第三十四話:類似点




「まぁ、アスラン・・アイスでも食べて・・機嫌直してよ。」
「・・・・・・甘いものは・・嫌いだ。」
そうプラントで会話をしていた最中の出来事だった。


「ラクスは・・此処のアイスすきだよ?カガリもすきだって。」
「・・・・・、だから・・甘いものは嫌いなんだ。」

キラの心遣いも虚しく、アスランは相当機嫌が悪い。
・・・・キラには・・申し訳ない・・が。
そんな時。


「・・・・カガリっ」

そう、カガリがプラントに入ってきて・・もう運命だと思ってしまう。
どうであれ、こうやって一刻も早くカガリに会えた事を喜ぶほかないと眼を輝かせた。

「・・カガリ?」

キラも振り向き入り口を見る。


「レイっ」

そう、彼女の口から出た知らぬ人の名に、アスランは硬直したような感覚を覚えた。
思わず、キラと共に席を移動して・・二人の行動が見える場所へと席を移し腰をかける。

「・・・・・あれって・・」
・・・-------写真の・・。

キラが声に出すまでもなくアスランも分かっていて、でも・・それ以上にずっと気になることがあった。


・・・・赤い。

顔が。


カガリは・・俺以外の奴を異性として認識しない。
ディアッカ、イザーク・・キラ。
誰に対しても・・抱きついた事は多少あったが、それで赤くなった事は一度も無い。
アスランを抜かして。
・・だが・・・


「・・・・・・・たのし・・そう、だな・・カガリ・・。」
言葉が洩れた。
頬を赤く染めて・・話す、カガリ。
声は良く聞こえないが・・カガリは時々曖昧に苦笑したり・・でも、楽しそうに見えてならない。

「・・アスラン・・」

キラも心配そうに声をだすが、アスランはその二人に見入っていた。
そして急に、相手がカガリのおでこに手を当ててそして直ぐに立ち上がる。

「・・帰る・・みたいだね。」

だが、意外な事にカガリはそいつから差し出された手を取り、・・そのあと・・カガリから、そいつと腕を組んだ。
ギュッと、よっかかるように。

「・・っ。」

チッと小さく舌打ちをしてしまう。
--------・・どういう・・気なんだ、カガリ・・。まさか。
どんどん、どんどん、悪い方へ頭が運ぶ。
でも・・カガリは確かに頬を染めて、楽しそうに・・他の男と・・話していた。

------それは・・事実。

そう思うと急激に焦りが沸いてきた。
今までなら・・カガリは男を認識しないと思っていたから・・-----・・。でも・・。
アスラン以外の男でも・・、カガリが・・気に入る人が・・いても、おかしくない・・。

アスラン以外の男でも、ドキッとしたり、ゾクッとしたり・・そう、感じる・・のだろうか、カガリは。

嫌だと


はっきり思えた。

それは・・俺だけの・・

特権だと。


****
ごめん、アスラン。
熱・・でちゃって、明日いけそうにないんだ。
でも、すぐちゃんと治すから。そしたら、会おうな。
****

「他の奴とは・・熱があっても、-----ああやって、デートするのに・・」

俺は駄目なのか、カガリ?
そう自虐的かつ攻撃的になるアスランをキラは宥めるように話す。

「僕も・・ラクスからきたよ、メール。熱・・38ぐらいだって、-----・・大丈夫かな・・。」

キラは・・カガリの身体の心配をしだす。
だが・・


心配なのは・・なにも、身体だけじゃない・・寧ろ。

-----こころが。


離れていってしまわないかと、心配になる。
そして・・同時に、恨みたくなるような気持ちでいっぱいになってしまった。







「大丈夫・・ですか?カガリ」
「ごめん、ありがとう・・ラクス。」

もう何度目と分からないやり取りを交わし、ラクスは心配そうに微笑んで見せてくれる。

「・・・・アスランから・・返信・・こないんだよなぁ・・。どうしたんだろ?-------・・怒った・・かなぁ。」
「アスランですから、大丈夫ですわよ。」

そう話し、いつの間にか寝てしまう。






次の日、なんとか平熱まで下がり学校へいき・・アスランにメールを送った。

****
昨日はゴメン。ちゃんと熱下げたから・・。
放課後・・暇な時で良いから・・どっか行かないか?
****


そうメールを送るが、結局アスランからの返事はなかった。







「「カガリが・・・浮気?」」
イザークとディアッカは口をそろえてソレをいい、また口をそろえて「「ありえない」」といった。

「でも・・実際他の男子生徒と腕組んでたし・・」

キラもおずおずと状況を説明する。

「でも・・僕はそれでも・・思い違いだと思うよ。だって、カガリはそんな事しないもん。」

・・でも、実際・・キラにアスランを重ねたり・・そんな事は度々あったではないか。

-------アスランの・・カワリがいる?

・・俺じゃなくても・・いい?
そういう・・事、なのだろうか?

少し前、キラとアスランを重ねて・・過剰にスキンシップを取ってきた時期が会ったし・・。
もし、あの金髪の彼の中に・・・・アスランと似たようなものを見ていて、そして更に・・あっちとの方が相性が良いとしたら・・?
そう・・思えば思うほど・・駄目だ。

「・・長髪で金髪って・・言えば・・、レイ・ザ・バレルしか・・思い当たらないんだけどな〜うちの学校じゃ。」

そうディアッカが口に出して、アスランはキッと睨んでしまう。

「睨むなって・・、でも先生もそういう話題になったらしいんだけど・・あの真面目な生徒に限って有り得ないって結論に達したらしいし。」
「・・何年なん組のやつだ?」
「いっこした、高一の・・A組だったと思うけど・・・。」


・・・・・・・。

「-----いってくる。」

席を外して急いで階段を登った。

そしてA組の前まで行きパッと覗く丁度中心辺りに読書をしている人を見つける。


---------・・アイツだ。


金髪の長髪・・顔も・・整っている、先生によれば・・まともらしいし・・・・・----。

自分との類似点を見つけるたびに、少しずつ・・気分が暗くなる。
アイツの・・腕の中で、カガリが顔を染めているのを想像しただけで寒気が走った。

「・・・・ちょっと、聞いてるんですか?!」

そうガツンと言われて振り向くと、この前ブレスレットを渡したあの黒髪の奴が立っている。

「・・・君は・・」
「なんですか?レイの偵察ですか?----ま、俺たちとカガリは相当仲良しですけど。」

そう挑発的な態度に、アスランは改めて怒りを覚えた。
・・・コイツらと、仲が良いのか?カガリは。

「部屋には何度も遊びに来てますし・・。それに・・」

その赤い瞳は、此方の考え無しにズカズカと話を進めて、止めを言うように付き放った。


「あんたと・・レイなら、レイの方がお似合いだ。」




レイなら・・絶対カガリを泣かせたりしない。
ソレに対して・・あんたは逆だ、いつ・・カガリを泣かせるか、分かったもんじゃない。







息が、引いた。

俺とカガリより・・似合っていると・・言われた。


---カガリのブレスレットを突き返してきた奴に。

・・・・・・・・・----・・何も、しらないくせに。
カガリのこと・・ずっと・・大切に想っていた事も知らない奴に。
言っても、理解されないと・・分かっていた。
けど・・

-------そんな、第三者から見た・・軽い眼差しで・・評価しないで欲しい。

「・・・・・・・・、、君は・・カガリの何を知って・・俺の何を知って言ってるのか・・俺には分からない。」

そう言うと、その赤い瞳はキッと睨みつけ

「・・・あんたは知らない。でもカガリは知ってる。・・泣いてたんだぞ、ずっと・・あんたのせいで。」

カガリが・・泣いていたのは・・俺のためだ。
だったら・・

「・・俺のために・・泣いてくれていたんだろ?」

そう優越感に浸った思いで口に出すと、考えてもみない答えが返ってくる。


「あんたの為?ちがう・・あんたのせいで・・カガリが苦しんで、泣いたんだ。・・・・あんたはカガリを傷つけただけだ!!」


その怒鳴り声を聞いて、読書にふけっていた顔を起こしアスランとシンを見据えた。

「・・・・アスラン・ザラ?」



ガチャンと立ち上がって、だまって二人の方へレイは歩いていった。






「-------・・君が・・レイ・ザ・バレル?」
「はい・・あなたが・・アスラン・ザラ、先輩ですね。カガリから良く話は聞いています。」

シンと打って変わって冷静な面持ちの相手にアスランは少なからず驚いた。

「・・それで・・ザラ先輩は・・どういった用でここへ?」

アスランはその問いに喉を詰まらせるほか無い。
その姿を見てシンは笑い出した。

「なーんだ、あんた・・自信ないんだ。カガリに・・」

そう馬鹿にした態度をとる事をレイが静止させる。

「・・すいません、先輩。少し・・礼儀が無いもので。シン・・謝れ。」
「な、なんでだよっ本当の事だろっ?!」

シンはあからさまに嫌な顔をしてフイッと眼を逸らしてしまった。

「・・----・・君にとっての・・カガリは何だ?」

そう低く、抽象的な質問にレイははっきりと答えた。


「大切な人です。・・・---・・ですから、泣かせる者がいれば、それから守りたいと考えます。」

シンと違い、レイはアスランから視線を逸らさない。
次第にアスランはパッと背を向けて歩き出してしまう。



「・・・---・・渡さない。」

そうアスランは自分だけに聞こえるように声に出して、深く瞳を閉じた。

































































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あとがき
これからアスランも動き出します。

2006.04.16