一日遅れで返された、アスラン返信。
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すまないが、最近忙しくて・・会えそうにないんだ。
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その文面にカガリは肩を落とした。
部屋に・・いけば、会えるだろうか?
---レイたちに頼んで見ようかな。
そう考えるが・・アスランが忙しいのならゆっくり家で休んだ方がいいとも思う。
「思いやりも・・大切だっ!」
会いたい。とはいえ、節度ってものがある。
そう考え直して、分かったと返信を打った。
そしてもう一件のメールを開く。
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今度一緒にプラント行こう!
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シンからきたそのメールにイエスと答えてしまった。
「カガリが浮気するわけないでしょ。」
「だがっ・・」
キラは冷静そのものでそう言い張る。
「でも、ほら・・カガリスキンシップ過剰だったりするし・・仕方ないよ。カガリらしいと思って。」
あれからアスランはずっと凹んでいた。
だって・・、あのレイという人間は・・どこか自分とかぶる。それに・・アスランより態度が大人のような気がしてならない。
「・・じゃあさー、・・・あの子に頼んでみるか。」
そうディアッカが口に出して、あの子?と聞き返した。
「いるんだよ、自称恋のキューピットっていう女・・ほら、前合コン誘っただろ?それもあの子。ラクスにそっくりな・・」
そう・・言われれば合コンの時いたピンクの髪の女の子を思い出す。
「あの子、相手にやきもち焼かせて・・ま、いうなれば"雨降って地固まる"ってやつで・・」
「はっ、それで貴様は失敗したわけか。」
「・・・いや、ちょっとは効果あったぞ?・・・・多分。」
・・・・・やきもち・・か。
----------妬いてほしいかもしれない。
俺だって・・こんなに嫉妬してるんだし・・。
でも--------・・。
「それが・・決定的に----カガリの心を俺から離したら・・?」
そう思ってしまう。・・離れていってしまったら・・どうしようもない。
「・・・・アスランから・・カガリが離れていくなんて僕は有り得ないと思うよ?」
キラはニッコリ笑ってでも、直ぐに言葉を続けた。
「けど、カガリ・・-------泣き出すよ。多分・・・、でも確かにこの間のは恋人としては痛いよね。」
キラは賛成も反対もせずそう言っていた。
「・・一か八か・・やる?連絡ならしてやるけど?」
「・・・そう、だな。」
カガリは・・振り向いてくれる。
そう心のどかで確信しているアスランに内心笑いが洩れた。
自嘲の。
もし、戻ってこなかったら・・どうするのだと。
「はじめまして・あなたが・・アスラン・ザラ?・・この間の合コンはどうもっ!」
そう高めの声がしたと思えば、その先にはラクスにそっくりの女の子が立っていた。
駅のホームで待ち合せ、来た子はやはりアークエンジェルの子。
「・・・君が・・ミーア・キャンベル?」
「ええ、恋のキューピッドって呼んでねっ!」
テンションの高さに眩暈を覚えながらも「ああ」と答えた。
「で・・作戦を実行するに当たって・・色々貴方と彼女の性格について・・」
そうして手帳を出し、ミーアは取材者のように話を進める。
カガリの性格を聞かれ、またアスランの性格も細かく聞かれた。
「ふぅーん、じゃあ・・彼女、カガリさん?は・・鈍感で天然で・・でも、ちょっと寂しがりやさん?」
「・・そう、かも。」
「服はボーイッシュで・・言葉遣いも荒いと・・。でも優しい・・。」
そう纏め上げ、ミーアはパンと手を叩く。
「よしッ!じゃあ・・何となくどうすればいいか考えるから・・。--------適当に作戦決まったらメールするわっ!」
そしてパッと紙を渡される。
「はい、成功した時の請求書。」
「・・・・----・・キューピッドは商売か?」
呆れ半分で突っ込むと相手は頬を膨らませて
「だって、お金欲しいじゃない?・・・ブランド品買いたいし・・。良いじゃないの。愛が金で買えるんだから。」
その態度に少しムッと来る。
愛が金で買えたら・・誰も苦労はしない・・。
そう思えた。
「・・・ってのは、半分冗談で・・。でも、恋人より掛け替えの無いものなんてないでしょ?貴方。」
そう尋ねられ、半分は本当なのかと溜息を付きながらも、手伝ってくれる事に感謝をしてしまう。
「ああ・・---・・分かった。」
そうしてその請求書を受け取ってしまう。
「思ったんだけど・・レイとアスラン・ザラって少し似てないか?」
そう声に出して聞いてしまう。
プラントで、三人でアイスを食べている最中に・・
「似てる・・かもなぁ・・、確かに二人とも冷静だし・・優しいけど・・」
けど・・
「アスランのほうが・・グルグル考えるし・・変なやつだし。」
カガリの答えにシンは?を浮かべた。
なら・・レイの方が良いじゃないか。
「------・・似てるか?俺と・・?」
レイは似ていないといいたいようで少し不機嫌そうな顔をする。
「この頃・・アスラン遊んでくれないんだよなぁ・・忙しいって・・。まぁ仕方ないか。」
ションボリするカガリを見て、レイとシンは何だか落ち込んだ。
「大丈夫だろ・・。カガリの恋人だ。すぐ恋しくなってあいに来てくれると思うぞ。」
「・・そう・・かなぁ・・。」
頬を染めて嬉しそうに微笑むカガリに、自然と表情が緩んだ。
帰り、駅の近くを歩いていると・・アスラン・ザラとラクスさんが一緒に歩いているのを見つける。
「・・・・別に・・友達だろ?」
そうレイが言うが、何か釈然としない心がシンの中にはあった。
「アスラン・ザラって・・案外軽いのかなぁ・・?」
「カガリが・・そんな奴を好きになるとおもうか?」
「そうは・・・・思わないけど。」
騙されていたら。
確かに・・アスラン・ザラは顔もいい。性格も・・カガリから聞いている分にはいい。
けど・・----。
「だって・・会ったらカガリから聞いたのと・・逆なんだ。」
優しい、その言葉当てはまらない。
冷たい、嫉妬深い・・自信が無い。
そう言う人に見える。
「----・・俺たちはあの人を良く知るわけではない。そう簡単に判断を下しては・・少し申し訳ないだろ。」
レイがそう言うのも分かる・・けど。
そしてハッとしてレイを見た。
「アイツ・・忙しくて・・カガリに会ってるのに・・、なんでラクスさんと歩いてるんだ?!」
その言葉にレイは顔を曇らせてしまう。
「----・・さあな。・・・・事情と言うものがあるのかもしれない。」
「レイ・・なんか、アスラン・ザラのこと・・庇うよな。---明らかにおかしいって。少なくとも今・・ラクスさんと歩いてるのって!」
「-------カガリが好きな人を・・余り悪く言いたくないだけだ。」
「・・・でも・・、あんなの見たら・・カガリ・・---。」
「・・ショック・・だろうな。」
そしてレイとシンは二人で眉を潜めて、シンはラクスにメールを入れた。
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今日・・アスラン・ザラと会ってましたよね?
どうしたんですか・・?
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そして直ぐ返信は来た。
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あらあら?・・私は今キラと一緒に居るのですが・・。
人違い・・だと思いますわ。
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人・・違い?
じゃあ・・アレは誰なんだ?
嫌な・・予感がした。また・・カガリが泣くんじゃないかと。
「は・・・?」
受話器越しにミーアに言われた事に思わず眼が点になった。
『だ・か・ら。最大限、ラブラブな目線で見てって言ってるの!!』
何を言い出すのだこの子は。
・・・好きでもない人に・・そんな目線できるはずがないだろ・・・?
「いや・・でも・・」
『貴方・・彼女を騙そうにも顔が正直すぎなのよ、私と一緒に居て楽しそうにしてなきゃ騙せるものも騙せないでしょ?』
「騙すって・・」
『騙すんじゃない。だって。言い方は悪いけど・・本当の事よ。』
でも・・カガリを・・騙すのはちょっと・・
『私と貴方がいい感じに見せれば・・彼女だって好くなからず怒るわ、それがチャンスよ。直ぐゴメンって謝って・・友達だって言えばいいの!』
直ぐ・・謝る。
「だが・・」
『その子鈍感なんでしょ?大丈夫よ・・多分、まぁ貴方の頑張りにも掛かってるけど・・・・』
・・・---平気・・だよな。すぐ謝れば。
ちょっとした・・仕返しのようなものなんだし・・
『明日から・・放課後プラントに集合しましょ?彼女良く来るんでしょ?そのお店。』
「ああ・・まあ。」
・・-------良く来る・・と思っているが・・。
だが、見た事があるのは二度。
・・それも、違う男と一緒に居る時だ。
『じゃあ、幸運を祈るわ。』
そしてプツンと電話は切れた。
「・・・・・・・・・・・----妬いて・・欲しいな。」
こんなに・・俺が妬いているんだから。
----ちょっとぐらい。
そして溜息を付いた。
・・・・・でも、それで・・・他の奴のところに・・
レイの・・所に・・-------・・。
カガリとレイとシンはエターナルの制服でクサナギ公園によっていた。
「・・・少し・・真面目な話、していいか?」
そう切り出したのはレイで・・シンは少し居心地悪く感じる。
「・・シンには・・前も言ったけど。-----・・もう一度聞いて欲しい。」
そしてポツリとレイはカガリとシンに昔の事を話した。
親が居ない事。血縁関係のある兄ですら遠くへ行ってしまったこと。
甘える環境がなかった事。
・・・そんな時、カガリに必要としてもらえたということ、シンとも親友になれたと・・そういう話。
ソレを聞いて、何より驚いたのはカガリだった。
「・・・俺は・・カガリの中に・・・------母親を見ているんだと思うんだ。」
そうはっきりと言い切るレイにシンは不信感を覚える。
・・アスラン・ザラに・・泣かされた時、てっきりレイが奪ってくれるものだと・・カガリを守り抜いてやるのだと・・そう思っていた。
友達じゃなく、恋人として・・。
だが、そんな矢先・・・レイは早々に白旗を振ったように、シンからは見えてしまう。
レイの独白を聞いて直ぐ、カガリは口を開いた。
「・・・・・・・私の・・本当の両親はもう・・いない。・・・義母も・・大好きだったけど・・亡くなってしまった。」
シンはその発言に大きく眼を開いた。
あの明るいカガリが?
-------親が居ない?
とてつもなく幸せな家庭に育ったのだと・・勝手にそう思い込んでいた。
「・・・----母親・・か、---嬉しいな。私・・お母様の事・・大好きだったから・・。レイからそう・・思われていると思うと嬉しい。」
カガリはずっと"お母様のような人になりたかった"と言う。
我が子じゃない・・自分を愛してくれたお母様のようになりたいと。
だから・・レイからそういう存在として必要とされるのは嬉しいといって笑った。
「-------・・カガリ」
レイの顔もパッと明るくなって、シンはその変貌振りに暫し驚いてから、カガリを見た。
「・・誰かに・・必要とされるのって-----嬉しくないか?」
そう・・答えたのは、何かのトラウマだとシンは感じた。
「俺も・・カガリが・・必要・・だよ?」
レイのように素直にはっきりとは・・言えない・・けど。
「本当かっ!----嬉しいな。」
そう、弱さを知って・・姉のように感じていたカガリが急に違うものに見えてきた。
笑っているだけが・・カガリじゃない。悩んで・・泣いて・・・そういうのも、全部・・カガリなんだ。
トクンと、胸が鳴った気がした。