まずいな・と、直感的に感じたレイと・・それを全く知らない、カガリと・・シン。
だから、これ以上不味い事にならないよう、レイは急いでカガリにメールを送った。
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シンが見つけて・・今さっきアスランに渡したそうだ。
だから・・明日は、ゆっくり寝ていたほうがいいだろう。
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そう、送ったのだが・・カガリからは思ってもみないメールが来る。
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本当か?!じゃあ、明日はお礼も兼ねて・・プラントでアイスおごってやるよ!
シンも呼べたら呼んでくれないか?
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「・・・・。」
------考え・・すぎだな。
レイは悪い方声の考えをとめて、シンに話しかけた。
「シン、カガリがお礼したいらしい。・・・明日プラントに行かないかと、話が来ているが・・」
「げっ・・俺明日追試なんだよな・・放課後。遅れていくよ。」
---だが、・・・・カガリの熱が下がらなければ、早めに終わらせてやりたい。
そう思うのに、「行かない方がいい」と言わないのはやはり、レイはカガリにあって一緒にいたいからなんだと理解していた。
・・・・・、、、、-----なんだ、これは。
そう、思ったのは恐らく・・アスランだけではなかったはずだ。
今日、久々に掲示物が張り出されたと思えば・・久々に男女間の話だった。
・・・どうやら、アークエンジェルのものがエターナルの寮に出入りしていると・・近隣住民から話が来たらしい。
その話を聞いたとき正直、アスランとキラはドキッとしたが・・・それ以上に、その張り出された写真にドキッとした。
雨の中腰を掴まれて、ベランダに持ち上げられているカガリの写真。
「・・・・・・・・・・----カガリじゃね?」
そうあっけらかんと言い放ったのはディアッカ。
「・・・・相手は・・誰だ?」
イザークはアスランを伺いながらも静かに声をあげる。
・・・この、金髪の長髪は・・・
思い当たる節。
昨日の真っ黒い髪の少年と共に・・カガリとプラントにいた・・奴。
-----それ以外、ない。
プツンと、頭の端で切れる音を聞いた。
キラもイザークもディアッカもその重い表情のアスランに驚いて見入ってしまう。
「・・・あ、明日カガリと会うし・・その時・・聞けばいいんじゃない?ね?」
キラはアスランの表情からやばいと感じたのかフォローに周り、ディアッカはお気の毒にという顔をしていた。
カガリを・・疑うわけではない。
カガリはアスラン以外・・異性を異性と感じていない節があるから。
けど・・、やっぱり----嫌だ。
やっぱりもなにも、すっごく嫌だ。
子供染みたその考えが気に入らない。けど・・嫌だ。
そうグルグルと考えてしまう。
いや・・だが、明日カガリに会えば"違う"といってくれる・・そうに、決まってる。
そして、「ごめん」と頬を染めて言ってくれる。
・・・・・。
だから・・我慢だ。一日だけの・・我慢。
そして言い聞かせて、ガタンと音を立てて席に着いた。
今日はスッゴク気分がいい。
ブレスレットは見つかるし・・明日は誕生日で、アスランとキラ、ラクスといっぱい話が出来る。
ちょっと・・くらくらするが、まぁ問題ないだろう。
そう足取り軽く、レイと待ち合わせをしたプラントに入った。
「・・・レイっ!!」
「カガリ・・遅かったな。」
「ちょっと・・掃除で。」
シンは遅れてくるとメールで聞いていた。だから、二人でアイスを注文して待つことにする。
「・・・カガリ・・まだ、熱下がっていないのか?」
「ああ・・分かるか?----でも、微熱・・だし。」
「いくつだ?」
「うぅ"」
微熱・・と、いえるか分からない体温。レイに言ったら早く帰れと言われそうな気がしてならない。
躊躇っていると、呆れたレイが手を伸ばして、おでこに触れた。
「・・・・----微熱・・か?これが?」
「・・・・・・・・・。・・ごめん。嘘ついた。」
熱は・・38度弱。滅多に風邪を引かないカガリからしてみれば大事だったが・・レイにはどうしてもお礼が言いたかったから・・。
「・・・ちゃんと、帰ったら寝るんだぞ?----・・明日・・楽しみにしているんだろう?」
「・・・うん。」
「ブレスレットも戻ってくるし・・恋人にも会える。---・・なのに、カガリがコレじゃ相手は怒るぞ。多分。」
「・・・レイ・・ありがとう。」
レイの・・そういう心配の仕方、そして話し方は・・時々アスランを連想させる。
だから・・アスランに会ったら・・きっと同じ事言われるんだろうなと思った。
「・・っカガリ?」
フラッと急な眩暈がして、机を頭にぶつける寸前で止めて自分自身にビックリする。
「・・ごめ・・なんだか、眩暈が・・っ---して・・っ・・・・・」
冷たいものを食べたからだろうか、心なしかおなかも痛い。
「・・・シンにはメールしておくから・・今日は帰るぞ。」
「えっでも・・シンにも・・お礼・・・・」
「・・・明日、部屋に来た時でいい。・・・立てるか?」
手を差し伸べられて、辛いせいもありその手を掴み返してしまう。
「・・ふらつくようなら、腕も貸す。」
そう言われて腕にしがみついた。
駄目だ、一人で歩いたら・・絶対転ぶ。
そう、確信めいた気持ち悪さに襲われて・・レイは携帯を出しシンにメールを送ってから直ぐにラクスに電話をかけた。
「・・・駅まで迎えに来てくれるそうだ。」
「・・わるい、レイ。」
「・・・そう、思うのなら・・早く元気になってくれ。」
暫く駅で待っていると、ラクスが迎えに来てくれた。
「・・・---大丈夫ですの?カガリ・・」
「ごめん・・気持ち悪くて・・それに・・おなかも痛くって・・」
「じゃあ・・俺は帰るな。」
去っていこうとするレイにもう一度ありがとうとお礼を言って、ラクスとアークエンジェルに帰っていった。
「・・・大丈夫、ですの?明日・・・・」
「ああ・・大丈夫・・、だと・・おも・・う。」
「-----・・全然大丈夫じゃなさそうですわね・・。」
ラクスは心配そうに溜息を零して、こう決断してしまう。
「明日は・・無しにしましょう?・・私がカガリについてますわ。」
「でも!せっかくキラの・・」
「・・カガリをほっていったら、それこそ・・キラに怒られてしまいますもの。」
そしてニッコリと笑われ・・なにもいえなくなる。
「・・ごめん。」
「いいんです、・・早く治して・・皆でお祝いしましょうね。」
その答えにカガリは黙って頷いた。
早く・・治して・・、アスランに会いたい。そうボーっとした頭で思って、部屋に入り直ぐに寝入った。
「カガリが・・熱でフラフラぁ?」
「ああ・・だから、明日もラクスさんに止められて駄目になったそうだ。」
「大丈夫かなぁ・・」
「・・だと、いいな。」
シンはこの頃、レイの俗に言う暗いオーラを感知できるようになってきていた。
その暗いオーラが・・今、嫌と言うほど出ている。
「・・・レイ・・大丈夫?」
「・・カガリが・・元気になれば、大丈夫だ。」
レイは・・・本当に・・大切なんだな・・カガリが。
そう思っているとレイはくたっとしてばたんとベットに倒れた。
「--------・・何か・・レイ、カガリ命って・・感じ?」
「・・・---元気で居てもらわないと・・嫌なんだ。・・シンはそう思わないのか?」
「そう・・思うけど・・」
けど、今のレイほどショックを受けたわけではない。風邪なんてほぼ絶対治るんだし・・。
「・・・カガリは・・、母親に・・似ているような気がするんだ。」
「あーなんか、一般的に言う母親像に近いよな、・・もう少し女らしかったら・・」
「ああ。・・俺は自分の母を知らないから・・、カガリが・・時々母のように感じられる。」
初めて、レイとこういう話をする。
確かに・・カガリは、恋人と言うより、姉、母といった感じの人間だ。
シンも・・実際カガリを姉のように慕っているわけで・・・・。
「・・・だから、勝手だが・・重ねている節があるのかもしれない。」
「・・・なんか、それ・・分かる気がする。」
そう共感を示すと、レイは「そうか」と呟いて枕に顔を疼くめる。
「・・・まぁ、カガリだし・・熱の方から逃げていくって。」
「・・そう、だな。」
そう話して、シンも自分のベットに寝転がる。
・・・レイなら・・本当に、カガリの事を泣かせないような気がすると漠然と考えた。
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ごめん、アスラン。
熱・・でちゃって、明日いけそうにないんだ。
でも、すぐちゃんと治すから。そしたら、会おうな。
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熱が出て・・他の男とは会うのに・・俺とは、会わないのか。・・カガリは。
携帯を投げつけそうになった衝動を抑えて、パカンと閉じた。