「お母様っ!!!!」
そう呼ばれる相手・・お母様は・・綺麗で優しくて・・何よりカガリを愛してくれていた。
だが・・少し、身体が弱かった。
『よかったね、カガリ』
「あぁ、でなっ明日お母様がプレゼントくれるんだってっ」
明日は・・キラとカガリの誕生日だった。
『僕ももらうもんっ!あ・・カガリ、何欲しい?』
「キラとの時間。」
『・・・僕も』
そんな事を話して電話は切れる。
あれから半年、施設にいて・・一週間に一度キラは遊びに来てくれた。
最初はずっと部屋に閉じこもりっきりだったカガリも少しずつ・・外で遊ぶようになっていた。
-----・・キラがいてくれたから。
次の日、お父様とお母様は夜大きなケーキを作っていてくれていた。
「おめでとうカガリ。」
「おめでとうございます、カガリお嬢様」
そうキサカやマーナ他の使用人たちにも歓迎され、誕生日パーティーは始まる。
ケーキは甘くて美味しかったし・・お父様に久々に会えたし・・。
本当に幸せな誕生日パーティーだったと今でも思える。
そのパーティーが終わり、お母様に呼ばれ部屋に向かった。
「カガリ・・はい、これ。」
そう言って渡されたのは赤い石の付いたネックレスだった。
「・・・これ・・お母様が・・お父様から貰った----大切なモノだって・・マーナが言ってた・・。」
そんな大切なもの・・貰えない。
「いいのよ、お母さん・・・カガリにあげたいの。」
おでこに優しくキスをされて、首にかけてもらった。
「カガリが・・幸せになれますように・・・。」
そうお母様は手を組んで祈ってみせる。
「この石はね、願い事が叶うのよ・・一人一つだけ。」
そしてギュッと抱きしめられる。
「お母さん・・カガリの傍からいなくなっちゃうかもしれないけど・・----ずっと傍で見てるからね、カガリのこと。」
・・・?
「カガリも・・ずっと傍にいたい・・そう思った人に・・あげなさい。その人の為に・・祈ってあげなさいね。」
そう言われて良く分からないながらコクンと頷いた。
「お母様・・ありがとう」
お母様に愛されている・・だから、大切なものを譲り受けたんだと嬉しさがこみ上げた。
お母様も・・カガリが必要ですか?
キラと同じように・・必要だと・・言ってくれる?
そうして考えていると心の中が満たされるのが分かった。
よっかった・・私---ちゃんと、必要とされてる。
お母様の元に・・いていいんだ。
そして数ヵ月後、お母様は入院された。
「お父様・・お母様は・・・・?」
そう、カガリの父は忙しい。いわば富豪の家なのだ。
「・・お母様にあったら・・笑顔をみせてあげなさい、----喜んでくれる。」
そう大きな手に頭を撫でられて「はい」と答えた。
そして四年前・・お母様は静かに息を引き取った。
分かっていた。
きっとこうなるんだって・・・。
分かっていた。
心の準備も・・してきていたはずだった・・・なのに
-----悲しくて・・堪らない。
愛してくれて・・受け入れてくれた人が・・いなくなってしまう。
二度と・・声も笑顔も・・・・・触れることも・・何も許されない。
・・・・お母様・・。
お父様は泣いたりしなかった。お葬式の時も・・ずっと。
逆に私はずっと泣いていた。
お葬式に来たキラは慰めてくれて抱きしめてくれて・・・。
そしてお父様はアメリカに行くと言い出した。
私を置いて。
「カガリには・・キラ君もいる。大丈夫だろう。」
「お父様・・でもっ」
「血の別けた相手だ・・大丈夫。」
「「え?」」
キラと二人で顔を見合わせる。
「・・・・・わ・・私お父様についていく!」
そう切り出したのはキラと恋人で・・・関係がぎくしゃくするのが目に見えていたからだろう。
アメリカにいく日キラは微妙な顔をして見せた。
「・・----大好きに・・変わりはないだろ?」
そう言ってキラの頬にキスをする。
「泣くなよ。」
「・・・カガリこそ・・。」
そう会話をして、私はアメリカにたび立った。
キサカ曰く、お父様はお母様を気遣って今まで日本に留まっていたそうだ。
そして、これを気に・・アメリカに行くと・・言っていた。
お父様は泣かない、悲しくないからじゃない。
お母様の死を・・受け止めているんだと顔を見て分かった。
-------凄いな。
お父様とお母様は・・きっと今でも愛し合っているんだ。
そう・・思った。
そう・・いつだって・・挫けそうな時にはキラが・・いてくれた。
でも・・そのキラは・・もうラクスを選んでしまった。
大好きだから・・だからこそ、キラに幸せになってほしいと思う心。
逆に・・「なんで置いていくの」という心。
交じり合っていたが・・ラクスも大好きで・・二人に幸せになってもらえるならとキラを・・離した。
・・・・・寂しかった。
ラクスは・・お母様に似ていたから。
--------大好きだ。
優しくしてくれる人。
それを・・キラに取られたような気分。
そして・・ラクスには・・支えてくれるキラを・・取られたような気分だった。
寂しい。
でも・・昔ほど子供でもいられない。
立ち上がれない子供とは違うんだ。
そう・・思っていた。
・・結局はアスランに甘えていたのかもしれない。
アスランと・・ラクスを必要以上に応援したのは・・二人の中なら・・私を・・受け入れてくれるような気がした。
---------なんて自分勝手な意見。
おそらく・・私は、ラクスの中でアスランと自分なら自分のほうが上だと決め付け、
アスランの中でも・・ラクスと私は同じくらい大切だろうと決め込んでいたせいだ。
・・・そうで・・ありたいと願っていただけかもしれないけど。
でも・・ラクスとキラが出会い・・少し焦った。
お互いの一番を・・見つけてしまう。
私の入り込める隙間は無いじゃないか。
・・・・・・・・・大好きな二人。
二人が同時に・・いなくなってしまう。
二人の世界を作ってしまう。
・・・・・、悲しい。
お母様のように死別したわけでもなく、
義母のように、いらないと言われたわけでも無い。
けど・・それでも、私は-----キラもラクスも誰にも取られたくはなかった。
・・・・我が儘な・・心。
その心を押し殺すように、・・アスランに・・甘えていた?
そしてアスランは受け入れてくれた。
アスランに石を渡したのは、そんな自分を受け入れてくれた彼に恩を返したかったから。
・・幸せに、誰よりもなってほしいと望んだから。
それに・・お母様にこれ以上私の為に心配をかけないようにという心使いもあった。
その・・アスランが・・離れていく。
・・----でも、それが・・なんでこんなに寂しいのかは分からない。
キラとラクス・・二人が離れていく時と酷く似ていて・・酷く・・・・・・・・違う。