「あらあら・・私は・・今年もまた、一人部屋ですのね。」
そう・・----もう、なれた事・・だった。
四月。
桜が舞い、高校の入学式が訪れる。
アークエンジェルは中高合同の進学校。
しかも中学受験から出しか入れない学校だった。
そして・・ラクスには中学で親友と呼べる人間は・・いない。
部屋は二人ずつ。はじめはくじ引きで一人の部屋を引いてしまった。
そして二年、二年からは好きな人と同じ部屋に住む事が出来る。
・・・・・・・・・・・、いない。
性格が悪いわけではない。
ただ・・特別仲のいい子が出来なかった。
そして、元から不思議なオーラを放つラクスを・・幼い女子達は受け入れない。
その容姿を妬み、優しく微笑んだ顔を疎ましく感じるものも多かった。
机にブスと掛かれた事も
リコーダーが折られたことも。
でも、犯人を捜そうとかは思わない。
一人で存在する事はそういういじめっ子には格好のねらい目。
しかも・学園一可愛いラクス・クライン。
辛い、そう感じた事はあったかもしれない。
だけど、その度に部屋の中で歌う。
幸せの唄。
そうすればスッキリと心は静かになると心得ていた。
誰かを恨む心は汚く
誰かを・・蔑む心は醜い。
そう、理解していた。
だから・・せめて、自分はそういう人にならないように。
人に、辛く当たる事の無いように・・・。
それだけを・・心がけていた。
----いつか、そういう人たちも・・心が静かになりますように、綺麗になりますように。
そう唄う。
でも・・・だからと言って、寂しさや孤独感は続く。
それを紛らわすように・・また唄った。
そして、この学園に来て四度目の春。
突然・・・やってきた。
ピンポーン
そうインターホンが鳴った。
「・・・?どなたでしょう・・??」
長い間・・三年間・・ラクスの部屋に尋ねてきた友人はいない。
ガチャン
「はじめましてっラクス!!!私はカガリだっ!」
そう綺麗な金髪をなびかせた女の子はニッと笑う。
「はじめまして、カガリさん・・・---」
あっけに取られてどうしたんだろうと頭を巡らせた。
「今日からこの部屋で暮らすんだっ!よろしくなっ」
そしてダンダンと音を立てて入り込み、背負っていた荷物をガンと置いた。
「悪いな、引越しの業者さんまだみたいで・・」
そして見回して一言
「一人部屋・・か、私は一人より二人の方が好きだな。」
ラクスは?と聞かれて
「私も・・・二人の方が好きですわ。」
そう、ずっと・・一人は嫌だと・・感じていたから。
そうして、カガリとの唐突な出会いは訪れた。
「----・・ラクス・・それ、どうしたんだ?」
そして見られたのは、カッターで切り傷のついた鞄。
「いえ・・その・・・」
虐められているなんて・・知られたら・・・どう思われてしまうのだろう
「・・・・大丈夫だぞ、ラクス。」
そうしてポンと頭を撫でてくれる。
「----はい。」
嬉しかった。
虐められている事を軽蔑されなくて。
一緒に居てくれると・・言ってくれているように思えて。
そしてカガリは毎日ラクスの机に来てくれていた。
時々聞こえてくる陰口に、カガリはバシンと机を叩く。
そしてその綺麗な目をそっちに向けてツカツカ歩き出す。
「・・・お前ら・・ラクスの事知らないからそんな事いえるんだぞ?いっそ友達になれ。」
---はい?
そう、相手が言うのをお構いなしにカガリはその人たちの手を握ってつれてくる。
「ラクス、こいら新しい友達。」
相手もラクスもキョトンとしてカガリを見る。
そしてカガリはその場を盛り上げるような話をして、その場に居いる者を笑わせてくれた。
その話が聞こえる人・・全てが笑うように、カガリは話す。
そして、暫くするとその陰口を叩いていた人とも・・口が聞けるようになっていた。
そんななか、
「あんた達・・面白いじゃない」
そう声をかけてきたのは・・・フレイ・アルスターとミリアリア・ハウ・・だったはず。
「ラクスって・・物静かだから、でもカガリといるの見て案外普通の子なのねって思えて・・」
そうミリアリアに言われて、びっくりする。
ミリアリアとは・・前々から話したことがあったが・・どうも壁を作ってしまいがちだったのに・・。
「ね、これから四人で昼とか食べない?二人だと会話尽きるのよ。」
「なにそれフレイ・・ただカガリとラクスと話したいだけじゃない。」
そうミリアリアは笑って言ってくれて、驚きを隠せない。
私と・・話したいと---思ってくださる方がいた。
心が急に温かくなったような感じがする。
「よっしゃ、じゃー四人で食べようなっいいだろ?ラクスっ」
「勿論ですわ」
嬉しくて、涙が出そうだった。
「カガリっ」
そう、カガリは太陽のような子。
-----そうすると・・私は月・・なのかもしれない。
「ラクスっ」
太陽の光を一身に浴びて・・
やっと輝き出せた・・月。
ありがとう。
照らしてくれる・・貴女へ。