あと・・四日・・・。
そう、手帳を見て思った。
-----あと・・カガリとこうやっていられるのは・・四日だけなのか。
あれから・・アスランとカガリの仲は微妙になっていた。
アスランから話しかけたり・・手を繋いだりするだけでカガリは過剰に反応する。
------カガリからアスランに何かするのも少し違和感が出てきてしまった。
それでも・・一緒のベットで寝ていられるのは、やはりお互いどこか意識しているからだと思いたい。
「・・・キラ?」
夜、キラから電話が掛かってきた。
『あ、アスラン?明日遊ばない?ホント暇でさぁ・・・』
「構わないが・・。」
『そうそう、カガリ・・今アスランのところにいるんでしょ?』
--------・・。
「あぁ・・そうだが?」
『じゃあラクスも誘って・・明日四人で遊ぼうよ。』
-----・・キラはまだ俺の婚約者がラクスだと思っているのだろうか?
「---分かった。」
『じゃあアスランの家に正午ね〜』
そうして親友からの電話は切れる。
「・・・はぁ・・・。」
またあのキラとカガリのラブラブッぷりを見なければならないのか・・・。
そう思うと、深く溜息を付きたくなった。
「明日・・キラとラクスが遊びに来るって。」
「本当かっ!楽しみだな!!」
ベットの上で枕を抱えてカガリは嬉しそうな顔をした。
・・そうだよな、久々に恋人にあえるんだもんな。
シュンとするとカガリは心配そうな顔をしてくれた。
「そうだ・・アスラン、石---ちゃんと持ってるか?」
そう聞かれて、当然だと引き出しから出してみせる。
「---ちゃんと付けておいてくれよ。」
そしてまた首から通される。
「ちゃんと叶うぞ、私が本気で願ってやってるんだから。」
"アスランが・・運命の人と幸せになれますように。"
そう・・カガリは願いをかけてくれた・・・、俺の為に。
アスランも・・いつか、キラとラクスのように一番の相手を見つけてしまって・・・
----遠く感じてしまう日が・・来るのか。
そう----思うと、やっぱり--寂しい。
「願いが叶うように・・今度こそ、私も頑張って応援するし---ちゃんと力になれるようにするからなっ」
でも、大好きなアスランに幸せになってほしい。今の---キラとラクスのように。
カガリがそう言って微笑むと、アスランは少し曖昧な顔をして見せた。
---・・やっぱり、カガリの中で俺は俗に言う"OutOf眼中"らしいな・・・。
フッと溜息が出ざる終えない。
ベットの上に座ったまま、カガリを手招きで呼び自分の足の間に来るように促した。
「?」
壁を背もたれにして、アスランの間にスッポリと収まったカガリを後ろから抱きしめる。
「・・・----ッ・・。」
見る見る耳が赤くなるのを眺めて、笑いが零れた。
「お・・お前っ---私が赤くなるの・・楽しんでるんだろっ!!」
少し抵抗するカガリが可愛くて、耳に向かって軽く囁く。
「カガリ」
ピクリと身体が動き硬直したように止まる。
近頃になればこんなことはしょっちゅうでこの状態を"フリーズする"とよんでいた。
・・・明日は・・キラが来て、どうせカガリの心を攫っていく。
なら・・・いいじゃないか、今日くらいは。
この頃何かとつけてカガリに触る事を許していた。
本当は、キラの恋人にこんな事をするのは申し訳ないと思う。
だが---、それでも・・理由をつけてでも触りたいのだ。
いつもなら、こうやってフリーズすると・・アスランは笑ってカガリを離すのだが、今日は・・・。
ちゅっと音を立てて金髪を上げた場所にあるうなじにキスをする。
そして少しだけ、肩を出してでた場所にキスを降らせた。
カガリはフリーズ状態から抜け出せずただ固まっている。
ちゅ・ちゅと自分の肩に柔らかい感触と音が走る。
その度、心臓は壊れそうになっていった。
声を出そうと口を開けるのに、パクパクと開閉するだけで声も出ない。
最初は抵抗するものの、一度何かされてしまうと身体が痺れたようになって、いう事を聞かないのだ。
「カガリ・・。」
やっと肩にキスをし終えたアスランが優しくカガリの名を呼ぶ、当然答えられない。声が出ない。
そしてギュッと抱かれて、アスランの胸板に頭がついた。
「・・・真っ赤・・・、」
そうアスランは笑い声をもらし、少しムッとするのに・・結局何も出来ず心臓が鳴り止むのを待つ。
だが、アスランとくっついているせいか・・?良く分からないが、中々鳴り止まない。
「ありがとう。」
そう、アスランに言われて・・石の事かなと思い、笑い返しておいた。
そしてまた二人で同じベットに寝る。
*****
「こんにちわ、遊びに来ましたわ」
「アスラン〜遊びに来たよ〜」
そう声がして向かい入れ部屋に通した。
「あらあら・・?カガリは?」
そうラクスは部屋を見渡し不思議そうな顔をする。
「今・・来ますよ、ケーキ持って。」
そういい終わった瞬間ガチャンとドアが開き、メイド服のカガリが入ってきた。
「おっ!来てる!!久しぶりだな〜」
ガランとラクスとキラは立ち上がって、アスランは少しビクッとした。
「な・・な・・」
そうキラが声を出す。
「何て可愛い格好しちゃってんのさっ!!!!!」
「か・・可愛すぎますわッ!!!!」
そうキラとラクスは叫び、カガリに抱きつきカガリは急いでケーキを机においてから二人と抱き合っていた。
「いーなーアスラン、こんな可愛いカガリを毎日・・---」
そうキラの黒い声が聞こえてビクッとする。
まさか毎日のように、肩や頬にキスしてたなんて----首をつってもいえない。
罪悪感と少しの優越感が押し寄せて微妙な気分になった。
「出来る事なら私の家でも・・働いて欲しいですわ。」
そうラクスも微笑んで、カガリは嬉しそうに笑った。
そしていつの間にか2:2に分かれる。
キラとアスラン。
ラクスとカガリ。
「いいなー、メイドとは言え・・カガリ可愛すぎでしょ?あれは・・・」
「そ、そうだな・・・。」
出来ればカガリとの話題には触れて欲しくなかった。---劣等感には駆られたくない。
「ラクスも着たら似合うだろうな〜」
そういってキラは微笑んで紅茶を飲んだ。
「オカシイ・・ですの?」
「あぁ・・・。」
カガリはカガリでつい最近、アスランと一緒に居ると変になるとラクスに伝える。
「なんかなアスランといると、顔が熱くなって・・身体が痺れたみたくなって・・・心臓が異様に速くなるんだっ!」
「あらあら・・それは病気ですわカガリ。」
「びょ・・病気ッ!?」
そう叫ぶとラクスはにっこり笑って"えぇ"と頷いた。
「ですが、大丈夫ですのよ。それはカガリが"女性"であれば、当然の事ですから。」
そう言うとカガリは首をかしげた。
「生理とは違うのか?」
「えぇ、カガリに今来ている病は・・・普通の女性なら皆持っているものですの、ただカガリは少し遅れてきた・・それだけの事ですわ」
「アスラン・・限定なのにか?」
「きっと、カガリはアスランでなければ呼び起こす事が出来なかった・・ということですわ、きっと。」
ラクスは少しおかしそうに笑って
「アスランのお陰ですわね、・・・---アスランがいなければそれがないままになってしまいましたもの。」
「ないままだったら・・私は本当の女になれないのかっ?!」
「そう・・ですわね、でも私はどちらのカガリでも大好きですわ」
そう話して一拍置き、別の話題へ映す。
「そういえば・・キラとどうだ?泣かされたりしてないか?---キラはそんな事しないか・・・。」
「はいっ・・優しくて・・、大好きです!」
そう言って微笑んだラクスがスッゴク綺麗で、カガリはその笑顔に安心する。
「---よかった、キラとラクスが幸せなら・・私も幸せだ。」
ニカッと笑うと、ラクスも微笑んでから
「私たちは・・幸せですから・・次は、カガリも幸せになってくださいな。でないと私たちも幸せになりきれませんもの。」
---・・それも・・そうか。
カガリは一人で納得する。
だって、私はキラとラクスとアスラン・・それにお父様、フレイもミリィもイザーク、ディアッカも・・使用人、全ての人---
皆幸せになってほしいと思うし、誰か一人でも不幸だと・・何だか悲しい。
そういう事---か。
「じゃあ・・私も頑張って幸せなるっ」
キラとラクスが・・今以上に幸せになってくれるように。
「はい、そのいきですわ!!」
そんなこんな話しているといつの間にか夕方になり、キラとラクスは帰っていく。
「あんま・・キラと話せなかったなぁ・・・」
そういえばずっとラクスと話してたし・・・。
「----・・今度あったら、話せばいいだろう?」
「・・・?アスラン」
刺のある言い方に少しムッとする。
「どうせ・・キラとはまた・・何度も顔をあわせるんだろう?その時で・・」
「そうだけどっ、久々に会ったら・・話したいだろう?」
そう言い返すとアスランはムッとした顔をした。
「----・・なんだ、アスラン・・じゃあお前は久々に会ったキラと私がずっと話してたら・・嫌じゃないのか?折角親友と久しぶりに・・」
「あぁ、嫌だ。---すごく嫌な気分になる。」
「だったら解れよ。私だってキラとは・・」
「もういい、」
「はぁ?!」
玄関まで見送りに来て、アスランはフイッと背を向けて歩き出してしまう。
「ちょ・・ちょっとアスラン?!」
何で分からない?
何で解ってくれないんだ。
あんなに---したって、カガリはまるで俺の気持ちに気が付かない。
好きだといったって「私も好きだ、アスランとキラとラクスは大好きだ」で終わってしまうのに。
キラとカガリが話していたら・・嫌だ。カガリが俺から離れていくのが凄く嫌だ。
だから---半ば無理やりキラと話していたんだ。
それにも気が付かない。
天然で許される境地か?---さすがに酷い。
"----私だってキラとは・・"------恋人・・なんだろう、知ってる・・・知ってるが・・・・。
カガリがこの家に居る間、少しでも---いや・・本当は俺の方に気持ちが傾いたのかもしれないと・・勝手に思っていた。
だが---実際、勘違いだ。
・・キラの所に・・・・・---戻ってしまう。
自分じゃない---他の人を、選ばれてしまう。
・・・嫌だ。
----堪らなく嫌だ。
「アスランっ」
部屋の前まで来て、何度か呼ぶ声にやっと振り返った。
「どうしたんだよ・・・?怒ったのか?私は---お前とキラと同じ扱いなんてしてないぞ?」
「-------・・カガリが---悪い・・・・訳じゃない。」
「だがっ」
「・・・・・放っておいてくれないか?」
カガリはグッと唇をかみ締めてアスランを睨んだ。
パチンッ!!!!
・・・・・・・・。
「・・・何馬鹿みたいにグルグル考えてるんだよっ!!心配して当然だろうッ!なんで"関係ない"的な扱いするんだっ!」
頬を叩かれたらしい。ジンジンと熱い。
そしてカガリは泣きそうに声をあげる。
「明らかに今、私と話してて機嫌が悪くなったじゃないかっ!言ってくれないと分からないっ!」
---------・・いっても・・分かってくれないじゃないか、君は。
そうしているとアーサーが走ってきてカガリを止めた。
「駄目だって、使用人が主人を叩いちゃ・・」
「だって、だってコイツ・・・っ」
カガリは泣き出してアーサーも困った顔をする。
「嘘つくんだぞっ、私にまで---・・酷いじゃないかっ、私は・・---仲がいいと・・思っているのに・・、相談もしてくれないなんて・・」
酷い・・、
俺が?
「私のせいかもしれないのにっ・・ちゃんと言えよ!!じゃないと・・後味悪いだろぉ!!」
違う。
酷いのは君だ。
カガリだ。
フッとカガリのまん前に行き、目を合わせる。
アーサーに後ろから押さえられているカガリは、キッとアスランを睨んだ。
「-------・・カガリのせいだ。」
「え・・・。」
「俺は今・・カガリのせいで気分が悪い。だから・・一人にしてくれ。」
カガリは目を見開いて、驚いた顔をする。
だが直ぐに瞳は元に戻った。それを気にせず部屋に入ろうとすると後ろから
「いい逃げする気か!?ちゃんと理由言ってくないのかっ・・じゃないと・・謝ろうに謝れないだろう!?」
-----------理由?
「----・・考えて、分かったら・・謝りに来てくれないか。」
「・・っ・・・---なんだよ、それ・・・。」
バタン。そう扉を閉じた。
---そうだ、カガリが悪い。
あんな・・事しても・・・気が付かない、カガリが悪い。
「-------だ、大丈夫か?カガリ・・・。」
「・・・・・・・・・、」
アーサーに一応慰められ、うんと頷いた。
「・・・でも・・珍しいなぁ、アスラン様があんなに怒るのは。」
「そう・なのか。」
私は・・結構見ている気がするが・・・。
「なんと言うか・・---あんまり顔に出さないだろう?アスラン様」
「そーか・・そう・・かもな。」
夕食の準備をしながら、考える。
なんでアスランは・・急に機嫌を悪くしたんだ・・?
------ラクスと・・話したいのに、私がずっと独占していたからか・・・?
・・いや、でも--アスラン・・ラクスの事はもういいって言ってたし・・・。
じゃあ何だ?四人で話したかった・・?いや、始めの方はちゃんと四人で話したよな・・・?
夕食の準備が終わり、食堂を後にした。