その日の・・天気は快晴だった。
「・・・・行きましょうか。」
そう自分と同じくらい無愛想な者と一緒に電車に乗った。
そして四、五回乗り継ぎをして・・少し田舎の方まで上がる。
なんだか、少し崩壊した田畑が目に付くようなでも民家も多数存在する場所に下りて歩いた。
「・・・----ここ・・か?」
そして見ると、そこには保育園のような場所があり、名前は"ヘリオポリス施設"と書いてあった。
だが・・子供はいない。
「・・数年前に・・廃棄されました、でも土地はまだ買収されていません。中に職員も居ます。」
そしてそこにはいり、どうやらもとより施設の人と話し合っていたようで中の子供の資料がおいてある場所に通される。
「・・本当はプライバシーに関わりますから・・いけないのですが、キラ先輩に許可を取っていただきました。」
そして二冊、ファイルを取って渡される。
「・・・これに眼を通してください。その上で、私が知っていることをお話します。」
キラ・ヒビキ・・・、カガリ・ヒビキ・・。
「・・・・・これは・・」
カガリと・・キラの・・・?
そして開くと、この施設に来た日、・・どういう子供だったか・・、何度親が変わったかが書いてあった。
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カガリ・ヒビキ
・明るくて姉御肌、いつも施設の子供の中心をなして泣いている子を慰める。
・一度目血の繋がりを持つキラ・ヒビキと里親に引き取られる。
・三ヵ月後、施設に戻る。
・前より元気がなくなったように思え、キラ・ヒビキが懸命に支えていた。
・やっと前の明るい状態に戻る。
・新しく親に引き取られるが・・その両親の不仲が目立った。
・三週間後、施設に戻る。
・部屋から出てこなくなり、遊びに来たキラ・ヤマトとしか顔をあわせなくなった。
・半年後、やっと元に戻ったように晴れやかな笑顔を向ける。
・施設を出る。大富豪の家の暖かい両親に引き取られた。
注:「いらない」と言ってはいけない。どうやら二度目の里親にそう言われて、トラウマになりつつある。
そういう素振りですら、傷ついてご飯も食べない事がある。
泣き出したら第一にキラ君に頼むと良い。
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++++
キラ・ヒビキ
・血の繋がりのあるカガリ・ヒビキの後について泣き虫だがいつも慰められて元気になる。
・一度目血の繋がりを持つカガリ・ヒビキと里親に引き取られる。
・三ヵ月後、施設に戻る。
・元気のなくなったカガリ・ヒビキを支えるようになり、しっかりとしだす。
・ヤマト夫妻に引き取られる。
・時々元気の無いカガリ・ヒビキを慰めるように施設を訪問してくれた。
注:泣き出したらカガリちゃんに任せること。
頭の良い子なので、お菓子のある場所を知らせてはならない。
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「・・・・・・・---・・始めて・・知ることばかりだよ。」
そう呟くとレイは説明し出した。
「・・・カガリは・・幼い記憶でよく覚えては居ないが、二度目の里親に引き取られて・・一週間殆ど絶食していたらしい。」
淡々と語り出すスカイブルーの瞳を見た。
「そして・・施設に戻ってきた時、カガリは泣いて・・倒れた。・・・キラ先輩が必死に慰めた・・が、三ヶ月間一度も出てこなかった。」
記憶を辿るように、レイは
「・・施設の人に尋ねた、なんで・・ないているのだと、・・・「いらない」とはっきり言われたそうだ、親に。」
だから・・レイは口を開く。
「いらない素振りをするな。カガリはそのところに敏感だ。それに・・永遠に一緒に居てくれる事を望んでいる。」
熱心にそう言われ、アスランははっとした。
カガリは一度もアスランに嫉妬をしなかった・・それは・・・----・・。
信じてもらえていたからだ。
・・・・・最初から・・ずっと、疑ってなんていなかった。
なのに・・唐突に裏切ってしまった。
キラからアスランに変えたのだって・・そうずっといてくれると確信しての行動だったのだろう。
なのに・・
俺は・・ずっと君の事を疑ったり・・信用したり・・。
曖昧な態度しか見せなかった。
「・・・・酷いことをしたんだな・・俺は」
「・・・・・・・・・そうです。」
レイに言い切られて、アスランは顔を上げる。
「・・・・謝ってください。そして・・カガリを元に戻してください。」
「・・・分かった・・」
大切だと前レイが言っていた。
俺も・・カガリが大切だ。
だから・・。
エターナルに戻り深々と頭を下げた
「・・・・今日は・・ありがとう。」
「・・・・必ず・・ですよ。カガリのこと・・。」
「分かっている。」
「・・・・・信じます。」
そう残してレイは背を向けてアスランも背を向けて・・歩き出した。
カガリと逢いたい・・謝ろう、そして・・俺にはカガリが必要だと・・伝えたい。
そう想っていた。
けど・・カガリと・・どうやって会おうか・・。
「・・・・・・・・・どうしよう。」
今日でもう二ヶ月半・・。
季節は秋へと変わり、それでも一向に動き出せない。
謝らなくては・・カガリに。
ミーアは心に決めて・・教室に入ろうとした・・けど。足がすくんだ。
駄目・・恐い。
嫌いといわれるのも・・嘘つきといわれるのも・・。
恐い。
「あらあら・・ミーアさん?」
「キャッ!?」
そう、自分と瓜二つ・・ラクス・クラインに話しかけられた。
「・・・あっ・・あ、あのっ・・カガリさんと」
そう告げるとわかりましたわとカガリをつれてきてくれる。
ベランダに行きカガリを見ると・・信じられないほど細くなっているように思える。
「幾つ・・?体重・・」
「今・・四十キロ切ったかな・・。」
そしてカガリの身長を見る、・・・どう見ても・・ミーアより大きい。
ミーアだって・・身長160はあるのに・・
そしてそれが自分のせいだと気が付き一気に申し訳なさが募った。
「あの・・ごめんなさい・・私・・」
「気にするな・・それより元気か?あいつ・・」
「違うの・・カガリ・・あの・・。」
申し訳なさで潰れそうになって、でも言わないとと説明をした。
「・・・アスランも・・ただ、嫉妬してただけで・・悪気はなかったの・・。でも結果として・・カガリがボロボロに・・」
思わず泣き出してしまうがそれすら許される事ではないとミーアは思った。
哀しいのはカガリ。
なのに・・泣くなんて勝手だ・・。
アスランと・・あれから接触を持っていない。
恐かった、その場所をもしもカガリがみたらと考えると・・恐くて・・・。
「カガリに・・嫌われると思って・・恐くて・・。」
その勝手な言い分をカガリは黙って聞いてくれた。
そして一言
「・・・・・・・ありがとう・・ミーア・・っ」
ポタポタ涙を流しながら・・金褐色の目は輝いて見える。
「カガリ・・・?」
その夜、カガリの居場所を知らないかと、ラクスさんから電話を貰った。
ミーアから・・真実を聞いて、何だか夢のようだと思った。
久しぶりに・・売店で食べ物を買い・・あの場所に向かう。
アスランが居る・・場所。
良い・・夢を見ている気分だ。いや・・今までのが悪い夢。
コレが現実。
そう思うとトクンと、あの日から止まったように無色になった心が鮮やかに染まる。
足取りが軽くなったような気がして急がせた。
息を切らせて金網フェンスにたどり着き、ギュッと握る。
ここで待てば良い。アスランは来てくれる。
いつも・・二人で一緒に此処で食べていたんだから。
時が止まったようにそこで立ち尽くした。
そしてボンヤリと遠くにアスランが見える。
きた・・。
来てくれた。
置いていかなかったんだ。
迎えに来てくれた。
「アスランッ」
そして、手足が動かなくなっている事に気が付いた。
でも、大丈夫だと・・アスランが着てくれているから大丈夫だと思った。
気が付けば辺りは暗く何処となく寒くて・・。
いつの間にか身体は地面へと打ちつけられていたけど。
「あすらん・・」
目の前に広がった売店の食べ物を見て、はやくアスランと一緒に食べたいとボンヤリと考えた。
そうか、フェンスがあるから・・超えられないのか・・。
そう支離滅裂にものを考えて涙が流れた。
飛び越えて、壊して。
迎えに来て。
瞼を閉じれば真っ暗で。
急に、引き戻されたような気分になる。
「アスラン・・」
見えなくても感じる・・その存在。