第四話、恋より仕事




「なーキラ、私たち・・・」

----------姉弟だよな。

「違うよ、カガリ」


その言葉に、驚いて続きを待った。








「聞いてよカガリッ、そのディアッカって奴が・・・」
ミリィは眉間にしわを寄せて、真剣に事を説明した。
「あんた・・何だかんだ楽しんでたじゃない?」
「き・の・せ・い・よ!!」
フレイは「素直じゃないんだから」と溜息を付く。
「だ・・だって、急に手握られて・・耳元にキスなんて・・・・」
見る見るうちにミリィの顔は赤く染まっていく。

「いーじゃない、ディアッカあんたに気あるんだから。」
「良くないっ!あんな遊んでそうな奴・・・・、フレイこそイザークとどうなの?」
「あーあいつ・・。少し真面目すぎだけど・・ま、顔は良いしね。」

どうやらお互いメールアドレスくらいは交換したようで、なんだかんだ嬉しそうな二人の顔が目に留まった。
「カガリは・・昨日幼馴染さんと遊ばれて・・・どうでしたの?」
ラクスに聞かれて、少し昨日を思い出した。

「なんていうか・・やっぱり、私たちは恋人ではないな、うん」




----------姉弟だよな?

「違うよ、カガリ」
「え?」
兄妹だからv


-----そんな会話をしたような気がする。



「そう・・ですの。」
ラクスは曖昧な反応をしてみせる。
「きっと・・運命の人は現れますわ、私にも・・カガリにも」



そうしているうちに、刻一刻と夏休みが近づいてきていた。





「・・・・・・・そ、そんな校則があるのか?」
そしてカガリはまた一つ、学校に不満を持つ。
「そうよ、社会見学の場として・・長期の休みはバイトしなきゃいけないの。」

・・・・良く言う、普段はバイト禁止の癖に。

「もうずっと前からこうみたいで・・・すでに地域のコンビニとかは受け入れ態勢に入ってるから・・私たちも楽に出来るけどね」
ミリィはもう面接を通ったらしく気軽そうな顔をしていた。
「フレイは・・・?」
「私はお父さんから、デザインの仕事入れてもらうわ。要するに金稼げばいいのよ。」
「ラクスは?」
「私は・・とあるレコーディング屋さんからお声をかけられまして・・・そちらで歌おうかと。」
-------わ、私だけ決まってないっ!!
「そうショッキングな顔しない!-----あんたのお父さんお金持ちじゃなかった?ちょっと仕事ないか聞いてみるのは?」
---------いや、お父様なら絶対為になる仕事を教えてやらせてくれる・・・だが。
「絶対・・しんどいんだよな・・・。」
アメリカに渡ったのだって・・本当はお父様に置いていかれたくなくて、無理して付いて行って・・・。
交換条件として、三年間みっちりお父様の仕事を手伝った・・・・が、

--------あれは・・地獄だ。

小学校卒業したばかりで、精神的にも子供だったのが原因か?まぁ色々あったにせよ・・・辛かった。
勉強は全て日本からの通信教育。英語だけは現地でぺらぺらになれたが、それ以外は・・パーティーの社交辞令とか・・・
フランス料理、イタリア料理の食べ方・・・礼儀作法・・・その他色々。
ともかく色々みっちり仕込まれ、それに書類の整理とか・・数えたらきりがない。
「・・・・・でも、決まらないんじゃ・・・しょうがないか。」
「最低二週間でいいらしから・・・二週間だけみっちりやっちゃえば・・短期バイトで」
フレイに言われ、結局お父様に電話をかけた。

「----------はい?」

そしてまた・・・予想もかけない事を言われる。







「イザーク・・お前、どうすんの?」
そうディアッカは気難しいイザークに尋ねていた。
「どうしたの?まさか、イザークまだバイトの面接通ってなかったりして・・・」
「いやーそれが、母親から仕事頼まれてるんだけど・・・引き受けたくないらしくて・・」
イザークは真っ青になったまま、携帯電話の画面を見続けていた。

「・・・・・モデル?」

アスランに口に出されイザークは真っ赤になる。
イザークの母は有名なデザイナーだった。
「やればいいじゃない?モデル」
キラが笑いながら言うと、イザークは「母上の頼みだから・・・」と小さく俯いてしまう。
「お前、ホント親孝行な息子だよなー」
ディアッカは褒めているのか貶しているのか正直分からない言い方をした。
「煩い!キラ、アスラン・・貴様達は何にしたのだ!?」
「僕?アスランのお父さんから・・OS組んでくれって仕事貰ったけど?」
「俺も父上からロボットの商品化に向けて、色々話を貰っている。」
工学派の二人は、大手IT会社社長、パトリック・ザラに頼まれた仕事をするらしく・・イザークは自分の仕事との差に少し歯を噛む。
「楽しみにしてるぞ、イザーク・・・お前のモデル姿。」
「ち・・冬は皆撒き添い食らわせてやるからなぁ・・。」
そうイザークは冬休みに向けて静かな闘志を燃やし出した。





夏休みに入り、アスランはラクスと会う約束を交わしていたので、それに行くこととする。
そしてそれが終われば寮に戻らず、自宅に帰り父の仕事を手伝う・・というか勝手に作業するのだが、そうすることになっていた。
「じゃあ、僕も今日の内に実家帰るから・・・アスランも一ヶ月も無いけど元気でね。暇があったら遊ぼうね」
「そうだな、どうせ最後の方は暇だろうから・・・遊ぶか。」
そう行って、アスランは婚約者の元に向かった。




「申し訳ありませんわ、少し・・寮を出るのが遅くなってしまって。」
ピンク色の綺麗な髪をなびかせて、ラクスはふわふわとした足取りで歩いてきた。
「いえ・・そんなに待っていませんから。」
今日会うので多分四度目だったと思う。この子は大らかで不思議っ子、そして優しいという事は理解できていた。
「水族館、楽しみですわ」

--------水族館、はじめてデートスポットらしいところに行くなと思った。
水族館に入り、色々見ているとラクスは溜息を付いた。
「どうか・・されましたか?」
そう聞くと少し困ったような顔をされて
「いえ・・・すいません、せっかくアスランとこうしているのですが・・お友達の事が気になって・・・」
気分が乗らないのに・・少し、悪いことをしてしまったと思い直ぐにレストランへと入った。

「私のお友達・・寮で同じ部屋の子が・・・バイト先が気に入らなくて嘆いておりましたの。」
紅茶を飲むときのラクスの指使いはまさに優雅そのものだと思って眺めていた。
「その子が余りにも泣き出しそうで・・・それで、慰めていたら・・待ち合わせにもおくれてしまいまして・・。」
「優しいですね」
「いいえ、ただその子には色々と感謝してますの。ですから、こんな時ぐらい恩を返さないと。」
心配そうに微笑んで、ラクスはその子の話を始める。
「太陽みたいな子で・・・私中学の時・・色々あってあまり学校に打ち解けられませんでしたの。」
こんな良い子でも・・打ち解けられないなんて事あるんだな・・、としみじみ思う。
「ですが、その子が高校で編入してきてくれて・・・同じ部屋になって始めてお友達が出来ましたのっ」
アスランには見せた事の無いような笑顔を向けられドキッとした。
「それでですわ、その方は誰にでも好かれるタイプでして・・その方のお陰で今では沢山っ」
ラクスは腕を大げさに広げて、嬉しそうに微笑んだ。だが直ぐにまた切なそうな顔をする。
「その方が・・嘆いていると・・・私も悲しくなってしまいますの。」
今までの元気が消えたようにラクスは腕を下ろして、シュンとしてみせた。
「大丈夫ですよ、たぶん。」
「?」

「・・・ラクスがそこまで信頼する子なんです、きっとまた元気になってますよ。」

そう言うとラクスは「ありがとうございます」と微笑んでくれた。
「・・・帰りましょうか、今は気分ものらないでしょう?」
「え・・あ・・すいません、そんなつもりでは・・。」
「いえ、ラクスが元気な時に・・誘ってください、いや・・えっと自分から誘うかもしれませんが・・。」
たどたどしく弁解交じりで声をあげるとラクスは苦笑して「はい」と言ってくれる。
駅まで行って、「では」と別れを告げた。




-------・・あの子なら・・別にいいかもしれない。
そう、この頃思うようになっていた。
結婚しても・・・別に後悔することは無いように思える。





久々に実家に帰ってくる、といっても同じ都心・・・そこまで距離も無い。
見ると相変わらず、そのでかい屋敷が聳え建っていた。
「-----母さんは・・いるかな?」
ボソッと声に出してインターホンを押すといつも掛かり付けの使用人・・アーサーが顔を出した。

「お帰りなさいませ。」
そう頭を下げられ、荷物を渡す。
「さっそくなんですが・・短期で使用人が増えまして・・・」
ガチャンと扉が開き、コック、使用人男、使用人女×2、それともう一人に頭を下げられる。
「いらっしゃいませ、ご主人様。」
そうか、今は父がいないから・・俺が主人なのかと納得する。
・・・が、一人・・・頭を上げてからアスランをジロジロ見る奴がいた。
「?」
その人は、金髪で琥珀色の目・・・中性的な顔立ちなのだが・・多分女、なのに・・ボーイと同じ服を着ている。
「君は・・・?」
女であれば、メイドの格好をすべきだと思う。
だが、それをこの場で言うのも何だか変だ。

「そのこです、短期でバイトに入った子は・・・。」

あぁ、だから見たことの無い顔をしてるのか。当然ながらそう思った。
「よ・・よろしく、おね・・がいします。」
何だか・・アクセントがおかしいが、まぁいいか・・。
「宜しく・・一応父上がいないから・・今は俺がこの家の主人になっている・・アスラン・ザラだ。」
そう手を出すとガシッと掴まれ、ニカッと笑みを向けられてしかもブンブン腕を振られる。

「よろしくなっ」
--------・・。
「あぁ、」

何だか、少しビックリした。しかもタメ語・・・。

琥珀色の瞳が好奇心で満ちて宝石みたいだと思った。
でも、気のせいか・・そのこの目は少し赤く腫れていた様に見えて何かあったのかと心配になる。
「こら、新入り!ちゃんと敬語を使え」
そうアーサーが注意するとその子はあからさまに唇を尖らせる、どうやら敬語は苦手のようだ。
「・・・いや、良いよ。そのままで」
そういってポンと頭を撫でると、そのこの目が「いいの?いいの?」と輝いて見える。
なんとなく、「いいんだよ」と言う目で見つめ返してみた。
「で、ですが・・ご主人様・・・」
「だってアーサー、ご主人様が良いって・・言ってくれたんだぞっ!!」
まるで自分が勝ったかのような言い様に思わず噴出す。
「あはは!---やっぱり・・いいよそのままで」
面白いな・・この子は。
微笑んでみていたらその子もパッと微笑んで少し首を傾げてみせる。

「ありがとな、ご主人様ッ」

そう、ニカッと微笑まれ何だか顔が熱くなったのは・・気のせいかもしれない。


































































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あとがき
ふぅ・・・、やっと此処まで引っ張れた☆
ここからもうアスカガワールドに引っ張っていきます(爆)
へっへー一度やってみたかった主従関係☆
2006.03.28