「もしもし・・あの・・アスラン・ザラです。」
「始めまして、ラクス・クラインですわ。」
そう、受話器越しからはとても可愛らしく上品な声が聞こえた。
「おっついに電話かけたんだ、アスラン!」
ディアッカにそう言われ「あぁ」と適当に頷いた。
「しかたないだろ・・婚約者らしいし・・・・。」
そして写真を見せる、キラは前から見ていたのだがディアッカとイザークに見せるのは初めてだった。
「おー、お似合いじゃん、美男美女ってかんじで-----つうか、この子有名じゃん。アークエンジェル一可愛いって」
「-------お前にはいささか勿体無い相手だな。」
珍しくイザークが他人の事を褒めているのを見てキラはからかいに廻る。
「煩いッ」
少し頬を染めているところを見ると、結構気に入る顔だったのだろう。
「・・・で?会う約束は?」
「一応・・・今度の日曜。」
そう告げるとフューっとディアッカに口笛を吹かれる。
「アークエンジェルの女子が聞いたら、半分くらい倒れそうな話だなッあのクールなナイトが〜って。」
ディアッカはゲラゲラ笑って、アスランは少しウンザリした顔をする。
「・・・逢ってみないと・・分からないからな。」
そう告げるが、実際・・・逢うのはとてつもなく緊張するし勇気がいる。・・・今まで一度だって女性と付き合ったことなんてないのに。
・・いきなり逢うのが・・まさか婚約者なんて。
溜息を付き、キラを見た。
先日、キラの恋人・・・にしては随分と男っぽい子だったが、見ているだけで愛情が伝わってくるような二人だった。
-------・・俺は、それほど人に関心が持てるかわからない。
イザークとディアッカだって・・・キラがいたから、友達になれたくらいだ。
同性でもここまで人付き合いが苦手なのに・・異性なんて・・・・。そう思ってしまう。
「まぁ、不安がってても始まんないよ・・・大丈夫、アスランだってやる時はやるでしょ?」
そうキラに微笑まれて、いつか来るなら早めにというし・・と思い頑張ることにした。
「今日は、そのキラさんのどんなお話を聞かせてくださるの?」
ラクスはキラとの話が好きらしく、この頃はラクスからキラの話を聞くようになっていた。
「そーだなー・・・キラが、幼稚園の遊戯大会で一人で熱唱した時の話しようかな?」
そうやって学校に行くと、ラクスは大きく溜息を付いた。
「どーかしたのか?悩み事なら聞くぞ?」
「・・・できれば・・誰にもおっしゃってほしくないのですが・・・。」
そして婚約相手の事を聞き、一緒に悩む。
「カガリが言うようなキラさんのような男性なら・・・良いのですが・・。」
「大丈夫だよ、どんな人だって・・ラクスがいい人だから絶対好いてくれる!」
そう笑うと、嬉しいですわと微笑んでくれた。
「お顔は・・とてもかっこいいのですが・・・・少し冷たそうな方で。」
あえて名前を言おうとしないところを見ると、それなりにアークエンジェルでも有名な人なんだろう。
フレイ曰く、「エターナルのかっこいいやつは凄くかっこいい!!そして異名を持つ奴が数人いる!!」って言ってたような気がする。
それにフレイに言ったら特徴だけで全員言い当てちゃいそうだし・・・。
まぁ私とラクスは全く知らないけど。
「ラクスはいるだけで雰囲気を和やかに出来るから・・冷たい奴でも大丈夫だよ!」
「・・・・それは・・カガリの方が凄いと思いますわ。」
・・・?
いつもよりちょっと自虐的なラクスを心配してしまう。
「嫌・・なのか?」
「いえ・・・ただ、ちょっと・・・。」
そうやって俯いて、ラクスは
「カガリとキラさんみたいに・・・仲良くなりたいです。」
そしてにっこりと微笑むがやはりどこか陰のある笑顔だった。
昼いつものメンバーで教室でランチを取っていると、フレイは大きく溜息を付いた。
「ねー誰か、一人・・・再来週の日曜・・暇してない?」
そう聞かれ、用件次第だけどと目を向ける。
「なんかさーエターナルの人から合コン誘われたのよね、で四人でどうかって話になって・・・。」
「ラクスは・・パスだろ?」
婚約者の事もあるし・・・
「じゃあカガリは?」
「私もパス」
「・・・・・・・・・・ちょ、何よフレイ。」
ミリィは迷惑そうに眉を潜めてフレイを見た。
「良いじゃないっ、ちょっとあって遊ぶだけなんだから!大丈夫・・エターナルの連中金持ち多いから全部おごりだと思うし・・・」
「そ、そーゆーもんだいじゃないわよ・・・私・・合コンなんて行ったことないもの!!」
フレイとミリィはギャーギャー騒ぎ出し、結局ミリィが白旗を振るハメになった。
「それに・・今回の二人、異名もちよ!」
フレイはちょっと嬉しそうにニッコリ笑う。
「白馬の貴公子と黒の男(ブラックマン)って奴。」
「なんか対照的な名前だな。」
「で、そのブラックマンは通称合コン係。---まぁそいつからの話なんだけどね、今回の。」
フレイは良かった人が見つかってと嬉しそうにしている。ミリィはどうしようとオドオドしていたが・・・。
「みんな凄いな〜、私・・そういうの・・まだいいや。」
「あら?あの方は?」
ラクスはきっとキラの事を指しているんだと思う。
「アイツ・・なんかそう言う次元じゃないからな・・ぶっちゃけ。」
そう・・・どんなにキラを想おうと、絶対に叶うことは無い。お互い承知している。
「・・・そう、なのですか?」
「誰の話よ?」
フレイは首を突っ込んでくるが"幼馴染"ですませておいた。
携帯を開くと、キラからメールが届いていて"今度遊ばない?"と来ていた。
「・・・・相変わらず・・だな。」
・・・・・悲しくなるだけなのに、お互い。
"当たり前だ、で・・どこにいく?"そう、打ち返しておく。
--------キラとは・・恋人・・だったのかもしれない。
あの日、私がアメリカに立つまで。
そして・・お互い、愛情のカタチこそ変りつつあるけど、やはり大好きだった。
「よしっ」
べチンと頬を叩いて、頑張ろうと誓う。
・・・・キラと私、----やっぱりお互いの中に確かに新しい居場所が出来つつあった。
「じゃあ、行ってくる。」
「頑張ってアスラン」
そうして、日曜・・指定した喫茶店に向かう。
結局・・どんなかっこうすれば良いかとか分からず、キラと二人であーでもないこーでもないと悩んでしまった。
喫茶店に着くと、入り口でピンクの髪を長引かせ、フワットした白いワンピースに身を包んだその子がいた。
「お、おそくなってしまってすいません・・・ラクス・・ですよね、アスラン・ザラです。」
そう丁寧に挨拶すると、ラクスもスカートの裾を摘まんでお嬢様らしく挨拶をしてくれる。
「ラクス・クラインですわ、このたびはお話を頂、ありがとうございます・・アスラン。」
あ・・あの子とちょっと違う。
そう思ってしまったのは匂いだった。
この子の方が甘いにおいがする。-------けど、キラの恋人の方が・・甘さに痺れがあったような・・・。
そんな事を考えながら、喫茶店に通し適当にケーキとコーヒー紅茶を頼んだ。
「私・・男性とこういう形でお会いするのは始めてですの、あなたは?」
その割には全く緊張しているようには見えないラクスが凄いと思った。
「俺・・いや私も初めてです。」
そう答えるとニッコリと微笑まれ、綺麗だなと思ってしまった。
「よかったですわ、手馴れた方でしたらどうしようかと・・・。恋愛初心者同士仲良くしましょうね」
ラクスはホンワカと笑みを見せ、引きつったように笑い返した。
可愛い・・けど、やっぱり堅苦しい。
キラとかと・・話していた方が楽だな。
・・・大体、やっぱり異性と付き合うのは・・面倒が付きまとうものなのかもしれない。
そんな気持ちを読み取るかのように、ラクスはパンと手を叩いた。
「なんだか梅雨みたいなお顔ですわ、何かして遊びましょう?」
そしてその後ラクスの要望でゲームセンターに行き、大量にぬいぐるみを取ってあげた。
「アスラン、お上手ですわ!こんなに沢山・・お名前つけるのに困りますわ」
「す・すいません」
「いえ、本当に嬉しいです・・!ありがとうございます」
なんていい子なんだろうと思い最後は駅で別れを告げた。
「それでは・・・アークエンジェルの寮には近づけませんから・・すません送れなくて」
「いえ、今日はアスランが取ってくれたぬいぐるみたちが守ってくれますわ、ですからお気になさらないで下さい」
変わった事を言う子だ・・・と思ったが笑顔で別れを告げた。
・・・・、思っていたより・・・辛いものでもなく、良いものでもなかったが・・。
人を好きになる・・・という感覚だっただろうか?
そんな事を思いながら、エターナルの寮へと帰っていった。
アークエンジェルの寮に着き、201号室へと戻る。
「お帰りっラクス・・相手どうだった?いい奴だった・・変なことされたら私に行ってくれよフェンス越えて殴ってやる!」
行く時相当不安がって見えたようで、カガリはとても心配してくれていた。
「紳士なかたで・・それに、UFOキャッチャーがとってもお上手でしたの!」
嬉しそうにいうとカガリはまるで自分の事のように目を輝かせた。
「本当かっ良かったな!ラクス!!」
そして取ってもらった品を見て、カガリはビックリする。
「へーこんなに・・・一個百円以下でとっちゃったんだ・・・。」
そう、彼は二個取りも出来る人だった。
「私もビックリしてしまいましたの、お名前付けるの困りますわねって伺ったら「すいません」と・・・」
「面白い奴、せっかく褒めてるのにな!」
「えぇ、ですから「嬉しいです」とお伝えいたしましら、少し笑ってくださって・・」
アスラン・・彼の印象はやはり"紳士的、あまり笑わない人・・でも優しい人"だった。
「きっと、沢山話してれば慣れて沢山笑うようになるさ、きっと。」
カガリはニカっとわらって、ラクスもニッコリ笑い返した。
「仲良く・・なれるといいですわ。」
・・一度で相手を決めるのはやはり少しお粗末だと思うし・・実際アスランはいい人の典型的タイプだとラクスは睨んでいた。
だから・・少しずつ、溝を埋めていけたら-----そう、考えている。
「どうだった?ラクスちゃん。」
「・・・良い子・・だったかな?」
そう答えるとキラは「良かったね」とどこか沈んだ顔で答えられた。
「・・?どうかしたのか?」
「ううん、別に・・・僕も頑張らなくちゃ。」
・・・・カガリとの事。
「嫌なくらいラブラブに見えるが・・・」
「まーラブラブだけどね。」
・・・たぶん・・それはずっと変わらないだろう。
「良く分からないが・・恋ってめんどくさそうだな。」
「そう?楽しいよ?---ピッタリに人が見つかれば。」
・・・・僕と・・カガリは違うけど。
-------でも、一生好きには変わらないからいいや。
「・・・?」
「僕も早く・・ピッタリに人に出会いたい。」
・・・・傷を・・癒して欲しい。
----・・・愛情で。
そんな自分勝手なことを思いながら、今度カガリと何処に遊びに行こうかと計画を立てていた。