ラクス、それは森の小屋に住む可憐な娘。

カガリ、それは海の王の娘として生まれた人魚。







+王子と姫+







「・・あらあら・・・?お花がしおれていらっしゃいますわ・・。」



ラクスは歌うのが大好きで姉はミリィと母はマリュー。
しかし、ラクスはその家の本当の子供ではないとラクス自身も知っていた。
















ある日、珍しく街に出たラクスはある一枚の広告に見入り
「・・あら・・舞踏会・・・・?」
それは、国中の娘が出向く舞踏会・・。
しかし、そんな話は姉のミリィからも母のマリューからも聞いていない。




「お母様・・私・・その・・舞踏会に・・行きたいのですが・・・。」
その言葉にお母様はビクッと肩を震わせ、何も無いかのように振り向いてみせてくれる。
「・・あ・・ラクス、・・16になってからにしなさい、ね?」
そう困り果てたように言われ、何があるのかとても不思議に感じた。
「ラクス・・来年にしよう?ね?」
「二人は・・どうしてそこまでして・・私に行って欲しくないのですか?」
その声に応えては貰えなかった。


















「大きな嵐が来る・・・」
そう予想できたのは、間違えなく自分が人魚だからだ。
そして、目の前には一世紀の豪華な船がある。
この客船じゃ・・この後に来る嵐には耐えられないだろう・・。
「でも・・助けないと・・っ!!」
人が死ぬ。それは海を汚す。
そして何より、そんな情景を見たくない。


でも・・どうすれば良い?どうすれば・・・。


船の傍でしきりに誰か出てこないか・・いや、見つかっても大問題なんだが・・。

そう、不安を過ぎらせながらも必死で考える・・。




ギィ・・そう音がして、ドアが開く。


そこには甘栗毛色の髪の男の人と、藍色の髪の男の人がいた。



「・・何か・・湿ってない風?」
「そうか?」


どうやら、栗毛色の人・・何処かで見たことがあるような気がしたが、彼には自分達と同じような感があるらしい。





よかった・・助かった。そう思いその船を離れた。





















「・・いっちゃ駄目なものは駄目なのよ・・ラクスっ」
そう切なく言われるとどうにも反抗できない・・。



でも、お母様とミリィ姉さんは行くのに・・どうして私だけ・・・?



そして夜になってしまう。
二人がいない夜。




ラクスの家は人里はなれたところにあった。
どうして人里に行かないのだろうと、何度も質問したが二人は応えてくれなかった。


「私が・・この家の・・本当の子供ではないからでしょうか・・・?」


そして哀しくなり外を眺めていた。




『お困りのようね・・』

そう聞こえた気がした。
空耳だと思ったが何となく返す。


「はい・・私も・・行きたかったですわ・・舞踏会・・・。」
「行かせてあげるわ。」




そうはっきり聞こえビックリして振り向いた。


「あ、貴女は?」

そこにいたのは赤い髪をして黒い衣装を身にまとった人・・・。

「見て分かんないの?魔女よ、魔・女」

そう言われビックリする。

「あんたが行きたいなら行かせてあげるけど・・後悔しても知らないわよ。」


そう言われ、ビクッとする。後悔・・・?





後悔・・。



それは・・・





「私は、何もしなかった時が一番の後悔ですわ。」




そう意思を告げた。





「そう・・なら、行かせてあげる。魔法の効果は零時まで。いい?」

そして、舞踏会の会場に向かった。

















案の定・・嵐が来た。

大きい・・・・・。
あの船は・・この嵐が来る前に無事、港にたどり着いたのだろうか?



そして心配になり、急いでその船を追った。






「あっ!!!!!!!!!!!」




船が・・・っ


そこには有も無残な船の残骸と屍が浮き沈みしていた。

あと・・500メートルもいけば・・岸なのに・・・。




その屍色に染まった水と海で多少吐き気を覚える。
「誰かっ・・・生きてる奴はっ!!!」


泣きそうになりながら、海に潜る・・誰か・・誰でもいい・・助けたいっ!!!



それは嵐を知っていて何も出来なかった自分への罪滅ぼしのようなものだった。





ゴボッ・・ゴホッ!!!!!





そう振動が聞こえる・・?





その発信源に向かって突き進んだ。



一人の人が必死に生きようとするようにもがいていた。






「生きて・・っ!!」




それは、今日の昼に見た藍色の髪の奴だった。それを肩に乗せ水面まで引っ張り上げる。

背中を叩き、水を吐くように促すが、中々出てこない。

少々苛立ち、思いっきりヒレで背中を打った。



バシンッ!!!!!!!!!!!!!



「ゲホッ・ゴホッ!!!!」

そして激しく咽たが、そいつは呼吸を取り戻した。

「・・良かった・・」

そうして、そいつを抱え岸まで運ぶ。
途中目が覚めたのか、軽くそいつの腕に力が入った。

「・・此処は・・・・?」


「口開くな、海水が入るぞ?」

それだけ言って彼は意識を失う。
そしてそいつを入り江まで運んで、波が当たらないところに引き上げてやった。
スースーと規則正しく息をしていて、良く見るとそうとう綺麗な顔立ちをしている。


そして、そいつが薄っすら目を覚ます。



「・・君・・は・・?」


また質問をされ、どうせまた寝ちゃうだろうと・・夢だったで終わるだろうと思い


「カガリだ・・」

そう短く応えると彼は「ありがとう」と微笑み、また寝てしまう。




さっきの嵐は嘘のように静まり、凪が訪れていた。











馬車を飛ばして舞踏会の会場に急ぐ。
会場間近の海で、何かを発見した。
「人・・ですの?」


岩と岩の間に何か見え隠れしていた。


降りて近くに寄ってみる。

「きゃ!!」

そこには木材に掴まった栗色の髪の人がいた。


その人は体力が限界のようでハァハァと息を切らしている。

「だ、大丈夫ですか・・っ!!今、お手伝い致しますから!!」

美しすぎるドレスの裾を捲くり、スカートをまとめ一生懸命手を伸ばす。
そして、何とか引き上げた。










「・・あ、ありがとう・・・君は・・・・・?」

「それよりお怪我はっ!大丈夫ですの?!」

綺麗なドレスを海水と泥でビチョビチョにして言われ思わず笑ってしまう。

「ど・・どうかいたしまして・・・?」

ピンク色の美しい髪も海水で濡れてしまったようだ。

「・・僕は大丈夫・・でも友達が・・・・・・。」

そう、僕は運良く木材に掴まって海流に流されて此処まで来た・・でも彼は・・・・?
急に喪失感にかられ、友の身を案じる。

「探しましょう・・?お手伝いいたしますわ」

そうまるで自分の事のように心配してくれる彼女に対し嬉しさが溢れた。

「ところで・・貴方はどなたですの・・?」

確かに・・僕の格好を見ればそう言いたくなるのも分かる。
どう見たって貴族以上の服。

「・・僕一応王子なんだ・・それに、隣国の王子が・・友達で・・・。」

そうおずおずと説明した。この国は王政。だから王族と話すなんて考えられない人が多い。
でも、聞かれたら応えなきゃ。僕は・・王子としてじゃなくていつもキラとしてみて欲しいと思ってるけど・・・。

「あら、丁度いいですわ。私、王子に会いに来たのですから。」
「え?」


その人離れした態度に少し驚いた。









しばらくして、人が来てしまった様だった。
本当はもっとこの綺麗な顔を眺めていたかったんだけど--。




フッと視界に写ったのは美しいピンクの髪を持った可愛らしい女の子だった。


「王子様---何処にいらっしゃるのですか?」


王子様と親しく話せるという事は、彼女は何処かの姫だろうか?
そして直ぐに彼を発見する。




「あ、いらっしゃいましたわ」



その光景を黙ってみている事しか出来なかった。

そしてその女の子は王子の方へ駆けて行く。

それを背に向け海へと帰って行った。
















「見つかりましたわっ王子様!」

そう栗毛色の方に話しかけた。

「あ、ホントだっ!!アスラン!!!」

そしてスースーと寝息を立てているアスランと言う名の王子に蹴りを入れた。

「何寝てるのっ!!早く舞踏会いかないとっ!!!もう!主役の僕らが欠席なんて有り得ない!!」
そして、アスラン王子もハッと目を覚ました。

「・・キラ・・・?あれ・・金髪の・・髪の子・・は・・・・?」
「金髪の髪の子?」

キラ王子は一瞬考えるような仕草をみせるが、ハッと目を開く。

「ともかく・・今は舞踏会っ!!」

そして、アスラン王子と自分はキラ王子に手を惹かれ、舞踏会に入った。
当然、会場からは歓声が沸く・・そして同時に自分に対して非難の声が上がった。






「君のお陰で・・ホント助かったよ。」

ダンスを踊りながら、その子を見つめていたが本当に綺麗で可愛らしい。

「困った時は互い様ですわ」

そうおしとやかにニッコリ微笑まれつい赤くなる。
---気のせいだろうか、昔だが・・この顔を見たことがあるような気がする。
幼い・・まだ三歳ぐらいの頃に・・・?



しばらく他愛ない話をして、いい雰囲気になってきた。そして、そう言えばだが名前も聞いていない事に気が付く。
「君の名前は・・・?」
そう聴いた瞬間、その子は走り出していた。


「ちょ・・ちょっとっ!!!」


叫ぶ声は聞こえないようだ。

「・・ラ・・ラクスですわ・・っ!!今日は本当に楽しかったです・・」

そう走りながら言われ、ラクスは一瞬転びガラスの靴を落とし片足はだしのまま駆けて行ってしまった。



「ラク・・ス・・?」






そう、その名前は間違いない。








十年以上前




キラは当然その頃から王子で、よく隣国のアスラン王子と、そのまた隣のピンクの髪姫・・ラクス姫とよく遊んでいた。
よく覚えていないが、その頃アスラン王子とラクス姫はすでに婚約していた。


そして、あるとき・・自分だけが・・と思い、ぐれた事があった。

そして大好きな海で遊んでいた。と言っても石を投げていたんだ。




「おいっお前っ!!!!!何やってるんだよ!!」
そう何処からか怒鳴られた。

「え?」

海面から泣きそうな顔をした金髪の同い年ぐらいの子供が出てきた。

「お前が投げた石が頭にぶつかったんだっ!!謝れっ!!!!」

そう言われビックリする。

「君・・なんで浮いてるの・・?」
「なっ!!」
その子はしまったと声を上げたが、お構いなしについ聞いてしまう。
「君・・人魚っ!!?」
そして近づこうとして、



ズリッっ!!!!



「あ、危ないっ!!!!」
岩から海に落っこちて足から嫌って程血を流した。
しかも、底は深くとてもじゃない。普通の人なら無理だった。
「あ〜!!もうっ!!」

そういいその子は岸まで運んでくれた。

「痛いよっーーあーー!!!」

傷口が海水に触れ、ジンジンと痛み幼い僕は馬鹿みたいに声をあげて泣いた。
「な、泣くなよっ!!ほらっ!よしよしっ」
海から身を乗り出し、彼女は頭を撫でてくれた。そして・・・

「うろ・・こ?」

そう、彼女には足が無い。
「・・・・あ"っ・・!!まぁいいや・・。」
そうため息を付いたが、すぐにニッコリ笑って

「お前が助けられただけでよしとするよ。」

そう笑ってくれた。さっきの怒った顔が嘘みたいに。






「傷・・いたいか?」
「うん・・痛い。。」
「じゃ、仕方ないなっ」

そう言って、近くにある尖った石でその子は軽く自分の親指を切った。
そしてそこから出た血を此方に充ててくれる。
「人魚の血は何でも治せるんだ・・でも、その代わり・・血が繋がっちゃうから・・」
良く分からない難しい事を言っていたように思えた。

「・・ま、つまり姉弟なるんだ。私たちは。」

そう言われ分かったと答えた。
「便利だぞ〜、まず天気が分かるようになるかもなっ!」

そして自分の血もペロッと舐められる。


「よし、これで姉弟っ!!」


そしてニカッと笑ってくれた。
「僕はキラ・・君は・・・?」
「私?カガリっ!!」

そして彼女とは今日まで会っていない。






その後、その行為が天地の神の怒りに触れとされ、罰則を受けそうになるのをラクス姫が止めてくれた。





「ラ・・クス・・・だよね?」






そして庇ったラクスは否応なしに16歳の誕生日呪いを受ける事になると聞いている。



もしかして・・・?





でも、所詮は遠い記憶・・どれが真実か、後から自分で植えつけた記憶かなんて分からなかった。

















『海底のものと、地上のものは知り合ってはならない。何故なら、それが悲劇を生むからだ。』



その条約の意味が分かった気がした。

「このごろずーっとボーっとしてるな、カガリ・・。」

お父様にそう言われ、ギクッとする。
嘘でも言えるものか・・地上のものに気があるなど。
ましてや・・自分は海底の王の娘なのに。


それに・・小さい頃自分が血を別けた男の子が、天地の神の怒りに触れ呪いを受けた事を知っていた。
あの子は・・たしか16歳で呪いを受けるんだ。




それを思い悲しくなる。


海近辺の城ならあう事だって可能だろう。でも・・・。


それがまた新しい悲劇を生んだら?

















ラクスと言う名の少女が、舞踏会でキラ王子と踊ったと言う事が瞬く間に近辺諸国に伝わった。
そして、キラもガラスの靴を手がかりに探していて・・そして、判明した。





「ラクス姫が国に戻られましたぞっ〜〜〜〜」




そう、アスランの隣の国は凄い事になっていた、なんせ10年以上前に失踪した姫が見つかったのだから。
しかし、それと裏腹にその国の王と后はショックを受けているようだった。














「・・では、私とアスラン王子は未だ婚約中と・・?」
「らしいな・・・。」





それは僕にも衝撃的な話だった。















近頃・・頻繁に海面から顔を出し、あの王子と逢った場所に来ていた。
だからと言って会える訳でもないが・・・。



なんとなく、忘れたくなかった。




何処からともなく男女の笑い声が聞こえる。


岩肌に隠れそれを見ていた。




「アスラン・・見てくださいな・・」
そこにはピンクの髪のお姫様。
「・・なまこ・・・・?」
そして藍色の髪の王子。






----・・そう・・だよな。
悲しかった。別に期待できる事なんて一つだって無かったけど。






『それで良いの、あんた?』





そう誰かに聞かれた気がしたが無視して海に潜った。
「あんた、ほんとにそれで良いとおもってんの?」
次はそう、ハッキリと。

「・・・・・・・!!?」

海の中に平然として一人の人間が立っていた・・。魔女・・?
「魔女が・・何のようだ?」
魔女・・良い魔女か・・悪い魔女か・・?
「ちょっと・・誰かが強く願うと必然的にそこに出没するように出来てんのよっ!!で、なに願ってんの?!さっさと言いなさい!!」

そう唐突に言われビックリする。
その魔女は赤い髪をなびかし黒いドレスを身にまとっていた。
「別に・・・っ」

「別にじゃないっ!!あんたがさっさと言わないとこっちだって休めないのよっ!!!!」



----願い・・?



「・・に・・人間に・・なれたり・・するか・・・?」

願い・・今はコレしか見当たらない。


「---あ、あんた・・本気・・?一応そのクスリならあるけど・・危険度Sよ?」


聞くくらいなら、出てこないで欲しいと素直に思う。

「・・だってお前私が言わないと休めないんだろ?」
「ちょっとまって、今あんたの経歴調べるからっ!!」
そして変な本を取り出し、ぱらぱらと見て言った。

「・・あー、人間と姉弟・・か・・・・。ならまだましかも。」

そう言われ変なビンを渡された。

「・・コレ使ったことのあんま見ないけど・・一応リスクがあるからちゃんと聞くのよ。」
そして本に書いてあることをツラツラ読み出した。
「これは鱗をなくし足に代えます、だけど慣れるまでズキズキ痛み、またこのクスリが喉を通る際、焼け爛れます。」
そしてパタンと本を閉じた。


「って事らしいわ。でもちょっとでも人間の血が混じってればマシかもね。」



・・・それで・・人間に・・・・?



「あと・・三ヶ月以内に相手に愛してもらえなきゃ、泡になって消える。これは大原則だから。」

愛してもらう・・私が・・彼に・・・?


「愛するって・・?気持ちが通じればいいのか?」
「さぁ?良く分からない。それに期限にも個人差あるし・・、愛し合ったら喉が治るとか色々迷信はあるけど、どれが本当か分からないわ。」

そう曖昧に答えられた。




そしてそのクスリを呑む。


「ん"っ・・か・・っ」

熱い・・痛い・っ・。痛いっ!!!!!!!!












「-----?」

何となく、海に来なきゃいけない気がした。
何か、ウズウズと身体をさせる。



「・・えっ?」



-----君は・・。



「カガリっ・・・?」


十年ぶりの姉弟の再会。














「金色の・・髪?」
「あぁ・・その人が・・君と会う前僕を岸に上げてくれた気がするんだ。」
そしてラクスと二人で岸に向かった。
それも毎日、毎日。



でも、結局見つからない。



幻・・夢・・だったのか?


お礼が言いたい、話がしたい。










「養子・・・?ヒビキ王が?」
「えぇ・・なんでも、キラが連れて来たとかですわ。」
そうラクスに告げられ、それの披露宴に呼ばれた。


キラと手を繋ぎ出てきた人・・それは・・。



「あの子・・・・?」




それが海で出会った子と異様に被る。

ラクスと共にキラとその子に近づいた。
「始めまして、ラクス・クラインと申しますわ。」
「・・アスラン・ザラです。」
そう言うと、ぎこちなく会釈をされる。
「ゴメン・・カガリあんまり場慣れしてないから・・。」
そしてキラはフッとそのカガリをお姫様抱っこする。
「疲れた?休もうか・・」
そしてカガリを席に座らせ、飲み物を渡していた。
それにしても・・なんでこの子は話さないんだろう?

「・・君・・何処かで・・・」

キラが少しカガリの傍を離れた時すかさず聞く。
「・・・・・・・。」
声を出さず、パクパクと口を動かすだけ。

「・・お話・・出来ませんの?」
それを言われ、カガリはコクンと頷いた。









話せないことがこんなに辛いことだとは思わなかった。
食べ物を通すたび喉が痛むし、足だって相当痛い。
でも、救いがあった。それが・・。

「カガリ・・」

キラと言う弟の存在。
キラに伝えたいと願って心に思えば自然と通じる事が良くあった。
『私の・・言ってる事分かるか?』
「うん。」
そう言われた時は流石にびっくりしたが。



だが・・・

思いを寄せている人を目の前にして、何も話せないのは・・痛い。












・・この気持ちは・・?

今ハッキリと自分の心が正常で無い気がした。
ただ、キラが女の子をお姫様抱っこしただけ・・それだけ・・。
「ラクス?」
婚約者のアスランに覗き込まれる。綺麗な顔立ちの真面目な彼。
好きと言われれば好きだが、それは婚約者としてだった。



婚約者がキラだったらと思ったことがないと言ったら嘘になる。


そのキラが女の子をいきなり養子に迎え、あそこまで親しそうにされると・・・。
本当はこんな気持ちになりたくないのだが、・・嫉妬・・?に近い感情が沸いてきてしまう。
違う・・こんなの自分らしくない・・。



「顔色・・悪いぞ・・ラクス?」

そう心配してくれるアスランには申し訳ないが・・。


「すいません・・今、一人になりたいのです・・・。」


そう告げて、中庭に出て行った。
















カガリを部屋まで抱っこして連れて行った。
やっぱりカガリはあの時の人魚で、どういう訳か人間になって現れた。
「足・・痛む?」
『うん・・でも慣れれば平気になるってさ』
「じゃあ・・頑張ろうね」
『あぁ・・いつも済まない・・キラ』

そう申し訳なさそうに微笑むカガリを少し愛しく感じた。
姉弟じゃなかったら良かったのに・・。
だって・・・。



僕の后になってほしい人は、親友の婚約者なんだもの。


だったら・・次に傍に居れる子とぐらい、・・・とも思うがやっぱりカガリは姉かな?と思いなおした。
そして扉を開け中庭に出る。



「あれ?」
そこにはラクスがいた・・酷く悲しそうに歌を歌っている。
「ラクス・・どうしたの?」
その声にピタッと歌声が止まる。

「・・カガリは・・大丈夫ですの?」





嫉妬なんてしたくない。私は・・私らしく在りたい。








「うん・・ラクス?」
やはり何処か哀しそうだ。それに・・アスランも何故かいない。
「ラクスは大丈夫なの?」










その言葉にビックリする・・私?
「えぇ・・大丈夫ですわ・・。」
「すごく・・哀しそうに見えた」
そして頭を撫でてくれる。


「アスランと何かあったの・・?泣いていいよ・・誰にも言わないから・・・。」




違う・・アスランの事じゃない・・・。

私は・・・・

『泣いても良いよ』

そう差し出された大きな腕に、思わずしがみ付いた。
泣きたいわけではない、ただ・・・。


そして自分の腕もキラの背中に回す。


「ラク・・ス?」






「私は・・・・」







驚いた、まさか影ながら想いを寄せている子に抱きしめ返してもらえるなんて。
抱きしめる腕に力が入る。




離したくない。
ずっと・・君とこうして・・・。









「キラの事が・・好きですの・・・。」





え?





嬉しい気持ちと親友への罪悪感が募った。
ラクスが・・僕を・・?アスランじゃなくて、僕を選んでくれるの?




「ラクス・・。」





お互いの目を見つめあう。






「僕も・・ラクスの事が・・好きなんだ」




そしてどちらかともなくキスをした。






























++++
アスカガのはずが、キララクになってるという罠発動☆
いや、ちゃんと続きはアスカガに成る予定です。
見放さないで・・読んでやってください・・。