ラクス姫の16の誕生日と共に、アスラン王子との結婚式が開かれるらしい。
+王子と姫+
自分がこの身体になってもう二ヶ月が経っていた。
「カガリ・・大丈夫・・?具合悪そうだけど・・・」
クスリが切れてきたのか・・良く分からないが、時々顔が真っ青になる。
『大丈夫だ・・それより、キラ・・ラクス姫の事・・良いのか?』
そう、キラはラクス姫が好きだった。
「・・・。でも・・政治の為もあるし・・・アスランが好きな人を奪うわけにも行かないでしょ・・?」
そう哀しそうに言われた。
少し前、ラクス姫がこの城に尋ねてきた事があった。
*****
「キラっ!」
そう言って抱き合う二人は、まさにお似合いだ。
そして、筆談でだが自分とも話してくれた。
「カガリは・・その・・お体の具合が・・あまり良くないようだと、キラが心配していましたが・・。」
"あぁ、でも大丈夫っ、心配してくれてありがとうっ"
そうして微笑むと
「・・本当は私・・キラはカガリの事が好きだと思ってましたの・・」
申し訳なさそうに言われてしまう。
"私たちは姉弟だ、心配するなよ"
そう言った。そして・・・
"そういえば・・アスラン王子との婚約・・・どうしちゃうつもりだ?"
そう、そこに自分の生死が掛かっている。
想いの行く末も。
「私が一番に愛しているのはキラです・・しかし・・・・。」
国の為なら・・と。その判断は誰がどう見ても正しいと思う。
そして、キラとラクスの話を聞いていると、どうもアスランは不器用で真面目らしい。
そんな彼が、こんなに美しくて優しいラクス以外の人を愛するとはとても考えにくい。
そして、残り一ヶ月を切ったくらいから、どうも体調がオカシイ。
息が詰まる。
呼吸が出来ない。
そんな事が頻繁にあった。
そして、ラクスも時々胸を押さえる仕草をしてみせる。
"ラクス・・風邪?・・病気か?"
「いえ・・分からないのですが・・最近妙に心臓の辺りが・・・。」
ラクスも色々大変だと思った。
*****
「そう言えば・・今度、アスランが遊びに来るって」
そうキラに言われ、
『え・・ラクスの婚約者の?』
そう聞き返す。
「うん、あ・・カガリは面と向かってあんま一緒にいた事ないか・・いい人だから直ぐに仲良くなれると思うよ」
きっと・・これがラストチャンスだろう
「久しぶりだな・・キラ」
そうして赤い服を着たアスランが入ってくるので軽く会釈をした。
前と違い、足は痛くない。けど・・やっぱり声が出ない。
「久しぶり・・カガリ姫・・・だったか?」
それにコクンと頷く。
『・・なぁキラ、私・・・コイツと海に行きたい。』
そう意思を告げた
「え・・?」
キラは多少驚いて見せた、実際カガリは今まで迷惑だと思い自分の意思を出した事は無い。
よくキラに「もっと姉弟らしくしよう?」と言われるほど。
「アスラン、カガリと・・海行かない?」
「え?」
それに驚いたようにアスランはカガリを見ていた。
そして、急にカガリはアスランの手首を掴み、手のひらに文字を書いた。
『四の五の言わず、行くったら行くんだっ!!』
・・・・え?
思いのほか荒々しい口調でビックリする。
そしてムスッとして腕を引かれた。
喋らなかったせいか無意識で大人しい子と決め付けていたらしい。
そして海岸出た。
そこは、あの人魚とあった海岸。
始めてみた時、似ていると思ったがあの人はちゃんと声をだしていた。
この子は逆・・話す事も出来ない。
だが、印象に残った瞳は瓜二つのように思える。
「綺麗なところだな・・。」
ギュッと裾を握られ、そっちを見るとカガリは嬉しそうの微笑んで海のほうを指して何か伝えようとしていた。
もしかして・・・?
そんな在りもしない空想を一瞬胸に秘める。
だとしたら、この人魚は人間にまでなって俺に逢いに来てくれた事になる。
そんなハズはないけど。
バシャバシャ・・・
そう音を立てて、カガリは海に足をつけ走り回っていた。
夕日に照らされた空、それに水もまるで彼女を歓迎しているかのように見え、一瞬とてつもなく幻想的な気分に陥る。
ドレスがビッショリ濡れても、まるでそれが当然のようにカガリは海で遊び続けていた。
そのあまりに自然すぎる光景に目を奪われる。
「?」
そういう顔をされ、こっちにこいよと軽く手招きされた。
「・・俺もか?」
そう尋ねると嬉しそうに笑って頷いてくれる。
靴を脱ぎ、海水に足をつけると・・やはり何処か冷たい。
グッと腕に抱きつかれ、海を指し涙目になりそうなカガリが口を必死に動かしていた。
俺には・・分からない・・けど。
そして二人で岸に上がり城へと戻る最中、岩場に打ち上げられた魚を発見しカガリは急いでそれを海に返そうと近づく。
そしてその魚を海に戻した。
久しぶりの海は私を怒らなかった。
迎え入れてくれた。
そして水と魚と戯れる。みんな私の事を覚えてくれてるようだった。
そして一匹の魚に
『どうして、そんなことしたの?』
と聞かれる。
『愛しい人が・・出来たんだ。私』
そう告げると、魚は
『姫様が幸せなのが私たちにとっての一番の幸せです』
そう言ってもらえた。
そして、アスランを呼ぶ。
『お父様・・私が愛したのはこの人です。結ばれなくても、好きです、・・勝手にいなくなってごめんなさい。』
申し訳なさで胸がいっぱいになった。
『ほら、アスラン・・・此処が私の海だ・・綺麗だろ?』
そして海を指した。
『聞こえないよな・・』
急に哀しくなった。
そうだ、私の声は届かない・・。
でも
『私は・・お前やキラに会ったこと・・悲劇だなんて思わない。』
悲劇じゃない・・
『奇跡なんだ』
そう口で告げるがやはり声は出てきてくれなかった。
そして帰り一匹の魚を見つけ海に返してやろうと岩肌へ向かう。
『大丈夫か?』
『・・王が・・悲しんでおられます・・姫』
『お父様・・・。』
そしてその魚を海に返す。
『私の代わりに謝ってくれないか・・?私は・・・。』
泡になって戻るから。・・と。
「・・・っ!」
急に喉に痛みが走った。
薬の効果が薄まり、おそらくだが何処からか少しずつ泡になっているのだろう。
そしてその場に倒れそうになるが、倒れるわけにも行かない。
下は海だ。
溺れてしまう。
「カガリ!!!」
駄目だった、痛みでフッと意識が飛び海面が迫ってくる。
そしてその直前で抱きとめられたような気がした。
フラッとカガリは海へと身を投げたかのように見えた。
急いでその身体を引き止める
ギュッ
後ろから抱きとめ、反動で腰を打ち岩によっかかる。
「何やって・・・っ」
そう言うのだがカガリの意識はなく顔が真っ青だった。
「カガリッ?」
そして異様に荒く熱い呼吸に驚き喉を触る。
「あ・・熱い・・?」
これは既に人の肌の熱さではない・・?焼かれているようだ・・。
そして失礼だと思ったが、口を開き喉を見た。
「っ・・・!!」
喉が爛れてる・・・・。
そしてそれは今現在進行しているように見える。
ジュッ・・
喉に唾液が当たったのか、蒸発するような音さえ聞こえてきた。
・・今までも、さぞ・・・痛かっただろうに・・。
カガリを抱き上げそのさっきとはまるで違う表情を見ていた。
この子を助けたい。
それは・・・ただの情ではないような気がした。
「カガリっ?!」
血相を変えたキラがそのカガリを見て驚く。
そして事情を説明した。
「・・・海に・・?・・・カガリ・・。」
そしてとても切なそうな顔をする。
「アスラン・・カガリ部屋まで運んであげて・・僕も直ぐ行くから・・・。」
そう言われ薄暗い階段を登り、彼女の部屋に着いた。
薄緑色で統一された部屋、そのドアからは少しばかり海が見える。
月明かりがあたるベットにカガリの身体を乗せる。
少し収まった喉はそれでも熱を帯びていた。
「・・っ・・・!!」
カガリはその熱から逃れるように身体を捩じらせている。
・・どうにかして・・冷やしてあげられないだろうか?
そしてフッとすぐに過ぎった考えを、半ば否定し、半ば肯定する。
そう、手っ取り早く舌で冷やしてやればいい。
だが・・。
そんな事、婚約者のラクスにだってした事無いぞ・・・?
そう、自分はどうもそう言うことが苦手で、ラクスとだって手を繋いだ事しかないという初々しいお付き合いだった。
だが・・それで、この子の苦しみが少しでも和らぐなら・・・。
「----っ・・・?」
そうカガリの口から息を引く音がした
だが、一度入れてしまうとその感覚に酔ってしまう自分がいて・・・
そして熱い喉にピトッと舌をくっ付ける。
何度か舐めていると、次第にその熱は治まって行くように感じた。
「んーーーっぁ・・ん---!!!」
そう激しく聞こえるが無視して自分の唾液でその喉を癒す。
「あ・・っぅ・・ん。」
ゴクンと飲み込んだのが分かった。
そしてハッとして唇を離す。
「な・・アスランっ・・お前・・・・何やってっ!!!!」
真っ赤な顔をしたカガリは声を荒げ、口を腕で押さえた。
そして彼女自身ハッとする。
「-----声が・・戻ってる・・?」
初めて聞いたカガリの声は予想より遥かに低く少年のようだった。
だが、何故かその声すら今の自分には心地よい。
がばっ
そう効果音が聞こえるほど強く抱きしめられた。
「声が出たっ!声が出たっ!!!アスランッお前のお陰かもしれないっ!!!」
自分の膝の上できゃっきゃと騒ぎ、嬉しさのあまり涙目になったカガリが自分の瞳を覗き込んでいた。
・・っ
その時湧き上がった何ともいえない感情。
グイッ
「え?あ・・--ぁん・・・・・。」
さっきとは違い、感情に任せに唇を押し当て舌を入れる。
そしてカガリもそれに同調するかのように二人で互いを喰らった。
離れると一瞬だけ銀の糸が自分達を繋いでいた。
「・・・アス・・ラン・・・・?」
ガチャンと扉が開く。
「え・・カガッ・・アスラン!?何やってるのっ!!!」
カガリが俺の間にあるのを見てキラはたいそう驚いて見せた。
「キラッ私・・ホラ!!戻ったっ!!声が戻ったっ!!!!!」
その元気な声でカガリはすっと立ち上がり、キラと抱き合った。
それを見て少し悔しく思う。
「良かった・・・良かったねっカガリッ」
「キラぁ!!」
でもその姿はまるで本物の姉弟のようだった。
++++++
あとがき
アスカガ出たっ!!!!!!!
よかった・・一歩間違えればキラカガだよ・・。
次かその次でラストのはず・・・(曖昧)