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なあ、アスラン・・昼ぐらい・・一緒に食べよう?
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カガリからのそのメールに、少なからず頬が緩んだ。
そして昼、あの場所へ行く。
「アスランッ」
そう声をあげて駆け足でやってきたカガリに何だか新鮮さを感じた。
「カガリ・・っ」
なんだか・・何年も会っていないみたいに感じる。
思わずフェンス越しに腕を組んでうっとりと見詰め合っていると、カガリは恥ずかしそうに頬を染めて・・眼を逸らしてしまう。
「・・・・・この頃・・アスラン、忙しいって・・聞いてて----・・ごめんな、」
正直、その忙しいだって・・ミーアとの作戦とか・・あと、何だか嫉妬している自分を見られたくないとか・・そういう理由だった気がする。
けど・・
「いや・・俺も・・---カガリに会えて・・嬉しいよ。」
そんな・・醜い感情だって、---------カガリと会えばスッと解ける。
・・・ずっと・・一緒にいたい。
離れると・・また、ドロドロとした感情に飲まれてしまう。
「・・アスラン?」
「-------・・・カガリ・・。」
キスがしたい、抱きしめたい・・・・けど。
不意にあの感情に飲み込まれそうになる。
レイという奴との関係、シンも・・・
でも-------それを聞く勇気など無い。
・・・ただ、今こうやって・・幸せであればいい。
フェンス越しに向かい合って、一緒に昼食を取った。
カガリが何も・・言ってこない・・なら、やっぱり----取るに足らない・・心配、なのだろうか?
そう・・思いたい。
その日、カガリはレイと・・シンと共にプラントに向かっていた。
「新作が出たらしいんだ!・・きっと美味しいぞっ!!!!」
そう楽しそうに笑うカガリをレイは見守り、シンは不思議な気持ちで見ていた。
そしれガランと入ると、いつもの場所に三人で座る。
「じゃー・・私は新作のアイス!!」
そう三人で笑い会っていると、ラクスを発見しカガリは立ち上がった。
「・・・どうしたの?カガリ」
「いや・・ほら、あそこ・・・アスランとラクスが・・」
それを聞いて、シンとレイは蒼くなった。
ラクスさんじゃない。
あの時と同じ人。
だが、カガリは何の躊躇もなく飛び出し話しかけに行ってしまった。
「アスランっ!ラクス!どうしたんだ?----こんな所で。」
声をかけた矢先にカガリはその女の子がラクスではない事に気が付いた。
「・・あ、これが・・アスランの彼女?」
ラクスに似た、可愛らしい顔・・声も高いが・・女の子らしい。
スカートも短く、肉つきも女性らしいし・・・・・
そしてハッとアスランを見た。
「・・お前なぁ・・忙しいって、女の子と会ってたからかよ!」
そう口にしたカガリの中には嫉妬も何もなかった。
ただ、そう口にしただけ。
それはミーアもアスランも気が付いていた。
気が付いたからこそ、アスランは頭に血が上った。
・・・・君だって、誕生日・・前日は熱があっても男と一緒に居たのに・・俺とは会わなかった。
それに-------この状況を見て、嫉妬されない・・。
ミーアはその怒りに気が付いたのか、パッとアスランのほうを伺う。
コレほどまでに鈍感とは・・ミーアも思っては見なかったのだ。
普通・・怒るでしょ?そうミーアも頭を抱えそうになる。
だが・・
「へ〜、なーんだ、やっぱ・・あんたってそういう人だったんですね。」
そう鎌をかけられて、ミーアは少なからず焦る。
目の前には黒髪の少年・・おそらくアスランが言っていたこの頃カガリと一緒に居る人のうちの一人。
「・・・・カガリ行こう。もう、いいじゃん・・こんな奴。」
「?シン?」
カガリは訳が分からないと、シンを見てアスランを見た。
「・・だって、カガリのことほっぽって・・他の子と会ってる奴なんて・・どうでもいーじゃん、」
「----・・でも、アスラン・・そんな事する奴じゃないし・・。」
疑いのない瞳を向けられアスランは焦る。
天然・・ともいえる、カガリの態度は少なくともミーアにはとてつもなく厄介なものだった。
このまま・・アスランが・・自分との関係を否定すれば・・この彼女は安心して・・またアスランから離れていく。
だが・・ここで、仲のよさを見せ付ければ、この今来たじゃじゃ馬がでしゃばって・・アスランの彼女を傷つける・・。
どっちが・・・最良?
「・・・・・アスラン・ザラがいなくたって・・平気だろ?カガリは!!!俺とレイ・・二人ともカガリのこと大切だし・・守ってやるし・・」
そしてその少年はカガリの腕を引いて抱き寄せてしまう。
「-----・・あんたは・・そうやって、他の女と遊んでるのがいいんじゃないか?----カガリは俺たちがいるから心配すんなよ。」
カガリは何が起こったのか全く分からず、シンの胸の中で眼をパチパチさせていた。
人目を無視して、シンはアスランにそう言い放ちカガリの腕を引いた。
「え・・でも---アスラン?!」
そういう・・事なのか?
・・・カガリの眼が少し・・疑問を漏らして、そのまま席へと戻ってしまった。
「あの子がいたんじゃ・・追いかけられない・・わね。」
ミーアは落胆してアスランを見て申し訳なさそうな顔をした。
「・・ごめんなさい・・・・、にしても・・本当に鈍感で天然で・・寂しがりやな人・・ね。」
まさか、あの状況で嫉妬しないなんて・・。
ミーアはその計算違いに少し肩を落とす。
「・・・・・・・・・・---・・いや、君に頼ろうとした・・俺も・・間違っていたんだ。」
そう言われた時、ミーアはショックを隠せなかった。
「・・・?ミーア・・・・?」
持っていたアイスの棒を置きガッと立ち上がってしまう。
「----・・ごめ・・んなさい。-------ちょっと・・。」
頼ろうとした。
それを否定された。
ミーアがこの恋のキュービッドを始めたのにも・・それなりの、意味があった。
沢山の人に幸せになってほしい。自分もいつかは幸せになりたい。
そう・・思った。
だから・・恋の練習を積むのにこれは手っ取り早く、なおかつ前者の役割も果たせるのではないかと考えた。
失敗したことは・・あったけど、でも遥かに成功例が多かったから・・。
頼って欲しかった。・・・頼られる人間でありたいと、願っていた。
それを否定されるのは・・少なからず・・痛い。
ズンと刺さった音がして、なんだか嫌になってきた。
「・・・・私・・帰るわ・・。本当にゴメンナサイ。」
それだけ・・残して去ろうとすると、レジでアスランに腕をつかまれた。
「・・・・何か・・傷つけるようなことを・・言ってしまったか?」
「・・・・・・・違うの、やっぱり・・私は---・・」
非力だと思っただけ。
だが、アスランは腕を離さず、結局一緒にプラントを出てしまった。
「・・・・恋人・・いいの?-------・・。」
「・・カガリは・・強いから・・大丈夫だ。多分。」
そしてアスランは自嘲してしまった。
不安になるのは・・いつだって俺なんだ。-----・・カガリが信じられなくなるのも・・俺なんだから。
嫉妬されなかったこと多少不満を覚えたが・・それ以上に、カガリはアスランを信用していた。
・・なら、いいじゃないか。
そうマイナスになりそうな思考をプラスに戻し、ミーアと共に歩いた。
「ごめんなさい・・私、なんだか・・哀しくなって。」
「すまない・・カガリはああいう奴だから・・」
アスランが謝ることなんてないとミーアは思った。
「人の・・役に立ちたかったの・・お金を貰う以上に。」
そうして本音を言うと、今までに見たこと無い笑みを向けられる。
「・・・・・・・・ありがとう、ミーア。」
その、笑顔に・・ミーアは心なしか心臓がなったことに気が付いた。
「・・でも・・・・ほら、アスラン・・積極的に来られると・・避けられないって言うか・・」
シンに対してもの凄く弁解するカガリに、シンは苛立ちを感じていた。
あんな奴・・もういいだろ?
------俺たちが・・俺が・・必要と思ってるだけじゃ足りないとでも?
「・・・それに、私だってこうやって・・レイとシンと遊んでも・・アイツ別に何も言わないし・・」
その言葉を聞いてシンは笑い出しそうになる。実際・・アスランはぐらぐらだ。
いつだって自信が無い。
「・・・・・だから、私もアイツが恋人だとか・・そういう事口にしない限り・・あんま気にしたくないし・・」
そしてどんどん小さくなる声にレイとシンは焦った。
「大体・・カガリのような子を置いていく男が居るはずが無い。」
「・・・・・・・・カガリ・・。」
シンも・・カガリが泣くのは嫌で、フォローに周ろうとするが、散々いった矢先・・それは無理だった。
だけど・・カガリは位置的に見えなかっただろうが・・アスランはあの女の腕を掴んで・・この店を後にした・・つまり・・。
それなりの・・仲・・なんだと、解釈されておかしくないだろう。
そう・・カガリにこんなに思われているのに・・それを棒に振るアスラン・ザラが堪らなく許せなく感じた。
-----・・何なんだ・アイツ。
・・・俺の目の前で・・ぜったい・・カガリの隣は渡さない。
「ごめんなさい、弱音ばっかり吐いて・・」
「いや・・ありがとう、君の心遣いは・・嬉しかったから。」
そう駅で話して手を振るミーアにアスランは何となく、提案してしまった。
「・・・・・お礼に、今度何かおごるよ。」
「・・・・本当?」
ミーアはパッと笑顔になり嬉しそうに頬を染めたが、アスランは全く気が付かなかった。
「ああ・・、お礼だ。」
そう微笑むとミーアは嬉しそうに笑って背を向けていってしまう。