「おーアスラン、久しぶり〜」
「あぁ・・久しぶり。」
夏休みも終わりに近づき寮へと戻ると、一日早く帰ってきたキラが部屋で迎えてくれた。
「仕事、どうだった?大変?」
「まー例年通り・・・そういえば父上がお前のOSに助けられたって喜んでた。」
「そう、良かった。僕OSがとりえだから。」
-----?
「どうかしたの?アスラン」
あの匂い
「お前・・偽者じゃないよな?」
「はぁ?」
----だって、微かにだが甘く痺れる匂いがする。
「いや・・気のせいなら良いんだ。」
どう見ても・・唇だってあの子ほど桜色じゃないし・・。
-------・・キラの恋人とユラは・・似たような匂いだから・・。
「それより、ラクスとのダブルデートの話どうするのさ?」
「・・・・・今は・・まだいい。」
そう、今はまだ・・・・・。
「無理だよ、もう今度の日曜遊ぼうって話しつけちゃったもん。」
「はぁ!!」
何でそう勝手に進めるんだ・・・。
「あれ?ラクスから話いってない?」
「来てる訳が・・・」
ジジジジジジジジジジジジジジジジジジ
「--------・・アスラン、バイブ鳴ってる。」
「もしもし・・・」
『ラクスですわ、すいませんキラから伺いました?』
「たった今・・・。」
『そうですか、では・・そういうことですので。あ!この間仰った私の大切なお友達も連れて行きますわ』
大切なお友達・・あぁ、明るい子か。
『では、日曜』
ピッ
「・・・・・ふぅ」
「って訳だから。」
----・・なんでキラとラクスが計画してるんだとか色々思い当たるところはあるが・・まぁ・・もうどうだっていい。
ユラがいなくなってから・・なんだか、全てが投げやりになっている気がする。
「・・・・そうだ、アスラン・・。これ・・郵便受けに詰まってたんだけど。」
・・・?
「布・・かなぁ?バスタオル?」
紙包みを外すと、薄黄緑バスローブが見えた。
「え・・・。」
そう・・か、洗濯してから---返してくれたのか。
「誰から?」
「-----いや・・・。」
思わずバスローブを抱きしめた。洗剤で匂いが落ちていないか不安だったが、確かにユラの匂いがする。
「女の人が着てた・・・匂いがするんだけど?」
腹の下がキュンとしたような気がして、懐かしさで胸がいっぱいになった。
「・・・・ちょっとな。」
ユラ・・。
その様子を見てキラは
「・・・アスラン・・ラクスの他に、やっぱり好きな人いるんだ・・。」
そうボソッと呟かれるがあえて答えなかった。
--------そんな事・・言われたって、・・・・・・ユラがすきなんだ。
キラは逢った事も話したこともないから・・分からないだろうが------・・初めて、ずっと一緒にいたいと願った子なんだ。
そしてそのバスローブを直ぐにビニールの袋に入れる。絶対匂いが落ちないように。
-----ユラを忘れないように。
「えっ!ミリィ・・ディアッカと付き合い出したのか?!」
「ちょ・・あんま大きな声で言わないでね?・・・なんか・・・---まぁいい奴だと思うし・・」
ミリィは赤く頬を染めて状況を説明してくれる。
「へ〜凄いなー!フレイは?イザークとどうなんだ?」
「うーん・・なんていうか・・微妙?」
「あらあら?微妙ですの?」
「お互い告白待ち状態なのよ。」
フレイはチッと舌打ちしてみせる。
「男なら堂々告白してきなさいよね・・アイツ変にプライド高いから・・自分から告白したくないみたい。」
「なら・・フレイからすれば?」
「嫌よ。----私は待つ派の人間なのッ」
カガリ以外・・皆凄い事になっていた。
「私だけか〜、まぁいいや。」
「良いではないですか、カガリは私とお出かけするのですから。」
そうか・・今度の日曜は、ラクスとその婚約者と私とキラで出かけるのか。
ぼーっとそんな事を思っているとチャイムが鳴りマリュー先生が入ってきた。
「・・・皆・・凄いよな〜」
どうせそれに行っても、ラクスは婚約者と歩いて、私はキラと歩く。
キラは全くの恋愛対象外だから・・結局そこでも何も望めないよな・・・。
ふぅと溜息を付き、俯いた。
---そういえばバスローブはちゃんと・・届いただろうか?
「え?ディアッカ付き合い出したの?!へ〜オメデトウ!!」
「まじ可愛くてさ〜ミリィ、最初会った時から結構狙ってて・・ホントよかった!」
ディアッカがガッツポーズを取る中アスランの周りの空気は妬けに重たかった。
「・・・イザークは?」
「あ・・あんな高飛車な女誰が・・・・」
「良く言うよなー・・この間キスしてたじゃん。」
「あ・・アレはあの女からだ!!断じて俺からではない!!」
キス・・・。思い出し頬に手を触れるが毎日寝る前にしてもらっていたあの感覚さえ遠く思えて切なくなる。
「そーいうキラとアスランはどーなんだ?」
「僕は・・・ちょっと、ね・・・まぁ色々」
「おいおい〜なんだそれ!!俺らはこんなに暴露してるのに!!」
「せ、責めるならアスラン責めてよ!婚約者いるのに・・違う女の人が使ったバスローブいつも大切そうに抱いてるんだから!」
「なっ・・・貴様ッあんな可愛い婚約者がいながら・・・・・!!」
イザークはその真っ直ぐすぎる熱血で怒ってくるが・・・・---仕方ないだろ・・?
「否定しないところを見ると・・まさかマジ?あの真面目なアスランが?---二股?」
「考えにくいけどねー。」
僕的には・・その方が都合が良いんだけど。
「・・・ま、貴様もそこまで腰抜けではないか。」
----俺はどうやら・・相当腰抜けらしい。
・・・なんだっていい。
--------・・・逢いたい。
そうしている内に、曜日はまた日曜を指した。
「アスランッ!!今日遊びに行くって・・・!!」
キラに無理やり叩き起こされて、不機嫌ながら目を開く。
「・・・---面倒だ。」
「婚約者に会いに行くってのに・・・何その顔は」
「・・・お前はラブラブな恋人に会うんだろ。」
-----ラクスは嫌いではない。・・・ただ、ユラがいいという話なだけで。
「だーもう!いくったら行くの!!」
そう半ば無理やりベットから蹴り出されて、落とされる。
渋々VネックのTシャツに着替え、ジーパンをはいた。
「待ち合わせ・・間に合うかなー・・折角映画館だっていうのに。」
-----映画か・・話さなくて楽だ。
そう軽い気持ちになってキラと共に寮を出た。
「カガリ、支度出来まして?」
「あぁ、バッチリ!」
ラクスはフワリとしたピンク色のキャミソール型の膝丈までのワンピース、カガリは赤のタンクトップに七部のジーパン。
そして色違いのサンダルを履いていた。
「駅で待ち合わせて・・その後映画ですの、楽しみですわね。」
「あぁ・・・そうだ、ラクスとラクスの婚約者で隣とかの方がいいのか?席」
「いいえ、今日は皆でワイワイやりたいので・・・そういうのはなしで良いですわ。」
駅に着くと、息を切らせたキラの姿が見えた。
「キラッ!」
「カガリッ」
ついいつもの癖で抱きついていると、ラクスは「あらあら」と笑ってみせる。
「・・・あ、ラクスおはようございます」
後ろから、ラクスの婚約者が顔を出した。
「あッ・・お前がラクス・・・の・・・---・・・。」
「え・・・・・?」
「「・・・・・・・・・・・。」」
「え?カガリとアスラン・・・・知り合い?」
キラと抱き合ったまま、そいつに目をやる。
・・・ご主人様・・・ってか、アスラン?
「アスランじゃないかッ!」
「・・ユラ・・・・・?」
-------・・ユラだ。間違えなく・・ユラ。----いや、今カガリと呼ばれていたが・・・。
え・・つまり・・、キラのあの恋人は・・・
「アスラン!」
そう目の前で大声を出されてビックリする。そして目の前には琥珀色の目がはっきりと写った。
「・・・ユラ・・・----?」
もう一度尋ねると、あぁと言われ
「私はカガリ・ユラ・アスハ・・だから、これからはカガリって呼んでくれ・・な?ご主人様ッ」
その言葉にキラはアスランを睨む。
「え?何アスラン・・・カガリにご主人様って・・・呼ばせてたの?」
「あらあら・・では、メイドの仕事はザラ家でしたのね、カガリ」
「カガリ・・・。」
通りで・・・同じ匂いなんだ。----同じ人だから。
そう、待ち望んでいた再会を果たした途端・・地に落とされたような気分に陥る。
---・・キラの・・恋人。
その事実が胸に突き刺さった。