその思考を消す。


そして思い知った。

なんて私は醜いんだろう。




その考えを捨てるかのように直ぐに違う方向へ思考を向けた
















そしてそのまま、二人の結婚は見送られる事となった。

そして、私たちはまだアスランの城に留まっている。


「キラ・・。」


キラは空気の抜けた風船のようで見ていられない。

それに・・アスランと喧嘩したのか?良く分からないが二人は全く話さない。





そしてラクスの部屋に向かう。

ラクスはベットに横たわり微動だにしない。



「ラクス・・・。」



・・きっと・・私なら何とかできる。・・・・きっとっ!!


そして手段を探そうと、必死に考えた。




ボンッ


「まーたあんたなの?」


そう聞かれ、聞き覚えのある声だと思った。

「魔女か・・?」

「あんた、声戻ったのっ!!」

信じられないと声を上げられる

「私が強く願ったから・・またお前が来たのか・・・。」

そしてため息を付いた。

「っていっても、魔女が願いをかなえられるのは一生に一度だけよ?」

知ってる、昔・・本で読んだ。

「じゃ、魔法使わないでいいから・・ラクスを助け出す手段を教えてくれ。」

「知ってどうするのよ?」


「助ける」


その言葉を聞き魔女は笑い出した。

「馬鹿じゃないの、せっかく王子独占できて愛ももらえるのに・・この子が起きたら全部パァじゃない?」

アハハハと笑われ、怒りがこみ上げた。

彼女にではない。

その彼女と同じ思考をした自分に。

「私が強く願ってる限り、帰れないんだろ?じゃあとっとと調べてくれよ。」

ぶっきら棒に言うと、ムッとされるが

「ま、いいけど・・・せいぜいあの世で後悔しない事ね」

そう言われ、その魔女はまた変な本を出す。

「大体、天地の神の怒りに触れるなんて・・あんたも馬鹿ね」

そしてページを開く

「えっとー、この子眠りについてるのよね・・?じゃあ、今から言うもの・・全部取ってきて、混ぜて飲ませてよ」


そして次々に草の名や、ヤギの骨の摩り下ろしなどいろいろなものが上げられたが、この国ではとても取れないようなものが多い。



そして・・・



「・・・へー、あ・・でも・・もっと少なくていいかも・・・」

そして違う本を開く


「・・あった・・、人魚の泡が解けた海水と愛する人の口付け・・だって・・・随分とエグくてロマンチックな話ね。」




そして自分の方をフッと見る。


「・・・・っ」

「人魚の血ってだけでどんな傷も直し・・人魚の肉でどんな病気も治す・・それ程人魚は聖なるモノ」


知っている・・だから人の前に出る事は許されない。


「ただですら、希少価値が高いのに、それの泡となれば・・・確かに天地の神の怒りの呪いも消せるかもね。」

そして魔女はクスリと笑う。

「知ってるとは思うけど、好きな相手を殺してその心臓を食べれば一生人として生きていけるわよ?」

どす黒く笑われて、いっそ、そうすれば?と笑われた。



「・・・そんな下等な事をしてまで生き残るほど、人魚の誇りは落ちぶれていない。」


そうハッキリとその魔女を見て言う。

「大体、この子もこの子よ。私、この子達の親から、どうにか呪いを受けないようにって頼まれて・・・。」

少し懐かしむように魔女は過去を語った。

「この子が、16歳になるまでに姫とバレずにすめば助かるって魔法かけたのよ?」

「な・・あと、もうちょっとだったじゃないかっ」

「馬鹿ね、それだけハードな呪いなのよっ!!」

「そんな・・っ」

「ま、あんたの方も相当ハードルは高いけど?」

そして、ラクスを見つめて魔女は


「どーでもいいけど・・早くしないとこの子死ぬわよ?」



・・・ラクスが死ぬ?


そんな事・・






「そんで、想定であんたが泡になる日はもう来てるし、海にでも潜ればもう泡になれるかも・・・ある意味都合が良いかもね。」



許されるはずが無い。

元を辿れば、全て私のせいだ。


私が悪い。



ラクスが・・死ぬ事なんてない。






そして、その部屋を後にした。













トントンッ


そう音を立てる。

「入るぞ?」



「カガリ・・・。」


ギィッと音がして、扉を開く。

「どうした・・こんな時間に・・?」


もう月は高く上っていた。


「いや・・その・・・ラクスを助ける方法を見つけたんだっ!!」


そう嬉しそうに、でも泣きそうな声で言ったように思えた。


「本当かっ!!キラにも伝えないと・・・っ」

「で・・でもっ・・必要なものがあるんだっ!!!!」



想定を少し過ぎても、私が未だ泡にならず・・ここに留まっていられるわけ・・それは・・。


想いが多少でも通じてるから・・。

それを説かなければ。


「必要なもの?」


そう聞かれる。



「古代書からだから・・本当か分からないが・・」



そして、説明する。愛してる人のキスが必要だと。


それは、アスラン叱りキラ叱り・・どちらかだろうと。

「きっと・・キラだろう・・。」

そう頼りなくアスランは呟いた。

「馬鹿言え、ラクスが治ったら、お前と結婚するんだろ?」

一応励ます。それにそれはラクスがおきてからの話。



私には・・・悲しいほど関係ない。




そして・・・




私がアスランに確かめなきゃいけない事。


「アスラン・・私をどう思う?」










--------嫌いだと。







言ってくれ。


そうすれば、心残すことなく泡になれるから。



「え?」


戸惑うよな彼の視線を喰らう。そして----



「キラの・・妹」

そう曖昧な返事が返ってきた。



違う・・違うんだよ。

嫌いってそう・・言ってくれれば良いんだよ。



「アスランが好きなのは・・ラクスだよな?」



聞いていて悲しくなってくる。


「・・カガリ?」


「そうだろ?」


そうじゃなきゃ困るんだよ。

あの時のキスだって、無かったと言ってくれるほど



そうじゃなきゃ・・・・・・。









「カガリは・・そう言ってほしいのか?」





その質問に目が開く。










「---------っ・・あぁ・・そうだ・・・っ」




目線を逸らし、瞳に涙が溢れるのを感じた。


泣きたい。


馬鹿みたいだ。



アスランに自分を想ってほしくて陸に上がったのに。

それすら、幼き日の玉砕に遣わなければならない。


でも、それで良い・・・それで・・・。



グイ・・



フワンとした感覚に包まれる。


「アス・・・」

「俺はラクスが好きだ。」

そう棒読みで言われる。


「満足か?」


そして頭を撫でられ、額にキスを落とされた。

・・・・駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目


このまま流されるわけには行かない・・・ラクスが・・・


「お願いだ・・"嫌い"って・・いっ・・・・・ん・・・あ・・・アス・・・・ぅ」


その言葉を塞ぐようにキスをされ困ってしまう。

嬉しい、こんなに嬉しいのに・・なのにっ



「・・・なんで・・泣いてるんだ?」


ラクスがっ・・・・死んでしまうからっ・・・


そんなの・・嫌だから・・・っ

「ラクスが・・起きる為に・・・っ・・私は・・・・」




アスランの腕に抱かれたい。キスをしてほしい。離さないで・・・でもっ


駄目なんだ


許されない



私は・・・





「・・ラクスを・・助ける為・・だからっ・・・!!!」






私のせいだから・・




バンッ






アスランの緩んだ腕を振り解き、その部屋を飛び出す。


このままいては本当にラクスを助けられなくなってしまうから。


そんなのは駄目だから。














そして私は次の日、海に潜る決意をした。






















++++
あとがき
アスカガ・・・・っ?ラクスゴメン。。大好きだよラクス!
ゴメンよ、仮死状態にして!!!
次生き返らせるからっ!!!
あーでもカガリが・・・。(嘘次回予告)でも次で多分終わる?
2006.2.26