夕食に向かうと、やはりというかなんと言うか・・カガリはいなかった。
だが、シェフはそれを知らないようでテーブルには二つのディナーが用意されている。
「・・・・すまないが、一つ下げてくれないか?」
・・・・寂しいなんて・・おもってやらない。
そう、心にいっても寂しさはまるでなくならない。
-------・・馬鹿だな。結局俺が駄目になるんだ。
・・カガリが傍にいてくれないと。
夕食に行かなかったのは食欲が無いからで
決してアスランにムカつくとか・・・そういうわけではないと思う。
第二食堂でボーっと絨毯の上で転がっていた。
仕事も片付けたし・・することも無い。
暇。
・・でも、グルグルと考えるのは嫌いだ。
アスラン・・----何怒ってるんだろう。早くいつもみたいにしていたい。
じゃれていた方が・・一人で居るよりずっと楽しいのにな。
溜息を付いて、ゴロゴロとして遊ぶ。
でも-----楽しくない。
ツマラナイ。
カガリは元来から一人っきりは好きじゃない。
施設で・・・・孤児院でキラに先に親の貰い手が決まって、一人残された時が鮮明に蘇る。
あの時も・・・遊んでくれる人がいなくって・・つまらなかった。
それを思い出していると"俺はキラじゃない"のアスランの言葉を思い出した。
キラと・・重ねてるのはなんでだろう。でも・・キラとは違う。それは・・ハッキリとしている。
一人で考えても答えは出ない、そう思ってキラに電話をした。
「・・・・キラ」
『カガリ・・どうしたの?』
「あのな・・」
適当に説明する。
キラ達が帰って直ぐに、キラと話せなかったといったらアスランが怒って・・カガリのせいだとハッキリ言われたと。
『え・・アスランが?怒ったの?めずらしー、しかも本気で?』
キラは信じられないと声をあげて、そして一緒に考えてくれる。
『アスラン----もしかして、・・・僕に焼いたのかなぁ・・・?』
「キラ・・キラを焼いてどうするんだ?」
『殺す気?』
キラは笑って、簡単に説明してくれる。
『だから・・えっと、アスランはね・・きっとカガリが好きなんだよ。多分。』
「私も好きだぞ?アスランの事。」
『"特別"に好きなんだよ。』
「・・・・特別?」
特別・・特別って言われても・・私だってアスランとキラとラクスは特別大好きだ。
他の皆は好きだし。
『うーん、カガリには難しいかな・・・。あ、僕に電話したって言わないでねっ!アスラン余計に怒るから!』
「良く分からないけど・・うん、言わないぞ。」
そうしてキラの電話は切れてしまう。
そして直ぐにラクスに電話をかけた。
「ラクス・・あの、今キラにも相談したんだけど・・・」
そしてまた、さっきと同じ説明をした。
「キラが言うに、アスランはカガリの事が特別好きなんだよって・・でも、私だってアスランとキラとラクスは特別好きだ!」
そう言うとラクスは電話越しで笑って
『カガリ、アスランも病気ですのよ。』
「病気ッ!?アスランもか!!」
『えぇ、カガリと似たような病気ですわ。』
そうラクスに言われて心配になった。私のあのドキドキだってそうとう酷い。アスランといる時なんてしょっちゅうだ。
「大丈夫かな・・アスラン・・。」
『大丈夫ですわ、カガリがいますもの。』
「私が何か出来るのか?!」
そうしてラクスに方法を聞くのだがラクスは"簡単ではない"と言われてしまう。
『カガリとアスランの病気は一心同体ですの。ですから・・・』
「一心同体?!じゃあ近づかない方が良いのかっ?!」
『ショックですの?』
「だって・・アスランといるの・・楽しいし・・---。」
『なら問題ありませんわ、アスランの病気は・・カガリが傍にいないと発動してしまうんです。』
---・・私がそばにいないと?
『ですがカガリの病気はアスランがそばにいると出てしまうでしょう?---まぁ普通なのですが・・。』
普通なのに病気って・・・面白い病気だよな・・と少し思う。
だが、紛れもなくドキドキするし・・・---アスランは急に不機嫌になるし・・。
「じゃあ、あの時私とアスランがあんまり一緒に居なかったから・・病気が出てきちゃったのか?アスランは」
『えぇ、そうですわ。』
「ふーん。」
一緒にいなかった私のせいで・・アスランは病気が出た・・だから私のせい・・?なのかなぁ。
『アスランに今私が言った説明をしてあげてくださいな、少し・・怒るかもしれませんが、カガリがいればきっと平気ですから。』
「-------・・分かった。」
でも・・今また離れてるから・・きっとアスラン怒るだろうなぁ・・・。
だが・・早くいつもみたくしたいし・・・。
そう思ってアスランの部屋へと直行した。
コンコンッ
ノックの仕方で分かる。カガリだ。
「入って良いぞ。」
ガチャンとドアを開け、少しおそるおそるカガリは入ってきた。
「あ、あのな、、怒らないで最後まで聞いて欲しいんだ・・---。」
--------・・と、いう事は・・君が出した答えでは無いんだな。
「・・・・約束は出来ないが・・・。」
ちょこんとソファーで向かい側に座り、カガリは手を何度も組みなおしながら話し出す。
「ラクスに・・聞いて・・。」
・・・やはり君の答えではないのか。
「それでな、アスランと私・・・病気らしいんだっ!」
・・・・・--------・・ラクス・・あなたは一体・・カガリに何を吹き込んで・・・。
溜息が出そうになるのだが真剣に言ってくるカガリを怒鳴り返すわけにもいかず、少し黙って聞くことにした。
「なんかな、一心同体の病気らしくて・・私はアスランが近くにいると再発して、アスランは私が遠くに行くと再発するんだってっ」
「・・・・・、、、、は?」
「私は・・その、この前も言ったけど"ドキドキとかゾクッ"とかして・・アスランは不機嫌になるらしい・・・。」
・・・それは・・。
恋の病のつもりか・・ラクス・・。
「だからな、あの時・・アスランと私遠くにいただろう?だから、アスランが怒ったんだって教えてくれた。」
-----・・まぁ間違ってはいない・・が、
「それで?」
「それでって・・違うのか?怒った理由。」
アスランは眉間に手を当てて深く溜息を付いた。
「頭が痛いのか?大丈夫か・・・?私が離れたから・・・」
そう言ってアスランに近寄るとアスランはまた溜息を付いた。
「実際・・そんな病気は無い、、、が・・確かに今俺はかかっている。」
ふざけ半分でそう言うと、カガリはギュッと二の腕の布を掴んだ。
「じゃあ・・私そばにいるから・・・・早く治せ?な。」
その言葉にまた深く溜息を付いたアスランを有無を言わさず寝室に連れて行く。
「ちょっと・・シャワーだけ浴びてくるから・・・待ってろよ、あ・・寝てろよ!悪化したら大変だっ」
そして急いでシャワー室に向かった。
-------・・・怒ろうにも・・怒れないじゃないか。
はぁと泣きそうに溜息が出る。
カガリは・・俺と一緒にいると、ドキドキしてゾクッとするらしい。それは恋以外に何があるって言うんだ?
なのに・・カガリには恋のこの字も出てこない。
----キラ以外は・・眼中に無いとか・・?
だが、キラと俺が同じ事をしても・・・明らかに俺の方が頬を赤く染めたり・・してくれうるのに?
無理に奪おうと思っても---キラが恋人じゃ・・・---何も・・、何も・・出来ない。
そう・・思いながら、結構手は出しているんだが・・・。
暫くして髪が濡れたままバスローブ姿のカガリが出てきた。
「髪は拭いてくるんだろう?」
「お前が病気なのに・・そんな事してられるか!」
起き上がり答えるとカガリは寝ていろと怒る。
「俺の病気はカガリが近くにいないと治らないらしいから・・・・寝てても意味無いんだ。」
そう嘘をつく。まぁ実際カガリがいてくれた方が機嫌がいいのは確かだ。
そう言うとカガリはベットのアスランの隣に腰を下ろしてくれた。
「これで・・治るか?」
「もっと近いほうが良い。」
「・・こうか?」
カガリはピッタリと身体を付けてくれる。顔を覗けばほんのり赤い。
それが可愛くて、少し我が儘を続けさせてもらう。
「もっと。」
「これ以上どうや・・・」
カガリの腰に手を回して、その胸から脚にかけての横のラインをなぞった。
「わ・・私のほうが・・再発するだろうッ・・!!」
カガリは直ぐに真っ赤になりそう声を出す。
「カガリは・・ドキドキするのとか、ゾクッとするのは嫌いなのか?」
-------え?
嫌い・・・、嫌い・・?
「嫌い・・・では、ないが。」
「好き?」
好き?!
「好きじゃないっ!!」
そう答えるとアスランは笑って
「好き----だと、俺は思うんだけど。」
「な、好きな訳-------・・っぁ・・。」
アスランに急に耳に息を吹きかけられて変な声が出た。
「アスランっ?!!」
「今のとか・・カガリは気持ちよくないのか?」
----・・・気持ちいい?!
「気持ちよくなっ・・!---っていうか・・えっとー、なんていうか・・・。」
変な感じ。
「キラには・・してもらった事-----ない、のか?」
「あるわけ無いだろうッ!?私とキラは頬にキスだけしかしないっ!」
それを聞いてアスランは嬉しくなった。もうとっくに最後までいってると思ってた・・・。
・・・よかった。
安心して、カガリに抱きついてベットに横に倒れこむ。
クイーンベットなので横の方が広いのでボスッと音を立てて寝転んだ。
「・・---・・あー・・落ち着く。」
カガリが・・こうやって傍にいてくれると--ほんとに落ち着く。
「私はドキドキだ・・・馬鹿アスラン。」
そう真っ赤にしていうカガリが・・この世のものとは思えないほど可愛く目に映る。
--------・・これで俺の恋人だったら---、今の何倍も愛しく感じられるのに。
そう・・考えたが、結局何も言わず二人で寝てしまった。
その次の日の朝、アスランは変な夢のせいで急いでトイレに行くはめとなる。