第八話、代行者




『え?アスラン・・どういうこと?』

---------・・嘘でも何でも・・今他の女の子に会いたい気分ではなかった。


「すまない・・キラ、俺の代わりにラクスに会ってくれないか?父上と少し会社の事話さないとならなくて」
『でも・・アスランの婚約者でしょ?僕が行って平気なの?』
「・・・まぁ、ラクス心広い子だし・・・それに当日でキャンセルより音楽に詳しいお前が行った方が良いような気がするんだ。」
『・・・別に・・・構わないけど。でもラクスって結構僕の好みだからね〜どうなっても知らないよ?』
そう電話越しの親友に冗談を言われる。
「お前、ラブラブな彼女がいるくせによくそんな事言えるな・・・まぁキラはそんな事出来ないって知ってるから」
そう笑うと、キラは『どうなっても知らないからね〜』と笑って電話を切られた。
「ふぅ。」

嘘だ。父上との仕事なんて無い。
・・・でも、ラクスと会って苦手な音楽について語るのは少し嫌だった。
--------それに、今はまだ・・あの子の余韻にも浸っていたい。
ボフッと音を立てて、ベットに寝転がってもユラの匂いはもうしなかった。
・・・痺れるような甘い匂い・・。細く首に巻きつけてきた腕の感覚・・・全てが消えてなくなっていく。

「・・・いつの間に・・・こんな馬鹿になったんだろう?」
-----誰か一人とこんな切実に会いたいと思うなんて・・つい最近まで有り得ないと思っていたのに。
「キラの彼女馬鹿がうつったのか・・・?」
アイツの「あいたいな」ももの凄く長く続いていたような気がするし・・・。
そう思いながらラクスに誤りのメールを入れた。

"すいません、外せない用事が入りましたため・・友のキラに代役を頼みました。"

-------・・こんな失礼な事・・すべきでは無いだろうが。
「----・・まぁ・・いっか。」
正直------どうだっていい。






「あらあら・・・?」

"キラ"

その文字だけ浮き上がって見えるような錯覚に陥る。
キラ・・とは、あのキラなのでしょうか?
駅前で残念半分期待半分で待っていた。
---ですが、二人ともエターナルですし・・・キラである確立は高いのでは・・・?
カガリから聞いたキラは、まさに理想の人間だった。
だから、婚約者もキラのような方ならとアスランに会う前は何度もそう考えていた。
「ラクスっ・・?あ、やっぱりラクスだ」
そう声がして見ると、茶色の髪にアメジストの瞳・・・カガリが言っていたキラと言う人物そのものが目の前に立っている。
「ほら、カガリの電話に出た・・・僕がキラ」

-----キラ。

「キラ・・ですのね、では私は今日・・・キラと一緒にレコード屋さんに行けるのですわねっ」
嬉しい、ミュージックの趣味が同じ人とそういう所を廻るのは凄く楽しそうに思える。
「うん、アスラン・・結構音楽苦手だったと思うから・・・ラクスをつまらなくさせないように僕をよこしたのかも。」
「あら・・そうならそうと・・言ってくださればよかったのに。」
「アスラン、人から言われると断れない性格してるからね!アスランらしいってことで」
手をパッと出されて、握ってもよろしのかと確認すると男性なのに可愛らしく微笑まれる。
「はいっ」
アスランとはまだ一度も手を繋いだことが無いのにと少し申し訳なくなりながらも手を取るとキラは「行こう」とリードしてくれた。


「これ・・いいね、持ってる?」
「はいっ、私のお気に入りランキングでも上位のものですわ」
---ラクス・・アスランとカガリから聞いてたけど・・・・そうとう良い子で可愛い。
「よければお貸ししますわ、うちにきてお聞きになさいます?」
「いいの?」
「えぇ、キラなら喜んで」
ディアッカも言ってたけど・・・アークエンジェル一可愛いのも頷ける。上品だし・・・
そこのレコーディング屋でラクスは一枚だけ買うことしたらしくレジにものを渡していた。

「30円のおつりになります。」

そう、言われて渡されたのは300円・・あーあレジの人やっちゃったなー、と安易に考えているとラクスは直ぐに
「あらあら?おかしいですわ、300円お渡しになられていますわよ?」
そして直ぐにお金を返し、30円を貰いなおす。
「僕、あれやられると少し返すのとまっどっちゃうんだよね・・結局罪悪感にかられて言うんだけど。」
「ですが、得したと思ってもらう人よりはずっといいですわ。」
「当然の事・・・なんだけどね。」
「ですが、その当然の事が出来ない人が沢山いますし・・素直に返せる勇気も必要ですわよね」
「そうそう、実際定員さんもやられたら嬉しいしね。」
その後ファーストフード店に入り、ラクスの家に向かった。

会話をしていて思うのだが、ラクスと僕の価値観は近くて話も良く合う。

「そうだ、カガリ呼ぼうか?ラクス会いたい?」
女の子の家に、僕一人が入るのもなんだか可笑しな気がして・・それに相手はアスランの婚約者だし・・。
「・・私は・・・・、今はキラと二人でいたいですわ。」
そうキュッと強く腕を絡められて・・少しドキッとする。
「・・・、そっか-----じゃあ・・二人でいようね」
にっこり笑うとラクスも嬉しそうにニッコリと笑ってくれて、ちょっとアスランに申し訳ない気分になりながらも幸せな気分になった。

・・・・アスランの事は・・嫌いではない・・・・寧ろ好きなのだが・・・、
「キラ、紅茶とクッキー・・お手製なのですがいりますか?」
「え、いいの?ありがとう」
キラは・・どこか・・・カガリと似た雰囲気で・・とても好きなタイプの人で・・・----。
・・・・・そういえば、お顔も・・似ているような・・。
「もしかして・・ですが、キラとカガリは姉弟なのでは?」
唐突に浮かんだ疑問をキラに投げかけるとキラはビックリしてしまう。
「え・・それカガリがいったの?」
「いえ・・・-------何となく、似ていると。ヤマトとアスハ・・ですが、雰囲気とかお顔とか・・・」
そう言うとキラはちょっと躊躇って、
「実は・・ね、うん僕とカガリは兄妹・・だけど、秘密だよ?---当然アスランにも。」
僕に妹がいるなんて・・・・口にしたことないし、いらない事で同情買うのは嫌だ。
「はい、わかりました。」
実際・・兄妹だと知ったのは三年前。それまではずっと・・将来結婚する気でいたんだけどね。
「ですが・・カガリとの昔話を聞いているとまるで恋人でしたわ、仲がよろしかったのですわね」
「いや・・実際恋人だったんだ。」
ポロッと思わず真実を口にしてしまい急いで口を閉じた。

「----安心してくださいな、模索するつもりはございません」

ラクスはやんわりと微笑んで、紅茶をポットから注いでくれた。
「ありがとう。」
カガリの親友・・---いつか、きっと僕とカガリの出生についても言える様な人だと思った。
「キラ・・どうかいたしましたの?」
ボーっとそんな事を考えていると、ラクスは不思議そうに瞳を瞬かせる。
「ううん・・・、ラクスはいい人だと思って。」

-------ちょっと、アスランが羨ましいかな。

そう、口にすると・・ラクスは少し驚いて
「キラに・・そう、言っていただけると・・・私は嬉しいです。」
「え?」

---------それは・・。

・・・・そういう意味としてとってもいいんだろうか?
「ラクス・・。」
-------、ゴメン・・アスラン。
「-------・・今度、また・・遊びませんか?--アスランと・・そうだ、カガリも呼んでっ」
・・僕、ラクスの事・・・狙うかも。

ラクスはその気があるのか無いのか良く分からない態度のまま、四人で遊びたいといっていた。
「そうだね、楽しそうっ」
そう気を取りなおし、二人でワイワイと話しだした。






家に帰ると、母さんとカガリがおかえりーと迎えてくれた。
「キラ、誰と遊んでたんだ?」
そうカガリに聞かれ気まずいなーと思った。
「ラクスと・・ね?」
そう答えるとカガリは少し眉を潜めて
「ラクス・・?ラクスは婚約者もちだぞ?」

--------だって、その婚約者から頼まれたんだもの。

「なに?カガリ焼餅?」
「ばッ・・ふざけるなっ、」

そしてアッパーを喰らいフローリングに倒れるのはいつもの事だった。

「大丈夫、カガリの嫁の貰い手がいなかったら僕が貰ってあげるから」
「余計な心配するなっ」

ふざけて後ろから抱きつくとカガリも笑いながら腕を抱えてくれる。
「あーでも、カガリに彼氏が出来たら僕、相手次第ではぶっ飛ばすかも。」
「はぁ・・?相手かわいそうだろ。」

キラとカガリはやはり恋人・・と言う感覚よりもとから兄妹(姉弟)の感覚のほうが強いように感じる。


「だって、僕の大切な妹だもの、ちゃんとした人に貰ってもらわないと。」
「姉だっ」

そしてしばしば言い争いをして、いつも通り決着は着かない。





「アスラン?・・・今日ラクスと遊んで来たよ?」

『あぁ、そうか・・良かったな。』

-----良かったなって・・君さ・・

「アスラン・・・ラクスの事嫌いだっけ・・?」
『いや・・別に、どうして?』
「なんか・・口調的に。」

---------好きじゃないオーラが出てると言うか・・・。

「もしかして・・他に好きな人が出来たとか?」
『え・・・、-----いや・・そんな事は無いが・・。』

なーんだ、・・ちょっと残念。今日ラクスと結構いい雰囲気だったのに・・・。アスランの婚約者じゃなぁ・・。

「ふーん、そう・・あ、今度アスランと僕とラクスと・・もう一人女の子で遊ばないかって話になったよ。」
『・・・え、面倒そうだな・・・。』
「そんなこといわない・・もう一人の女の子は、僕がよく話す子。」
『・・・・まぁ、行く事になったら行くよ。』
「うん、じゃあ。」

アスランは、女の子と付き合うのきっと面倒なんだろうなー・・ラクス・・ね、あんまりそんな態度取ってると本気で攫っちゃうよ?


「・・・まー・・なるようになるか。」
・・でも、アスランといざこざが起こるのは・・ちょっと勘弁。

そうぼんやり思いながら眠りについた。

































































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あとがき
キララクは同じ価値観だからくっつくように思えたのでそんな描写を入れてみたり・・・。
さーて、何だか浮気ネタっぽくなりつつありますが・・・次から学園生活に戻らせていただきます。
2006.03.29