「にしてもさーユラって何処のクラスだろう?」
「さーな、聞いておけばよかったな。」
レイとこの頃良く話すようになっていた。そして話題の半分以上はユラの事だった。
「じゃあアスラン、ぼくでかけるから----そうだ、カガリ今日来るって。」
「それなのに・・でかけるのか?キラ---」
「だって僕がいたらカガリが入ってこられないでしょ?」
「・・・・?」
バレンタインデーは丁度休日で、キラは出かけると言う。
カガリと・・会うなら分かるのだが、カガリは部屋に来るって・・---なんか変だ。
「じゃあ、あ・・僕の分のチョコ食べちゃ駄目だからねっ」
そうキラは念を押して部屋から出て行ってしまう。
「・・・?-----まぁ、いいか。」
今日カガリがくるのは、おそらくチョコレートをくれる為だろう。
手渡し・・してもらえると思うと少し嬉しい。
そう、期待に胸を膨らませて待っていると予想通りノックが聞こえた。
「カガリ・・。」
ガチャンとドアを開けるとそこには茶色の髪に琥珀色の目。
「カガリ・・!!」
抱きしめたい衝動にかられながらも、紳士的に中に通した。
ガッとカツラを外し、「よっ」と笑ってみせる。
「ちゃーんと作ってきたんだぞっチョコレート!感謝しろよっ!!」
じゃじゃーんと効果音をつける勢いでカガリはその袋を出してみせた。
--------・・恥ずかしがっていないという事は・・・意識されていないのだと分かる自分が悲しい。
「バレンタインでーって・・カガリ何の日か知ってるか?」
「好きな人に、チョコあげる日だろ?」
-----あぁ、好きな人=アスラン、キラ、ラクス・・・・ってことだよな・・・・。はぁ
もう慣れてきているもののカガリの天然には頭痛がしてならない。
「何だアスラン・・嬉しくないのか?」
「-----------・・凄く嬉しい。」
「嬉しそうに見えない。」
カガリは少し唇を尖らせて眉を曲げてしまう。
「どーせ・不味そうだとか思ってるんだろ・・?」
シュンと下を向いてしまうカガリが可愛くて噴出してしまった。
「な・・何笑って・・・!!」
「カガリがあんまりにもオカシイから・・・・」
だって、俺から見れば"食べて欲しい"と言っているように見える。
それは、頑張って作ったから当然だろうが・・・そういってもらえると嬉しくてくすぐったい。
「食べるのか、食べないのか・・・どっちだよ、」
「食べるよ、ありがとう。」
そう言って袋ごと渡そうとしたカガリにストップをかけた。
「・・・、どんな種類があるか・・見せてほしい。」
ちょっと・・ふざけて、まぁカガリの真っ赤な顔が見たいだけだったが・・・。
どんな種類って、・・・。
袋を開けてトリュフを取り出して見せた。
「コレがトリュフで・・。」
そう人差し指と親指で挟んで見せると、アスランにその腕を引っ張られる。
「・・??」
パクッと音を立て指ごと口の中に入れられてしまった。
「な、なにするんだよっ」
器用にアスランはトリュフだけを軽く砕き、カガリの指を舐めて見せた。
「・・・っ・・」
ゾクッとした感覚が走る・アスラン----絶対わざとやってるだろうっ!?
ちゅぅっと音を立てて指をしゃぶって綺麗に舐めて口から出される。
「あ・・あ・・あ・アスランの馬鹿っ」
「悪かったな、俺は馬鹿だ。」
そうやってニッと笑うアスランがなんだかムカつく・面白がってっ!
ザラ邸でだって・・・---散々恥ずかしいといったのに、アスランはっ・・・!!
ちょっと不機嫌になってフンと顔を逸らすとアスランはまた笑って見てくる。
「怒るなよ、カガリ」
「ふん、アスランは私で面白がってるだけなんだろ」
「違うよ」
「違くないっ、いつも私が赤くなるので遊んでるじゃないかっ」
「----・・それは否定しないが・・」
「否定しろぉ!!」
やっぱり遊んでるのかっ、私はアスランの玩具かっ!?
カッと立ち上がりフンと鼻を鳴らした
「帰るっ!」
「・・え・ちょっとっ」
ふん、アスランなんて知るかっ!人を玩具みたいに扱って・・・。
そう立ち上がり去ろうとすると直ぐにグッと後ろから抱きしめられて持ち上げられる。
「馬鹿ぁ!!アスランの馬鹿ッ!!!」
足をばたばたさせても下に届かない。・・・酷いっ!もうちょっと私だって力と身長があれば・・・
「馬鹿なのは認めるが・・・、俺はまだカガリと一緒にいたい。」
トクン。
「お前のせいで病気が出てきちゃっただろぉ!!」
「だから・・現実には無い病気だって-----」
アスランは溜息を付いてカガリを下ろして微笑んで見せる。
・・・・クソ、私が好きな笑顔じゃないか。
カアッっと自分の顔が赤くなるのが分かる。
「カガリは・・俺と離れているほうが、いいのか?」
・・なっ・・何だよそのすがるような顔はっ!!!!!
そんな顔で言われたら・・というか、私はアスランとは一緒にいたいと常々思ってるし・・
「そ、そいう訳じゃ-------・・ない、けど・・・。」
「じゃあ、もう少しゆっくりしていけば良いじゃないか。」
カガリがそう選択してくれた事少し安堵感を覚えた。
まぁ、わざと---縋る様な目をしたと言う事実は置いておきたい。
そしてカガリとギュッと正面で抱き合う。
「・・・----・・アスラン・あのさ。」
「なんだ・・・?」
「あのな、ドキドキするのが嫌いなわけじゃないんだけど・・---少しぐらい確認とって欲しいんだ。」
「わかった。」
きっと、今カガリは真っ赤なんだろうな・・・。
そう思うとなんだか嬉しくて「今は?」と聞いてしまった。
「・・いい・・けど。」
そして真っ赤な顔のカガリを覗き込み、頬にキスをする。
「そういえば・・昔カガリよくしてくれたのに---最近しないよな。」
「・・・・お前が・キラと重ねるなって言うから・・・止めたんだぞ?」
---あぁ、そうか・あれはキラにやり続けていた事だったのか。
「じゃあ、キラじゃなくて・・・俺にしてくれないか?」
ねだって見せるとカガリは真っ赤になって首を横に振った。
「・・・・・・残念・・だな。」
でも・・嫌なら無理にやらせなくても良いか。
そして顔の至る所に唇を落とす。だが・・・一箇所だけ、まだキスをした事がない場所があった。
-------・・唇。
「キラと・・唇でキスしたことは・・?」
「ないぞ?」
そっと指先で唇をなぞると、カガリはゾクッとしたのか背筋を振るわせた。
「俺と・・じゃ、嫌か?」
「嫌・・じゃないが・・・。」
カガリの中では、唇以外なら誰とでもしていいと思っていたのだが・・・。
「だって、唇と唇って----恋人がするものじゃないのか?」
そう聞くとアスランは困ったように笑って見せた。
--------なんで何も知らないくせに、そのことだけ知ってるんだよ。
そう悪態を付いて、カガリを覗くと不機嫌になったアスランに気が付いたのかカガリも困った顔をする。
ちゅ
「----・・これで許せ。」
そう頬にキスをされて言われた。
「もう一回。」
そう拗ねて言うとカガリはちょっと眉を潜めたが、もう片方の頬に柔らかい唇を当ててくれる。
「・・・・ありがとう。」
・・・素直だよな、カガリは。
そしてカガリは足早に帰っていってしまった。
キラへとアスランへのチョコレートを置いて。
「チョコより・・・カガリが食べたい----------・・。」
そう切実に思うが、カガリには到底言えそうにはない。
エターナルから出ようと一回のエレベーターから降りると躓いてしまった。
「わぁっ」
男物で少し長く感じていたズボンの裾を踏んだらしい。
バサッ
そう音がして下を見ると茶色いカツラが落ちてしまっていた。
「げっ」
急いで拾うと丁度部屋から誰かが出てきてしまう。
-----不味い、今不自然にカツラをかぶったら余計怪しまれる。
そう思い、急いで髪を一本に束ねた。
「ユラっ?!」
「へ?!!」
驚いて見るとそこにはシンの姿があった。
「ユラじゃん!探したのに---何処のクラスにもいなくて・・・」
「あ、えーそうか、---レイは?」
「レイ?同じ部屋・・・上がっていく?今丁度格ゲーやってんの、レイと」
「あ!!やるやるっ!!」
103号室のシンとレイの部屋に上がり格ゲーをしだした。
「ってぃあっ!げっ!!!レイ強いぞっ」
ゲームには中々の自身があったのに・・・ちょっと悔しい。
「負けたら交換だぞユラっ!へへっ俺とレイは五分五分だ」
「言っておくが・・・累計32対28でお前の方が四回多く負けている。」
「う、煩いっ、まだまだこれからだっ」
そうしていつの間にか時間は過ぎて、時計は五時半を指した。
「やば・・帰らないと・・じゃあな、シン、レイっ!今日は楽しかったぞっ」
そして物陰に隠れてキラのカツラをつけ、足早にエターナルを後にする。
「あ、また・・・クラス聞くの忘れた。」
「・・---同じ学校だ、きっとまた会える。その時に聞こう。」
そうレイと笑い、次にユラに逢ったら何して遊ぼうかと笑いあった。
「にしても・・・ユラってさ・」
「何だ?」
「いや----良くわかんないよな。」
「そうだな。」
学校とかでも・・一緒に行動してたら面白いのに、きっと。
そうボンヤリ思って食堂に向かった。