第三十九話:貰い物




「カガリの服・・似合っていたな。」

「・・・・・・・・ああ。」

少しレイを睨んだ。・・・・だって、まだ・・夕食は余裕で間に合う時間だ。
-------・・レイは・・、アスラン・ザラとカガリの事を・・良く思っているのだろうか?

「・・・・・レイは・・」

そう口を開いた瞬間、レイは間髪入れずに声を出した。

「俺は・・カガリを幸せにしてくれる人を応援する。-----それが、今は・・アスラン・ザラというだけのことだ。」

・・・・・今の・・俺じゃ、役不足という事・・だろうか?
「シンも見ただろう?・・カガリの・・幸せそうな顔。」

見たさ、だからこそ・・
むかつく。
俺の隣で・・ああやって笑って欲しい。
アスラン・ザラ・・・・なんかじゃなくて。

俺の。

「・・・・片一方の愛情では・・空回りしてしまうぞ?・・・もっと、カガリの事を・・思いやれば---振り向いてくれるかもな。」
「・・・・・・・分かってる。」

優しく、-----・・接する事。
それを第一目標に置いた。










「・・うわ・・。久々だこんな店入るの。」

最初、少し驚いたような反応を見せて、カガリはにこりと笑った。
「はいろ!・・アスランとの食事なんて・・なんだか新鮮だ!!」
グッとカガリから手を握ってくれた事に、嬉しくなって一緒にレストランへと入る。
カガリは・・レストランに来たことより、アスランと・・一緒に食事をすることを喜んでいるように見えた。
・・----思い上がり・・だとしても、嬉しいな。

「何が美味しいかな・・」

そうカガリは呟きながらメニューに眼を通す。

「この間来た時は・・」

指でメニューを指し、「これとか、美味しそうだった。」と言うと、カガリは微笑んで「ありがとう」と答えてくれた。

「・・・に・・しても、アスラン良く知ってるな、こんなおしゃれな店・・・。私は業界の都合でディナーに行く以外は大体家で食べてるから・・」
「俺もだ、・・ただちょと調べただけ。」

ふーんと、カガリは声をあげて・・ボーイに注文をしていた。
美味しそうだった。つまり・・誰かと先に此処に来たという事か。
そうボンヤリと思って凹み、でも・・場所を変えないのがアスランらしいとさえ思えれば・・どうってことない。
そうだ、アスランはそういう人ではないか。
この間来て・・美味しかったから、・・誘ってくれたんだろうし・・。でも----。

誰と、どうして?
ミーア・・と?
だとしたら・・なんで?

不安になって、アスランを見ると「こういう店は嫌だったか?」と尋ねられ首を横に振った。

「・・・・---・・夜景・・綺麗だし、食べ物・・おいしそうだし・・」


でも、でも。
不安なんだ。

「・・-----勝手、かもしれないけど。俺はカガリと来られて嬉しいよ。」

少し、眼を逸らしていってくれたその一言に少し嬉しくなって

「・・・・私も・・嬉しいぞ・・。」

ちょっと伏せて言うとアスランはクスクスと笑った。









一緒に夕食を取ってから、のんびりと夜の街を歩いていつの間にか寮の閉門時間が近づく。

「・・・じゃあ。----な?」

そう駅で話しかけると、アスランは少し眉を潜めて「じゃあな」といってくれた。
いっちゃうのか。
そうお互いに思っていたことを知らない。
アスランはパッと両腕を延ばして、カガリの身体を包んだ。

「・・ッアスラン・・?」
「・・・・気をつけて・・帰るんだぞ?」
「お前こそ・・気をつけて・・」

人前という事にカガリは恥ずかしく感じて、だがアスランは全く感じていないように思える。




公言したかった。
俺とカガリは恋人なんだと、誰も邪魔はさせないと。
こんなカタチでしか出来ない自分が情けないけど。
それでも、・・・・カガリは、俺の。
そうアスラン自身に思わせる為に。





カガリはアスランの腕の中で、これから離れなければならない寂しさと一緒に、思い出した。

「・・・・あの・・アスラン、ブレスレット・・。」
そう、あの・・ブレスレット。
あれが・・ないと、駄目だ。
こんな時挫けてしまいそうに思えて、恐い。




---------・・シンが・・付き返してきた、ブレスレットか。
アスランの頭の中にはそうインプットされていた。
なんで・・・アイツは俺に渡したんだろう。
・・・・どうして、-------・・アイツは・・カガリの事・・。
----本当に好き、なのか?

「・・・・ごめん、寮に・・置いてきた。」

腕を離して、そう言うとカガリはシュンとしてしまう。

「誕生日プレゼントは・・今度ちゃんと四人で祝える時に渡そうと思ってるんだが・・」

キラとカガリの誕生日からもう一ヶ月が経過していた。
おそらく・・一緒に祝える日が来るとしたら・・夏休みになってしまうだろう。

「・・・・・わかった。--------ありがとう。」

顔を持ち直してカガリはそう返事をしてくれた。

「・・-------・・じゃあ」
どちらともなくそう言って相手と逆方向へ歩いていく。











そしてその抱きついている動画は瞬く間にまた、エターナルとアークエンジェルに浸透する。
「・・・・・アスラン、なーんか・・二股かけてるように思われるわね。」
そうフレイが口にしたのにカガリは敏感に反応した。

「・・・・・・・アスランは・・」
「分かってるわカガリ、・・ただ、公の眼の話。」

ミリィにはそう慰められたが、カガリは納得が行くはずが無い。

「・・--カガリはアスランを信じるのでしょう?」
「・・・・当然だ。」
「・・・ディアッカにも色々聞いてみるから・・」

情報通のディアッカにミリィは聞いてくれると言ってくれて、恐いような気もしたが「ありがとう」と答える。

「--------・・ははーん、より・・戻したわけ。」
「ま・・まだよ!!!・・でも、怒ってはもう・・ない。」
「よかったな!ミリィ!!」
「だ・・だから、まだだってばっ!!」
「・・もうじきに・・ですわね」

そうラクスにも微笑まれてミリィも観念したように笑い出す。
そのミリィを見てカガリは本当に良かったと思えた。









「・・・・・騒がないのか?」
「・・くだらない。」

そう、あの動画・・・・アスラン・ザラがカガリに抱きついた動画。
見たし・・実は持っていたりする。けど。

「-------俺は・・ちゃんと、そういう姑息な手はなしで、あいつに勝ちたい。・・・できれば。」
「出来なかったら?」
「・・・姑息でも何でも、・・・・・・・カガリを奪う。」

その、曲がった子供の意見を聞いたレイは微笑んで

「・・・叶うと良いな」

そう呟いた。










****
なぁ、---ちょっと付き合ってもらえないか?買い物。
それと・・相談事があるんだよ。
****

そうメールがシンとレイに送られてきて二人とも溜息を付いた。
また・・アスラン・ザラの事かと。



デパートに入り、プラントに入る。
「・・・・・---・・で、どうしたんだ?カガリ。」
そう声をかけたのはシンで、カガリは少し眼を左右に動かしてから大きく溜息を付いた。

「・・・・・・・アスランが・・。」

その一言でシンは不機嫌になりそうになったが、なんとか持ちこたえてカガリを見た。

「あのな、・・・私が、悪い。うん、」

そう自己完結させてからカガリは喋り出す。

「自信が・・なくて、私が・・---本当にアスランの彼女で・・恋人で・・いいのかなって。だから・・今日は」
"男の子から見た、理想の女の子を教えてくれ。"
その言葉にレイは

「カガリは・・カガリだ、無理に変わる必要は無い。」
「だが・・っ」

シンはその様子を見て、明らかにあのラクスさんに似ている人の影響だと思った。

「・・・・もしも・・そんな事でカガリじゃない子を選ぶなら、・・その程度の想いだったっていう事だろ?」

その言葉に、カガリは固まってしまう。そしてレイはキッとシンを睨んだ。

「・・・・カガリが・・そう思うのなら、俺は助力する。」
「レイ・・でも、カガリは今のままだって・・」

十分?いや・・・・・・・・・
「-----可愛いし・・。」
少し頬を赤らめてカガリを見てしまう。
可愛いではないか。こんなに・・。
それが、何で・・・・あんな奴の好みに合わせるような事。

「・・・----可愛く・・ないぞ?・・私は。」

自嘲交じりにカガリは言葉を吐いて、やっと来たアイスに手を伸ばした。

「・・----少なくとも・・俺は・・ありのままのカガリが好きだ。」

好きだと声に出して伝えると、カガリは「そうか?」とやっと眼を前に向けてくれた。

「・・でもさ、ほら・・前デパートでアスラン服選んだだろ?・・ああいうの私着たことないし・・似合わないと思うんだ。」
「似合っていたぞ?」
「それも・・良く分からない。ボーイッシュなのしか・・着ないから、だから・・服選んで欲しいんだ!」

だから・・俺たちを呼んだのかと、シンは悲しくなってしまう。

アスラン・ザラの為。

でも・・カガリの為。


「・・・・いいけど、--・・うん、分かった。」

言おうとした事を飲み込んでシンはカガリに笑顔を向けた。




カガリが導くままに店に入って、一つの棚を指す。
「此処、がいいって・・アスランが言っていたんだが・・」
シンの好み的にはもう一つ隣の棚が良いような気がした。少し活発感がある。

「そっちの棚のほうがまだマシだといったんだけど・・アスランどっちかと言うとこっちの方がいいって。」
「・・・・そうか、俺はこっちも良いと思う。」

そう言うとカガリも「そうだよなー、こっちの方がまだマシだ」と同調してくれて嬉しくなっているとレイは

「まあ・・俺たちから見たカガリだからな。こっちでも問題ないだろう。」

そしてその棚からの捜索が始まった。
三十分、いやもう一時間ぐらい一つの棚で吟味してしまう。

「「・・・・・・・これ!!!」」

そう何度目と分からない試着の後、やっと一つの組み合わせが出来る。
透明のビニールの紐に支えられる膝と足の付け根の中間までの胸元から伸びる緑色の服。
その下には見えるか見えないかでジーンズの極端に短い短パン。
シンプル・・だが、だからこそカガリらしいその服。

「・・・・ズボン見えなくないか?」
カガリは見回してから、少し嬉しそうに尋ねてくる。

「いや、・・大丈夫だって、凄く・・似合う。」

シンは何だか自分の選んだ服がこんなにカガリに似合うと思うと嬉しくて笑みがこぼれた。

「・・・ああ、この間の服も・・中々だったが。」
「こっちの方が俺はいいっ!!」

そう話しているとカガリは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうなっ・・!!こんど・・コレ、着ていく!!」
そしてカガリとレイがレジに向かって直ぐ、シンはその場にあったアクセサリーを眺めた。

「・・これ。」

そう手にしたのは、今買った服に合いそうなシルバーアクセサリーだった。
ネックレス・・。これ・・きっと似合う。
小さくガラスが入ったそのネックレスを隣のレジで買いすぐにカガリに渡す。

「・・・?誕生日プレゼントはもらったぞ?」
「・・・その服に合うと思うんだ。」

だから・・
そう言って渡せばカガリは「お金払おうか?」と聞いてくれたが首を横に振った。

「俺からの・・プレゼント。・・・・・誕生日じゃないけど。」

そしてお互い微笑みあう。レイはそれを眺めてくれていた。

































































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あとがき
シンカガ傾向強めですねぇ・・(汗)
2006.04.20